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正念場を迎える日経平均株価!

2/17発表された日本の2024年暦年のGDP成長率は、実質前年比0.1%増となったが、内訳を見ると民間需要の伸びはゼロ、外需は0.1%減と全く成長していない内容であった。トランプ関税を目前に控え、外需の更なる減速が懸念される中、内憂外患の日経平均株価と金融市場への影響を占った。


1.好調な企業業績

上場企業2024年4-12月期の純利益は、前年同期比15%増の約43兆円と2年連続過去最高を記録した。円安により、企業収益が嵩上げされていることや、訪日客利用が伸びた鉄道など非製造業の伸びが牽引した。これにより、日経平均株価は、現在も39,000円を維持している。

2.減税に消極的な石破政権・利上げに積極的な植田日銀

来年度予算成立の目処が立たないにもかかわらず、野党の減税案受け入れに消極的な姿勢を崩さない石破政権と、実質賃金3年連続マイナス下でも利上げを続ける植田日銀(日本銀行)の組み合わせでは、日本経済が今年プラス成長を維持できる保証は全くない。

3.金融正常化プロセスを進める植田日銀

植田日銀は、利上げを継続する中、金融危機などの際に金融機関から買い入れた株式の売却に目処が立った今、保有する巨額の日本株ETF売却の準備を進めるとの報道が流れており、日経平均株価を需給面で圧迫する可能性が指摘されている。

4.日本の自動車輸出をターゲットにするトランプ政権

トランプ政権は、4月2日より、鉄鋼・アルミニウムに加え、自動車に対する関税賦課を発表している。なかでも、日本は米国への自動車輸出では世界最大で、トランプ政権からは、日本について非関税障壁が高いことを問題視する発言が出ており、日本の自動車輸出に今回、高関税が賦課されると日本の自動車メーカーへの打撃が大きくなる。

5.内憂外患の日経平均株価

日本経済を取り巻く状況は、景気低迷下での物価高にもかかわらず、財政緊縮・金融引き締めが続けられており、個人消費の失速が懸念される状況にある。これに日銀の時価70兆円に上る巨額なETF売却が俎上に上がれば、日経平均株価には大きな売り圧力がかかる。これにトランプ関税による自動車輸出の減速が加わると、日経平均株価はまさに内憂外患の状況に陥り、急落懸念が今後高まることになろう。

6・日本の金融市場への影響

日本が今後、自動車輸出の減速やLNG輸入の拡大により、対米貿易黒字削減を強いられれば、今年の貿易収支赤字は大きく拡大することが想定され、円相場に下落圧力がかかる。また、日銀による追加利上げ観測は、日本国債市場に下落圧力となり、日本の金融市場はトリプル安の状況に陥りかねない。
日経平均株価は、昨秋以降、図表の通り、38,000円から40,000円の狭いレンジ相場を形成しているが、自動車関税の導入が決定される過程で、レンジを下抜け、35,000円方向にレベルを切り下げるリスクには注意したい。

(図表 日経平均株価日次推移チャート 右軸:単位 円 出典:Trading View)

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2025年2月17日執筆 チーフストラテジスト 林 哲久





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