ドイツ@Sars-CoV-2 コロナウィルスアップデート(110) 2022/2/16(和訳)
フランクフルト大学病院 ウィルス学教授、サンドラ・チーゼック
聞き手 ベーケ・シュールマン
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増える一方だった7日間の平均発生指数が初めて3日間続けて減少しました。本日の値は1437、5です。これは折り返し地点とみても良いのでしょうか。ラウタバッハ保健相は、流行のピークは過ぎた、として、今後は対策の緩和がされていく、とのことです。徐々に行われる緩和の詳細は、州首相会議で決められることになります。対策の解除を3月中旬に行う、というのもそのなかのひとつです。そのような対策の緩和は、科学的な視点からみるとどうなのでしょうか。ドイツでのBA2の拡大状況はどうなのか。ワクチン義務は必然なのか。今日も、フランクフルト大学病院、医療ウィルス学教授、サンドラ・チーゼック先生にお伺いします。聞き手はベーケ・シュールマンです。
三日間連続で7日間平均発生指数が12月以来初めて下がりました。しかし、実際にコロナに感染している人が少なくなっているのか、それとも見落とされているだけなのか、その辺りのことは明らかではありません。例えば、ラピッドテストで陽性になった場合にその後でPCR検査をしなければ、陽性者として登録されないわけですが、それでも全体的には落ち着いてきている、という印象を持つ人が多いのも確かです。大学病院でもそのような印象でしょうか?収まってきた、というように先生も感じていらっしゃるのでしょうか?
私の周りで言うと、、フランクフルトで、という意味ですが、、ここでは数は明らかに減ってきています。そして、知人友人の間でも感染している数は減っていますし、病院でのルーチン検査の結果でも同様です。病院では定期的に全員検査をしますし、学校でも同じように検査が行われていますので、現在の減少傾向は単に統計が追いついていない、というようなことではなくて、実際に感染者が減ってきているのだと思います。勿論、どこの州か、というところでも差はあるでしょうし、増加傾向にある地域もありますが、ここでは明らかに減少傾向にありそれは勿論喜ばしいことです。
ということは、病院でも大学病院でも落ち着いてきている、ということですね?
まだ完全に落ち着いてはいません。たしかに、欠勤するスタッフが減ることによって、シフトや業務内容に余裕がでてきますから、それによって落ち着いてくるのですが、入院患者の数は変わりません。今回の流行において以前と違う点は、院内での感染、偶然に発見された感染が多かった、というところです。つまり、別の疾患で入院した患者が検査で陽性だと判明した場合などです。そのような場合でも隔離されなければいけませんが、問題はどこに移すべきなのか。例えば、眼科、精神科に残るのか、それとも感染病棟に行くのか。これも簡単なことではありません。病院にはまだまだ大勢の患者がいます。それでも、全体的には増加傾向にはありませし、地域によっては下がってきています。
今、緩和についての議論がされていますが、どのような形でどのタイミングで行われるか、ということです。州首相会議でもこの点が話し合われることになると思うのですが、今の時点で対策を緩和する、というのはウィルス学的にみて正しいタイミングなのでしょうか?
重要な点ですね。政治は常に、現在の対策が妥当であるかどうか、どこを改正するべきなのか、という点を問い続けるべきですが、対策を解除する、ということを検討する根拠は、感染者数の増加が止まり、減少経過にある、というところです。オミクロンについてはもうかなり色々とわかってきましたので、臨床的な判断もつくようになってきています。実際に、オミクロンに感染して集中治療が必要になるケースはデルタに比べると明らかに少ないです。その理由は様々ですが、、ここでは割愛します。そうであれば、医療に負担がかかることなくやっていけるだろう、という見方からの緩和、という流れです。政治は常に国民に対しての義務があります。業界によってはいまだに対策による影響がありますし、大きな打撃もうけました。ですから、そこまで必要性のない対策を安易に続けることは無意味であり、そのようなことをすれば経済を脅かすことになるので、緩和が可能であるかどうか、という点を検討することが求められているのです。反論としては、このオミクロンの流行、、壁、とも呼ばれますが、、ロベルト・コッホ研究所とブロックマン氏が試算していたように、最高感染者数は記録を塗り替えました。このような高い発生指数は、2年前には想像もできなかったものです。そして、現時点でもまだ10万人あたり、1500の域ですから、例えば、今日の明日で全ての対策を解除したとしたら、この数値をまた完全に下げるためにはもっと長い期間がかかると思われますし、横ばい状態を促し、そこからまた増加する、というリスクも犯すことになりかねません。そうなれば、また様々なところ、例えば病院などに負担がかかってきます。先ほどの話に戻りますが、医師が病気になったり隔離になると、また手術ができなくなってきますし、それよりも現在多いのは、手術をされるほうが隔離中で手術をキャンセルしなければいけない、というケースです。ですから、病院にとって、発生指数が低ければ低い方が良い、というのは言うまでもありません。そして、勿論、免疫不全や抗がん治療によって十分なワクチンによる保護が得られていない人も多く存在しますので、感染者が多い状態では当然感染する確率が上がるわけで、そのなかで自分を守る、ということは大変困難であるのです。感染者数が低い場合と比べると、ウィルスと接触する確率が雲泥の差です。さらに、重要なのは、5歳以上のワクチン接種率がいまだに10〜15%である、というところです。保護者と子供達は感染から身を守るためにワクチンが必要です。5歳以下にはまだワクチンによる保護はありませんから、全ての対策を安易に一斉解除するのではなくて、少なくとも移行期間は必要だと思われます。高い感染状況下における学校は、混沌としています。学校も、感染者数が下がった方が、子供達の罹患率も隔離や自宅待機も減るわけですから明らかに運営が楽になります。いままでのことをまとめると、そこまで一目瞭然な状況ではない、と言えるでしょう。政治は様々な分野の意見を聞きながら妥協もしていかなければいけませんので、大変難しい課題であることは間違いありません。そういう面では、医学的な視点だけで考えるほうが明らかに簡単です。医学的には、感染者数が完全に下がるまでもう少し我慢したほうが良いですが、これらの点を考慮しながら、対策を調整していく、というのが今、政治に求められていることだと思います。つまり、対策を続ければ感染を減らし春をリラックスした状態で迎えることができるかもしれませんが、それが果たして状況的に適切なのかどうか。そのような点を今一度見直す必要がある、ということです。例えば、ヘッセンを例に出しますが、小売店内での2Gは解除され、FFP2の着用義務のもとに誰もが買い物ができるようになりました。これは意味のある対策の改正だと思います。オミクロンでは予防接種をしていても、ブースター接種をしていても感染のリスクはありますし、周りにうつす可能性がある、ということがわかっていますから、マスクを着用する、ということでそれに対する対策はできるわけで、そのように、オミクロンに対して何が一番良いのか、正しい方向に向かうために必要なことはなにか。全ての対策を見直していかなければいけないでしょう。
先ほど、医学的な視点からは、対策はもうしばらく続けるべきだ、と仰いました。どのくらいの期間だ、と思われますか?
私はモデリングの専門家ではありませんが、多分、、3月中旬までは感染防止対策は必要だと考えます。そうすれば数もかなり下がるでしょう。しかし、これもさまざまな因子で決まってきます。州によっても違いますから、早めに解除できる州とそうではない州がでてくるでしょうし、先ほども言ったように、全ての対策を同時に、ということではなくて、1つ1つを見直して、オミクロンではそれらが適切であるのかどうか。知見と照らし合わせてどうなのか。そのような点でも、FFP2マスクの着用、というのは理にかなっています。
連邦政府の専門家会議は、これから数週間の間の緩和の可能性がある、という見解を示していますが、それは、オミクロン株、つまりBA.1の流行が収まる見込みがあるからです。それと同時に、先を急いだ解除が再度の感染増加に繋がる危険性も指摘しています。さて、隣国であるデンマークに目を向けたく思います。デンマーク首相は、1月末に全ての対策を解除しました。例えば、マスクの着用なしでバスに乗ったり、距離制限なくクラブで楽しんだり、ということが可能だ、ということです。集中治療病棟の患者数は多くありませんが、発生指数は5400以上で、入院患者数と、Covid-19で死亡したケースもここ数日で増加傾向にあります。このようなことが、対策の解除とともにドイツでも起こる、と考えられますか?
