ドイツ@Sars-CoV-2 コロナウィルスアップデート(109) 2022/2/1(和訳)
ベルリンシャリテ ウィルス学教授、クリスティアン・ドロステン
聞き手 コリーナ・ヘニッヒ
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デンマークは全てのコロナ感染防止対策による制約を全面解除することになりました。マスクの着用もワクチンパスポートも必要なくなります。冬の真っ只中だというのに、です。それを可能にしたのは、高齢者の高いワクチン接種率によって落ち着いた医療状況だということですが、それに対してドイツは先週までに掲げていた自己目標には足しませんでした。これからの行き先はどのようになっていくのでしょうか。ドイツが抱えるワクチン接種率問題はまだまだ続きそうです。総人口の約半分がブースター接種を終え、60歳以上で2回の接種を終えた人の割合にいたってはいまだに90%以下です。オミクロ感染はいまだに威勢を振るっている状況ですが、それでも良いニュースとしては、集中治療病床の使用率などがあげられるでしょう。PCR検査の限界が近づいてきている今、オミクロン流行下の正確な平均発生指数は出せているのか。そして、オミクロンの新種、BA.2がヨーロッパに出現しました。違いはあるのか、そしてこのBA.2について何がわかっているのか。さらに、ワクチン接種後のLong covidについて今日もベルリンシャリテのウィルス学教授であるクリスティアン・ドロステン先生にお話を伺います。聞き手は、コリーナ・ヘニッヒです。
私事で恐縮ですが、私の家族もオミクロンに罹ってしまい、今日はスタジオではなく自宅からアプリを使ってのインタビューとなります。技術的な問題などがあるかもしれませんがご了承ください。
ドロステン先生、まずはパンデミックの状況からみていきたいのですが、緩和に関しての議論が激しく交わされている真っ最中ですが、デンマークが全ての制約を解除する、ということもあり、さらに拍車がかかってきたように思います。先生は、どうお考えなのでしょうか? 何か変化があったり、、例えば、エンデミックに向かい医療の負担も少なくなってきている、もしくは、今、どのあたりにいる、と言えるのでしょうか?
うーん、そうですね、変わっていないのは、ドイツのワクチン未接種者層です。そこが思ったように進んでいません。1日に接種される数は先日さらに低下しました。その他の状況に関しては、ここ数日間でいくつもの大きな会見、インタビューで話してきましたが、メディアで取り上げられる際に変に歪められたり、切り取られてしまっている印象を受けます。あるメディアは、「ドロステン、警報を解除。大きなチャンスとみるべき」と報道しましたが、これはシュピーゲル紙のインタビューの一部を途中で切られたもので、実際には、ワクチン接種率、もしくは、集団での免疫を習得することが、、このどちらの言葉を使ったかは覚えていませんが、、それが前提である、と言ったのです。そのような歪んだ報道になることが多く、別のところでのインタビューでも言葉を選びながら次の冬のリスクを話した際に、「オミクロンは変化する可能性があり、そうなれば今よりも病毒性が増すかもしれない」と言ったのですが、そこからまた「ドロステン、新たな危険なオミクロンへ警告!」とニュースになりました。このようにメディアでも混沌とした状況です。しかし、方向性はもうかなりはっきりとされているわけで、、オミクロン、、その前にBA.2について説明したほうが良いかもしれません。また新たな恐怖が出てきた、と思われていますが、、とにかく、オミクロンが新しい血清型である、ということは明らかになったわけです。ということは、これは、インフルエンザの場合と同様にワクチンをこのタイプに合わせてつくっていかなければいけない、ということになります。古い型に効くワクチンが今蔓延するウィルスに対応しなくなる。古い型、というのは、デルタとかアルファとかそのようなオミクロン以前にあった変異株で、別の血清型のものです。今、2つの血清型があることになりますが、それらがどのくらい異なるものなのか、という点では研究がされているところで、特に超感染、デルタなどへの基礎免疫を持つ場合のオミクロン感染時のメリットに関しては、それは「ある」という結果が出ているのに対して、ワクチン接種などでの免疫ができていない状態で初めてオミクロンに感染した場合にはデルタをはじめとするもう一つの血清型への免疫保護効果は得られないようです。ここから今後の展開へ応用ができると思うのですが、ラウタバッハ保健相が、、これはもう数週間前のものですが、彼が、「オミクロンは汚いワクチンではない」つまり、オミクロンはワクチンの代用となるものではない、と発言しましたが、その通りなのです。ワクチン未接種者が今オミクロンに感染して「感染したからもうワクチンは打たなくても良い」ということにはなりません。というのも、夏までの間にデルタが全く消え去る、という保証はありませんし、古い血清型のウィルスが全て消滅するか、というとそれもまだわからないことだからです。古い血清型のどこかに属する亜種がまた冬に威勢を振う可能性はあります。そうなれば、集団のなかの免疫の欠陥部は今のままです。ワクチン未接種者の多くはイースターまでにオミクロンに感染するでしょう、まあ、全員ではないにしても、感染しても次の冬にむけての十分な免疫保護効果は期待できない。ですから、このような状態ではドイツではデンマークのような全面解除、はありえません。そこまでの高い接種率はドイツにはありませんので、ワクチン問題が引き続き存在し、60歳以上にはまだ11%のワクチン未接種者がいるのです。これがドイツの抱える問題です。これが次の冬がどうなるか、という分岐点で、どのように接種率をあげるのか、という点では政治への圧力も大きくなるところです。それ以外の全体的な流れとしては、4月、イースターの頃を一つの目安とすることができるかと思われ、その頃になると気温も上がりまた落ち着いてくるとは思います。しかし、イースターまでは現時点で有効な感染防止対策、、これは、ワクチン未接種者層があるために引き続き必要な対策であり、クリスマス前のデルタの教訓からも、これらの対策は引き続き行われなければいけません。2Gとか、そのようなものですね。これがあったおかげで、ドイツでのオミクロンの拡大速度は緩やかなものでした。イースターの後には、2つのことが想定されます。1つには、オミクロンに対応したワクチンがでる、ということ。アップデートワクチンです。これを接種することによって、さらに集団での免疫が強化され、かなり落ち着いた夏を過ごすことができると思いますが、そこから秋が来て、、ここからどうなるか、というのは、それまでにどのくらいのワクチン未接種者がワクチンを接種しているか、というところにかかっているのです。
今のお話で今日お伺いしたいと思っていたところを全て短くまとめていただいてしまいましたので、、「今日はありがとうございました」とポッドキャストを終わらせてしまいそうになりますが、、笑 もう少し、詳細をみていきたく思います。まず、現状からですが、集中治療病棟です。先ほど、次の冬にかけて、とのお話がありましたが、今もまだ冬です。現時点では集中治療にはまだ負担がかかっていません。まだ、というのは、発生指数があがるにつれて、60歳以上のリスクもあがっていくだろうと思われるのですが、これから逼迫することは考えられますか? 次の冬ではなくて、今、ということですが。
そうなる覚悟は必要でしょう。現時点では70歳以上に発生指数は低いです。他の国では急速に拡がったのに対して、ドイツでは比較的緩やかな拡大速度だった、ということはありますが、根本的な感染の分布には差はありません。オミクロンは旅行者とともに入ってきました。タイミング的にはほとんど同時で、クリスマス前です。この年齢層には、子供は含まれません。というのも、クリスマス前に南アフリカで休暇をとる子供はいませんね、学校に行ってますので、、ですから、この時期に休暇をとることができる成人層、ということになり、そこからクリスマス、年末にかけて子供にうつって、今、学校内で拡がっているところです。興味がある方は毎週の木曜日に出るロベルト・コッホ研究所のウィークリーレポートを参考にすると良いと思いますが、、今、感染が激しく起こっているのは学校です。これはドイツ以外の国でもそうで、明らかにみてとれる傾向です。子供と、その親の世代です。30代から50代でしょうか。それ以上の層にはまだそこまで拡がっていません。しかし、これから拡がっていくことは確かです。例えば、アメリカ、、因みにアメリカのワクチン接種率もドイツと同様に芳しくありませんが、それ以上に感染者の数が多かったのと対策も厳しかったので全く同じではないものの、高齢者のワクチン未接種層が存在し、もうすでにこの年齢層へ感染が移行してきています。それによって集中治療の負担もあがり、死亡数も増加中です。このように想定内のことは実際に起こります。たしかに、この変異株は臨床的には軽症です。これは高齢者においても同じですが、軽症であっても罹患する数が多くなれば、全体の疾患負荷も必然的に高くなりますし、いや、結果的にはそれ以上の負荷になるかもしれません。ドイツではそうならない、という理由はありません。ただ、少し緩やかに進んでいる、というだけです。残念ながら、ドイツの冬はまだ1ヶ月半、2ヶ月続きます。ですから、ウィルスがこの年齢層まで拡がる時間は十分に残っている、ということになるのです。
納得いかない、と思う人も多いかとは思うのですが、予防接種をしていても、、ブースターをしていても、できるだけ感染しないように努めるしかない、と。実際に軽症で、軽い疾患経過になる人が多くても、ということですよね。
3回の接種を終えた人たちの重症化に対する保護効果、つまり、入院したり、重度の疾患経過になる、ということに関しては高い、と言えます。特に致死に対しては、です。今、重要なのは、ワクチンの接種をしていない人たちへの配慮、です。ドイツではそのような配慮がされていますが、デンマークのような国、高齢者だけではなく全体のワクチン接種率が大変高い国が行うことができることは、勿論科学的な裏付けがあってのことです。ドイツも同じような環境にしようと思うならば、ワクチン未接種者の穴を埋めるしかありません。
デンマークが次のテーマ、BA.2のキーワードです。ちなみに、高い接種率によって病院の負担などは低いものの、欠勤による支障は勿論デンマークでも出ている、ということを付け加えておきます。保育施設のスタッフ、学校などで、です。
それは当然でしょう。先ほどから、重度の疾患などについて話してきましたが、それが起こらなくなっても、罹患することがなくなるわけではありませんし、Long covidの問題だってあるのです。Long covidに関してはかなりデータが出てきいて、、それについて話したほうが良いかもしれませんが、、ワクチンでLong covidを防ぐことが可能である、というデータが出ていますから、そのような面でもデンマークはまた一歩先を行っている、と言えるでしょう。
デンマークで、オミクロンの変種であるBA.2が優勢になっている、と聞きました。オミクロンの変種にはいくつか種類があって、BA.1は今ドイツで拡がっているものですが、デンマークでは、このBA.2とBA.1の違いについてのデータが出ています。世帯内の感染伝播についての論文で興味深いものがありますが、その前に、BA.1とBA.2の違いは何か。今の時点でわかっていることは何なのか、というところからご説明いただけますか?これは変種、というよりも、亜種、並行した、というか科の親戚的、、ものでしょうか?
