ドイツ@Sars-CoV-2 コロナウィルスアップデート(35) 2020/4/24(和訳)

話 ベルリンシャリテ ウィルス学教授、クリスティアン・ドロステン
聞き手 コリーナ・ヘニッヒ

2020/4/24

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ドイツで初めてワクチンの臨床試験の許可がおりました。マインツの研究チームが健康状態の良好な志願者、200人でテストします。 大きな節目のようには聞こえますが、ここからまだまだ長い道のりであることは、このポッドキャストでもお話していただいた通りです。まずは、安全性と副作用のテストが始まりますが、、世界には数多くのワクチン開発がされています。そのなかでも、今、注目をあびているのは、最先端の技術を使ったワクチンではなく、、中国で開発されているワクチンです。 今日も、対策の目安となる感染の拡散状態、ベルリンシャリテでの研究についても、ウィルス学教授、クリスティアン・ドロステン氏にお話を伺いたいと思います。聞き手は、コリーナ・ヘニッヒです。

ソーシャルメディアで、再生産数Rについての討論がおこりました。再生産数Rは、一人が何人が計算上感染させるのか、という数値です。 ロベルト・コッホ研究所は毎週データの速報をだしていますが、そこでのグラフでは、基本際生産数Rが、3月の2週目でもう下降をたどってました。 3月23日にお店の営業禁止令が出る前にもうすでにR0:1だったのです。ここから爆発的に増加することはなかった、多くの人々が、この対策は必要なかった、と言っています。 どのような経過でこのデータがでているのでしょうか。

3月の頭のR値は高く、3だったのですが、中旬には急激に下がって1以下にななりました。 一人が一人に感染させるので、現在の感染者数が持続する。これが、この数値の意味するところですが、3月23日にもうすでに、この数値に達していたならば、、、23日は、多くの州で接触制限が宣言された日ですが、、、この接触制限もロックダウンも、必要なかったのではないか。その前にもうすでに良くなっていた、のであれば。   
時間経過的には、こうでした。 3月9日に大きなイベントの中止が決定され、12日に学校の閉鎖を検討する首相会議、そして、16日の月曜日には学校が閉鎖されました。 ここから1週間、様々な討論がされたのち、、、多くの州で接触制限が宣言。 ここで、考えなければいけないことは、この時に何がおこったのか。 ほぼ、1ヶ月の間の出来事です。そして、R値の最高値は、月頭に達しています。   
ここで、4つの点に注目しなければいけません。 1つ目に、、、ランガ・ヨゲシュヴァー氏のビデオがとてもわかりやすいのですが、携帯のデータを使って、ドイツ国内の行動率を調べたものです。そこで、3月9日以降の週にすでに行動率は下がっています。 私もこの時のことをよく覚えていますが、その日、私は徒歩で首相会議に出向いましたが、ベルリン市内にはほとんど車もなく、人が歩いていませんでした。 ヘインスベルクの感染発覚に続き、イタリアの緊急事態の様子がテレビで報道された影響でしょう。ここで、国民は、これは一大事だ、と危機感を持ったのです。 この時点で、公の場でも多くの議論がされました。何をしなければいけないのか。学校は? 開けるのか閉めるのか。 他の国ではもう実行されていいました。 23日からドイツ国内が変わった、ということはありません。もっとはやい段階で、です。 この、徐々に段階を踏んだ対策が、徐々に感染状況にも影響を及ぼした、ということを自覚しなければいけません。 感染カーブをみればそれが明らかです。 R値のカーブや経過はありませんが、ロベルト・コッホ研究所が発表する感染者数の経過があります。 段階を踏んで、徐々に、です。 まず、大きなイベントが禁止されたことによって、集団感染を防ぐことができた。 学校が閉鎖され、世帯と世帯の間での感染が減少した。世帯内感染は続きますが。 これらはすべて、徐々に少なくなっていきました。 数回、感染者数が低下していのがわかると思いますが、これも、徐々に強化された防止対策案の影響です。 4月頭にも劇的に下がっていますが、これも、後からついてきた効果です。 4月中旬、イースターの前にも、はっきりと下がっていますが、これも同様です。 このように、ロックダウンの効果がはっきりとでていることは、明らかなのです。  3つ目に、どうして、ロックダウンによって、まだゼロまでさがっていないのか、と思うでしょう。 ちゃんとやらなかった人が多くいるからに違いない、と思うかもしれませんが、そういうことではなくて、、、ロックダウンは効率的でした。 しかし、ここで、ゼロにならない理由は、、、それは、介護施設や病院での感染、つまり、特別なシチュエーション、世帯内と同じ条件を持つ大きい環境内での感染、接触制限が効かないところがあるからです。 4つ目は、、、これは、まだしっかりとはでていなくて、公でも議論されていない点ですが、3月におこった大きな分析検査体制の変化です。