今、シェイクスピアの「デンマークでは何かが腐っている」というセリフを思い出しました。大変興味深いことですが、デンマークや他の国のことをそこに住んでいない者が判断するのは大変困難だと思うのです。ですから、数とデータで判断してく他ありませんが、確かに、一見あまり良くない状況のようにもみえます。発生指数が大変高いです。ドイツでも、一気に対策を解除すれば明らかな感染の増加が起こるでしょう。対策の効果、特にマスクの着用は感染の多くを阻止していますし、例えば病院でも厳重な対策がとられています。デンマークの病院ではどうなのか、ということは私にはわかりません。デンマークの入院率は高く、ドイツと比較しても大変高いです。勿論、どのようなデータの出し方をしているのか、ということはわかりません。聞いたところによると、入院前の14日間に陽性になった場合もカウントされているようですが、そうなれば、例えば、精神科に入院した場合でも陽性であればコロナ患者としてカウントされます。入院理由が別の疾患であるのにも関わらず、です。そのように統計を取っている国はたくさんありますが、感染者数が多ければ、必然的に入院患者が感染している確率は高くなりますから、その点は考慮しなければいけないところです。集中治療をみると、数は減ってきていますが、ワクチン接種率が高いのにも関わらず、死亡者数は増えてきています。デンマーク国家血清研究所の表明によると、、ちなみにここはドイツでいうロベルト・コッホ研究所です、、この研究所が全てを公開し国民に大変良い情報提供をしているのですが、、ここで説明されていることは、ここ数ヶ月で特に75歳以上の超過死亡があった、と。それも、5週間目には下がってきています。さらに説明されていることは、死亡数の増加の理由として、統計の取り方にも原因がある、としていて、死亡者には、死亡した日から30日遡ってその間にPCRで陽性反応が出た人全てがカウントされているのです。数的には決して少なくはないでしょう。このようなことが偏りの原因になっている可能性はあります。それと同時に、2ヶ月前にコロナに罹患してその後遺症で亡くなった場合にはカウントされないわけです。どちらにしても、第4週目のコロナ死亡者の40%は偶然検査された陽性者だった、ということで数は修正されています。このリポートに目を通してみるのも良いと思います。とても透明性がありわかりやすく説明がされています。高い発生指数によって単純に大勢の人が感染しているために、デルタの流行時やその前に流行とは比較ができなくなっている。とはいっても、デンマークは訓戒としてみるべきだと思いますし、私にとっては、緩和は徐々に注意深くしていくべきである、という教訓です。というのも、全ての対策を解除すれば、2週間、3週間はうまくいくでしょうが、そこからまた急激な増加が起き、先ほども挙げたような問題、病院を初め、感染者が増えることによって起こりうる公共の問題です。デンマークをみてもわかるように、感染者が多くなると必然的に重症患者数も死亡ケースも増えていきます。オミクロンで重症化がすくなくなっていても、です。
先ほど、ドイツでも対策解除を急ぐと同じようなことが起こる、と仰っていましたが、3月に解除することになれば、デンマークよりも2ヶ月遅れての解除、ということになり、そこから夏効果がきますよね?
そうなれば良いな、と思っています。といっても、私は少し批判的に考えていて、3月にもう夏効果があるのか、ということです。3月の気温はまだ低いですから。天候で考えると、人々がまた野外に出ていく、というのはどちらかと言うと4月で、そこのほうが効果が上がると思います。3月は結構12月や11月よりも寒い日が多いような気がします。私は気象学者ではないですが、どのような気候になっているか、というところでしょう。そこでどこまで感染者数を抑え込んでいけるか、ということが決まると思います。
デンマークでは、オミクロン株のBA.2が急激に拡がっていきました。前回のドロステン先生とのポッドキャストでも取り上げましたので、この新しい変異株についてご説明いただいたところです。前回のポッドキャストの後で、ロベルト・コッホ研究所が新しい変異株リポートを発表しましたが、そこにもBA.2が含まれていて、ドイツ国内での割合は、8,1%です。年始には、1,5%でした。ドイツ国内でも、BA.2が優勢になる、と思われますか?
このウィークリーレポートでは、ドイツ国内でどの変異株がどのくらいの割合で存在するのか、ということがわかります。アルファ、ベータ、ガンマが0%、ということで、消滅していてここも重要なポイントです。デルタは、2%、ということですので、オミクロンに完全に押しやられてしまいました。オミクロンBA.1の割合は90%弱で、BA.2は8,1%。ここ数週間の傾向をみてみると、週ごとに大体倍増してきていますから、来週には15%くらいになっているのではないでしょうか。そうなれば、8週間、10週間のうちに優勢になる、という計算になります。多分、3月の頭か中旬くらいです。アメリカをみてみると、CDCも3月にBA.2が優勢になる、とみていて、ドロステン先生もご指摘されていたように、BA.2は、その感染伝播の速さと感染力が強いことがわかっていますし、これはまだデータが安定はしていないものの、潜伏期間もまたもう少しBA.1よりも短くなっているようだ、ということです。もしかしたら、BA.1よりはゆっくりかもしれませんが、確実に拡がることになりますので、今後のパンデミック的にどうなっていくのか、というところでしっかりとみていく必要はあると思われます。
BA.2が拡がっていくことによって、どのようなことが起こると思われますか?第二のオミクロン流行の波が来たり、現在の波が長引いたりするのでしょうか?
それは勿論、対策がどのくらいとられるのか、そして、人々の行動様式によると思います。対策が解除されれば、デンマークのようにBA.2が急増する、もしくは、BA.2が優勢になれば同じように高止まりしてそこからまた増加すると思われます。対策を持続するのであれば、増加には繋がらず、徐々に緩やかであっても減少していくと思います。
こちらのほうが、BA.1よりも感染力がある、ということが調査の結果わかっていますが、それに関しては、ドロステン先生が2週間前にお話ししてくださいました。しかし、その時にはまだBA.2が免疫回避型変異株なのか、適応メリットを持つ変異株なのか、そのためにデルタよりも速く拡がるのか、という点が不明でした。新しい知見はありますか?
そうですね。私の研究所にも BA.2分離株がありますので、私たちが現時点で観察していることについて少し説明できるかと思うのですが、今のところ、そこまで大きな違いはありません。つまり、 BA.1とBA.2の間に決定的となる違いが免疫回避にはなく、同じようなものである、という印象です。まずは、これは良いことだ、と捉えて良いと思います。さらに、オミクロンでの感染回復者やワクチン接種者がBA.2に対する中和抗体を持っている、というところも良いニュースだと思います。勿論、これは100%の保護ではありませんが、オミクロン感染によって、ワクチン接種者の免疫応答が刺激されてBA.2に対する中和抗体がつくられる。100%ではなかったとしても、です。つまり、オミクロンに感染した直後にBA.2にふたたび感染する、という確率は高くないだろう、ということですが、勿論、全く起こらない、ということはありません。そのようなことは医学においても例外ではありません。つまり、十分なウィルスの量を暴露し、ウィルスによるダメージが十分に起これば、例えば、基礎疾患などがあるなど、、そのような場合には感染は可能である、ということ。確率的に低くでも、です。これは、まだ発表されていないデータですが、別の研究チームも似たような傾向を確認していて、BA.2がそこまで大きな免疫回避は持っていないないだろう、と。これはどちらかといえば、私たちにとっては朗報です。
先生は、実際に病院などで、古いオミクロンに感染してから、再度BA.2に感染したケースを経験されたことはあるのでしょうか?
