ドイツ@Sars-CoV-2 コロナウィルスアップデート(115) 2022/9/23(和訳)
フランクフルト大学病院 ウィルス学教授、サンドラ・チーゼック
聞き手 コリーナ・へニッヒ
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STIKO は、オミクロン対応のワクチンをブースターとして接種することを推奨しています。対象はいままで通りで、若い免疫健全者に対しての推奨ではありません。しかし、もちろんこれは推奨されない、というわけではありませんし、さらにオミクロン対応、というのも2つの異なる亜種に対するものである、というところが混乱の種にもなっているところです。誰が、いつ、何を接種するべきなのか。そして、どのような効果が期待されるのか。 前回のポッドキャストからかなり時間がたちましたが、あれからかなり色々なことが起こりました。夏の感染の波も落ち着き、Covidの危機のかたちも全く別なものとなってはきていますが、、とはいっても、、この、「とはいっても」がなければ、このポッドキャストの最新回もなかったわけで、、先ほども言ったように、新しく承認されたオミクロン対応のワクチンに対して知りたいことは沢山ありますし、オミクロンが全体的なリスクの形態を変えた事は確かであるものの、全く何の心配もなくこれから冬を迎える自信がない人は多いのではないでしょうか。非医薬的介入は事実上なくなりましたが、Long Covidのリスクは引き続きあり、最新のCOSMOの統計によると、社会のなかでの免疫的な隙間は未だにあり、問題視する必要はある、と指摘します。それによって、感染者が多くなるにつれて疾患負荷もあがる、ということです。それらについて、今日も、フランクフルト大学病院のウィルス学教授、サンドラ・チーゼック先生にお話を伺います。聞き手は、コリーナ・ヘニッヒです。
まずは、感染状況から見ていきたく思うのですが、どの値がどのような意味をもつのか。そこから始めようと思います。まず、R値は、勿論現時点で1以上で、計算上は、1人が少なくとも1人に感染させている、ということになり、これは感染が拡がっていくインディケーターですが、この状況はここ2週間変わりません。1週間の平均発生指数的には、ここ1週間で増加傾向がみられます。これは、秋の感染の波の始まりだ、とみることができるのでしょうか。
難しいところですね。まず、秋の波、というものが何なのか、何が原因で起こるのか、というところからみていかなければいけませんし、それには大きく分けて3つの要因があると思います。1つ目に、行動。行動が増加すると、、これはここ2年でもそうでしたが、夏休みが終わって室内で集まる機会が多くなってくるにつれて感染が増えてくる、ということ。これは、室内のほうがウィルス的に感染の標的をみつけるのが容易になる、ということが原因です。私の周りでも感染ケースが増えていますが、、そもそも様々な呼吸器感染症が流行っていますので、感染症全体で増加傾向にはあります。
先生は、毎日現場にいらっしゃいますから、よくご存知ですよね。コロナかコロナではないか、など。
リノウィルスも最近は流行っていますし、、これも残念ながら気持ちが良い疾患ではありませんが、、更に、問題点となることは、コロナの感染対象となる層がまた広がっている、というところ、つまり、3回目の接種からかなり時間が経っている人の数が増えてきている、ということです。接種から時間が経ち、感染からも時間が経っている、、特に、オミクロンの初期に感染した場合などでは、接種直後、もしくは感染してから数週間、という人に比べると明らかに感染しやすい状態になっています。先ほどもでましたが、、私の周りでは殆どの人が感染済み、、多分、80%くらいがすでに罹ったのではないかという印象を受けますが、興味深いことに、COSMO統計においては、1000人の成人を対象にした際に、59%がまだコロナに罹患したことがない、という結果が出ていて、この結果は個人的に意外なものでした。というのも、私の周りの中年層、、子供の親の世代などではほとんど全員コロナに罹患済みなので、、勿論、その親の世代、高齢者層においては、接触頻度があまり高くない、もしくは在宅の時間が多く、注意深く行動している人も多いとは思います。そのような層ではまだコロナに罹患していない人も多いでしょう。学校でも、数回にわたって罹患したのは7%、と比較的低い割合ですが、、先ほども言ったように、59%がコロナ感染の陽性証明がされていない。これは少なくありません。3つ目に重要なのは、変異株です。新しい変異株がこれまでの変異株と比較してもより高い免疫回避のメリットを持つことなどにより、さらに多くの人に感染が可能になっていて、これが感染を拡大、もしくは感染の波を発生させる要因となります。この3つの因子は感染状況を見る際には常に念頭におくべきことであり、行動と感染の対象となる宿主の曝露率が問題であることは明らかですし、変異株に関してはまた後で取り上げます。
ここでCOSMO統計に一度戻りたく思うのですが、以前のポッドキャストでも取り上げたように、これはエアフルトで行われている調査で、定期的に行動様式などをはじめコロナに関連の国民間での傾向を調べるものです。ここで、全体の59%が感染の確定をすることができない、という結果にはなっていますが、これは聞き込み調査であって血清調査ではありません。全体的な免疫は、どれだけの割合で既に抗原との接触があったのか、それは感染によるものでも、ワクチンによるものでも両方ですが、、ここでも、意外な結果がでているのですよね?