確かに位置的には横の枝ですが、この「科(ファミリー)」という言い方、SNSで「オミクロン科」と言われているようですが、これは全くの間違いですので使ってはいけません。ウィルス学の分類学的には、「科」というものは全く別の意味を持ちます。オミクロン株、というものは、ウィルスという種のなかの違いであって、「科」よりもずっと下の話です。進化のなかで考えると、ウィルスのクレードというものがあって、これはウィルスの遺伝子的な親戚関係の集団、と言っても良いかもしれませんが、、オミクロンはその集団のなかの一つです。全てが親戚関係にある、ということです。はじめの頃に枝分かれした系列は約1年くらい前、10ヶ月前くらいから存在するものですが、そこからBA.1とBA.2に分かれた。もとは同じです。全てオミクロンの系列ですから、遡っていってもオミクロンですが、これ自体は新しいものです。
車の例をあげれるかと思うのですが、車種は同じでも明らかな違いがある、ということでしょうか。
そうですね。ベンツのなかにもコンサバなタイプもあれば、スポーツタイプもありますね。しかし、全てベンツだ、ということです。
しかし、エンジンはどのようになっているのでしょうか?そこが重要なポイントですよね。
ベンツであることは変わりありませんし、車種も同じですが、エンジンがどうなっているのか。そこですね。そして、タイヤの幅はどのくらいか。この例えはもう以前にも使いましたが、またその例で説明するのは悪くないかもしれません。ここに違ったラインがあるわけです。そこには遺伝的な特徴の違いもみられます。例えば、スパイクタンパク質のN末端欠失というものです。それはBA.2ラインにはありません。しかし、これが免疫にどのような影響を及ぼすのか、ということに関してはまだはっきりしていません。
これはPCR検査の際に、ここのシグナルの欠如があるためにシークエンジングをしなくてもBA.1を検出することが可能だったのですよね。アルファでもそうでした。
そうです。ちなみに、これはドイツ的にはあまり重要なことではありません。そのタイプの検査を使っているラボがあまりありませんので。これは特定の会社製のPCR検査で起こる現象です。ここでの比較をするならば、適応メリットの違いなのか、それとも免疫回避なのか。デンマークでの観察から考察できることは、はじめからこのBA.2型が入ってきている、ということ。これは単純に偶然です。ファウンダー効果、と言えるでしょう。大きなアウトブレイクがいくつも起こることによって急激に拡大していってしまった。デンマークの感染流行においてはBA.2が大きなスタート時点でのメリットを持っていた、と思われます。そして、BA.1を差し置いて優勢になった、と。ここで、「偶然そうなったのだ」と言うのは簡単ですが、イギリスでも似たような現象が観察されています。イギリスでもいくつかの地域でBA.2の増加が見られますから、、データがあるのでみてみると、、他のオミクロンとの比較では、7日間の間で、平均増加率の126%の増加です。これは、この1週間の増加率から計算すると、オミクロンのなかでも、このBA.2型が5,5日毎に倍増していることになり、他のオミクロンよりも拡大の際のメリットを持っている。とはいっても、これは先週の7日間のデータですし、はじめに出てくるデータには、このような増加率におけるメリットが過大評価される傾向があることも確かです。ですから、今後もよくみていく必要はありますが、ヒステリックになる必要もありません。しかし、この増加におけるメリットが確かにある、ということは言えます。これがどの程度重要なことであるの、という点では、確かに、デンマークとイギリスで観察されているこのメリットは大きいです。しかし、この2国は両国とも、感染防止対策がほとんどとられていない国である、ということも忘れてはいけません。そして、ドイツではまだ対策をとっているので、そこまで急激な増加ににはつながっていません。しかし、BA.2の拡大速度が速い、ということは、それが免疫回避によるものなのか、というところを考えていく必要があります。つまり、さらに強く免疫を回避することができるようになったのか、それとも、適応メリットの増加なのか。デンマークの保健機関が発表したなかに、「BA.1で感染した人は、かなり短期間の間にBA.2に感染するリスクがある」というものがありますが、私は現時点はそこまでここを重視する必要はない、と思っていて、デンマークで起こっているような激しい感染流行時には、短期間で再度感染してしまう、ということは起こり得ることですし、特に、クリスマス休暇中に多くの感染が爆発したイベントに参加していた若年層のなかにはワクチン未接種者もいました。そこで初めてオミクロンに感染し、その後で感染した場合。両方とも軽症であったかもしれません。そうなれば、2回目は BA.2での感染であっただろう、と区別をすることは可能です。しかし、ここまでBA.2の増加があるとそれもそこまで重要なことではありません。
それでも、ゲノム的な違いは明らかにあるのですよね?BA.1とBA.2.の違いですが。
いくつかの違いはあります。しかも、スパイクタンパク質にも違いがありますので、ここでまた免疫回避が起こっているのではないか、と言われています。このテーマに関しては、デンマークから興味深い論文があるのと、英国保健安全保障庁、ここは英国版ロベルト・コッホ研究所ですが、そこからもデータがでてきていますので、理解を深めるためにもこの辺りを話していきたく思います。まずは、デンマークの世帯調査の論文からいきましょうか。前回のポッドキャストでも、デンマークの世帯内調査については取り上げていて、そこでは二次発病率のオミクロンとデルタの比較でしたが、二次発病率とは、インデックスケースからどれだけの人が濃厚接触後に感染したか、という確率を言います。
家族内、とかでですね。
そうです。その調査が世帯内で行われました。今回は同じグループでさらなる調査が行われていて、BA.1と BA.2との比較です。ここで分析されたのは、8541のインデックスケースです。そのなかで2122ケースがBA.2に感染していました。陽性反応がでてから1週間後の二次発病率をみると、BA.1では29%、 BA.2では39%でした。
はっきりとした違いがありますね。
明確な違いです。ここから、リスクの比較と、ワクチン接種ステータスによる感染の確率を分析することによって、この違いが免疫によるものなのか、それとも適応メリットが上がったからなのか、という方向性がみえてくるのです。二次感染者が、ワクチン未接種者だった場合、2回、3回接種していた場合の感染時リスクは、BA.2をBA.1で割る、これがオッズ比となりますが、それが、未接種者、2回接種、3回接種では、それぞれ、2,19、2,45、2,33。ここから、免疫回避の兆しはみられるものの、デルタとオミクロンとの差まではいきません。免疫回避の可能性としては大変低いレベルでのものです。同時に言えることは、インデックスケースが、、
第一感染者ですね。
それがワクチンを打っていなかった場合。そこから第二感染が起こるリスクをBA.2とBA.1で比較すると、2,62ですから、かなりの増加です。つまり、ここで適応メリットが免疫回避を上回った、という解釈ができるのです。
ということは、実際に感染伝播性が増した、ということですね。