私はありません。しかし、イギリスでも、このような再感染に対する十分なラボや疫学的データがない、とされていて、シークエンジングで確認されたBA.1感染後のBA.2感染は確認されていない、ということです。勿論、これは、全員がシークエンジングされるわけではない、という事もあると思います。ドイツでのシークエンジングの割合は、全体の5〜10%ですが、今のところ、まだそのようなケースは出てきていません。それよりも多いのは、例えば11月にデルタに感染した人が、1月にオミクロンに感染する、というケースです。このようなケースはみたことがありますが、先ほどのケースはまだみたことがありません。勿論、みたことがないからといって、存在しない、とは言えませんし、全てのケースを調べているわけではないので確実はマーカーだ、とも言い切ることはできません。しかし、私が観察している限りでは、BA.1感染の後にすぐまた感染する、という傾向はみられない、と言えると思います。
ロベルト・コッホ研究所が詳しいBA.2の割合を発表できる、ということは、PCR検査の際に BA.1との違いが現れる、ということなのでしょうか?それとも、シークエンジングされなければわからないことですか?
通常のPCRでは違いはわかりません。変異PCRでわかるBA.1とBA.2の違いは、、皆さんもご存知の 69-70の欠失で、これがあるのはBA.1だけでBA.2にはありません。つまり、このPCRをした場合に、69-70の欠失がなければBA.2、もしくはデルタ、ということになります。デルタの割合は現在は大変低いので、別の鍵となる変異、、特定部の交換ということですが、、そこから、BA.1か、BA.2かデルタか、という区別をすることになります。しかし、シークエンジングもされます。例を出すと、ラボで検体が69-70欠失を持たない場合、つまり、BA.1でない場合には、念の為にシークエンジングされます。別の変異が起こっている可能性がありますから。そのような場合にはシークエンジングで確認します。
患者として、自分がBA.1に感染しているのか、それともBA.2なのか、ということを知っておくべきでしょうか?
難しい質問ですね。ミュラーさんとか、マイヤーさん、といった普通の患者であればそのような必要はないかと思います。しかし、ハイリスクの患者で、抗ウィルス治療が必要な場合、つまり、モノクロナール抗体が必要な場合には重要です。今、新しいモノクロナール抗体が出てきて、ソトロビマブ、という薬ですが、これはBA.1に効果があるものです。これについては話したことがあると思うのですが、このモノクロナール抗体、ソトロビマブが、BA.2に対してはあまり効果がない、というデータが出てきています。勿論、まだ初めのデータが出てきたばかりですのでさらなる調査は必要です。しかし、もしそうだ、ということになると、臨床家としてはBA.2に対しては別の抗体を使わなければいけなくなります。ソトロビマブのかわりにパックスロビド、とかですね。このデータはまだプレプリントですが、治療をする側としては全く関係ないこと、とは言えないのです。
疾患経過的にはBA.2感染はどうなのでしょうか?ワクチンとは関係なく、BA.2が、BA.1よりも軽症だ、とか、そのようなことはわかっているのでしょうか?そうだと良い、という希望的憶測ですが。
そうですね。私もみてみましたが、イギリスにもまだ比較に十分なデータが出揃っていません。それはここで言っておかなければいけないと思います。まだ初めのデータで、小さな規模での観察によるとほとんど違いはない、ということですが、まだここからははっきりとしたことは断言できません。ですから、今の時点では、まだ十分にデータが集まっていない、としか言えません。
どうして、 BA.1がデルタよりも軽症であるのか、という点に関しては、先生も調査をされていました。これは、実際に病院での状況をみてもそうである、という確信が持てるものだと思いますし、先生もそのように報告されていました。もう一度、どうしてオミクロン、BA.1がいままでのウィルスよりも軽症なのか、ご説明いただけますか?
最終的には、軽い、ということが言えると思います。論文によっては、細胞指向性が違う、という指摘がされているものもあり、つまり、どの細胞にオミクロンがより効果的に感染し、どの細胞にそこまで感染しないのか。ここが少しデルタとは異なる、というものです。動物実験でもあまり重症化しない、という結果がでていますが、これは、肺での複製があまりよく行われない、つまり下気道ではなくて、上気道のほうで起こる、ということとも関係があると思われます。これは、論文でも発表されていることですが、デルタはインターフェロン機能を阻害する性質を持っていて、、インターフェロンとは身体が自らつくるタンパク質ですが、これはウィルス感染の際の免疫応答に欠かせないものです。つまり、ここには特異性はありません。ウィルス感染時にその応答として身体が作り出すもので大変重要で、このインターフェロンがしっかりと機能しない場合、それが阻害されていたりしていた場合には、ウィルスの増殖が容易になりますから重症化につながる可能性が高いのです。インターフェロンは全てのウィルス疾患に対して重要な役割を持ちます。デルタとその前のウィルスでは、このインターフェロン応答をボイコットする、邪魔をすることができて、体内の警察のような防御機能から隠れることが可能だったのです。オミクロンにはそれができないようです。インターフェロン能力においての違いがあります。この違いは、オミクロンがデルタや他の変異株とは違ってこの性質を持ち合わせないからだ、思われますが、このインターフェロンはパンデミックにおいて、治療法として何度も議論されてきたものです。1年前、1年とちょっと前に、吸入インターフェロン、というものがある、とお話ししたと思うのですが、この点でも、インターフェロンアルファ、ベータ、とインターフェロンガンマがウィルスの増殖をブロックし抑制することが培養細胞において確認され、必要な量がデルタと比べても大変少ない、と。ここからも、インターフェロン機能が邪魔されていない、ということは治療的にも重要なことである可能性は大です。つまり、デルタの時にできなかったこと、必要な投与量が多くなかなか効果が得られなかったことが、オミクロンでは可能になる。そのようなことも考えられますが、勿論、これは培養細胞での話ですし、初めに出てきたデータです。この次のステップとしては、例えば、吸入でのインターフェロンの投与のほうがオミクロンには効果がある、デルタやアルファよりも効果的である、という点も調査していく必要があると思います。
そのようなことはプロセス的にどのくらいかかるものなのでしょうか?いつ、実際に病院で治療として使えるようになりますか?
それも難しい質問ですね。一般の方は多分、全く違うように想像しているのだと思うのですが、ウィルス学というのはほとんどラボでの研究が中心です。ラボで研究をして論文を発表します。そこからさらにその内容に興味を持って、臨床試験をやってくれる人が必要になってくるのです。そのような臨床試験は私たち自身はしません。そのような試験をするのは製薬会社であったり、臨床試験をするような大きな病院だったりします。臨床試験がされるかされないか、という点では、残念ながら、私たちにはどうすることもできないのです。ですから、誰か「お、これはなかなか良いデータだ。ここから臨床試験をやろう」という人が出てくるかどうか。これは私たちにもわからないことなのです。
オミクロン感染での子供の疾患経過については何か新しいことはわかってきましたか?アメリカ、スイス、イギリスで、子供の入院数が上がっている、というのは聞きますが、子供の入院率が上がっているのか、それとも発生指数があがったためなのか、というところです。しかし、私の知人友人から聞くところによると、子供の疾患経過は軽症だ、と言われてはいますが、少し鼻水が出るくらいでは収まってはいなく、数日続く高熱と嘔吐などの重い症状がでている、ということです。これに関するデータは出ているのでしょうか?
