ドイツ@Sars-CoV-2 コロナウィルスアップデート(1) 2020/2/26(和訳)

話 ベルリンウィルス研究所 ウィルス学教授、クリスティアン・ドロステン
聞き手 コリーナ・ヘニッヒ

2020/2/26 (←注 コロナアップデートの第一回目です。このようにはじまりました。)

—————————————————

Sars-CoV-2、というのが、最近、ニュースで頻繁に取り上げられている新型コロナウィルスの正式名称です。 ドイツ国内での新しい感染者が発見され、感染は加速しています。他のヨーロッパ諸国でも同様です。 今こそ、たくさんの情報が必要です。 これから毎日、この新型ウィルスの遺伝子を解明し発表したウィルス学者にお話を伺うことになりました。ウィルスの検査試薬を開発し、連邦政府のアドバイザーでもあります、ウィルス学教授、クリスティアン・ドロステン氏にお話を伺います。聞き手はコリーナ・ヘニッヒです。

今日は第一回、ということで、少し長くお話を伺いますが、リスナーからの質問にも答えていこうと思います。 まずは、風邪との比較、誰がハイリスクなのか、、、一般人が知らないところをウィルス学者に埋めてもらおうと思います。 昨日は眠れましたか。 それとも、寝ないで情報を整理されていましたか。

できる限り、夜は寝るようにはしていますが、、、眠れないことも多いです。 それでも、夜は仕事をしないようにしてはいます。

それでも、昨晩は大変なことになっていましたね。

そうですね、昨日は大変でした。 まだ、、、何が起こっているのか、、、頭が追いつかない部分もあります。 バーデンヴュルテンベルクのケースは明確ですが、、、ニーダーラインに関しては、、はっきりしていません。

どのくらいはやく、詳しいことがわかると思いますか。

今日、保健省が経路追跡などの調査をすると思いますし、検査はもう分析しはじめられています。 まだ1日ですので、詳しいことはわかりませんが、今晩、遅くても明日までには、同じ地域のサンプルのなかから陽性反応がでたかどうか、ということはわかると思います。 場合によっては、あと数日必要かもしれませんが。

短くご説明しますが、、、私たちは対面で座っているわけではなく、私はハンブルクのスタジオ、先生は、ベルリンのシャリテから繋がっています。 ご多忙のなか、このアップデートでの情報提供の為に毎日このように中継していただけることになりました。
ドイツでの新しい感染例がでましたが、、このケースによって、ドイツのシチュエーションはどう変わってきますか。 少し、言葉がない、という感じでしょうか

シチュエーションに関する考えは、、、もうすでに週末の時点で、イタリアのクラスターについて聞いた時には変わっていたのですが、、、それでも、このクラスターが不安なのではなくて、、もうかなり、イタリアからヨーロッパ各地に入ってきていますし、構造上、ヨーロッパは負担がかかりやすくあります。 それよりも、不安なのは、、、イランです。 これは、とても不透明な状況で、把握されている感染者数にたいして、死者数が多すぎます。 多すぎる、、というのは、分子と分母を計算したときに、、実際の感染者数が莫大な数であるはずだからです。 五千人から1万人はいるでしょう。いや、もっといるかもしれません。

情報の問題もあるのでしょうか。 中国の時もそうでしたが、、本当に知らんければいけないことを知らされているのか、、という

中国は、また全く違う問題です。 イランの場合は、問題がどこにあるか、ということはわかっています。 私たちは、全世界に検査試薬を配布していて、イランの研究所ともコンタクトをとっていますので、そこからくる質問の内容で大体どのくらいの技術的なレベルにいるのか、ということはわかるのですが、、、 ラボも、都心部の設備が整ったラボもあれば、技術的に未熟なラボもたくさんあります。これが、イランの状況です。 中国からは、、、質問がくることはありません。とても閉鎖的なシステムですから。 中国には独自で開発された検査方式があって、中央から配布されますが、どのくらいの数があるのか、感度や精度に関しても、、、よくわからないので何もいえません。

世界中の研究者達とは、電話をするのですか? メールでのやりとりですか?

