ドイツ@Sars-CoV-2 コロナウィルスアップデート(30) 2020/4/8(和訳)

話 ベルリンシャリテ ウィルス学教授、クリスティアン・ドロステン
聞き手 コリーナ・ヘニッヒ

2020/4/8

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数多く、そして対象を絞っての検査、近距離接触がある場所での幅広いマスクの着用、感染状態を把握し早期発見に繋げる携帯アプリ、この3つが、今後、感染カーブを低く維持するために必要な要素だ、というところで専門家の意見が、一致しています。 今後、対策が緩和され日常が戻っていくなか、これは大変重要です。  マスクの着用で望まれる効果については、何度もこの場でふれましたし、感染を調べる検査、免疫の検査の限界についてもご説明いただきました。 今日は、携帯アプリについてのお話を伺おうと思います。 このようなアプリが、今後の研究と、新型コロナ危機対策にどのような影響を与えるのか。  今日も、ウィルス学教授、クリスティアン・ドロステン氏にお話を伺います。聞き手は、コリーナ・ヘニッヒです。

今日は、いつもとは違い、ドロステン教授の他にゲストをお迎えしています。 フンボルト大学の物理学教授、ディルク・ブロックマン先生です。ブロックマン先生は、ロベルト・コッホ研究所でシュミレーションモデルをプログラミングされています。 疫学的なシュミレーションから予測などを割り出していらっしゃいますので、アプリからどのようなデータが何の為に利用されるか、、というところをご説明いただこうと思います。データの寄付、というプロジェクトについても伺います。

今、私はハンブルクのスタジオにいますが、、先生方は、ベルリンのシャリテの研究所のドロステン教授の部屋にいらっしゃるのですよね。 (接触制限中では)物理的に同じ空間にいる、というのは、滅多になくなったシチュエーションですけれど、、、、先生方は、自宅のリビングで育児や子供達の自宅学習に奮闘している様子が丸見えの、、、役員Web会議、、などの経験はおありですか?

ドロステン:  ウェブ会議には頻繁に参加します。 そこで、背景に写り込んでくる子供達と知り合ったり、、、ペットもよくみかけますよね、、、そんなわけで、このような会議の集中力は、、まぁ、そんなに高くはありません。 とはいっても、この機会に、このような方法に慣れていく、というのは良いことだと思います。 もう少しで、技術的にも改善されて、もっとスムーズな画像クオリティになるかもしれませんし。 このような方法を使うと、飛行機の利用数の減少にもつながるでしょうから、、考え方が変わってくると思うのです。 大変素晴らしいことに思います。

今日のテーマに入りたいと思います。 ブロックマン先生、先生は、疫学的なシュミレートモデルをロベルト・コッホ研究所のために、計算していらっしゃいますが、、、SARS、豚インフルエンザの頃から、もうかなり長い間されていますよね。 最近では、4600万件の匿名データの移動性の分析をされています。 この分析から、どのようなことがわかったのでしょうか。 ドイツ国内での移動性に変化はありましたか。

ブロックマン:  移動性は、2つの視点から分析されました。ひとつめは、移動性の流れは、定量的なモデル計算の基盤です。 パンデミックがどのように進んでいくのか、加速度などを予測するためには、移動性は不可欠な要素です。 感染がどこからどのように運ばれていくか。 2つめは、毎日のデータ分析によって、どのような移動性の変化がおこったか、ということを把握するため、です。 例えば、3月のはじめにくらべて、3月末の移動性は40%減少しました。 これはとても大切で、どのような行動の変化がおこったか、ということは感染の活動性に影響を及ぼすからです。 

データは、匿名ですよね。 アウトバーンの上の橋から、自動車をカウントするようなもの、とおっしゃっていましたが、それと同じように、個人的な情報は集められていない、ということですが、ここが、多くの人が懸念する点です。 個人情報の悪用をおそれるひとがたくさんいます。  
ドロステン先生、このような移動データは、ウィルス学的、疫学的にどのような利用価値があるのでしょうか。