その通りです。ここで、先ほどの2つの車を比較する、という例で言うと、一方の車のタイヤが砂地でもよく走れるように明らかに太くなっただけではなく、、ここでの砂地の泥とは、感染を邪魔をする免疫で、それを回避できる太いタイヤ、と言う意味ですが、、それによって、泥の上も走れるようになった。エンジンの大きさは同じです。エンジンは小さくても悪路を走ることができるのが、免疫回避、ということになります。この論文から受ける印象は、この免疫回避ではなくて、どちらかと言うと適応度の変化で、これは、タイヤの太さは同じで、エンジンの馬力が上がったのではないか、というものです。
BA.1に関しては、デルタとの比較でそこまで大きな適応メリットはなく、免疫回避だ、ということでした。つまり、BA.1はワクチン未接種者においてはそこまで感染力が上がったわけではない。ワクチンによる保護効果の回避である、と。それが、ほとんど逆にように聞こえます。
そういうことです。私はそのように解釈します。このほかにも、別のデータベースが、イギリスの英国保健安全保障庁のワクチン効果レポートにありますが、ここでは、 BA.1とBA.2の感染時のワクチンの効果を、2回接種、3回接種で調査されていて、大変興味深いものです。このワクチン効果率はもちろんサロゲート計算によるものですしここで詳細に触れることはしませんが、数の比較としての例としてあげたます。BA.1においては、2回接種後に9%、BA.2では13%の有症状の疾患経過に対する保護効果、3回接種後では、BA.1に対して63%、BA.2に対しては70%の保護効果です。数だけみると、BA.2の免疫回避は少ない、と思うかもしれませんが、もちろんそんなことはありません。数値的にはかなり似たり寄ったりで、それよりも、どちらかといえばBA.2のほうがBA.1よりも免疫回避が強い。その裏付けをするのがデンマークのデータです。ですから、私の現時点での状況把握は、BA.2は適応メリットの変異株である、ということ。感染伝播性の増加は免疫回避によるものではない。去年の今頃、アルファ株が出てきた時を思い出すとわかりやすかもしれませんが、アルファは免疫回避を持ちませんでしたが、適応度がアップしたことによって冬の流行が遅いタイミングで始まって、2月、3月、そしてイースターまで感染が収まらなかった。イースターの休暇に入ってやっと落ち着きました。そのようなことが、対策を全面解除した国、デンマークやイギリスで起こる可能性はあります。冬の感染流行が比較的短かかったことからもこの危惧はされますし、特にイギリスでは、オミクロンが急激に減りましたが中間の域で横ばいになったまま残念ながらそこから完全に下には下がっていません。ここにはまだBA.2の影響はでていませんが、これは前回のポッドキャストでも言ったことですが、この冬の流行に短いピークが来たのは、短期的に特定の社会ネットワークに感染の飽和が起こったからで、さらに広範囲で拡大するためにはまずはまんべんなく拡がる必要があります。それが、感染が学校に移行したことでかなり均等に親の世代に拡がっていて、これが高いレベルで横ばいになっている理由です。高いピークから残念ながら完全に下げることができないままだ、ということです。そのような高い感染レベルに今あるわけですが、危惧されるのは、これが2月、3月にかけてBA.2が適応型変異株としてもう一度イースター前に感染を激増させる可能性です。このような後から来る流行からはダメージがでます。デンマークではどうなのか、というと、高いワクチン接種率によって、重症化は阻止され集中治療にも負担はかからない。多分、重症化率もあまりあがらないと思われ、、今のところそのような傾向はみられませんので、、そうなれば許容範囲だ、ということになるのだと思います。とにかく、これがデンマークの考え方です。ドイツではどうかというと、何度も言いますが、ドイツでは状況が異なります。良い面から言うと、ドイツではBA.2の増加は緩やかであるだろう、ということ。これはまだ感染防止対策が実行されている状況であるからで、悪い面は、ワクチン未接種層です。受け入れなければいけない、受け入れる、といよりも、そのようなワクチンを打っていない人たちに配慮して行動せざる得ない状況を強いられている。これが、まずはイースターまでに注意すべき点で、感染が拡大してまた集中治療病床が満床になるような事は避けなければいけません。しかし、これはドイツが抱えるリスクなのです。ちなみに、興味がある人へのインフォメーションとして参考までに言いますが、、ちょっと、目を通したところ、ロベルト・コッホ研究所のリポートによると、第2週でのBA.1の割合が82,3%、BA.2が2,3%。まだ大変少ないです。デルタはまだあり、ドイツでは14,7%です。このように、対策が有効であるためにドイツでの進行は全体的にゆっくりです。メークレンブルク=フォーアポマン州だけがまだデルタが優勢で、ザクセン=アンハルトももうすでにそうではありません。デルタとの闘いだ、と言われてはいましたが。少し前からそうではなくなっていてオミクロンが優勢になりました。メークレンブルク=フォーアポマン以外はドイツ全体がオミクロンだ、ということです。
もう一度、 BA.1 と BA.2についてですが、 BA.2が優勢になると、ドイツでも流行が長引く、もしくは悪化する可能性はある、ということでしょうか?
勿論です。ワクチン未接種者も接種者も同じように適応する、意地の悪い適応メリットをいくつか持っているようですので。ですから、ドイツでも拡がっていくだろう、と思われます。ドイツだけが違う状況になる、ということはあり得ないでしょう。しかし、緩やかだからといってその分長引く、ということもないと思います。気温が上がってくると好条件になってきますし、イースターの休暇が伝播ネットワークを断つことになり、つまり、今起こっている感染のメインは学校だということが明らかになわけで、遅くてもイースターの休暇でそこが改善され、イースターの後には暖かくなりますから、発生指数もそこからは爆発的に増えることはないと思われます。今後の見通しはこのような感じです。BA.2が完全に優勢になるか、という点に関しては、今の時点では予測することは難しいと思います。まだ数が少なすぎるのでデータが正確ではないからです。ちなみに、BA.2の割合が多いのにも関わらずそこまで増えていない国、というものも存在します。たしかに、地域的な違い、というものもあるでしょうが、全体的な印象としてBA.2がメリットを持っていることは確かでしょう。
先ほどの学校が感染のメインである、という点については、私も個人的に実感するところです。私の家族もオミクロンに罹ってしました。感染チェーンは完全に追跡することができていて、私の一番下の子が学校で感染してしまった、ということなのですが、私たちは、予防接種は勿論のこと、ブースターもしていましたが感染しました。先ほど、デンマークでのBA.1とBA.2の再感染についてのお話がありましたが、これは予防接種者、特にブースター接種者にとって、ということなのでしょうか? つまり、私が今、オミクロンに感染した場合には多分BA.1に罹ったのだと思いますが、その後にBA.2と接触をすれば感染する可能性がある。特に予防接種者においての有症状感染、ということになるのでしょうか?