通常のやりとりは、メールでします。 突然電話が来ることもありますが、、どうして私の携帯番号を知っているのか、、、驚きです。 昨日も、会議中にイランから電話がきて、、ラボの所長さんでしたが、私たちから供給された検査についての技術的な質問でした。 世界中にもう自動的に検査キットを配布しているので、、どこの国のどこのラボがそれを使っているのか、という把握はできていませんが。

イタリアでは、わかりやすい構造だというこですが、感染経路などを追跡することはできているのでしょうか。

部分的には、勿論、どこからどこに感染したのか、という追跡はできていますが、、、あの、封鎖対策によって少し時間は稼げたと思います。あのような非常事態でどうすればよいかわからなくなったのだとは思いますが、強硬な対策で国民の恐怖を煽り、協力体制を危険にさらしてしまったのは、、最善ではありませんでした。 勿論、命を失わないように注意する必要はありますし、あの時は仕方がなかったでしょう。 しかし、全体像を把握する必要があります。 それによって、この対策が緩和されるでしょう。

ドイツでも、不安になっている人がたくさんいると思いますが、、、リスナーからの質問です。先ほどもおっしゃいましたが、ニーダーラインのケースがよくわからない、と。 通常の重症化のリスクが高齢者ではなかったですよね。

私も部分的にはメディアからの情報しか知りません。 40代後半で、基礎疾患を持っていた、というのがドイツ通信社の報道でしたが、それは考えられます。 しかし、若い層で基礎疾患がなくても、急激に重症化することも十分ありえますし、70歳以上の基礎疾患がある人がハイリスクだ、ということは、若い世代はかからない、ということではありません。 これは風邪ウィルスの場合でも同じです。 2009年の豚インフルエンザでもそうでしたし、他のウィルスでもそうです。 健康で若い人たちが突然重症化する。 理由はよくわかりません。 偶然かもしれませんし、遺伝も関係するかもしれません。 遺伝との関係性を調べることは容易ではありません。  例えば、感染の重症化と喫煙の関係についてはほとんど問題にされませんが、これは重要なファクターだと思うのです。 中国では、男性が新型コロナの重症化する確率が大変高いのですが、それと同時に男性の喫煙率も高いのです。 ここの関連性は明らかだと思います。

ということは、このような感染のしやすさ、といった要因はある、ということでしょうか。 これもリスナーからの質問ですが、自分は風邪をひきやすいタイプで、子供も常に何かもらってくる。 このような場合、感染のリスクが高まりますか。

感染のしやすさ、ということをついての学術的な立証はほとんどありません。 勿論、免疫不全症候群というのはありますが、とても稀です。 そして、自分は風邪をひきやすい、という場合には、このような疾患のことをいうのではありません。 自分は他人よりも風邪をひきやすい、という人はいますが、この方も小さいお子さんがいるようですから、子供は社会的に風邪を増幅をさせる役割を果たします。 常に保育園では鼻を垂らしていますし、ウィルスでいっぱいです。 風邪をひいた大人と子供をラボで検査して、同じウィルスが検出されても、子供の鼻のなかのウィルス量は大人の1万倍です。 それだけ違うのです。 濃度が、大人の場合、そうですね、1000コピー/ミリリットルだとしたら、子供は、100万、1000万コピー/ミリリットルくらい、鼻から検出されるのですから、感染のしやすさも違うわけです。