ドロステン:  このような移動性の分析は、どこから、どのようにウィルスが動いていったか、ということを調査する為に重要です。 このデータを、ウィルスのシークエンジング結果と比較できます。 ミュンヘンのウィルスがベルリンに到着するまでどのくらいかかるか、ウィルス系統的な分析もできるわけです。 ちなみに、ドイツ国内のウィルスの系統分析の結果を研究所のサイトで発表します。 今日中にでもアップしたいと思っています。 この結果は大変興味深いのですが、、、それでも、携帯による行動傾向の分析や、追跡調査は、もっと重要です。 このポッドキャストでも数日前にお話しましたが、最新のシュミレートモデルでは、この感染病の世代時間などが明確になり、今、私に症状が出始めたとしたら、、、その時点で、私が一番始めに感染した相手も、違う人に感染している、という計算になります。 発現前での感染が頻繁に起こるために、症状が出始めた時には、もうすでに、第二次感染、第三次感染、と感染が続いているのです。 このような速度で進む感染状況では、保健所の電話での対応では対処できない、と認めるべきなのです。 アプリなどを使った感染ケースの追跡は大きな進歩です。 ロックダウンを解除した後のことを、今、あちこちで議論されていますが、、制限が緩和された後に生活がまた通常の形態に戻るわけなのですが、そこで制限に替わる、何らかの手段を導入しなければいけません。 計算上では、普通の感染追跡では間に合わないのですから、私はこの分野では素人ではありますが、、、、このような携帯アプリが対策として必然だ、ということを、多くの人に理解していただきたい。そして、協力していただきたいのです。

このアプリは、行動の移動性のデータ収集とは異なる、Bluetoothでの携帯同士の接触データの管理です。 ここでは、近距離の接触把握が可能で、ブロックマン先生、いままでは、50cmの感覚でだれかと散歩しているのか、3m先で立ち止まっていおしゃべりしているのか、ということはわかりませんでしたが、このようなアプリで本当に時間を稼ぐことはできるでしょうか。

ブロックマン  そのような、近距離、感染可能な距離ですね、そのような接触を探知できる機能はとても高い感度が必要ですが、技術的にはもうかなり前からあります。 そして、学術的に研究している研究者も多いです。 このようなアプリは、この点ではドロステン教授に同意しますが、現在の状況の大きな助け、となるでしょう。 勿論、情報通信の安全性、匿名性、、、など、クリアしなければいけないところはいくつもありますが、これは解決できます。 そして、今、開発中です。

ドロステン先生、先週お話いただいたなかで、感染の46%が症状が発現する前に起こっている。 ということは、私が、感染者Xと接触をした場合、私の携帯に、「感染者との接触がありましたので、これから2週間自宅隔離をしてください」という連絡がくる。 その時点で、もしかしたら、すでに他の人に感染してしまっているかもしれませんが、それ以上、広げないために自宅隔離する。という理解であっていますか。

ドロステン:  そうですね。そのようにも使われると思います。 基本的には、このアプリは、診断過程を簡易化することを目的としていて、アプリの項目で症状をチェックすると、アプリが、ラボとコンタクトをとってください、と言ってきて、申し込みはアプリがしてくれます。 そこから、検査をしてもらって、陽性がでたら、またアプリに入力します。この結果を入力するのも自主的です。 陽性感染者として認識されたら、そこから、どの人、、、この場合は、どの携帯、ですね、どの携帯と近距離での接触があったのか、時間的には最低でも15分間、接触があった携帯に警告メールが送られます。 またそこでその人に症状がでたらすぐにアプリでチェックして検査の申し込みをする。 もし、感染が頻繁に起こっている地域があったとしたら、、実は、これが(アプリ導入の)重要な目的のひとつなのですが、、、ロックダウンを2週間して、、感染者数が下がったら、解除して、、、また上がったら、ロックダウンして、、という、何度も接触制限をオンオフする、ということは、社会的にも寛容範囲をこえるでしょう。 そのかわりに、小さな規模で行う。 時間的な接触制限ではなくて、地域的な接触制限。 今、ここの、感染のネットワークがある、この地域だけを、制限する。 この感染のネットワークは、今現在ではみえません。 この警告システムがあれば、雇用主へも、診断書に似た用途で使うことができますし、1〜2週間、たぶん1週間程度でしょうが、自宅隔離する。 これは、とても効果的なやりかたです。 そして、もっと先を考えるならば、、例えば、ある地域で感染が多数発生した。 その場合に、アプリの設定を上げて、住民に検査をしてもらうように促す、のではなくて、症状のチェックをした人を全員、陽性、だと仮定して、そのように扱う。 勿論、その後きちんと検査をすることもできますが、重要なのは、速度、です。 保健所の人間が電話で確認するよりも、速い速度で感染の連鎖をストップさせる。