そのように一括りにはできません。というのも、その前の感染の疾患度がどの程度のものであったか、そして、その時のワクチンによる免疫保護効果がどのくらいあったのか、ということに関係してくるからです。ブースターをしていた、ということでしたね。これは基本的には大変良い基礎条件です。そして、今回の感染が有症状であった場合、つまり、明確に症状が出て疾患経過があった、ということですが、そうなったのであれば、高い免疫保護がまた形成されていることは間違いないでしょう。これに関してはカリフォルニアの大変良い論文があるのですが、免疫が野生型に対して、そしてオミクロンよりもデルタに対してよく反応する、ということは興味深いです。これは想定内だったことですし、このように短期間での免疫研究では当たり前でこれからその辺りのバランスはとれてくるものと思われます。免疫が成熟してくると、ということです。ヘニッヒさんは、30代の成人女性ですから、未熟なT細胞のレパートリーを持っているわけです。これからまた免疫が数週間のうちにつくられていく。もう少し経てば、免疫はオミクロンに対しても十分につくられますから、超感染する可能性は比較的低いと言えます。これは、BA.2に適応性の増加が起こっていたとしても、です。仮に、同じ年代でワクチンを打っていない人がいたとして。その人が今オミクロンで初めての感染を経験したとしたら。オミクロンでの初感染は、基本的にデルタ感染よりも軽症であることが多いですが、先ほど言ったカリフォルニアの論文からもその傾向が読み取れるように、感染の度合い、というものが決めてになるようです。オミクロン感染の症状の重さによってその後にできる免疫の持続が左右されます。感染が軽ければ、症状がしっかりと出ていなければ、免疫もあまり長く持続しない。そうなれば、この人にはもう一度オミクロンに感染するリスクがある、ということになり、それは BA.1に対してもBA.2でも同様です。BA.2のほうがリスクは高いかもしれませんが、そのためにはまずBA.2と接触する必要があります。現時点では、BA.1との接触のほうが確率は高いでしょう。しかし、その場合でも再感染は可能です。これは、多分、もう一度言っておかなければいけないことだと思うのですが、もう何ヶ月も前から言っていることです。理想的な免疫獲得とは、完全なワクチン接種、3回のワクチン接種による免疫獲得、それをベースに自然のウィルスとの接触を1回、2回、3回することによって、重度の疾患経過が起こることなく粘膜免疫を発展させることです。この後には、免疫は何年も間持続し、再感染することはありません。現時点では、集団の免疫はこの域には達していません。参考までに言っておきますが、イギリスではかなり基礎免疫がつくられてきていて、それはワクチンによるものと、ワクチン免疫をベースとした自然感染によるもので、その状態はドイツよりも進んでいるのですが、それでも、現時点での最感染率は10%弱です。つまり、10%弱の感染が2回目、3回目の感染、ということになりますが、そのようなことにドイツもなっていくでしょう。はじめにも言いましたが、これがオミクロンをワクチンの代用にする、というわけにはいかない理由です。オミクロンに感染してもそれでお終いではないからなのです。何度も感染する必要があります。それを、ベースとなるワクチン免疫がない状態でしてしまうと、2回目の感染時にも比較的重症化のリスクは残ります。それは、1回目の感染後の免疫はそこまで安定していないからです。
3回の接種をしていれば、オミクロンに感染した後で、デルタが戻ってきたとしても、別の血清型であっても3回接種による基礎免疫によって守られる、ということでしょうか?
3回の接種で得た免疫ベースは、次の冬でも古い血清型に対しては大変強い免疫効果を発揮します。3回目のブースター接種によって、免疫が持続しますが、これも完璧なものではありません。つまり、今度の冬にこの古い血清型が循環したとして、それに感染することはあるでしょう。しかし、軽い症状であると思われます。その後には重い症状、もしくは全く症状がでないと思われますし、オミクロンに関しては、ワクチン免疫があってオミクロンに感染した場合にはいままでと同じようなメリットがあります。つまり、オミクロンに対しての免疫が成熟することによって、高齢者や免疫不全の場合は別として、十分な保護効果がありますから、オミクロン感染によって得た免疫からのメリットはある、とみてよいでしょう。夏にもう一度感染する可能性もあると思います。その感染も比較的軽く済むでしょうが、これも次の冬の準備と捉えることもできます。夏にオミクロンワクチンを打つ人も多いかと思います。ヘニッヒさんもするのではないでしょうか。今、オミクロンに感染して、夏にアップデートワクチンを接種すれば、、冬の免疫保護は理想的だと言ってもかまわないでしょう。今後の冬にはマスクをしなくてもよくなるか、とか、そういうようなことを言いたいのではありません。感染者が増えればまた着用が必要になるかもしれませんし、ここでの問いは、ワクチンを打っていない人たち、、今、1回オミクロンに感染したとか、していないとか、そういうこととは関係なく、、そのうちのどの程度が、ワクチン、いままでのものでも新しいものでもどちらでも良いですが、、どの程度が予防接種を終えているのか。重要なのは、3回の接種はマストだ、ということなのです。まだワクチン接種をしていない人たちを説得すること、政治的にも社会的にもメディアの助けも借りて何とかしなければ今度の冬は大変厳しいものとなることは明らかです。そして、大きな未知数なのは、、ウィルスがどうなるか。例えば、3つ目の血清型が出てくる可能性もあります。進化は予測するにはそもそも限界があります。今の時点ではそのならないようにみえても、、これは、もう何ヶ月も前から言っていることですが、もう一度言います。ウィルスは、変化するものです。そして、進化というものは、偶然に起こるプロセスに左右されます。そして、予期せぬことが起こるのです。今、軽症化に向かっていても、これもまた重症化に向かうかもしれない。その可能性がない、と言いきることはできないのです。しかし、集団の免疫的には向かっている方向性は正しく、常に良くなっている、といえます。それは、たとえ、数ヶ月後に抗体がなくなる、というデータが出ていたとしても、抗体が集団免疫の全てではありません。集団の免疫とは基礎免疫の獲得です。基礎免疫の獲得とは3回のワクチン接種、つまり、免疫を形成することによって集団全体の免疫がキープされることを言います。免疫を持続させるためにはウィルスによる感染も不可欠であることは確かで、というのも、これからずっと全員に定期的にワクチンを打ち続けるわけにはいかないからです。それはエンデミックに移行する段階で必要なことであって、移行期間ではワクチンの助けを借りなければいけませんが、長期的には、免疫というものはウィルスが循環することによって持続されるものです。そこのところも考慮していかなければいけなくて、 それは今、基礎免疫を獲得した人たちでも始まっています。オミクロンはそう言う意味で初めの接触ということになります。それによって、次の秋の状況が改善されることを願います。
先ほど、ウィルスの進化的に何が起こるかわからない、とおっしゃいました。今、新しい血清型が出てきました。さらなる免疫回避、です。これからまた血清型がでてくる、となると、パンデミックの終息、という点ではどう考えれば良いのでしょうか?
パンデミックを終わらせるためには、疾患保護の確保のほかにも、感染伝播の阻止が行われる必要があります。根本的にはそのように答えることができると思うのですが、パンデミックで学んだことは、重度の疾患経過があり、それをまずは個人の保護レベルで阻止することが重要だ、ということ。Long Covidという問題もあります。これもいまだに解決していない問題ですが、存在する、ということは確かですから、このような未解決問題が多々残っています。そして、多くの病欠、欠勤、つまり、インフラの危機や職場の人手不足です。ここでも、ワクチンを持って重度の疾患や集中治療の負担をなくすことができるはずだ、といわれるかもしれませんが、それだけではできないのは、パンデミックのもう一つの特徴、速い感染伝播、感染拡大速度がコントロールできていないからです。それをコントロールするためには集団の免疫が必要です。つまり、ウィルスが野放しに拡がり、指数関数的に増えないようにしなければいけない。伝播を抑えることによってR値を1以下にするのです。それにはどのようにすべきなのか。そのためには大多数が粘膜免疫を獲得する必要があります。どうすれば獲得できるのか、というと、それは、基礎免疫をベースとした自然感染です。基礎免疫があれば酷い事態に至ることなく症状は短期間、風邪のような、インフルエンザの流行時のような疾患経過になり、それによって安定した粘膜免疫がつくられます。この粘膜の免疫による保護効果は人によっては1回目の感染ではなく、2回目、3回目の自然感染後につくられることになると思いますが、症状は風邪、もしくはインフルエンザです。批判を覚悟で言いますが、感染は同時に多数起こらない限り大きな流行の波にはなりませんから、社会的にもそれを許容して誘導していくことが可能なのです。というより、そうしていくしかありません。