この新型コロナ、SARS-CoV2という名前ですが、このウィルスは、子供にはあまり感染しない、ということですが、正しいでしょうか

そうですね。臨床的にみて、子供は比較的かからないようです。 しかし、これは、子供が感染しない、ということではないですし、子供が周りを感染しない、ということでもありません。このことに関しては、データが少なすぎますし、まだ子供がこのウィルスの増幅効果を持つかどうか、、というはわからないのです。  普通の風邪の場合は、大人は人生のなかで何度かかかるうちに部分的であっても免疫を持っていますから、体内でのウィルスの増幅が抑制されて、ウィルスの放出がそこまで多くはありません。 子供にはその免疫がありません。疫学的にみると、未熟、なのです。そのため、ウィルスは容赦なく増幅します。 大人には、風邪ウィルスの場合は増幅を抑える免疫機能がありますが、それが、この新型ウィルスでは、ないわけです。 他の新しいウィルスのパンデミーであっても、それは同じです。新しいウィルスに対しては、大人も免疫を持っていなくて、免疫的に未熟なのですから、ウィルスの増幅も激しく起こりますし、お互いに感染しあいます。 ここが感染度合いの違いです。 パンデミーウィルスの場合は、全員(世代は関係なく)感染し、普通の風土化した風邪ウィルスは、子供のほうが感染する、ということです。

また、風邪との比較に戻りたいのですが、、、基礎疾患、がでましたが、基礎疾患、とはどんなものを指すのでしょうか。これもリスナーからの質問ですが

頻繁にある病気、特に、高齢化とともに起きる病気もふくめ、肺疾患、心臓、循環器疾患、高血圧、心不全、糖尿病、特に、成人病である2型糖尿病、など。 このように、年を取ることと、病気が増えることは、切り離せません。 あとは、若い基礎疾患がある人たちです。 
感染の波が来た時に、、、誰が病院でのケアが必要で、誰が自宅でも療養できるか。そのようなことも考えていかなければいけないでしょう。 高齢者を優先する、もしくは、若くても抗がん治療をしたばかりだ、心臓にも疾患がある、など。そのように年齢に関係なく病院でのケアが必要になる人は出てきます。

妊婦はどうでしょうか。

今の所、妊婦が特別なリスクがある、ということはないようです。 考えられることは2つありますが、インフルエンザでは、胎児が感染することはありませんが、妊婦は基本的に重症化しやすい。 重症化の原因は、妊娠中に免疫システム修正されるからです。これは妊娠特有の現象です。これが、インフルエンザウィルスを侵入しやすくしているようです。 インフルエンザに関しては、妊婦は重症化しやすい。 しかし、今回の新型コロナではそうではありません。 その反対である、というデータがないことは喜ばしいことです。 勿論、これらは全て中国の論文をベースにしていることを忘れてはいけませんし、研究もまだ少数でしか行われておらず不明の点も多いで、このままである、ということではありません。 2週間後にはまた違ったことがわかるかもしれませんが、少なくても、今の時点では、妊婦、すなわち母親に妊娠中の特別なリスクはないようだ、ということです。 胎児に関しては、、、このウィルスは違いますが、ウィルスの種類によっては、胎児が感染する種類のものもあって、母親が気がつかないうちにダメージがあって、流産してしまう場合もあります。そのようなリスクは新型コロナにはないと思います。 いままで、何人もの検査をしましたが、、一人も血中からはウィルスが検出されませんでした。 このウィルスは血液中では増幅しません。母体から胎児に影響を与えるためには、血液中にウィルスが存在し、それが血清を通じて胎児まで届くことが前提です。

血液中にない、ということは、鼻のなかや、体液にはあっても、血液までは入っていかない、ということですね。

そうです。 このウィルスは、呼吸器に留まっているようです。 そして、胃腸内でも倍増する、のだと思います。 しかし、便としては排出されません。 ウィルスによっては、便内のウィルスが非常に感染力を持ちますが、衛生的な問題ですが、、ノロウィルスなどがそうです。 このウィルスではそうではありません。

お話のなかで、のように思う、今の時点では、という言葉を選んで使っていらっしゃいますが、新しい種類のウィルスでは、まだまだわからないことがたくさんあります。 その不明な部分を、どのようにうめていけるのでしょうか。 70歳以上でもなく、基礎疾患もない若い人がなぜ重症化するのか。そのようなこともまだわからないわけです。どのような研究が必要でしょうか。どこまでわかっていますか。