まだ、その地方によっては、検査体制がそこまで整っておらず、敏速な検査ができないようですし。 ブロックマン先生、シュミレートモデルの専門家としてお聞きしますが、このアプリが対策として効果をだすためには、どのくらいの割合の参加者が必要なのでしょうか。

ブロックマン:  このようなアプリは、携帯同士のデータが、Bluetoothで交換されます。そのデータをもとに、接触追跡が可能です。 それには、最低でも、、全体の50%でしょうか。 一部の人が参加しても、見逃される接触が多くなり、意味がありません。 勿論、接触をどのように定義するのか。 すれ違っただけでは、接触、とは言えないでしょうし、地下鉄で30分間、隣同士で座っていた場合はどうか、など、、、これらは、すべて新しい挑戦ですが、研究やテストなどで解決できることだと思いますし、ドロステン教授の提案のように、接触の追跡調査の速度をはやめる、という点では使えると思います。

実現可能なタイミング的にはどうでしょうか。 この仮説的なオックスフォードのアプリが、実際にドイツで使えるようになるのでしょうか。

ブロックマン:  詳しくは現時点では言えませんが、、、多くの研究者が現在高スピードで開発しているところです。 一番のクリアしなければいけない点は、プライバシー問題、個人情報の管理で、そこの透明性、完全な匿名性、携帯が他の携帯と接触した際に個人特定ができないようにする、など。 そして、このシステムでは、ユーザーへの連絡も必要になりますから、、ここでもまた個人情報の壁があり、容易ではありません。多くの研究者がフルスピートで開発を進めていますが、いつ完成するか、、、現時点ではまだなにもいえません。

ジャーナリストは、、、せっかちなんです。 すぐ、全て知りたい、と思ってしまうので、、、でも、開発中、ということですね。 技術的な問題点もあると思うのですが、Bluetoothはヘッドセットやスピーカーと接続しますよね、、

ブロックマン:  そうです。 技術的にそう簡単ではありません。ローエナジーBluetooth、といって、無線でコンタクトを認識するのですが、この場合、環境が、室内なのか、地下鉄内なのか、野外なのか。 これらの環境の違いに影響を受けます。 携帯から発信されるシグナルの度合いで接触データとして認識しなければいけませんので、、、高度な技術ではありますがが、、可能です。

匿名性、ということについてお聞きしましたが、私がはじめて韓国の携帯アプリ管理について読んだ時には、ビックブラザー(リアリティショー)的だな、と思ったものですが、、、ドイツでは、基本的に自主性を尊重する、というかたちになりますか。

ブロックマン:  ここが、一番重要なポイントだと思います。 このシステムでは、透明性の説明を重視します。 この説明は徹底的にそして丁寧に行われなければいけません。 どのように、匿名でおこなわれるのか、、、韓国の例がでましたが、韓国では、GPSの位置確認機能なども追跡データにはいっていましたが、ドイツではそれは行いません。 携帯に保存されているデータの個人確認はユーザーによってではなく、別の管理機関を通して分析されて認識されます。 そのような点も明確に説明されなければいけませんし、全て自主的、です。 これは、原則的に、データの寄付、というかたちになります。 国民、研究者、機関が、協力しあうプロジェクト。 これが、前提です。 ここが、しっかりとしていれば、これは監視、ではなく、全員が参加する、いわゆる、大きな、実験です。

もうひとつの、、自主的にできるデータの寄付として、、、スマートウォッチのようなウェアラブルデバイスでの健康管理システムのデータの提供、勿論、そのようなデバイスを使っていることが前提となりますが、、、これはどのようなものなのでしょうか。