そうですね。まずは、基本的なところでの、この「重症」と「軽症」という定義が一般的に曖昧なのではないか、と思います。つまり、発熱と嘔吐で重症だ、と言っても、、勿論、子供にとっても保護者にとってもそのような状況は辛いとは思います。しかし、これは定義的には、Covid疾患の重症ではありません。それは成人でも同様です。「1週間熱が下がらなくて寝たきりだった。重度の疾患経過だった」と言う人は多いと思うのですが、これは、入院や酸素濃度の低下、といった定義ではありません。重度の疾患経過、と聞いて一般人が想像することと実際の定義には差があると思われますし、オミクロンがワクチン接種者にとっては、「鼻風邪」のような軽症である、と考えられているかもしれませんが、1週間熱が出て寝たきりになるのも、「軽症」に含まれるのです。世間では明確な「重症」の理解がされていないのではないか、と思います。 子供のデータを探したところ、イギリスのデータがみつかりました。1月末のケンブリッジデータには、大人のオミクロンによる入院リスクはデルタに比べると低く、10歳以下の子供でも同じようである、とあります。つまり、リスクは変わらない。まずは興味深いところですが、10歳以下では同じくらいで、10歳上から成人、高齢者では確率が下がっている。2月の頭に出たロンドンのキングス・カレッジのデータによると、オミクロンでは入院ケースが3分の1から50%まで削減され、症状も軽症で入院した子供達には重度の疾患はみられなかった、とあります。これは、、私の考えで検証はされていないので、、参考程度に聞いていただきたいのですが、、しかし、この子供達での違い、ここではほとんどが小さい子供達ですが、この入院しなければいけなかった子供達は別の疾患や症状があったのではないか、ということです。というのも、よく聞くのは、オミクロンが仮性クループが起こる、、これは、気道、もしくは上気道や気管支の狭窄ですが、小さな子供の気管支はとても小さくで細いのでそこでの狭窄や粘液などで塞がったりすることはもう少し年齢の大きい子供や大人と比べると起こりやすいです。この気道が小さくて狭い故に小さい子供のほうが酷い症状になる呼吸器感染症の数は少なくありません。オミクロンが実際に気管支での増幅がメインであるならば、この仮性クループになって気道が狭くなってしまい、それによって呼吸が困難になるでしょうから、勿論親は焦って病院に連れていくと思います。しかし、これは疾患としては別物で、本当の肺炎、ウィルス性肺炎や筋萎縮性側索硬化症などで入院する、つまり肺の疾患で入院するのは違います。このような疾患であれば、完治するまでに何中間もかかります。小さな子供は頻繁に気道に症状はでるものの、はやく治るのだと思います。これは、私がこれを読む限り受ける印象です。仮性クループが煩わしいことは確かですが、ウィルス性肺炎と比べれば容易に治療できるものですし、肺炎は肺に重度の炎症反応がおこって肺自身が変化してしまうこともあるのです。これが関係している可能性もあると思いますし、先ほども言ったように、この違いというものは症状にあって、どのような症状が出ているか、というところにあるのではないか、というのが私が受ける印象です。そこから、オミクロンの感染が軽症であっても、小さな子供が病院に行く機会が増えている、という現象につながっているのではないか、と思います。
ワクチンによる保護と疾患、そして、ワクチン義務についても今日は取り上げていきたく思うのですが、あらゆるところで激しく論争になっているところです。そこで、純粋にウィルス学と医学的視点からお伺いしたく思っていて、許されるのであれば、法律的な部分や政治的なところは別にしたく思うのです。そして、ここ半年のおさらいもしていこうと思いますが、ロベルト・コッホ研究所は2022年の秋に新たな流行の波が来るであろう、としています。ということは、ドイツではパンデミックはまだ終わらない、エンデミックにはならない、ということです。これは、ワクチン未接種者の数、特に60歳以上のワクチンを打っていない人たちに関係するのでしょうか?
お答えするのは難しいです。一読の価値があるのは、イギリスのSAGE、Scientific Group for Emergencyのレポートです。これは説明するよりも、ゆっくり目を通して考えていただいた方がより良いと思います。これはワクチン接種義務を考える際にも重要になってきます。因みに専門家会議がまとめていた内容には私も賛同するところです。ワクチン義務、というものは純粋に政治的な決断だ、というスタンスは明確にしているものの、要求すべきところは、免疫の漏れ穴を無くしていくように努めるべきである、とういうこと。これが目標です。もう一度、先ほどのSAGEのレポートに戻りますが、ここでは4つのシナリオが提示されていて、、今後の18ヶ月の間ともう少し長期的にみたシナリオです。4つのイギリスにおけるパンデミックの経過シナリオですが、これはドイツに他の国にも当てはまると思います。全てのシナリオに共通するのは、これからもSARS-CoV-2は循環し続け新しい変異株が出てくるであろう、というところですが、このウィルスが消滅しない、ということは確かだと思いますし、これはもう世間でも理解され受け入れられていることだと思います。ウィルスを撲滅することは出来なくて、共存していなかければいけない。病院も、新しいウィルス性疾患が出てくる、ということを想定して計画をたてていかなければいけませんし、これからどのようにパンデミックが発展していくのか、というところを考察していく必要があります。ここで挙げられているシナリオは必ずしもその通りにならなければいけない、というものではなく、あるシナリオから、別にシナリオに移行する可能性がある、という理解です。シナリオには、ベストケースとワーストケースと、その中間のものがあって、全てのシナリオで、これから2年から10年の間に定期的に起こるパターンというものができてくるだろう、ということ。今、全ての対策を解除したとしても、ウィルスが無くなることはありませんし長期的な問題は存在し続けます。この点がこのレポートの良いところで、少し時間を取って読んでみる価値はあります。とはいっても、これからの数年間、どのようになっていくか、ということは誰にもわかりません。アルファとデルタの流行は、感染力が増加したことによって起こりましたが、これから将来的に出てくるであろうと思われる変異株はそれよりも免疫回避型なので、免疫の削減も重要なポイントになってきます。そのようなことを考慮すると、3ヶ月ごとにワクチンが必要になってくるのか、というところにも辿り着きますが、ここでの問いは、これから2年後、3年後に誰もコロナのことを話題に出さなくなった時にどうなるのか。例えば、インフルエンザのように毎年ワクチンを打つことになるのか。この点については、このレポートでは、その時点でどのような変異株が同時に循環しているのか、というところが重要になる、としています。つまり、デルタやオミクロンと同時にどのようなウィルスが存在するのか。いままでは、新しい変異株がそれまで循環していたウィルスを押しやっていくかたちで置き換わってきました。しかし、今後は2つの異なる変異株が同時に存在する可能性、つまり、デルタとオミクロンなどが両方残っていく。これはグローバルな免疫的な問題でもあって、世界的にはワクチン接種率が低い国々が存在し、そこではまだデルタが循環していますし、ワクチン接種率が高い国々ではオミクロンが循環する。さらに、フィードバックループというものがあり、それも実際に起こっています。つまり、世界的に感染が拡大すれば、ウィルスがさらに変化する確率が高くなる、ということです。感染者数が増れば増えるほどウィルスの変化が起きやすい。そしてそれが更なる感染を生みます。これがループとなっていき、今、オミクロンでもみられていることです。後は、世界全体でのワクチン接種が大変重要だ、というところも指摘されています。これに関してはもうこの場でも何度に話してきました。さらに挙げられていることは、4つの因子がこれらのシナリオに重要な意味を持つ、と。まずは、どのような変異株がこれからできていくのか。