感染のしやすさ、これは、研究のなかで、一番難しい質問のひとつです。私たちが参加した論文もありますが、このような研究には、膨大な患者数と緻密な計画が必要です。今、ヨーロッパのプロジェクトがはじまっていて、これは、大規模な患者の登録し、ウィルスだけではなくて遺伝子の調査をするものですが、そのための資金の申請もすでにされています。 しかし、ここから何かがわかる、という保証はありません。 人間は一人一人違いすぎますから。 普通の風邪では、そこまでの大規模な人数での検査はなかなか難しいのです。今回はその点では状況が違いますが、大きな波がきた時にタイミングよく調査ができるのか。それとも間に合わないのか。どのようになるのかは全くわからない状態です。

ドイツで、年のはじめにシュタンベルクの自動車関係会社からでた集団感染のようにではなく、今回、どこのクラスターとも接触がない感染ケースがでたわけですけれど、、もう、これはパンデミックだ、といえるのでしょうか。

それとこれとは無関係です。 ミュンヘン郊外でのクラスターは、中国からセミナーの講師としてやってきた中国人女性が数日間滞在したのち、本国に帰る途中で発症したのです。 彼女は、滞在中も少し具合が悪くパラセタモールを飲んでいたそうですが、時差ボケだ、と思っていたようです。 帰国途中で体調が悪化して、本国で陽性だと診断されたために、その会社に気をつけてほしい、という連絡をしてくれた。 そこから、会社の代表が従業員に、症状がでているひとはいないか、と確認したところ、一人、症状がでていた、と。 そこからはじまったわけです。 保健所に連絡がいき、感染の可能性がある数日間を遡ったのです。
イタリアでは、そうではありませんでした。 こうはいきませんでした。 いまだに、はたして、一つのなのか、それとも、複数の感染ケースを見逃したのか、、わかりません。そして、一番はじめがどのくらい前だったのか、、、それは、もう今となっては調べようがないのです。 もし、ミュンヘンで、あの時、、、、あのタイミングで報告してくれなかったとしたら、、、いまでも、ミュンヘンのクラスターのことがわからなかったままだったかもしれないのです。 そして、(感染が拡がって)いつか、重症ケースが多数発覚して、やっと、気づく、ということにもなりかねませんでした。 これが、イタリアで起きたのことです。

そして、今、ドイツ国内で新しいケースです。 ドイツ人は、よくイタリアやスペインに旅行します。 ハンブルクではもう少しで春休みです。気をつけたほうがいいのではないでしょうか、、不安は大きいです。

今、とても難しいシチュエーションだと思います。 毎日、状況が変わっていくので、警告をだすのも容易ではありません。 まだ、ドイツ国内の違う地方でたくさんの把握できていないクラスターがあるのだとしたら、、、イタリアのような問題を気づいていないとしたら、、不安は募ります。 今日、20、そして、明日に100。 ドイツでもそういうことが起こらないという保証はどこにもないのです。 ですので、隣国への旅行警告の検討も必要になってくると思いますが、容易ではないでしょう。 外務省の決断ですから。

やはり、旅行警告は必要だ、とお考えですか?