ブロックマン:  これは、昨日スタートしたプロジェクトで、コロナデータ寄付、というものです。 このアイデアは、この危機状態の改善に役立つようなデータを寄付してもらう、というもので、このようなスマートウォッチで健康管理をしている人はドイツ国内で1000万人います。 このデバイスは、心拍数、睡眠時間、そして、体温などを記録することができますが、このようなデータを暗号化して匿名で提供してもらいます。 ここから、軽症の症状の把握をしよう、というものです。 このアプリは、新型コロナに感染しているかどうか、ということはわかりませんが、体温の管理をする、というところで、国民の体温計、のようなもの、ともいえるかもしれません。 全国の地図で、体温の分布などの分析が可能です。 このデータは、シュミレーションにも役に立ちますし、ホットスポットを発見する手助けにもなります。

途中ですが、ドロステン先生に質問です。 空港で、体温を測るのは、早期発見には意味がない、ということだったように思うのですが、ここでは、体温を測ることで、発症発現前の感染者を発見することができる、ということでしょうか。 なぜ、ここで体温が重要なのですか。

ドロステン:  ここでは、全く違うシチュエーションです。 空港では、個人ですし、症状がでているのにも関わらず飛行機に乗る、というのは稀でしょう。 そして、症状がでる前に感染がはじまりますし、飛行機に乗るために、鎮痛剤などの服用で症状が抑えている、というケースも何件もありましたね。 そういう意味でも、個人レベルで、空港で発見しよう、とするのは、とても難しい。 この健康管理アプリの場合、安静時心拍数が上がる、というのは、熱が背景にあるだろう、という解釈ができます。 それも、個人レベルではなくで、特定の郵便番号で、多数確認されたりするかもしれない。 そして、空港での確認は一瞬ですが、アプリでは、数日間持続して観察されます。 その際に、多数の成人が同時に熱があったら、、今のこの時期には、成人が熱を出すことはあまりありませんから、それはデータとして分析されます。 インフルエンザで、このようなスマートウォッチを使って感染追跡をして成功した研究もあります。

ブロックマン先生、このデータの寄付モデルを開発するにあたって、今年の始めに発表された論文を参考にされたそうですが、どのようなかたちでしたか。

ブロックマン:  参考にした論文は、どのように技術的に実行していくか、ということで、心拍数と睡眠周期からどのようなデータを分析するのか、このコロナデータアプリでは、データがアルゴリズムで計算されて、最終的には郵便番号ごとに集計されます。 毎日、熱がある人ごとに。 勿論、これは、大勢の人が参加してはじめて意味を持ちますが、地域ごとの体温を分析することができます。 しかし、これは、全体の感染状態を把握するためのごく一部にすぎません。 感染者数に対して、このようなシステムは、分析の補助的な役割を果たし、感染者の把握が完全ではない地域を発見する、などが基本的なアイデアです。 シュミレートモデルを計算する側としては、このようなデータは、モデルをつくる際にとても重要になってきます。 データは多ければ多いほど、正確に感染の活動性の予測ができるのです。

もういちど、安静時心拍数についてなのですが、、早期発見、疫学的にも、感染の初期の時点での発見につながる、とのことですが、心拍数の上昇は、もし、ものすごく軽症だったとしてもありうるのでしょうか? それとも、それは常に熱も同時にでていなければいけませんか。

ドロステン:  そうですね、大体において、熱が、心拍数をあげる原因でしょう。 しかし、この場合は、目安、であって、何人、感染者がいるか、ということを数えることが目的ではありません。 感染の進行と、地域ごとの頻度の全体図を把握することです。

ブロックマン先生、そのようなスマートウォッチには、どのような機能がついていなければいけないのでしょうか。 様々な会社が、このコロナデータアプリに協力していますが、格安のタイプでも大丈夫でしょうか。

ブロックマン:  いまのところ、目標は、10社の製品とアプリが対応することで、現在5社の製品で使用できますが、出来るだけ多くの製品と対応できるように開発が続けられています。 今日の時点で、16万人からのデータが寄付されています。 これは、嬉しい驚きで、こんなに多くの参加者がいるとは思っていませんでした。1000万人のなかだと、約2%です。 これからももっと広い範囲での利用が可能になることを目標にしています。