検査容量ですね

そうです。各地のラボは、2月中旬から3月中旬にかけて、急激に検査容量を増やしていきました。多くのラボは、2月はじめにはもう体制は整っていましたが、そこまで検査はしていませんでした。まだ感染ケースがない、いう認識でしたので。 3月に国外から入ってきた感染が発覚して、偶然、インフルエンザに紛れて新型コロナの感染も国内で広がっている、ということもわかり、、ここからスタートしたのです。 ここで、全てのラボが速攻体制を強化する方針で動きました。ここで、検査容量の大幅な増加があった。 メモしたところによると、、、3月2日の週では、87000件の検査が行われ、1週間後、3月9日の週には、127000件、 まだ1週間後の3月16日は、348000件。 これは、かなりの増加です。 R値は統計的に、この感染者数から割り出している、ということ、と、PCR検査の結果と、PCR検査の数によってだされている、ということを考慮すると、このような、2つの同時におこった要因があると思うのです。 検査数が増えたことによって、陽性感染者の確認が増えたことと、実際の増加と、と。 PCR検査数は、3月中旬からは現状維持です。 そこまで増えていません。 そのような2つの要因が統計に同時にはいりこむと、ここで、また下降傾向がみえるようになる。 そのようなことなのではないか、と私は思っています。 少なくとも、そのような疑いを持っています。 3月頭に、感染者数が増え、検査容量も増え、そこから、対策によって減った感染数とともに、PCR検査も増えなかった。 これが、統計の歪みをつくっているのではないか、と疑っています。 はじめの急激な増加を基準に、その後も続くだろう、と統計と疫学モデルで計算された数値に実際は到着しませんでしたし、そこまで上がることはなかった。 そのために、R値が下がったような印象がでている。 これは、計算しないと実際のところはわかりません。 今、モデル計算をしているチームに頼んで、計算してもらっているところです。 どのような結果がでるのか、、とても楽しみにしているのですが、、、、  ロックダウンに意味がなかった、という説に対抗する材料は、いくつでもあります。 私的には、これは、全く見当違いな意見だと思いますね。  
ここで気をつけなければいけないのは、、、これは、よくある誤解なのですが、統計的なR値が、上がったり、下がったりして、山をつくると思っているかもしれません。 感染者数のグラフはそうでしょうが、R値は感染者数ではありません。  R値が1になった時点で、一定期間中での新しい感染者は持続します。 つまり、一人が、4日間の間に感染させる。 一人だけ。 この状態では感染は停止しないのです。

ロベルト・コッホ研究所の数値を、詳しく分析して、客観的に他の数値と比較するならば、ヘルムホルツ協会のモデルもありますよね。

そうですね。ヘルムホルツ協会は、公式見解を発表しましたが、その中には独自モデル計算だけではなく、国際的なモデルも含まれています。ここでは、2つの方法がある、と提案されています。1つ目は、再生産数を1、理想的には1以下、でキープする。この場合、長期的にみて、感染者数は増えないのでコントロールが可能です。2つ目は、数値をもっと劇的に下げる。 ここでは、あと数週間のロックダウンによってR値を0、2まで下げることが可能だ、とあります。 このことによって、中期的に感染を小さくし、ほとんど封じ込めることができるのです。 もちろん、理論的に、ですが。