いや、旅行警告をしなければいけない、とは言っていません。 これは、先ほどの質問でも触れていた点に戻るのですが、、、パンデミック、なのか、ということですね。 はい。パンデミックです。WHOは、国連機関ですから、外交的な立場をとらなければいけないのもわかります。 テドロス氏が、パンデミック対策の準備をしなければいけない、と言った場合、、、、パンデミックは、まずはどのような定義で決まるのか。 ブラジルでも感染者がでました。 これは渡航歴があるケースでしたが、続いて、南アメリカでもクラスターがおこるでしょう。 これは時間の問題です。 この時点で、遅くともパンデミック、です。 アフリカにも入ったら、、もちろん、パンデミックです。 ここで質問は、、アフリカでの感染を確認できるのか。 答えは、ノーです。 今、あらゆるところで、勿論、アフリカの支援をする、と言われていますし、勿論、私たちも試薬を至急届けました。 しかし、、、それで検査体制が整うか、、というと、、難しいでしょう。 感染は、いつも首都でおこるわけではありません。 中央研究所の隣で発生するわけではないのです。 どこか、遠いところで、起こったとして、、それを検査して診断して、、。 はじめの症状は軽症です。 そして、アフリカ諸国で、成人が熱をだしたら、、まずはマラリアだと思います。 このような(新しい)ウィルスだとは誰も思わないでしょう。 そして、インフルエンザによる肺炎もアフリカでありますが、それも診断されません。 もうすでに、アフリカでもかなりの感染者がいると思われます。 発見されていないだけです。 イランのケースからわかるように、アラブ諸国にウィルスが入り込んできています。 数多くの国に入っています。 アラブとアフリカの接触が密であることは承知の事実です。 もう、パンデミックです。 このような事実を目の前にして、オランダとの国境を封鎖しますか? イタリアとオーストリアとの? 意味がないでしょう。 もう、他国に向かって、お前たちがちゃんとしなかったからだ。 失敗したのはお前たちだ。と指をさして言うことをやめなければいけません。 パンデミックは、誰のせいでもないのです。 パンデミックはスローモーションでおこる、、天災です。 私たちは、、私たちがやらなければいけないことをするしかないのです。

言葉の端々から、不安の焦点はグローバルなところにあるように感じとれます。 ヒステリーと慎重な危機感とは紙一重です。 ここ編集部でも、毎日議論がされています。 今日も、ドイツでイタリアと同じように、ハムスター買い(買占め行為)がおこっている、と聞きました。 備蓄することは必要でしょうか? 学校や保育施設を閉鎖することには意味がありますか?

いえ、ないでしょう。勿論、今の初期の段階で、感染速度を抑えることは大変重要なことです。 今、1都市のなかで20ケースで、1ヶ月の間に、都市全体に拡がる、ということはあってはなりません。感染が発生しやすい場所、学校、スポーツ会場、保育施設、での対策によって、感染拡大の速度を弱めることはできるでしょう。 封じ込めることはできませんが、確実に感染を遅くすることは可能です。 そして、これは、(感染が進んだ)後の段階では不可能です。 今、保健機関は適切な対策で時間を稼ぎ、夏までに感染速度を減速させる必要があります。 これは大切なことです。 似たような構造をもつ、エンベロープRNAウィルス全般は、紫外線と、乾燥に弱い。 このことによって、自然な感染のブレーキが夏にくると思われます。 春の終わりくらいまで時間が稼げたら。 感染が多発している地域の学校を数日閉鎖する。そして様子をみて延長するかどうかを決める。 このような対策は理解できます。 しかし、パンデミック的には、長期間はできない対策です。 社会的にもダメージが大きいですし、間違った個人的危機感を植え付けてしまうでしょう。 はっきりと、わけて考えなければいけないのは、社会危機、医療危機、経済危機、と、個人の危機です。 ここの区別がきちんとされておらず、混合すると、ヒステリーや買占め行為、そして、この話題で持ちきりになります。

感染速度を遅くしないければいけない、とおっしゃいました。 これから数ヶ月の間に渡ってですが、風邪とも関係がありますよね。 この風邪との比較はよくききますが、今、風邪の流行もあり、病院は風邪の患者でいっぱいです。 リスナーからもメールがありましたが、もうすでに、今年、風邪で亡くなった人は130人いるのに、どうして、コロナで騒ぐのか。 風邪と新型コロナの感染力、致死率などの比較を教えてほしい、と。