この、、心拍数、体温の上昇など、、この現象が、感染とは別の原因でおこることはありますか。

ブロックマン:  勿論、あります。 例えば、有名なところとしては、、、クリスマスの時期にはこのアプリは使えない。 熱が出たようなデータがでますが、、、これは、熱ではなくて、食べすぎです。 その他には、熱だけ測ると、風邪の流行時期には、これが、普通の風邪なのか、新型コロナなのか、、という判断はできません。 ですので、いつも説明をしているように、これは、通常に行われている対策の補助的な位置付けのテクノロジーなのです。 これはとても重要な点で、このようなひとつひとつの間接的な方法は、道具箱のなかの道具のひとつ、という解釈です。 勿論、大変重要な道具ではありますが。

ということは、イースターの時のデータも注意しなければいけない、ということですね。 ドロステン先生、このような健康管理アプリは、スポーツを定期的にする、健康的な人たちの使用度が高い、と思うのですが、ここからのデータは、疫学的にみて、若干感染環境に違いがでたり、、はしませんか。

ドロステン:  いや、、そのようなことはないように思いますね。 ほとんどが、平均的な成人で、今は、季節的な風邪などの流行もありませんし、インフルエンザも終わりましたので、データを集めるのには適したタイミングです。 勿論、私の希望は、もうひとつのアプリ、情報追跡アプリの導入です。 この健康アプリを使ってのデータ寄付が、国民のなかで先駆けとなってくれたら、と思うのです。 家族や友人にすすめたり。 そして、近々、接触追跡アプリが完成してくれることを祈ります。

ブロックマン先生、スマートウォッチのアプリには、個人的な連絡機能は、、、ありませんよね。

ブロックマン:  昨日からスタートしたプロジェクトについては、、そのような機能はありません。 ユーザーへの連絡機能はないです。 このように多くの人が参加してくれたことに驚いています。 そういう点でみると、ユーザーのメリットはありませんから。 しかし、このデータを寄付することによって、研究の役にたち、その結果、みんなの役に立つことにになる、というメッセージだけで、ここまでの共感と理解を得られた、ということなのです。 このように、国民と研究者が協力しあいながら、状況の改善を模索していく、という世界ではじめての試みが、これが成功することによって、様々なプロジェクトも可能になってくるのではないかと考えます。 接触追跡アプリと連結することによって、感染が集中しているところへの効果的な対策も可能でしょう。 そして、研究者や研究機関にデータを提供する、という協力体制と、信頼関係を築くことができたのなら、、これは将来的に大きな希望をもてることだと思います。

個人情報の漏洩への危惧は、、、全く必要ない、ということですね

ブロックマン:  ないです。今スタートしたプロジェクトに関しては、できる限りの透明性を維持することに勤めていますし、全てのユーザーへの十分な説明をして、各自が判断できるように、どのように情報を削除することができるのか、どのくらいの間情報が保存されているのか、ということを明確にしています。

このポッドキャストは科学的な情報を提供する場で、宣伝などはしませんが、、、治療薬やワクチンの開発には資金が必要ですし、莫大なお金が動きます。 このデータ寄付プロジェクトでは、、、、どこが儲けるのでしょうか。

ブロックマン:  誰もこれでお金は儲けません。 ロベルト・コッホ研究所と技術的な開発をするチームがあって、いままでもプロジェクトを共に開発してきたのですが、、、これで、誰かがお金を稼ぐ、ということはいまのところありません。 コンピューターなどの設備の投資、スタッフの確保などの、出費は公共機関内で賄われています。 利益はありません。

もう少し視野を広げてみてみたいのですが、、この開発はまだはじまったばかりですが、もし、近い将来、私もデータの寄付をしたいな、と思っても、スマートウォッチを持っていない。買う予定もない、というときに、違うかたち、例えば、追跡アプリ、などで違うデータを寄付できたりできるようになるでしょうか。

ブロックマン:  スマートウォッチの健康アプリは、ほんの一例で、違うかたちのアイデアももちろんあります。 例えば、携帯でのアンケート、これはもう実行されていますが、そのためのアプリなども開発されていますし、ここでは、簡単な操作機能がとても重要です。 ユーザーは、スクロールがうまくいかなかったり、ボタンが小さすぎたり、、というのは、好きではありませんので。 そういう、ごく簡単なところでうまくいかないことも多いです。 このようなプロジェクトと、追跡アプリは全く別物で、こちらは、接触データをBluetoothで探知するものです。