それでも、別の血清型が出てくる可能性はあるのですよね。
血清型、ですが、古い血清型がまた復活することもありますし、3つ目の血清型がでてくる可能性もあります。これは初めには想定されていなかったことではありますが、ある程度の層、どのくらいの割合か、ということは別にして、アップデートワクチンの接種をしていく必要性がでてくることはあると思います。これからどうなっていくのか、という保証はありません。可能性としては、次の秋の段階で大多数が粘膜保護効果を得ていて、冬にはほとんど感染伝播が起こらない、ということもあり得ます。それと同時に、蔓延防止対策が必要になって、室内でのマスク着用が必要になることもあり得ます。現時点では、そうなるのではないか、とは思っています。ワーストケースとしては、もっと強力な免疫回避と持つ新しい変異株が現れてさらなるブースターが必要になるかもしれませんが、それよりも現時点でのドイツの問題は、他の国に比べてまだそのように誘導していくことができない、ということ。ワクチン未接種者への配慮があるからです。例えば、デンマークにはそのような層がもうほとんどありません。
もう一度、「別の血清型」というところに戻りたく思うのですが。定義としては詳しくはどういうものなのでしょうか?免疫回避があるところまでいくと、「ここから新しい血清型になる」ということでしょうか。
これは簡単には定義できません。ラボにおける血清カテゴリーで定義はできますが、例えば、中和力価の違いである、とかです。これは交差比較でよくわかることですが、ワクチンも未接種の場合、もしくはワクチン接種済みの場合に、この血清型に感染したら、別の血清型に対する保護効果を持つかどうか。そして、別のウィルス、別の変異株への保護はあるのかどうか。これに関しては振り返ってみると、デルタまではその効果がありました。それまでは、ウィルス同士の交差保護がみられていたのですが、初めてオミクロンでそれがなくなったのです。つまり、特に完全に免疫が未熟な場合、ワクチンの接種をせず、感染も経験がない、という場合にオミクロンに感染すると、デルタに対する免疫は形成されない。デルタ以外の古い血清型に対しても同様です。これにも対応できる免疫は、予防接種で免疫獲得をしている場合にのみで、その度合いはラボでは測定できるレベルではないものの、オミクロンに感染すると獲得した免疫が一気にまた発動してきます。しかし、これは予防接種をしているか、もしくはデルタでの感染があった場合のみです。ここに違いが出てきます。そのウィルスが他のウィルスに対する免疫を同時に刺激するのか、しないのか。オミクロンはとりあえずその点ではしません。このやりかたは、ほとんど実験的免疫学、実験ウィルス学的なものですが、Ontogenic Cartographyと言われるものがあって、これはSARS-2、インフルエンザのために開発されました。ここでは、実験動物を使って免疫反応性の比較をしますが、動物を使うのは、実験動物がそれまでに感染経験がない、という完全な免疫的な未熟さの保証があるからです。実際の人間社会では、ウィルスの循環が長くなればなるほどどんどん困難になってきます。このような実験で免疫の交差比較をするわけですが、ここでウィルスがどの時点で変化したのか、ということを確認することが可能です。つまり、変化のプロセスはゆっくりと起こっていてそれが進化、というものなのですが、そのなかでの突然の進化的飛躍ポイント、というものを断定することができます。そのような進化的な飛躍をオミクロンはした、と言えます。
先ほど、BA.1 と BA.2に対するブースターの効果について少し触れられていたと思うのですが、オミクロンに対しても、です。これは、オミクロン対応のワクチンではないですが、アップデートされたワクチンでのブースターはどの程度意味があるものなのでしょうか?逆に言うと、秋にまた新しい変異株がでてきたとしたら、今、バイオンテックとモデルナで開発されてもう治験が行われているオミクロンブースターを夏に接種する意味はあるのでしょうか?
意味、という点では、インフルエンザの経験からもわかるように、集団での免疫というものは、時には飛び飛びで発展していってるようにみえても、結局は徐々に1つの免疫としてつくられていくものなのです。つまり、この免疫というものは、上乗せされていきます。もし、ウィルスの進化速度がとても速くて、3つ目の血清型が出てきたとして、その際に、その前にオミクロンに対するワクチンも打たずに感染もしなければ、免疫としてのギャップがそこで生じます。オミクロンワクチンは、ウィルスの進化に沿ったものであって、免疫の方向性として重要な意味をもつのです。たとえ飛んだとしても、方向は同じ、向かっている方向は変わりません。この方向は偶然に決まるのではありません。ですから、ワクチンをもってウィルスに対応していくことには意味があります。しかし、先ほども言ったように、これから長期的にみて、今後、2年後、3年後には、今のようなワクチンを使った免疫獲得はどんどん必要なくなっていくと思われます。少なくとも、間隔はずっと長くなるでしょう。追加ワクチンが必要になるのは、5年、6年とか、7年後、もしくは、ウィルスの進化が飛躍しないで徐々に緩やかな変化をしていけば、追加ワクチンは全く必要ない、という可能性もあります。そうなれば、一定数が毎年感染することになり、全体ではその変化は全く気が付かないで進化していきます。インフルエンザのような風邪の症状が出て自然と免疫がアップデートされる。そのようになる可能性はあります。コロナウィルスの特徴として、、他のコロナウィルスもそうであるように、、このウィルスはインフルエンザと比較しても安定しているウィルスです。インフルエンザは、抗原的な変化を5年、6年、7年ごとにします。そのような傾向は、コロナウィルス、風邪コロナウィルスではみられません。ですから、今回のSARS-2ウィルスもそのような傾向を持つのではないか、と考えることができますので、比較的安定するのではないか、というのが現時点での考察です。
イスラエルでは、4回目のブースター接種のデータが出ました。ここでは、40万人の4回目の接種をした人たちの統計ですが、対象はハイリスクと医療従事者です。結果は、感染に対する保護効果は倍に上がっているのに加え、重症化に対する効果はそれ以上、1回のブースターをした場合と比べて3倍になっています。これはどういうことなのでしょうか?重症化に対する効果はいままでもかなり高かったと思いますし、細胞の免疫応答が決めてだったと思うのですが。
これは、ワクチンの効果性データですし、比較対象として選ばれたのは、3回目の接種を4ヶ月前にした60歳以上ですから、どちらにしても3ヶ月、4ヶ月後に免疫がなくなっていく年齢層なわけです。イギリスのデータが今偶然手元にあるので、、ちょっと待ってくださいね、今探します、、オミクロンのデータは、、60歳以上に限らず、有症状疾患に対する保護効果はオミクロンの場合、ブースターから3ヶ月後には40%から50%まで、入院率では75%から85%まで下がっています。3ヶ月です。先ほどのデータでは入院率ではなくて、感染ケースでの定義だったと思うのですが、確かに4回目の接種後にはワクチンの効果率が倍になる、60歳以上で3回目の接種から4ヶ月経っている場合と比較してそうなるかもしれませんが、イスラエルでは、1回目と2回目の接種間隔も他の国よりも短かった。それも、3回目の接種後の効果率が接種間隔を長く設定した他の国よりも低い理由であることは考えられます。
ということは、ドイツの高齢者で、例えば、1回目をアストラゼネカで、2回目までかなり長く間隔をかけてバイオンテックで接種した場合にはもっと数値が高い、ということも考えられるのでしょうか?
そのような可能性はあります。とはいっても、論文によってデータにはかなりのばらつきはあります。研究によっては、2回バイオンテックを接種したほうが、アストラとバイオンテックよりも効果がある、という結果がでているものありますし。論文のなかには矛盾があるものあります。しかし、一般的にみると、どちらも基礎免疫を獲得するには申し分ないものだ、と言えます。特に3回目を接種すれば。3回目の接種は抗体を増やすだけではなくて、免疫反応全般のレベルをもう一度高めますので、免疫がさらに特化され持続されるのを促す効果があるのです。全く別のレベルです。単に、抗体や反応性が多くなるだけではなくて、もう一度高いレベルでのチューニングが行われますから、これは中和応答には欠かせない重要なことです。
予防接種と様々な感染コンビネーションについて話してきましたが、日常での質問をしたいと思います。ここ最近の議論として、感染回復者に関する新しい規定があり、これが短縮されました。これからは90日間、ワクチン接種者が感染した場合、つまり、2回の接種後に自然感染でのブースターをした場合には、州によっては引き続き陰性証明が必要である、もしくは2Gの規制によっては入場が不可、というところもあります。逆に言うと、かなり前に感染し、その後で2回接種した場合には陰性証明は必要ありません。これは、政治的な決断ではありますが、これに至る科学的な背景があるはずです。免疫学的には、どの順番で感染しワクチン接種されたか、ということは関係ないのではないでしょうか?