計算上では、感染者の5人に1人が次の1人に感染させることになりますよね

そうです。そうなれば、ドイツでは終息するでしょう。 この2つを検討してみたいのですが、このR値0、2計画については、、、実際には容易ではないであろう、ということ。 というのも、特殊な環境での感染、介護施設や病院などでの、隠れた感染は続くからです。 このためには、接触制限などを、この特殊な分野でも強化しなければいけませんが、これ自体は、病院衛生学などの効果的な医学分野でのノウハウなどがありますから、可能だと思います。 しかし、社会はこちらの方法を選びませんでした。 もう接触制限を続けたくない、という声があまりにも多かった。 緩和を要求する声、です。  ですので、今の目標は、R値をみながら、1にキープする。 みる、といっても、どこをみるのか。 私たちがみているのは、検査結果です。 検査結果の経過はみえます。しかし、これでははっきりしません。ここが問題です。 別の問題は、、、私たちの目標は、集中治療のキャパを超えない、ことです。もし、R値が1で、感染者数が持続するならば、、、感染者の年齢分布が移っていって、高齢者の感染が増えるでしょう。つまり、感染者数は同じですが、年齢層が上がる。そして、これは、重症者が増える、ということにつながります。 集中治療への負担がかかります。 ここを忘れてはいけません。
そして、この医療への影響がでるのは、感染からある程度の時間がたってからだ、ということです。 そのような面からみても、2週間単位でみていくのは、少し短すぎるのではないか、と感じています。2週間後には、何人新しく感染したか、ということしかわかりません。 重症患者の把握、どれだけ集中治療が必要になってくるか、ということまでには、1ヶ月の期間を有します。 R値をみるよりも、この重症者の割合の変化をみていかなければいけません。 そこまでで1ヶ月です。 しかし、今、議論の周期は、社会面でも政治面でも、2週間。多分、この周期で評価するのははやいと思います。もう少し、長く待った方がいいのかもしれません。

何かを決めるのには早すぎる、ということですね。 重症患者、というキーワードが出ましたが、ハイリスク患者にとっては、ワクチンはとても重要なテーマです。 一昨日、ドイツで初めての人間での臨床試験が許可されましたが、北京のワクチン開発が注目されています。 ここでは、副作用ではなく、効果の検証の段階まできています。 まだ動物実験ですが、簡単に言うと、、8匹のアカゲザルにワクチンを打ってから新型コロナウィルスに感染させましたが、これは、不活化ワクチンです。 破傷風ワクチンのようなもの、という理解でよいでしょうか?

そうです。 ここで試されていることは、かなり前から実験されていたのですが、今、データがまとめられて論文として発表され注目されています。 そのことに関しては、この場でも取り上げました。 不活化ワクチンは、ワクチンのなかでも一番簡単な方法です。 ウィルスを、細胞培養で成長させ、殺す。この場合は、化学薬品を使っています。そこに、アジュバンドを加え、ワクチンをつくるのですが、このようなワクチンの効果は確かではありません。 以前の回でもお話ししましたが、このような不活化ワクチンが、免疫の過剰反応による病症の悪化を引き起こす事があるのです。
ここまで熱心に学者間で議論される理由は、不活化ワクチンがとても簡単につくることができるワクチンの種類だからです。本当に簡単なのです。 ウィルスをとって、細胞培養にいれてつくって、ワクチンをつくる。 適用されるために臨床試験をはじめる。 これは、どんなワクチンの開発よりもはやくできます。 もし、これが効く、ということになれば、他の不活化ワクチンの経験から使えるものだということが容易に想像できます。 少なくても、はじめに使えるワクチンの選択肢として、このようなものはありでしょう。 しかし、ドイツやアメリカでは、このような不活化ワクチンは選びませんでした。なぜなら、リスクも大きいワクチンの種類だからです。はじめから他の種類のワクチンの開発を選択したのです。