つまり、新しい変異株での免疫回避はどのようになっていくのか、というところです。伝播性はどうなるか?高くなるのか低くなるのか?病毒性はどうなるのか?オミクロンのように軽くなっていくのか、それともデルタのように重度の疾患なのか?それ以上なのか、それ以下なのか?もう一つの重要な因子は、どのくらい抗ウィルス性の医薬品の効果が持続するのか。効果がまだあるのか、それとも耐性ができてしまうのか。さて、ここで展開されているシナリオですが、ベストケースのシナリオは、今現在の変異株と同じ伝播性と同じ病毒性、免疫回避がほとんどなく、抗ウィルス剤が効く、というものです。そうなれば、12ヶ月、18ヶ月後の秋冬にもそこまで感染がぶり返さない。これはロベルト・コッホ研究所も予測を立てていますが、重症患者もあまりでないだろう、としています。これが、シナリオのなかでも一番ベストなものです。これは例えば、抗ウィルス剤の効果がまだある、ということが前提です。 2つ目のシナリオはこれよりも少し悲観的、もしくはそこまで楽観的ではない、と言っておきましょうか。ここでは、同じ伝播性、同じ免疫回避、同じ病毒性であれば、毎年感染流行はおきるものの、良い年と悪い年があるだろう、と。良いか悪いか、は出てくる変異株によります。デルタ寄りなのか、オミクロン寄りなのか。この場合には、高齢者や免疫不全、そしてワクチン未接種者が重症化します。毎年のハイリスクへのワクチンは必要になってきます。特に悪い年、つまり激しい感染流行が起こる年、です。さらに、非医薬的介入が必要な国も出てくるでしょう。このシナリオでは、抗ウィルス剤の効果がそこまで望めない、もしくはコンビネーションされなければいけないことを前提としていて、そうなれば、これから定期的に季節的な感染流行が起こり、今のオミクロンのような流行が続く、ということです。これらの2つが楽観的なシナリオです。シナリオはまだ2つありますが、よくみてみるとわかるように、変異株のなかには伝播性が上がっていたり、より強い免疫回避があったり、というものもあるわけです。その際に重症度は変わらない、というシナリオが3つ目のシナリオです。この場合には、いくつかの国ではもう少し厳しい非医薬的介入が必要になってくるでしょう。高いワクチン接種率が必要になりますから、そうなれば毎年対応された予防接種を接種する必要性が出てきます。4つ目のシナリオはワーストケースで、大きな感染の流行が起こり、重度の疾患が幅広い年齢層で起こります。一番ダメージが大きいのは十分に保護されていない層です。このシナリオで重要なのは、今、全てを解除してしまいたい、という希望とのジレンマがあるからで、「もう終わった」「ワクチンを義務化する必要はない」「元の暮らしに戻りたい」と思っても、そう簡単にはいかないのは、コロナがなくなることはなく、ずっと私たちの暮らしの一部になり続けるからだ、と言わざる得ません。興味がある方は、ぜひこのレポートに目を通していただきたく思います。そうすれば、何を意味するか、ということが理解できるかと思います。免疫の漏れ穴をどうしても埋めなければいけない理由は、そうしなければ、延々とループに陥るリスクを冒すことになる。何度も何度も同じことをまたゼロから繰り返さなければいけないことになるからなのです。また対策による制限も再度起こります。ですから、この4つのシナリオからも世界規模での免疫獲得が必然であることがわかると思います。それはアフリカなどでも同様です。これらのシナリオからもワクチンが重要な鍵となること、可能な限りの楽観的なシナリオに達するためにもそれは不可欠です。全てのシナリオは、これから私たちが人生のなかで何度かウィルスとの接触をするだろう、そしてそれを阻止することは出来ない、ということが前提となっています。そして、そうはやくは終わりは来ない。世の中では、多くの人が「ワクチンを義務化するのはもう遅いから意味がない。パンデミックが終息するから」と思っているように感じますが、これらのシナリオについて少し考えてみるとわかるように、これはそう簡単に終わるものではなくて、完全に安定した状態になるまでには2年から10年かかる、ということ。私は、このような案をもっと多くの国、もっと多くの科学者が提案していくことを望みます。これからも続いていく、という現実から目を背けることは出来ない、ということを自覚させてくれるものだからです。病院、政治、保健事業もそれに対応していく必要がありますし、勿論準備をしていかなければいけません。これはまだ現時点では起きていないことです。今されていることは、今だけ良ければ良い、短期的に流行を落ち着かせることができれば良い、なんとか乗り切ればそれで良い、というその場凌ぎのやり方であって、中期的、長期的な計画というものが完全に不足しています。いままでの状況から、そのようなことを考えている余裕はなかったのかもしれませんが、必要なことです。免疫の漏れ穴もそうですし、多くのウィルスの循環を許せば変異株が出てくる確率が高くなりそれに従って問題も起こります。これは直接はワクチンの義務化には繋がらないかもしれませんが、ここではっきり言っておきたいのは、免疫の漏れ穴を埋めていくこと、世界規模で埋めることの重要さ、です。先ほど、「どのように解決していくか、というのは政治の課題である」ということでしたが、実際に「オミクロン感染をしてもデルタ感染に対する保護効果がない」というプレプリントや論文はいくつも出てきています。中和抗体をみてみても、デルタに感染する、というデータがでているのです。これは、またデルタが増える環境をつくる原因、デルタが同時に存在する環境をつくることになります。これを阻止するには、できるだけデルタに対する免疫をつくっていくこと、デルタにチャンスを与えないことです。そうしなければ、本当に、、永遠と続くループに突入してしまいます。
これはワクチンの義務化に対する論拠でもありますね。
ワクチンの義務化の理由、ではなくて、免疫の漏れ穴を埋める、ということに対して、です。私は個人的には、義務化はしなくても良いのであればしない方が良い、と思っています。納得してもらうほうを優先しますし、これがその人にとって正しい方法であること、社会全体にも、パンデミック的にも重要であることを理解してもらいたいのです。義務化をする前に、もう一度説明と相談をする機会を十分につくってもらいたく思います。私のところに来るメールをみても、やはり、不安に思ったり相談する相手がいない人たちもまだ多いと思うのです。そのような人たちが、私のようなところにメールをしてくる、ということは、そのようなことすら出来ずに、誰にも相談できないでひとりで悩んでいる人がどのくらいいるか、ということです。法案のなかに、相談面談の義務化、というものがあるようです。これは私は大変効果があることに思います。ワクチンを打っていないからといって全員が過激な反ワクチン派、ということではありません。そこははっきり言っておくべきでしょう。そうではなくて、よくわかっていなくて不安に思っている人もたくさんいるはずで、そういう人には個人的に相談できる機会を設けるべきなのです。ワクチンを打たない、ということがその人にとってどのようなことを意味するのか。それを説明してから納得してもらう、というのが一番最適な方法だと私は思います。オミクロンに感染するだけでは解決しない、ということはいくつもの論文で明らかになっていることです。これは現時点での問題のひとつだと思われますが、多くの人が「あぁ、オミクロンには効かないんだから、ワクチンを義務化する必要はもうない」と言っていますが、それは早合点です。私たちは先をみていかなければいけません。オミクロンが最後の変異株ではない可能性のほうが高いからです。
その関連で、先日公開された、感染回復者の免疫ステータスをみていきたく思うのですが、ウィルス学協会の会長も署名しているものです。そこには、3回の抗原接触で、、それはワクチンによるものでも感染でもどちらの場合でも、最適な保護効果を得ることができる、とあります。これをワクチンの義務化に置き換えると、ワクチンを打っていない人も3回感染すれば、3回予防接種をした人と同じ保護効果を得ることができる、ということなのでしょうか?