どちらも悪くはありません。どちらかと言えば、はじめに感染してから予防接種をした場合のほうが良いですが、それは疫学的には勧められるものではありません。リスキーなことですので。全体的な対策として、まずは予防接種をして重症化を阻止してからウィルスとの接触を可能にする、ということが重要です。さらに言っておかなければいけないことは、違いはそこまで大きくない、ということです。ワクチンを打ってからの感染も悪くありません。この規約に関しては、正直なところ、私としてはあまり言えることはありません。というのも、そこまで詳細を把握していないからです。私も日常で、何がどの州でいつから有効なのか、ということを常に確認しなければいけないですし、州を跨ぐ際にそこではどうなのか、ということをわからない場合も多いです。ですから、これに関してのコメントをすることはできません。これは、政治的な決断であって、行政が行う域での話です。しかし、先ほど、科学的な背景があるはず、ということでしたが、先週またロベルト・コッホ研究所がメディアで攻撃されていました。私的には比較的単純な説明ができることだと思うのですが、ロベルト・コッホ研究所もそのように発表していたはずです。そこを攻撃する前に研究所のホームページをみるべきでしたね。そこに根拠とデータが載っています。データはほとんどイギリスのものです。そのなかで一番重要なのは、変異株でのTechnical Briefing 34だと思います。そこにはいくつかの決定的なデータが含まれますが、一番重要なのはコホート疫学研究(SIREN)のデータです。ここでは、感染した人の保護効果について調査されていて、その度合いがワクチン効果率のように出されていますが、感染から90日後では、オミクロン感染の場合にはワクチン効果率と同じように数値を出すならば、44%です。ワクチンだったら、この効果率では承認はされないですね。そういうことです。極めて単純なことです。つまり、足りない、ということなのです。明らかなことです。ですから、ロベルト・コッホ研究所がオミクロンに対して90日に短縮した理由も明らかです。
これは、ワクチン未接種者で、ということですよね。つまり、2回接種済みの場合には違うデータ、というところで、誤解も生じている、と思うのですが。
これしかデータがないわけではありません。他のデータもイギリスのものですが、ブースター接種後に感染したデータもあります。2回接種後のブースターワクチンを超感染と同等にみなしていく必要はあるとは思います。多分、先ほどそこの指摘だったと思うのですが、これから実践的に考えて、そのような結果が出ている研究も増えてきていますから、そこを同等にする、同じ効果である、としていかなければいけなくなってくると思いますが、ロベルト・コッホ研究所もその点は考慮しているはずです。また資料を探してみますが、、例えば、、有症状疾患に対する保護効果は、先ほども挙げましたが、デルタに対してはブースター接種後3ヶ月では、90〜99%です。オミクロンでは、50〜75%。この数値は、ぎりぎりのところだ、と言えるでしょう。しかし、3ヶ月以上経ってしまうと、デルタで、90〜95%、オミクロンでは、50以下、ここでには40〜50%と書いてあります。これでは足りません。これはもまたワクチン承認の条件を満たしていない、といえます。ですから、意味はあります。もしかしたら、書面では説明されたものお、公での口頭説明が少し足りなかったのが問題だったかもしれません。ロベルト・コッホ研究所の書面での資料は大変正確なものですが、規約などを改正する際の説明会見に少し改善の余地があるとは思いますが、語弊はそれよりもそれを報道したメディアの伝え方から来ているようにも思います。
年齢別にもみていきたく思うのですが、18歳が2回接種後に感染するのと、60歳以上が2回接種後に感染するのでは保護効果の長さ的にも違いますよね。
そのような区別は常にしていかなければいけませんが、そうしてしまうと大変複雑になってしまいます。ですから、成人層全体で、としなければいけないのです。そうなると、必然的に高齢者を保護するところに重点がおかれることになります。
Long Covidに関しての新しい知見がある、と言うことでしたが、このような長期に渡る後遺症は、社会全体の問題でもあり、個人的にも不安要素であることは確かです。Post Covid、もしくは、Long Covidと呼ばれるものですが、このようなことが起こる、ということはもうはっきりしていて、重度の疾患の後だけではなく、軽症でも起こる可能性があります。この間のポッドキャストの放送後に、SNSで騒がれたのは、エンデミックの状態に移行する段階をお話しいただいた際に、Long Covidに関しては触れなかったからのようです。ワクチンがLong Covidの防止にも効果がある、という希望がみえてきました。いくつか論文がでてきていますが、まだそこまでデータは揃っていません。イスラエルから出てきたデータに、実際にワクチンがLong Covidを防ぐ、2回の接種後に劇的にリスクが削減される、というものがあるのですよね?
そうですね。まず、これは言っておくべきことだろうと思うので言いますが、リスナーのなかには、私があまりLong Covidについて発言しない、たとえしたとしても十分ではない、と感じている人がいるようです。私が言えることは、Long Covidというものがある、ということで、これは非現実的なことではなくて本当に存在する疾患です。勿論、第一に問題なのは重度の疾患経過と集中治療、そして死亡ですが、病欠による社会全体の負担なども問題です。ただ、私はリウマチ学や神経科の専門ではありません。Long Covidはそのような分野の領域になりますので、その分野の専門家、、幸いなことに今ではたくさんの専門家が公に発信してくれていますが、、そちらにまかせることにして、私の一般的な見解はあまり言わないようにしてきました。正直なところ、そこまで詳しくはないのです。専門の限界はある、ということは常に言ってきました。単純に私が公に発言する機会を与えられてるからといっても、専門以外のこと、自ら経験したこと以外に首をつっこむことは避けたいからなのです。というのも、他にもたくさんの科学者がいて、それぞれの専門分野がありますし、発信もしています。私側からLong Covidについて言えることは、私がわかる範囲で、で、それは、感染疫学での経験と、ウィルス学から、です。それであれば、論文も理解できますし解釈もできます。今回、そのような分野の論文がイスラエルから出ました。大変興味深いものですが、長所と短所を持ち合わせている研究です。欠点としては、8万人に参加を呼びかけたところ、4,5%しか実際に参加しなかった、というところです。このような調査の際に、携帯アプリでのアンケートに参加しよう、と協力的な割合が低いと、参加者に偏りがでたり、特定の層しか反映されないリスクが生じます。つまり、特にLong Covidに関心がある人たちとか、Long Covidで悩んでいる人たちだけがアンケートに参加する可能性もありますし、そうではない人たちは興味がないので参加しない、ということになりますね。
さらに、アプリを使わなければいけない、というハンディキャップもありますし。少なくとも4ヶ国語でのアンケート、という点では良いですが。
そうですね。そのような弱点はありますが、かなりよく調査された論文です。ここから出てきた数は、そうはいっても少なくはありません。951名の感染者と、2437名の非感染者がアンケートに参加しました。非感染者は比較グループとして、ですが、それについては後で説明します。感染者のなかでの区別はワクチン接種ステータスです。340名が1回の接種しかしていませんが、このグループはここでそこまで重要ではなくて、というのも自然感染後に1回のワクチンを接種したケースがほとんどだからです。それよりも注目すべきグループは2回以上の接種した人たち、つまり、2回、もしくは3回の接種をした場合で、これが294名です。ここから比較をしていきますが、まず、感染者が、予防接種をしていたか、していなかったか、というのは後で触れますが、全体で4ヶ月から8ヶ月経った後にも症状が持続、もしくは悪化した割合が35%。これは Long Covidのケースだ、と言えます。 イスラエルのイザアク・コンソーシアムがつくったLong Covidの症状のリスト、このコンソーシアムは国際的に一番有名な臨床感染疾患のコンソーシアムですが、、このリストには40以上の典型的なLong Covidの症状があげられているのですが、そのリストによる分類がここではされています。リストは長いですが、論文ではそのなかでも頻度が高い症状があげられていて、倦怠感、頭痛、息切れ、持続的な筋肉痛、これらがそれぞれ、22%、20%、13%と10%です。