先ほど、はやく、とおっしゃいましたが、今ままでは、どんなワクチンでも少なくても12〜18ヶ月はかかる、ということでしたが、このリスクがある方法でもでしょうか。

不活化ワクチンは、元となるウィルスはすでにありますから、速攻でつくることができます。ウイルス分離株です。 ワクチンの開発で一番難しいことは、許可がおりてからワクチンを大量につくらなければいけない、というところです。 大量とは、、、何百億個もの量を、です。

簡単だ、とうことは、あまり設備が整っていない国で、でもですね。

そうなのです。簡単につくれなけばいけません。大量につくらなければいけないのであれば、簡単な製造法を選んでもよいのではないか。ポリオや小児麻痺のワクチンのような。 このワクチンは発展途上国でもつくることができます。しかも、同じ生産細胞株でできます。獣医学の動物用ワクチンで、です。 そのような理由から、不活化ワクチンはどんな国でも同時に大量につくることができます。 しかし、異論もあります。あまり良い経験はこのタイプのワクチンではしていなくて、特にコロナウィルスの不活化ワクチンでは先ほども言ったような、免疫強化による症状の悪化があるからです。 しかし、この中国の製薬会社、シノヴァックと言いますが、試験を続けました。これは、サイエンスにも記事になりましたが、今、はじめの結果がでてきています。 動物実験で、この免疫強化が認められるかどうか、ということと、人間での臨床試験がはじまっている、ことと。 そして、どうして、この選択をしたのか。 それがここに書いてあります。 動物実験の段階で、問題となる副反応はおこりませんでした。 まずは、ウィルスをつくって、げっ歯類で試すことからはじめました。ネズミやラットです。 ここでは、良い中和抗体ができています。 そして、このネズミに2回、初日と7日目にワクチンを投与し、そこで、抗体の増加状態をみました。 結果は、かなりの量の中和抗体が確認されました。 しかし、このようなげっ歯類での実験では、そもそも良い結果がでるものです。確認のための負担感染をした場合でも同じです。ここでは、、げっ歯類での実験は続られていませんが、この理由は簡単で、このウィルスは、げっ歯類ではほとんど増殖しないからです。確認されたのは、抗体ができるかどうか。 そして、その次の段階の動物実験に移行しています。 アカゲザルです。 4匹の猿に、、人間に不活化ワクチンを打つように、初日と7日目、そして14日目。1週間後ずつ、の合計3回、ワクチンを与えています。 3回打つのは、多くの人間用の不活化ワクチンの場合でもそうです。 ウィルスを使った不活化ワクチンには、3つの予防接種期間というものがあり、1週間目、2週間目、3週間目。これは現在でも同じで、その後14日後、そして2ヶ月後。 そのような間隔のこともあります。 これはそれぞれのワクチンの経験値から決まりますが、ここでは、1週間目と2週間目と3週間目に投与されています。 ここでとても良い抗体ができていましたが、げっ歯類よりは量は多くはありませんでした。しかし、この結果は予想範囲内です。 人間への感染時も、その点では量的には多くありません。 実験では、2つ異なる分量が選ばれていますが、、、この詳細はここではあまり重要ではありません。 2つのグループのうち、1つのグループは多く、もう1つは少ない量のワクチンが使われました。そして、そのあと、ウィルスで負担感染がおこなわれたわけですが、これは人間では自然におこる感染環境で絶対にありえない量の、億単位のウィルスを管で直接気管に入れます。麻酔を使います。とても特別な動物実験です。 私自身は、いままでの職務経験のなかで一度も動物実験したことがありません。立ち会ったことすらありません。これは特殊なワクチン開発の分野です。猿による実験は最終手段なのです。 聞いている方々が、研究所では常にそのような動物実験が行われている、と思ってしまうかもしれませんので、念のために言っておきますが、このような実験は本当に例外的で最終の手段です。猿が4匹だけ選ばれた、というところかもわかると思います。 ネズミでは、平均値を出すためにもっと多い数を使います。