そのようなケースはほとんどないので、、近い将来にはあるでしょうが、、ここでは、2回のワクチンと1回の感染、とされています。多くの州では、2G +の制限対象として、2回のワクチンと1回の感染があった場合には今すぐにブースターを打っていなくても良い、としています。実際にこのような場合には、世界的にもワクチンは不足している、ということを考慮しても、超高齢者と免疫不全者を除けは必要ないと思われます。20代で2回予防接種をした後に感染した場合にはとりあえず3ヶ月の間はブースターは必要ありません。それどころか、心筋炎になるリスクが高くなりますので注意が必要です。確率的には少なくてもそのリスクはあります。3回の接触で十分である、ということが検証されましたので、3回目の接触は感染によるものでも効果は同様である、ということです。勿論、1回のみの感染では全く違うシチュエーションです。2回感染した場合に関しては、明確なデータはなく十分ではありません。データが出てくれば、当然ですがこの部分の補足はします。
ワクチンを打ちたくない、という人は、これからも打たないでしょうから、そのような人たちは3回感染するしかない、ということですよね。そうだとすれば、パンデミックが終息するのはまだまだ遠い未来のことになってしまいますが、、
その人たちが3回感染するまで待つ、というのは、解決にはなりませんし、ここで言いたいことはそこではありません。ここで重要なポイントは、2回ワクチン接種をして1回感染した人たち、、そのような人たちは大勢いると思いますが、、そのよう人たちに3回目のワクチンを強制する必要はない、というところです。2G+制限の場合にです。しかし、勿論感染というものには常に、重症化したり後遺症が残ったり、といったリスクが付き纏います。ワクチンはスパイクタンパク質だけでウィルスは入っていませんからピンポイントです。ワクチンのコントロールされた影響に比べると、自然感染は重症化につながったり後遺症が出たり、と常にリスクがあります。
ウィルス学的な視点からみて、ワクチンの義務化と、免疫の漏れ穴をふさぐのとどちらが重要だと思われますか?
ワクチンの義務化に対する反駁は、法的な部分ですから、正直なところウィルス学的には何もいうことはありません。法律で何が可能なのか、という点では私には全くわかりません。18歳以上、としたほうが60歳以上よりも実現しやすい、ということは聞きましたが、ウィルス学的には、免疫の漏れ穴をなくすることに関して異論はないですし、どちらにしても集団全体での免疫が出来上がっていく過程でそうなってはいくものではあるものの、それを早い段階でつくったほうがリスクが少なくなる。例えば新しい変異株が出たりすると、、この集団での免疫をつくる努力が水の泡になってしまう可能性もでてきてしまうからです。免疫が削減されていく、という問題点も、早めにつくっていくことで若干の調整をすることができるでしょう。つまり、何年もかけてつくっていく、ということになれば、勿論、免疫の一部は常になくなっていくわけですから、そこからまた新しい変異株や大きな流行が起こったりする際にどう対応していくべきなのか、ということを考えてく必要がでてくるのです。先ほども言ったように、そのようなことがSAGEシナリオでも説明されていますので目を通してみてください。
リンクを貼っておきます。もう一度、ワクチンのテーマで、ブースターを取り上げたく思うのですが、ロベルト・コッホ研究所の統計によると国民の半数がブースター接種をした、とあります。3回目の接種、ということで、これが完全な予防接種ステータス、ということになっていますが、ロベルト・コッホ研究所のブースター接種の推奨は12歳以上です。5歳から11歳の子供を持つ保護者の不安は高まっています。編集部にもたくさんのメールが届きますが、5歳から11歳の子供には、2回の接種で十分だ、という理解で良いのでしょうか?
Stikoが5歳から11歳に対する推奨を出していないので、この年齢層のブースターも推奨されない、ということだと思うのですが、少し無意味ではあると思います。難しいですね。確かに、この年齢でのデータがまだ十分ではありません。しかし、後数ヶ月でもっとデータが出揃ってくるとは思います。この年齢層の子供達の予防接種は去年の12月からはじまったわけですので、ブースターをするにはどのみち早すぎます。それよりも、4月か5月に予定されている対応されたワクチンでしょう。12月か1月に自分の子供に予防接種をさせた親御さんたちは、今は何の心配をする必要はありませんから、データが発表されて、次に出るワクチンがどのようなものか、ということを待つことです。子供が健康児であれば、焦ることはありません。一定の時間をおいての3回目の接種が必要だ、ということが明らかになっているわけですから、これがこの年齢層の子供達では根本的に異なる、ということはないとは思います。勿論、まだデータは十分ではありませんが、個人的には、12月、1月に予防接種した子供に関しては、これから新しいワクチン、対応ワクチンのデータを持つほうが良いと思います。
とはいっても、自分の子供が完全に守られていないのではないか、と不安になったり混乱する親も多いと思うのです。それと同時に、シュレスヴィヒ=ホルスタイン州首相、プリエン氏が、「学校での恐怖文化から脱出するべき」と発言していて、これから対策の緩和がされていく際に学校でも何らかの対応が望まれる、と。つまり、検査とマスク着用義務も徐々に緩和されていく必要がある、ということです。現時点での5歳から14歳の平均発生指数は、10万人あたり3500です。どちらが重要だと思われますか?対策を緩和することで子供達の負担を軽くする、子供達の重症化の確率は低い、という理由からそれを許していくのが良いのか、それとも、軽症でも このような激しい感染状況ではLong Covidの確率も上がる、というようなところを考慮すべきなのか。どう考えれば良いのでしょうか?
個人差がとてもあります。いろいろな考え方がありますが、その前に、完全な保護について。今、3回の予防接種をしている大人がオミクロンに感染していますが、これは、だからといって子供達もブースターが必要だ、という理由にはなりません。2回目の接種の直後、ということもありますし、ブースターの後で感染しないか、というとそうではありません。感染してしまう可能性は、オミクロンのように免疫回避型のウィルスではブースターをもってしてもあるのです。同時に、アメリカのデータから、2回の接種を終えた子供でのPIMSのリスクは明らかに削減されているということがわかります。ですから、2回目の接種と3回目の接種間隔を短くしないようにすることも重要です。多ければ多いほど良い、ということではありません。今、8週間毎にブースターをし続ける、というのはナンセンスです。そんなことはしてはいけない理由は、ワクチンとワクチンの間に免疫応答が成熟する時間が必要だからで、身体が免疫をつくるには一定期間を置かなければいけないのです。学校、ですが、学校は大変困難なテーマだと思います。今、10人に聞けば、10の異なる意見がかえってくるでしょう。私には、そのなかの誰の意見が正しいのか、ということを判断することはできません。全ての意見を真摯に受け止めるべきだとは思っています。これは大変重要なことです。私にも小学生の子供がいますから、このオミクロンの大流行でどれだけの負担が学校でかかっているか、ということは身をもってわかっているつもりです。クラスの半分が欠席、クラス全体が隔離されたり自宅待機だったりすることは日常茶飯事ですから、子供達にもきちんとワクチンの説明をして、予防接種の機会を設けてあげることは大変重要だと思います。保護者への説明も不可欠です。そして、学校での対策を今一度見直していくべきです。現状に合っているのか。理にかなっているのかどうか。例えば、今は検査をしているものの、隣のクラスメートが陽性になっても、隔離されない、という状況です。そのような際には、やはり、何のための検査なのか。そこから得られるベネフィットとは何か、というところを問うべきでしょう。前回のポッドキャストでも少しそこには触れました。マスクに関しても、これも子供によって差があります。私の子供もそうなのですが、子供によっては全く気にしない子もいますし、しかも、最近は、「外が寒いとマフラーをするよりも暖かくて良いね」と言ったりしているくらいですが、子供によってはマスクが苦痛で大嫌いだ、という子もいます。ですから、これも一概には言えないことです。個人的には、マスクはそこまで大きな問題ではない、と思うのですが、そうは思わない人もいるでしょう。マスクは比較的単純なツールでありながら、保護効果があり、少なくともウィルス量を削減することができます。始めにも言ったように、学校で全ての対策を解除することは間違っています。単純に感染者数が多すぎるのと、対策をしなければさらにもっと増えますから授業にも影響がでます。論拠として、子供達の教育を受ける権利、というものが挙げられますが、勿論、それはあります。しかし、それ以上に安全に教育を受ける環境、持続して受ける環境を確保するほうが重要だと思うのです。感染が拡大して、クラスの半分が病欠している状態が続くのは教育という面でも理想的と言えないからです。私も身近に見聞きすることですが、子供達はこの不安定な状況に翻弄されている、ということは確かで、同級生が明日学校に来るのかどうかわからない、隣の席の子がコロナに罹った、など、不安な状態が続いています。全体の感染者数が下がれば、学校にとっても落ち着いた状況になってくるのです。
Stikoから2回目のブースターの推奨が特定の対象に出されました。いままでは、3回のワクチンでCovid-19疾患への保護効果がある、とされていて、それはほとんどの層で引き続き変わりません。しかし、70歳以上と介護施設、老人ホームの入居者、そして、免疫疾患を持つ5歳以上に関しては、2回目のブースターの推奨が出されています。タイミングは1回目のブースターから3ヶ月後、介護施設の勤務者、医療従事者は半年後の接種になります。このポッドキャストでも、高齢者は若い世代よりも免疫応答をつくるためにはもっとワクチンが必要だ、ということをお話しいただいていますが、オミクロン対応のブースターが出るのも時間の問題です。先ほど、4月か5月、ということでしたが、2回目のブースターはいままでのワクチンでするべきなのでしょうか?それとも、数週間待ってオミクロンワクチンを接種すべきですか?