4ヶ月後から8ヶ月後までですから、これはLong Covidといって間違いありません。ここからは興味深いところですが、ワクチン接種者では数的にぐっと低くなります。読み上げますが、、倦怠感、頭痛、息切れが、64%、54%、57%、そして68%の削減です。これだけだとピンとこないかもしれませんが、わかりやすく言うと、これらの症状が2回の接種後に感染した場合に出る頻度は、全く感染していない人とほとんど変わらない、ということです。つまり、この2437名の非感染者による比較グループにアンケートを取ったところ、、この場合ワクチンを打っていても打っていなくてもどちらも良いですが、、多分ほとんど人はワクチン接種をしていたのだろうと思われます、、この人たちもこれらの症状をワクチン接種をしてから感染した人と同じような割合であげているのです。興味深いですが、確かにこれらはよくある症状なので特定するのは難しいです。誰もが、頭が痛いことがあったり、疲れやすいな、と感じたりするでしょうし、長く続く倦怠感があるひとも多いでしょう。別の疾患が理由の場合もあります。持続的な筋肉の痛みも、誰もが、、というわけではないにせよ、多くの人にみられるでしょうし、理由は別なところにある場合もあります。それでも、ここでの違いが、非感染者と予防接種による免疫を獲得した後に感染した場合ではみられない、つまり、この患者には証明できるLong Covidがみあたらない、ということで、これは大変良いニュースだと思いますし、これが進むべき対策の方向だと思うのです。ワクチンをベースとした基礎対策は、巷では避難の的になることもありますが、私は、パンデミックにおいてはドイツも基礎にしっかりとワクチン免疫を確保した上で感染を許容していくべきだと確信しています。この論文からもわかるように、Long-Covidがほとんどみられなくなってきている、という傾向がある、ということ。勿論、これが最終的な知見ではないものの、とりあえず大変良いメッセージであることには間違いないでしょう。
しかし、呼吸困難や咳、神経性なものはこの論文では明らかになっていませんよね。
少数のケースに残る後遺症の症状というものは色々あります。それを詳しく調べる臨床試験が必要ですが、、その点に関しては残念ながらこの論文からは明らかになっていません。
とはいっても、朗報であることは確かです。しかし、この研究はデルタによるものでオミクロンではないですよね?オミクロンでも同じような効果がある、と考えでしょうか?特に、病原性がオミクロンでは少なくなっている、ということもありますし。
多分そうであろうと思われます。オミクロン感染では、特に神経性のもの、例えば、嗅覚や味覚障害のようなものが起こることが少ない、とも言われていますので、Long Covidにおいてもその方面では起こる確率が下がるかもしれません。とはいっても、ここが私の限界です。これ以上は私の専門外ですので、この分野の専門家にまかせるしかありません。もう今ではいろいろな専門家が情報を発信していますので私の出る幕ではもうありません。
オミクロンが出てきてからまだ日は浅いですので観察データもまだあまりありません。ですから、もう少し辛抱強く待つことも必要かもしれません。
それが専門家の意見でもあります。パンデミックが始まったばかりの時には、私の長年のウィルス学者としての経験からまだデータが集まっていなくても予測できることがいくつもありました。そこでしていた考察が何年も経った現在でも間違っていないのは、専門家としての経験があるからです。それは、ウィルス学者、感染疫学者だからこそできることであって、少し情報を集めたからといってできることではありません。ですから、私もLong Covidに関しては、少し聞き齧った情報だけで何かを言う、というのは正しくないと思いますので、その分野の専門家に任せます。このような症状、病像というものはコロナ感染の前からあったことでもありますし、神経学、リウマチ学、免疫学、臨床免疫学の専門家は、私がウィルスに対して持ち合わせている知識と経験と同じように、それらの分野に精通しているわけです。
それが、ここで子供のLong Covidに関してもそこまで掘り下げない理由の一つでもあります。参考までに、ですが、デンマークから子供のLong Covidに関する論文がでました。ワクチン接種をしていない子供が対象です。またSNSで話題になって、専門家、特に小児科医から批判的なコメントがあったりしましたが、この試験のデザインに少し難があることも確かかもしれません。しかし、先ほども言ったようにここでは詳細にふれないことにします。しかし、子供のワクチン接種率については取り上げたく思います。みてみたところ、12歳以下の子供では、十人に一人の割合で2回の接種が終わっていて、1回の接種では17%、ということです。かなり低い割合です。状況としては、予防接種を希望する場合にはそれが可能になっていますよね?少なくとも5歳以上は。
そうですね。5歳児以上からです。ここで言っておきますが、勿論、5歳以下でもハイリスクの子供は適応外使用でワクチンの接種が可能です。ワクチン専門医、もしくは小児科で接種できます。これは何度も言っていますが、そう行われています。子供の疾患問題に関しては、はじめの頃から私の感染疫学的な見解は変わっていなく、かなり初期に出したデータもそのまま有効です。その理由は極めて単純で、パンデミック、という状況下においては、全員、未熟なのです。ウィルスは全ての年齢層に平等です。そのような状況において、高齢者層を重点的にワクチン接種をしていくと、感染の対象が子供に移行してくるのは当然ですし、子供が感染を推進させて子供から拡がっていくのは当たり前の現象と言えます。仕方がありません。子供が感染を拡げている、拡げていない、などとメディアや政治で言われるのは語弊を生みます。このパランスは、集団の免疫が獲得されていくにつれて変化していくものです。現時点では、集団の免疫が成人層にかたまっているので、感染が子供に集中するのです。この状況をどうするのか、学校など諸々をどうしていくのか、ということに関しては様々な分野からの専門家が集まって政治にアドバイスをしていますが、学校に関することは、小児科医、小児医療の専門家、医師協会などが関わっています。現在のワクチン接種率、、このお世辞にも高いとは言えない接種率において、学校でほとんど制限ないまま高い感染者数を出し続けている、というのは、政治的な問題です。私が説明できるのは感染疫学的なことだけですが、小児科医は感染疫学と、さらに重症化に重点をおくでしょうが、子供には重症化がみられません。起こったとしても大変稀です。他の感染症、例えば、RSウィルスなどでは重症化の確率が高いです。感染疫学者として付け加えておかなければいけないことは、RSウィルスはパンデミックではない、ということです。つまり、ここには指数関数的な感染者の増加はない、という点を無視してはいけません。子供の重症化は、小児科の分野ですのでこれ以上は言いませんが、それでも、私から小児医療の専門家にお願いしたいことは、判断の際には疫学的な条件も考慮し、比較としてあげられる感染症がパンデミックではなくもうかなり前から土着しているエンデミックな疾患であることを忘れないでほしい、ということです。
子供のワクチン接種に積極的な小児科医も増えてきました。少なくとも5歳以上の予防接種は、この大変高い発生指数においては、、今の子供の7日間の平均発生指数は3000の領域ですから、、この発生指数では、合併症、多系統炎症性症候群PIMSのリスクを考えても予防接種は必要になってくるだろう、と。
推奨、というのはまだ別な話ですね。私が少し遠巻きにみている際に受ける印象は、小児科医の間にもかなり異なる意見があって、協会や医師会などからだされる内容は必ずしも全体的な意見を代表するものではない、ということです。
最後に、全体的な状況と特に感染者数についてお伺いしたく思います。先ほど、子供の発生指数は出ましたが、子供の感染者数は明らかです。学校で定期的に検査が行われている、というのも理由の一つですが、成人層においては多くの感染をみつけることができない、という現象も起きていると思います。ラボの負担は先週で95%に達した、ということでしたが、陽性率が全体の3分の1だったようです。発生指数は毎週50%の増加、PCR検査が足りなくなってきた、というのは最近よく耳にすることです。このような状況から、ロベルト・コッホ研究所は、これからの発生指数は目安にしかならない、と、、今、ざっくりと要約しましたが、、と発表しました。しかし、この他にも別の指標がありますよね。例えば、インフルエンザの監視などに使われるものですが、そのようなデータはどのくらい使えるものなのでしょうか?