そして、確認のためのグループもいたんですよね。使われた猿は8匹、とのことでしたので

その通りです。確認のためのグループもありました。こちらも感染させ、ウィルス量が多かったグループと少なかったグループ、どちらにも防止効果が認められました。この高濃度のウィルス量、人間が接触する可能性はない分量、に対してでも、です。少ない3mgグループ、ミリグラムはプロテインの濃度の単位ですが、そちらのほうでは、少しウィルスの増殖が観察されました。 負担ウィルスによってですが、ここから病気に発展する、ということはありませんでした。 そして、この猿は解剖されました。 麻酔を打って殺して肺の状態を確認し、その他の臓器の検査もくまなくされています。命を犠牲にするわけですから、ワクチンの開発に必要なすべてのデータを漏れなく集めなければいけません。 ラボでの検査ではウィルスの反応はあったものの、肺は完璧に防御されていたのです。 高濃度のワクチンのなかからは、全くウィルスは発見されてませんでした。少しの増殖もみられなかったのです。そして、免疫強化の兆しもありませんでした。ここもきちんと確認されています。他のコロナウィルスからつくられた不活化ワクチンの例でみられたような、抗体依存性感染増強はここではありませんでした。

免疫システムの危険な反応、過剰反応ですね

そうです。学者としては、他の部分も客観的にみていかなければいけませんが、ここでは、すべての論文内容をまとめたわけではありませんが、他に興味深い点は、この中和抗体は、世界中のウィルスタイプにも効果があるかどうか、ということ。 というのも、ウィルスは進化して分岐しているからです。 結論は、、、世界中のウィルスに効果がある。 この結果を前に、驚きは隠せませんでした。ワクチン開発業界はもちろんのこと、そして、社会でも議論が勃発することでしょう。 不活化ワクチンは開発速度がはやい、といっても、そこまでの差があるわけではありませんから、きちんと詳細をみていかなければいけません。 種となるウィルスから、動物実験に使えるワクチンの準備をするにも時間を有します。しかし、製造する体制が世界中、特に発展途上国にもある、ということ。獣医学の分野でもそのような設備はありますから、これは、この方法のかなり大きなメリットではあります。

ということは、許可がおりてからが、はやい、ということですね? 生産面でメリットがある。

大量生産、億単位での生産を、世界中で同時にはじめることができます。 どこか2つか3つの国、製薬会社の本社がある国のなかでつくられて、売られる、というのではなくて、世界中のつくる環境が整っている国で可能。 ノウハウは難しいノウハウではありません。多くの国がこのノウハウを持っています。

はじめに挙げたドイツのワクチンは、遺伝子組み換え法でつくられたものです。 素人的に考えると、様々なSars-Cov-2のワクチンが最終的にはできる、ということでしょうか。

ドイツのような国では、そうなるでしょう。 たくさんの異なるワクチンの種類が来年の段階でできると思います。もしかしたら、はやいものでは、1年後の今の時点よりもはやくできているかもしれません。 詳しいことは言えませんが。

でも、希望はありますよね。

私はワクチン開発者ではないので、専門ではありません。ウィルス学はここでは問題の中心部にいる、ということになるでしょうか。 片方には、疫学から数学的なモデル計算、そして、もう片方にはワクチン開発、と。 これらはすべて専門分野です。 ウィルス学者は、少しずつ、すべての分野を理解することはできますが、これですべてなわけではありません。 様々な異なるワクチンができることでしょう。 ドイツで臨床試験が始まったのは、この幅広い方法のなかの一番端に属するタイプのワクチンです。 とても高度なハイテク技術が必要で、期待はもちろん持てます。しかし、不活化ワクチンのように世界中でつくれるか、というとそうではありません。