これもケースバイケースだと思います。例えば、老人ホームの入居者で超高齢で免疫を抑圧する薬も常用している、となれば今接種したほうが良いでしょう。感染状況が厳しいですし、イスラエルのデータからも重度の経過を削減する効果がみられるようですので、このような場合は意味があります。しかし、ぎりぎりのところなのではないか、と思われるようなケースも沢山あり、例えば、23歳の看護師がいたとして、3回の接種を終えて基礎疾患もない。そのような場合には、本当に4回目のブースターが必要なのかどうか、というところを考えるべきでしょう。この間も話したように、ワクチンを接種していもオミクロンには感染する可能性がありますし、若い世代では重症化する確率も低いですから、先ほどの老人ホームの高齢者とは全く違うシチュエーションです。ですから、私が4回目のブースターの相談を受ける時にはどのようなシチュエーションに置かれている人なのか、ということをよくみながら判断をします。先ほどの若い女性などは、まだ様子をみて待つこともできるでしょう。その一方で、老人ホームの老人は待てません。オミクロン対応ワクチンは5月くらいに出てくるわけですから、若い場合には「じゃあ、私は8月、9月まで待とう」と、5月から8月までの夏の間は感染が落ち着くと思われますのでそのような計画をたてることもできると思います。小さな子供に関しては、3ヶ月ごとにブースターというのは多すぎますし必要はないだろうと思われます。高齢者では話は別ですし、特に免疫疾患を持つ場合には違う評価をしていかなければいけません。ですから、その人にとってどのようなメリットがあるのか。どのような環境にいる人なのか。ということが判断の上で重要になります。
先ほど、ワクチンの量が多すぎる、と仰いましたが、例えば、高齢者が今2回目のブースター接種をしたとします。その直後にアップデートされた対応ワクチンが市場に出てきたとして、この高齢者は接種後2週間とかでオミクロンブースターを打つことは可能なのでしょうか?この場合は、多すぎる、ということになりますか?短期間のうちにブースターを打ちすぎるとダメージなどもおきるのでしょうか?
Stikoによると、すでに免疫が獲得されている場合には安全性には問題はない、ということですから、ブースター接種の前に抗体検査をすることも基本的には推奨されていません。とはいっても、勿論ワクチンは免疫応答を発動させますから、EMAなどは、短期間でのブースターによって免疫反応の問題が引き起こされる可能性がある、としていますが、、私は免疫学者ではありません。ドイツ免疫学協会の会長のクリスティーネ・ファルク氏は、、因みに私のハノーバー時代の同僚ですが、、シュピーゲル紙のインタビューでその辺りの返答をしていますから、意見を乞うならば彼女のほうが適しているでしょう。それによると、細胞のなかに免疫的な記憶というものができる、と。そしてそれが、病原体を長期に渡って認識し撃退するわけです。それを、早すぎるタイミングで何度もしてしまうと、例えば、ブースター接種などでですが、そのようなことをすると、T細胞が衰弱してしまう可能性が出てきます。どのようなダメージがそこから起きるのか、は彼女に聞いてみる必要がありますね。これが(しないほうがよい)論拠の一つではありますが、グローバルにみた場合にもワクチンはワクチンが十分に行き渡っていない国々にまわすほうが良いですし、理由もなく何度もワクチンを打つ、例えば、若くリスク因子もない健康体に4回、5回、6回、7回とブースターを接種するのは馬鹿げています。
モデルナ社が、オミクロンブースターがいままでのブースターと比べて効果が上がっていない、と発表しました。バイオンテック社のオミクロンブースターではそうではないようで、後数週間で診療所で使える可能性もあります。オミクロンブースターを打った場合に、デルタへの効果もあるのでしょうか?つまり、9週間前までは、ドイツの感染者はほとんど100%デルタ感染でした。現在のデルタ感染の割合は、ほぼ2%になっています。今はデルタ感染する確率はほとんどありません。しかし、可能性はゼロ、というわけではありませんし、オミクロンブースターのデルタへの効果はどうなのでしょうか?
まだデータが出ていませんのでお答えすることはできないのですが、それまでに予防接種をしていてブースターワクチンを打つ場合、つまり基礎免疫が出来てた状態でオミクロンに感染した場合には、デルタに対する中和抗体が出ることはわかっています。ワクチンがデルタに対する抗体をつくることができるのであれば、多分、同じような効果があるのではないか、と思われますが、まだバイオンテックからのデータが公表されていませんので、わかりません。発表されてからその辺りが明らかになってくるでしょう。
ロベルト・コッホ研究所によると、アルファ株、ベータ株、ガンマ株は今現在ドイツには存在しない、ということですが、変異株、と言えば、新しい情報がニューヨークから出てきました。こでは少しコロナウィルスのミステリー、と言えるかもしれません。というのも、このニューヨークで発見されたことには謎が多いからです。ニューヨークではパンデミックの初期から下水の調査がされていて、コロナウィルスの拡大状況、変化がそこから把握されていますが、2021年の初めからある変異株がみつかり、先日、ネイチャー・コミュニケーションズ誌に論文が掲載されました。この変異株、、一つではなくいくつかあるのかもしれませんが、、この種類はまだ患者では発見されていないものである、ということなのですが、そんなことはあり得るのでしょうか?これはどのような変異株ですか?
これにはざっくりと2つの原因が考えられると思うのですが、1つ目は、、こちらも信憑性があると思いますが、、とても珍しい変異株が存在して、あまりにも数が少ないために患者の検体からはシークエンジングされなかった。全体の5%位をシークエンジングする、とすると、盲目飛行のようなところもありますので。いままでに一度もシークエンジングされたことのない変異株はあったとしても不思議はありません。これが1つ目の説明です。もう一つは、、こちらは理にかなっている、と思うのですが、、このウィルスは動物にも存在する、ということはわかっていますし、様々な動物で増殖できることも確認済みですから、そこから下水に入った。古い論文、2014年に発表された論文、、勿論これはSARS-CoV-2とは関係ありませんが、ニューヨークのネズミを調査して、どのような病原体をニューヨークのネズミが持っているのか、ということをまとめたものがあるのですが、そこでは大体15種類くらいの細菌と、ハンタウィルス、そして18の新しいウィルスが発見されました。そのなかには、1、2種類、人間のC型肝炎に非常によく似ているウィルスも含まれていて、肝臓で増殖するタイプのものだったのです。全く同じウィルスではありませんが、ネズミのなかでウィルスが増殖して、例えばペットを通じてまた人間に感染する可能性もあります。SARS-CoV-2は動物でも増殖しますから、そのあたりに生活している動物が持っているウィルスが下水からみつかるのは自然なことです。発見された変異は、ACE2受容体で、つまりウィルスの入り口となる受容体ですが、これがネズミでも使うことが可能になっていました。変異によって、ネズミのACE2受容体にも対応している、というのが、説明です。後、興味深いのは、ニューヨークのダマジカ、、たしかニューヨークだったと思いますが、どちらにしてもアメリカです、、そこのダマジカからオミクロンがみつかっています。ここからも動物の生息地がある、ということで、ネズミが感染して他のネズミに感染させる、というのは人間と人間で起こっていることと同じです。ウィルスは新しい宿主に対応するために変化していき、よりよくその宿主を利用できるようになっていくのです。そのための変異、です。これは大変興味深くて、少しミステリー小説のようでもありますが、、この論文のなかには、ウィルスが新しい宿主に対応するために変わってきていて、それがまた人間に感染する危険、というものが指摘されています。しかし、勿論、それが人間にはあまり合わない、ということもありますから、そうなれば病原的には強くありません。つまり、引き続き観察するしかない、ということと、動物にも注目していくべきだ、ということです。この間も、中国のハムスターでも発見されましたし、猫も SARS-CoV-2に感染することがわかっています。そうなれば、ウィルスは動物に合わせて変化していきます。
ここからも、理論的には常に新しい変異株が出てくる可能性がわかります。しかし、いままでのワクチンは特定のウィルスに対応してつくられています。いままでにわかっている種類に対して、です。ここでの質問は、これからのワクチン研究、開発がどのように行われていくのか、というところです。ここ数週間で出てきた希望として、いわゆる「万能ワクチン」というものがあります。アメリカの免疫学者、ファウチ氏が、「ウィルスを後から追いワクチンを新しい変異株に対応させるのではなく、別のワクチンの作り方が求められる」と発言しました。ということは、スパイクタンパク質ではなくて別の方法が必要になってきますよね?ウィルスのなかには、変異をして変化しない部分、常に同じである部分からワクチンをつくることはできるのでしょうか?