そうですね、政治的メディアでの怒りの声はあることは確かで、これはインタビューの一部を切り取ったり、故意にねじ曲げられたり、誇張されたりして報道された結果です。これはメディアだけではなく、政党の政治方針までに影響を与えていますから、フェアだとは言えません。ラボには勿論キャパがあって、無限にそれを増やしていくことはできませんし、規模を50%拡大する、ということも安易なことではないのです。拡大する、といっても、機材を新しく購入したり、スタッフを雇ったり、とお金もかかりますし、その投資の元が取れるかどうかもわからないわけで、簡単に実行できることでもありません。発生指数のピークというのは多分2ヶ月くらいに渡る短期間のものだと思われ、その後には落ち着きます。増加は指数関数的であるのに対して、キャパの拡大は直線的にしか増やすことはできないのですから、そもそも現実的ではない話です。つまり、インフルエンザの時にも同じような問題があったように、全ての疾患ケースを検査することは不可能であるために、サロゲートシステム、というものを使うのです。ドイツには、インフルエンザ WebやAGインフルエンザ、重症ケースの場合にはICOSARIデータ、というものが存在し、これはロベルト・コッホ研究所がまとめえていますが、このようなデータから勿論、大体の年齢別の疾患負荷を予測することは可能です。診療所、病院、入院ケースなどです。これもロベルト・コッホ研究所がまとめています。もっと優れたデータ処理システムを持っている国もありますが、例えば、イギリスの国家統計局のデータからもどのように疾患が分布していくのか、ということがよくわかりますし、私の考察もこれをベースにしているものです。実際に、感染が子供に集中していますしこの年齢層での増加がみられ、成人層では減少傾向にあります。イギリスでみられる、この高いレベルでの横ばい状態はこの子供の年齢層によるものです。それがどこからくるのか、というと、それは勿論学校です。ロベルト・コッホ研究所のデータは勿論検査方法による偏りがある、というのは確かですし、学校での検査が一番定期的に集中的に行われていて発生指数が高いですが、理由はこれだけではないのです。イギリスのデータをみても同じ結果が出ているように、実際に子供に感染が集中していることは明らかなことです。ロベルト・コッホ研究所のデータも少し荒いかもしれませんが同じ傾向を示しています。第3週目の有症状のコロナ疾患の予測は、0〜15歳では1,3 〜2,3%、50歳以上ではその半分、0,6 〜1,3%。これが、ドイツのサーベイランスのデータです。このようにデータははっきり出ているのにも関わらず、政治やメディアではきちんとしたコミュニケーションがとれていない。その代わりに、「PCRの限界!ロータ・ヴィーラー氏の返答は如何に」などと報道されるのはフェアではありません。この2つは全く別で、関係がないことですし、発生指数を後から訂正するのも意味がありません。基準も違います。先週のウィークリーレポートをみると、来院ケースはどの年齢層でも増加傾向にありますが、まだ60歳以上では増えていません。これが先ほど私が指摘したことです。数だけに囚われてしまいがちですが、このようなサーベイランスシステムのデータをみることによって客観的な判断もできるのです。今の時点でまだ、高齢者での感染が酷くなっていないから、といって、これからも高齢者だけが罹らないだろう、と考えるのはあまりにも浅はかでしょう。この年齢層にも必ず感染は拡がります。そうなれば、必然的に入院率も上がり、状況も変わってくるのです。オミクロンは軽い、そう言われます。確かに、疾患経過は比較すると少し軽くなったかもしれませんが、現時点でのサーベイランスデータによると、35歳以下の入院率は増加傾向にあり、35歳以上では減少しています。ここが重要です。つまり、ウィルスはまだ高齢者には到着していない。しかし、それも時間の問題です。入院率は上がってきます。そのタイミングが、イースターのあと、暖かくなってくる頃に少しずれることを祈りますし、夏までにワクチン未接種者層がなくなってくれれば、冬を安心して迎えられることになります。
何か、同じことを去年も聞いたような気がするのですが、、、希望を捨ててはいけない、ということですね。
私も同じ気持ちです。
このまま行くと、発生指数自体はそこまで重要な指標ではなくなる、ということですね。病院のデータもそれとは別にありますし、これから接種率も上がれば状況も変わってきます。しかし、ということは、広範囲に渡る検査も必要なくなる、ということでしょうか。
そういうことになります。検査、検査、というのも中期的に今後やめていくことになるでしょう。今は全ての感染を調べることは不可能です。検査は、Test and Trace、つまり、検査をして接触を追跡する、という目的でここまで増やしてきたわけですが、ドイツでもそうであったように、他の国でもこれは困難でした。この感染症の強烈な感染速度によって、 Test and Traceというよりも、ワクチンという術がなかったときには、Test and Lockdownという手段を選ぶしかなかったのです。感染者数が急増して「全体に効果がある何か手を打たなければいけない。ロックダウンだ」と。結果的にはこれによって発生指数は抑えられました。保健所の個別追跡調査によるものではありません。そのようなことは単純に不可能だったのです。キャパ的、という問題よりも、この感染症の感染拡大速度によるものです。つまり、感染が発見された時点でもう次、いや、次の次の世代に感染が進んでしまっている。気が付かないうちに、です。これを後ろ向きに抑え込む、ということが結局できなかったのですが、それも無理な話でした。誰が悪いわけでもありません。言ってみれば、全体の指標を出すために恐ろしいほどの手間をかけてしまっている。知りたいことはどのくらいのウィルスが出回っているか、ということなのですから、本当はもっと簡単に調べることが可能です。そこで、サーベイランスシステムが有効で、これは、そのくらいの量のウィルスが全体で循環しているのか、それを世帯内調査や診療所調査からすることができて、地域毎にランダムに調査した統計です。規模と手間は今行われている検査よりも小さくて済みます。これは病院の入院ケース、救急外来、外来でも行うことができますし、これによって全体の感染状況の把握が可能になります。勿論、感染ケースを追跡したり、感染チェーンを断ち切ったり、ということはこの方法ではできませんが、正直なところ、今のような高い発生指数、そして若干軽症である変異株においてはそのようなことはまず第一に不可能である、ということ、そしてそれを全てする必要はない、ということです。というのも、学校の例をみてみるとわかりますが、学校では定期的に全員の検査をしていますが効果は出ていません。効果を求めるのであれば、クラスに一人感染者が出た時点で全員を家に帰すべきでしょう。しかし、それはしない。これは政治が決めたことです。そのように決めたのであれば、政治もその責任を自覚して、「情報はサーベイランスシステムから取る。手間とお金がかかることは今後はしない」と。そのような決断も今後しなければいけなくなるでしょう。
しかし、先ほど、そのような状況にはまだなっていない、と仰いましたよね。
まだそうはなっていませんが、そこに近づいてきているのですから、今からしっかりと議論するべきだと思います。
重要なのは、スクリーニングによる監視で、ラピッドテストによるものもあげられるかと思うのですが、これは、個人のリスクマネージメント、まだブースターをしても重症化のリスクを持つハイリスクへの配慮でもあります。これは、オミクロンブースターが出るまでは続けるべきことだと思うのですが、先ほど、私の個人的な経験からもお話ししましたが、私の6歳の息子の感染は、家でのラピッドテストで発覚しました。全く症状が出ていませんでしたので気が付かなかったのですが、偶然その日には私の両親が来る予定だったのです。その前にわかったのが幸いでした。リスク回避できた、ということです。
そうですね。それは重要なことです。ラピッドテストはまた別に考えるべきです。いままでの検査は、PCR検査のことであって、PCRのキャパです。勿論、今後PCRの需要がなくなるわけではありません。回復の確認であったり、という際にですが、そのような場合にも別の方法がないわけではありません。ラボで、抗体のレベルを調べることができますが、これも集団での免疫レベルがあがれば毎回検査しなければいけないものでもないのです。そうなれば、対策も緩和が可能でしょうが、これも政治が決めることです。今は移行期間です。しかし、先ほどもラピッドテストは自主的に行った、ということでしたし、自主的に行ったことによって、おじいちゃんとおばあちゃんの訪問を中止にした。これは個人の判断であって、保健所が指示したことではありません。ここがポイントなのです。日常での判断、日常での行動、パンデミックにおける個人のリスク管理においてはラピッドテストは今の時点では大変重要なツールだと言えます。なぜか、と言えば、それは、リスクを抱える祖父祖母がいるからです。それもある時点からそうではなくなるでしょう。というのも、ある時点からウィルスがそこまで循環しなくなります。国民全体での粘膜免疫のレベルが上がると、そこまで学校で流行することもなくなりますし、全体的にそうなってきます。祖父祖母もワクチン基礎免疫の上にウィルスとの接触による免疫を獲得していくのでそこまで守られなくてもよくなるのです。数年前にはインフルエンザに対してそんなことはしませんでしたよね。数年前におじいちゃんおばあちゃんに会う前に子供のインフルエンザテストなどしなかった。そういう意味では医療的な重要性はあったのにも関わらず、です。インフルエンザは無害な疾患では決してありません。しかし、そんなことをする人などいなかったわけです。それと同じように、SARS-2ウィルスでもこのまま延々とやり続けることにはならないのです。
今後の方向性についてはもう何度もこのポッドキャストでお話しいただいていますが、今回の流行では分析とモデルが出ていて、ピークがもうすでに2月の半ば、もしくはそれ以前に来る、という試算もあります。そこから緩やかになっていく、ということですが、これは現実的だ、と言えるのでしょうか?それとも、今後は全く予測できませんか?
このモデル試算は、BA.1でのものだと思います。つまり、初めにオミクロン株、と言われていたものですね。今、 BA.2が出てきました。私は、 BA.2はドイツ国内では他の国よりもゆっくりと拡大していくだろう、とみています。ですから、 BA.2が3月にもう一度感染者を増やすかどうか、という点でははっきりしません。可能性はあります。ですから、そうだ、ともそうでない、とも言えないと思うのですが、ただ言えることは、もう一度増える可能性はある、ということです。もし増えなければ3月にかけて減っていくでしょう。私的には、イースターの休みで学校や保育施設での感染が少なくなる、というほうが重要です。
そのあたりに、少なくともハイリスク用のオミクロンブースターが出ているかもしれませんし。バイオンテックがそのような計画を発表していましたので、していましたので、、
そうですね。
大体の流れがわかってきたものの、まだはっきりしていないところもたくさんありますね。はっきりしているのは、残念ながらまだ未接種者の層が存在する、というところです。そこから発生する疾患負担も引き続き問題となると思いますが、2週間、4週間後にもう少し新しいことがわかるかもしれません。今日もどうもありがとうございました。