先生の研究についてお聞きしたいと思います。 先ほど、専門的は少しかぶるところはあるけれど、ワクチンの討論のどこかの部分で専門的には限界だ、と。 シャリテのチームでも、大きな問題の解決に努めていらっしゃいますよね。 どうして、軽症が多いのか。どうして、濃厚接触をしても感染しないひとがいるのか。シャリテでは、制御性T細胞の役割についての研究をされています。つまり、免疫を守る血球です。どのような結果がでましたか。

ここでも、免疫学、という専門分野があります。これもウィルス学と一緒ではないので、私たちは部分的にこの研究に参加しました。 この研究は、シャリテのアンドレアス・ティールの研究室のもので、とても興味深いことをしています。 ヘルパーT細胞の新型コロナへの反応です。ちょうど、完治したばかりの患者では、抗体ができているだけではなく、、、後天性免疫ですね、T細胞もあるはずで、細胞免疫が抗体形成に影響し、これを修正しているはずなのです。しかし、このことは、普通の抗体検査では検査することができません。 公でよく議論されている抗体検査は、簡易テストです。勿論、大量に簡単に検査することができる利点はありますが、後天性免疫をもっと詳しく検査する方法は別です。 どうするか、というと、、、ラボで、人工的にSars-Cov-2ウィルスから、ペプチドを合成しますが、このペプチドの大きさは、ちょうど、T細胞の表面に付着し、T細胞に認識されるのに適しています。認識する時にシグナルが発せられるのですが、これを測ります。このようなT細胞の反応は完治した状態ではあるはずです。
その他で知りたかったことは、まだ感染していない人ではどうだろうか、ということです。 それを、このエピデミックが始まる前に採取されたT細胞で検査したところ、、結果は驚くことに、、、まぁ、専門家的にはそこまで驚くことではないでしょうが、、34%の割合で、反応するT細胞がSars-Cov-2の感染がないにも関わらずあったのです。 ここで、違うウィルスのなかで、似た様なT細胞の反応部分を持っているものと言えば、、、風邪コロナウィルスです。 人間の風邪コロナウィルスには4種類あります。 実際、この風邪コロナウィルスには、似た様な部分があるので、このSars-Cov-2と少し共通する部分が、T細胞を刺激するのではないか

では、もしかしたら、風邪が隠れた免疫になってるかもしれない、ということですね? 風邪コロナウィルスに感染していたら、、Sars-Cov-2にかからないかもしれない、、

そうかもしれない、ということです。 確実に言えるのは、このような隠れた免疫が原因である可能性がある現象が34%あった、ということが、イコール、国民の34%が免疫を持っている、ということにはならない、ということです。 70%の集団免疫から、この34%を引けばいいのではないか。これで、パンデミックは終わる。バンザイ! とは残念ながらいきません。

残念です。

そういうことではないのです。 典型的な早とちりです。私たちがいままでの経験でわかっていることは、このウィルスによって大勢の死者がでている反面で、とても軽症ですんでいる人もたくさんいて、無症状の人もいる、という事実。どうして、軽症ですんでいるのか、という理由を知りたいのです。1つの理由には、ウィルスの量が少なかった、ということがあるかもしれません。それと、全体的な条件がよかった。この推測は全て正しいかもしれません。 そして、今、話していること、どこかに隠れた免疫がある、ということも関係している可能性はあります。 しかし、それでも、数多く亡くなる感染者がいる事実は変わりません。これが現実です。この現実のなかにこの隠れた免疫の可能性がはいっているのです。そのことを実感しつつあります。