それはできません。ウィルスにはいわゆる、保存領域というものがあってここは変化しない、と言われています。これは抗ウィルスの医薬品などに応用されています。変異株のなかには、プロテアーゼやポリメラーゼがあまり変化していないものもありますが、別の部分で変化が可能です。変異というもは偶然起きるものだからです。そして、生き残っていくウィルスが持っている変異は、どちらかといえばスパイクタンパク質部での変異であって、これはここが細胞に感染させる際に重要な部位であるからに他ないのです。ここでのメリットがあれば、この変異体は容易に拡がっていくことができるようになります。変化がほとんどない保存度が高い領域もあってそこではあまり変異が起きない、とされていますが、勿論保証はありません。ここがよく混同されてしまうところだと思うのですが、全てのコロナウィルスに共通するワクチンをつくる、といういことは大変困難でほぼ不可能です。
SARS-CoV2に特化した、というのではなくて、全てのコロナウィルス、ということですね。
そうです。他の風邪ウィルスにも効果がある、という意味です。しかし、それらはあまりにもかけ離れていますから、大変困難です。私はワクチンの開発者ではありませんが、どれだけ難しいことか、とことは想像できます。何らかの成果がでるまでに何年もかかるでしょう。実験していかなければいけませんので。ワクチンでは安全性が大変重要です。さらに、作られた抗体は効果があってもダメージを与えるものあってはいけません。現実的に考えると、いわゆるポリバレント型、もしくは、マルチバレント型のワクチンになるのではないか、と思われます。つまり、例をだすと、デルタとオミクロンをミックスすれば両方の抗体ができます。この場合に難しいのは分量の加減で、両方が十分な抗体をつくるだけ含まれていなければいけません。これからの研究はそのよう方向にいくのではないでしょうか。しかし、私が思うには大変難しい、というのと、時間がかかる上にそれが成功するかどうか、ということも明らかではありません。
つまり、万能ワクチン、全てに効くワクチン、というものからはまだ程遠い、ということですね。それに対して、コロナとインフルエンザに同時に効くワクチンはもう少しで出てくるようです。インフルエンザとコロナに関しては、もう少し後でお伺いしますが、インフルエンザはパンデミックになってからほとんど消えてしまいました。接触制限やマスクの着用、などの効果です。今、またインフルエンザのケースが増加している、ということですが、ロベルト・コッホ研究所によると、ドイルではまだ数が少ない、とのことでした。2022年の第5週目で300件のインフルエンザが登録されていて、流行にはなっていません。この間、初めてコロナとインフルエンザに同時に感染したケース、というのを聞きました。イスラエルとカタロニアでそのようなケースがあったようです。この感染にはすでに名前がつけられていて、「フルロナ」英語でインフルエンザを示す、「フル」とコロナの「ロナ」です。
それをみつけるには、わざわざイスラエルまでいかなくていいですよ。フランクフルトでもあります。
その質問をしようと思っていました。先生はそのようなダブル感染をご覧になったことはあるのでしょうか?
面白いことに、1週間前にツイッターしたところです。というのも、偶然数ケース連続でみつかったからです。そのような感染は可能です。りんごと梨を同時に、です。これは、これらのウィルスがどの程度同時に循環するか、どのくらいの頻度で感染の機会があるか、でこの2つに同時に感染する確率が決まります。ざっくり言うとそのような感じです。
これは、これから数ヶ月、もしくは次の冬に頻繁に起こり得ることなのでしょうか?私は個人的に、インフルエンザで寝込んでいる最中にコロナに感染する、などということはあまり確率的に高くない、と思ってしまうのですが。
確かに、もうすでに家で寝込んでいた、としたら、確率が低いですね。しかし、パンデミック初期のデータを分析したレビューがあるのですが、そこでインフルエンザとコロナの重複感染の調査もされています。結果にはかなり差が出ていて、アジアは4,5%、アメリカで0,4%です。これが先ほども言ったように、勿論、インフルエンザの大流行が起こっていて感染者が大勢いれば、重複感染の可能性も高くなります。今、インフルエンザによく効く対策をしているわけですから、そのような場合には稀にしか起こらない現象ではあります。典型的な例としては、以前はインフルエンザの流行が今くらいの時期に起こっていました。大体、カーニバルの後に増加していましたので、カーニバルと関係していることは確かです。今年も、制限なくカーニバルは行われてはいませんので、インフルエンザもあまり流行しないか、もしくは少し後にあるのではないかと思われます、つまり、3月の中旬から全ての対策が解除されることになれば、例えばマスクをしなくなったりすると、インフルエンザが流行する可能性はあります。可能性はある、というだけで勿論どうなるかはわかりませんが、感染防止対策をしなくなれば必然的に重複感染の機会も増える、ということです。インフルエンザとの重複感染はどうなるのか、というのは、先ほどの4つのシナリオのテーマでもあって、インフルエンザとコロナの流行が同時に来ることはあり得るのか。そうなれば、かなり高いピークに急激に上がることになります。例えば、10月、11月にコロナ、12月、1月、2月にインフルエンザ、といったようにです。そうなれば医療にも負担がかかりますが、そうなるかどうかはまだわかりません。ただ、病院での課題にはなっていくと思います。どちらにしても、コロナ前よりもこの時期には患者数が多くなることは間違いないでしょう。
このフルロナダブル感染では、重度の疾患経過になるのでしょうか?2つの感染症を同時に、ということでそのようになるのではないか、と思うのですが。まずインフルエンザに罹って身体が弱っているところにコロナ感染が来る。コロナだけやインフルエンザだけの場合よりも重症になる、ということですか?
正直なところ、まだ安定したデータは出ていません。文献に載っているものは、大体がケースリポートか、小さな試験です。大規模での科学的な分析はまだされていません。確かに、身体が弱っている時に感染をすれば症状が重くなることは想像できますし、それと同時に、例えばインフルエンザの感染でインターフェロンが発動して、つまり身体の免疫応答が起こってその後のコロナ感染の時にはインターフェロンがしっかりと働いて軽症で済む、ということも勿論考えられますが、まだよくわかってはいません。詳しいことはまだわからないですが、同時の感染するか、一つづつ感染するか、ということでも変わってくるのか、と思います。とはいっても、まだ研究も論文もデータもない状態なので、詳しいことはお答えできません。
今日もありがとうございました。