ウィルスに国境はありません。 現在は、制限対策中ですが、今後、また旅行などが可能になったら、、、ヨーロッパ全体でのアプリなども、、考えられますか。

ブロックマン:  勿論、ヨーロッパ全体のプロジェクトは重要ですね。 参加する団体が多くなるので複雑にはなりますが、、基本的に、大規模な範囲で行うことには大きな意味があるでしょう。 ウィルス的な視点からみると、国境などというものは、地図上に書かれた意味のない線なわけですから。

これからも境はなくなっていきますよね。今のところ、外国に滞在していたドイツ人は、自宅隔離が義務付けられていますが

いままで、国内、国外の移動性データの分析を行ってきた研究でみてみると、国境のような領域の範囲は、単なる勝手にきめられている線にすぎなく、同じようにデタラメに地図で範囲を決めても同じ結果がでます。シュミレートモデル的にも、地域限定と国限定の違いはありませんし

ということは、ある境で、感染が多い地域と少ない地域が分かれていた場合には意味がある、ということですね。

ブロックマン:  そうですが、、そういう場合は、国は関係ありませんよね。 勿論、ある国に感染者がたくさんいて、隣接する国には全くいない、というのであれば、話は別ですが、そうではない場合シュミレートを行う際にもそこの考慮は意味がありません。

最後に、お二人にお伺いしますが、、、、このヨーロッパ全体での携帯アプリを使ったデータ分析の開発に関しては、、、どのくらい楽観的でしょうか。

ドロステン:  私は、その分野の専門ではないですから、個人的な希望を、、述べさせてもらうと、、そうなることを期待しています。 そして、その前に、ドイツ国内での導入を願います。 同時に、ヨーロッパ範囲で可能になればさらにすばらしいです。 どちらにしても、緊急に実行されなければいけない。 今、どうやって、接触制限対策からぬけだすか、ということが議論されていますが、そこでの提案のなかで、この携帯を使った感染追跡よりも効果的な案はないのです。 私的には、この方法が一番威力を発揮する道具だと思っていますし、実行されなければいけない、と考えます。

ブロックマン:  私もその意見に同意します。私はシュミレートモデルの分野の人間ですが、違うエピデミック状況、豚インフルエンザや、エボラ出血熱の時には、どの国もそれぞれ単独で狭い範囲での対策をしていました。 しかし、今回のパンデミックでは、新しいかたちでの協力体制がうまれたように思います。 各国のネットワークもでき、データもオープンに公開されてお互いに使えるようになっています。 この変化には、良い意味で驚いていますが、偶然にもみな同じタイミングで実行にうつしたのです。それも、ヨーロッパだけではなく世界規模で、協力し合い、シェアしあう。 アプリが開発されて、ヨーロッパ全体で使えるようになることを願います。 これはヨーロッパ全体の問題ですから。

まだまだ、発展途上、開発途中です。 パンデミックの初期段階にいるだけではなく、この議論もはじまったばかりです。
ドロステン先生、ブロックマン先生、今日はどうもありがとうございました。 素敵で穏やかなイースターを過ごされますように。 家族との時間はありますか。

ドロステン  勿論です!
ブロックマン  私もです。

このポッドキャストもイースター休みにはいります。 ドロステン先生にもイースターの休暇をとっていただきます。 勿論、イースター後には再開しますが、そこからは毎日ではなく、2日ごとのポッドキャストになります。先生はウィルス学の研究者であり、研究所での研究の時間も必要ですし、このポッドキャストの準備もしなければいけません。 現在、莫大な量の査読されていない論文があり、その内容の仕分けにも時間を要します。 このポッドキャストの内容が充実するためにも、そのための時間が必要であることを、ご了承いただけますようみなさまのご理解をお願いいたします。

ベルリンシャリテ
ウィルス研究所 教授 クリスチアン・ドロステン

https://virologie-ccm.charite.de/en/metas/person_detail/person/address_detail/drosten/


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