季節的に流行する風邪との比較ですが、、、先ほどの数がどこからきたのか、よくわかりませんし、数的に少なすぎますが、、、。 疫学的には、季節風邪の超過死亡のパラメーターは、パンデミックの致死率とは違います。 インフルエンザの超過死亡は、、簡単に説明すると、、、インフルエンザのシーズンは、クリスマスからカーニバルまでですが、その間の死亡数を数えます。 そして、その他の月の死亡数をカウントして比較します。 インフルエンザシーズンの間のほうが死亡数が多ければ、その差はインフルエンザの死者数とする。かなり大雑把に説明しました。 実際には、インフルエンザが他の病気の原因になったり、基礎疾患が原因でインフルエンザが重症化したり、インフルエンザではなく、違う風邪ウィルスだったり、するので、これは、本当に大まかな数値です。   そして、この数値は、1万5千人〜2万人です。この次元の数ですから、130人などというものではありません。 風邪の流行は、8千〜1万人から始まって、多い時には3万人にものぼります。 しかし、これは、超過死亡です。 全ての人がインフルエンザで死亡したわけではありません。 それでは、パンデミックの場合で計算してみましょう。 風邪のパンデミックと新型コロナのパンデミック。 パンデミックの場合は、ケースの致死率ですが、このケースの定義をすると、ここでは、感染ケースがあって、それをカウントします。 そして、そのなかで何人死亡したか、をカウントします。この割合が致死率です。 感染者数を正確に把握すればするほど、正確に致死率が計算できます。 そのためには、できるだけ多くの検査をすること、広範囲での検査が不可欠です。 今回の新型コロナでは、致死率は学者間でも意見が一致しないところもありますが、徐々に現実的な数値がでるようになってきました。  致死率は、パンデミックの初期では誤って計算されがちです。どちらかというと、多めにでるのです。 というのは、パンデミックの初期では、死者に注目され、軽症者は問題にされません。そして、死者数はカウントされますが、軽症者を含め、すべての感染者数は把握されないからです。そこから、高い致死率がでます。もし、全てのひとを検査したとしたら、、、分子は大きくなるはずです。 
武漢では、はじまった当初、勿論、死者だけがカウントされていましたから、完全致死率でした。 感染者全員が死亡しましたから。 そこから、あ、軽症者もいるぞ、ということになって。 のちに、医療に負担がかかりはじめると、重症化したひとのみが病院にいって検査をうけるようになったので、、、重症化した人のリスクは大きいですから、死亡する確率も高かった。 そのために、はじめのほうでは、致死率は10%でした。それから、少したったら、2〜3%になりました。WHOによると、武漢以外の中国の致死率は、約0、7%くらいだ、ということです。広い範囲に広がっているのでなかなか把握ができないようですが、そこまで重症の人もいないようです。 中国以外で、、、各国の保健機関が集めたデータを合計すると、、シンガポール、韓国、アメリカ、ヨーロッパ、などでは、医療システムが確立されているので、正確にカウントできますが、その国々のデータを集めると、、0、1〜0、5%という数値がでています。
私は、致死率は、0、5%以下だと思います。 この数値は、乗数として使えます。 ここで知りたいのは、この致死率はドイツにとってどのような意味を持つのか。 自分の都市ではどうか、ということですが、ここから計算しはじめると、、そこから出てくる数字は恐ろしい数です。 その計算をここではしません。 なぜなら、その数字は正しくないからです。 ここから複雑になりますから、明日か明後日にでもお話しようと思いますが、、、国民全員が感染するわけではないのです。 疫学的には、どのくらいの人数がどのくらいの速さで感染するか、ということを計算する別の条件とパラメーターがあります。 そこでも、それが、1ヶ月の間に起こるか、2年かけてゆっくり進むか、ここが大きな違いです。

では、また明日、お話を伺います。また、お仕事に戻らなければいけないと思いますので。 やはり、沢山の質問がありますね。ありがとうございました。

ベルリンシャリテ
ウィルス研究所 教授 クリスチアン・ドロステン

https://virologie-ccm.charite.de/en/metas/person_detail/person/address_detail/drosten/

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?