例えば、私が数人の家族と同居していたとして、他の家族が全員感染しても、2人感染しない。 この場合、もう感染しない、と

そうですね。世帯内での二次発病率は、15%くらいなのです。ある一定の期間内での観察結果ですが。 どうして、全員が感染しないか、という原因の一つには、隠れた免疫があるのではないか、ということが考えられてますが、この一定期間内にそこまでの接触がなかった、ということも十分考えられます。 それと、偶然、その期間内に感染するまでのウィルス量をもらわなかった。 それか、あとの段階で結局感染する。 このような統計的な原因もあるでしょうね。 勿論、このT細胞免疫は防御効果があります。 この間、イタリアの村の話をしました。患者の半分が無症状だった、と。ここで、やはり、どこかに隠れた免疫があったのではないか。 しかし、ここで言っておかなければいけないことは、症状があっても無症状でも放出するウィルス量には変わりがないこと。 このことによって、感染拡大には影響はありません。
まだ一つ言わなければいけないことがありますが、、、T細胞の活性化は、病症の悪化に繋がるケースもある、ということです。この点についてもまだ詳しいことはわかりませんが、現時点での興味深い免疫学の観察結果です。 今から始められるこの研究によって、いろんなことがはっきりしてくるでしょう。 例えば、家族全員のT細胞を集めるて、だれがこのなかで感染するか。そこで、感染したひとのT細胞はどのような状態だったのか。 感染しなかった人のT細胞はどうなのか。

一人一人のレベルで考えてみると、、、家族と住んでいるとして、父親が感染し、子供2人が多分軽症だけれども感染した。母親は感染していない。そのような場合には、母は感染しない、という可能性はあるわけですよね? ということは、感染はしていなくても、おじいちゃんおばあちゃんに会いに行く、ということも考えてもいいわけでしょうか。それとも、仮説すぎますか。

そうかもしれませんが、そうではないかもしれません。母親が無症状で感染した、ということはあるかもしれません。 このすでに存在するT細胞が、抗体をはやくつくる影響を及ぼす、ということもわかっています。 患者のなかには、病症は同じでも、とても高い抗体量、力価と、低い力価の人がいます。 ここでも、隠れた免疫効果に関係がしているかもしれませんし、幅広い中和抗体のバリエーションにも理由があるかもしれません。 もともと抗体があれば、中和抗体によって早く治るのかもしれないのです。

感染するか、しないか、という結果はまだでていないのですよね

でてません、でてません。そのような誤解を避けるために、なんど言っていますが、このような簡単な科学的な情報からは、エピデミック状態とドイツのパンデミックの運命を決める様なことはできないのです。

今日もどうもありがとうございました。 来週からは、週に2回の放送になります。というのも、このポッドキャストはただおしゃべりをしているのではなく、きちんとした準備のもとに発信されています。 ドロステン教授にも、研究などにも専念していただきたいですし、ポッドキャストや研究以外にもお時間は必要でしょう。そうですよね?

初めは、基礎的な話をしていましたので、準備などしなくても問題なく話せていました。しかし、今は、特に新しい論文の内容などについては、自分でもしっかりと分析をして準備をしなくては見解はだせません。そして、それを殆どの場合、ポッドキャストの前の晩にすることになるので、、、昨日も、夜中まで読んでましたから、寝不足で今日も話している際に集中力が続きませんでした。 ですので、このままの頻度では続けていくのは難しい、と理解しての決断ですが、私はこれからも、このポッドキャストのクオリティを高く保っていきたいですし、学術的な内容にしたい。 そのためには、前よりも準備の時間が必要、ということなのです。 どんどん発表されていく新しい論文の分析などを考えると、、、週に2回以上は、高いクオリティの内容での持続は、、無理なのです。

そうですよね。私たちも夜中まで打ち合わせのメールのやりとりもしていますし。 一回分の放送時間も前よりも長くなっています。 これで、このポッドキャストが終わる、ということではありません。 回数が少なくなっても、続けていただけますよね?

勿論です。 このポッドキャストは、とても重要だと感じています。このコミュニケーションツールは今後も使っていくべきです。 パンデミックの間には、様々な変化がおこるでしょう。最新の科学知識の要域でもっとたくさん話し合わなければいけないことがでてきます。 何に意味があって、何に意味がないのか。 このことを知ることが重要な判断の基準になるのです。

また来週よろしくお願いいたします。


ベルリンシャリテ
ウィルス研究所 教授 クリスチアン・ドロステン

https://virologie-ccm.charite.de/en/metas/person_detail/person/address_detail/drosten/




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