その結果には私も驚きました。ここでは、感染とワクチンのどちらも入っていますが、60歳以上では、55%が、4段階免疫以下、、つまり、2回ワクチン接種プラス1回の感染、もしくは、3回接種でまだ感染したことがないケースなど、4回接触がなかった場合ですね、、これが、半分以上。リスクが高くなる世代での半分以上ですから、これはやはり今後冬にかけて考えても不安を感じる要素です。というのも、STIKOもこの世代では4段階の免疫を推奨していますが、多くが3段階、3回、感染を含めてですが、、3回の接触しかない。そして、全くワクチンの接種をしていない割合が10%、20%が3段階免疫以下、これも、もう少し改善が望まれる割合で、特に60歳以上、この年齢層での免疫の洩れを埋めることは十分可能であり、意味のあることであると考えられます。というのも、ウィルスが消滅する、ということはないのですから、自らを守る、という点でも重要なことだからです。
60歳以下でも、5分の1というのは、、これは18歳以上、60歳以下の成人ですが、その5分の1が3回以下の接触、ということで、基礎免疫だけ、もしくは、基礎免疫も完全ではない場合、つまり、2回の接種のみの場合もありますし、感染だけ、という場合もあります。この割合をみてみると、感染による免疫習得という点では過大評価がされているのではないか、と思いますし、RKIの3月の時点のモデリングでも、全体の7%が全く接触がなかった、と想定されていました。つまり、ワクチン接種も感染もしていないパーセンテージです。これは、まだBA4 とBA5が優勢になる前の話です。もう一度、現在の発生指数と検査陽性率についてみていきたく思います。というのも、COSMO統計でも、抗原検査の3分の1以上の陽性確認がとられていない、という結果がでていて、まあ、これは私たちが周りをみても受ける印象に一致すると思います。しかし、実行されたPCR検査の90%が陽性、ということなので、、
そうですね。抗原テスト陽性時では5ケース中の2ケースがPCR検査を行わない、その理由は、やるメリットがない、面倒なことになりたくない、などがあげられるでしょうが、これは勿論データへの影響もありますし、データからの何かの結論を導きだすことが困難になっている理由でもあります。検査の方法の違いと、徹底度、いつ検査が行われるのか、届出はされるのか、など、、しかし、データ的には完全ではなくても、詳しくみてみるとそこから傾向はみてとれます。まず、PCR検査の陽性率は上がっている、というところです。これは常に良いインディケーターとしてみることができるところですし、大学病院などは常に検査が行われていますから、、例えば、眼の手術や事故による外科手術などで来院する際には全員PCR検査されます。そのような検査で増加傾向がみられたり、陽性率があがってきたりすると、これもマーカーとしてみることができ、国内の感染拡大と相関します。さらに、下水分析データもドイツ全国は網羅されてはいないものの、広範囲で行われていますし、ここからも相関関係、発生指数とのギャップの把握も可能ですから、現時点でかなりの取りこぼし率ある、ということもわかっていますし、ますます発生指数と実際の数との差が開いていっていることもみてとれます。これらの数値は1年前の数値と比較することはできませんが、病院での検査、下水、発生指数などさまざまなデータを総計することによって、傾向というものはわかります。
なるほど。行動は変わらないのに発生指数が変化した場合には、単純に数としてのデータだけではなく傾向としての意味もある、ということですね。あともう一つ注目したいところは、この間、ロベルト・コッホ研究所のダッシュボードをみてみたのですが、いまだに、毎日100人以上がコロナで死亡している、ということです。残念ながら、免疫の洩れがあるかぎり、感染者が多い、ということは、それだけ犠牲者もでる、ということですよね。
残念ながらそうです。そして、そう簡単には状況は変わらないでしょう。週単位、月単位では引き続き多くの人が亡くなることになります。
今日はそれでも少し良いニュースも用意しています。それをまずは言っておかなければいけないかもしれないのですが、、今日のポッドキャストの始めに、この秋冬に感染の波が来るかどうかを決めるファクターがある、とお伝えしました。その中の一つが、進化、です。つまり、変異株がどのように進化していくのか。多くの免疫回避によっって、さまざまなかたちでウィルスはワクチンや感染で得た免疫応答を回避していくことが可能ですが、これもかなり複雑なシチュエーションとなっています。というのも、個人個人で状況が異なるからです。ワクチン免疫、感染免疫、ハイブリット免疫、、ワクチンと感染の両方、ということですが、、3回ワクチンを接種して感染した場合などです。ここで、どの変異株が今重要なのか、というところを見ていきたく思います。ロベルト・コッホ研究所の最新情報としては、オミクロン亜種BA5がドイツ国内で優勢になり、ほとんど他の変異株を押しやった、ということです。BA4とBA5は、夏の感染の原因となった変異株ですが、WHOによると世界の感染の4分の3がこの変異株によるものだ、ということです。ドイツ国内に関しては、、何がわかっているのでしょうか?全てのシークエンジングがされているわけではありませんし、、
ロベルト・コッホ研究所のウィークリーレポートをみると、現時点では、BA5が全ての変異株の勝者で、BA2とBA4の割合は低いです。しかし、ドイツ以外では、、例えばインドなどでは別の亜種がみられますし、BA2.75、これはBA2の亜種ですが、、これはドイツ国内ではほとんどみつかっていません。たしか、シークエンジングで50件くらいだったと思います。第45週目で、ですが、これはまだドイツでは重要ではない亜種で、ウィークリーレポートをみても、この亜種がBA5をベースとした環境で実際にメリットを持つのかどうか、、という点に関しては不明です。
つまり、感染力がアップしている、など、適応能力に長けている、という点についてですね。
そうです。他の変異株に対して、ですね。インドの状況はまた違ったので、BA2に対してのメリットがあったわけですが、これがBA5に対しても当てはまるかどうか。今後みていかなければわかりません。ウィルス学的に、シークエンジングの量が足りない、ということを言うことは容易く、全てのケースをシークエンジングすることが勿論ベストなことは確かですが、それはさまざまな理由から不可能なことです。ドイツで現時点であまりシークエンジングがされていない、ということは事実で、1〜3%ですが、その理由は、ラボの視点から説明すると、、検査をしなければいけないものは、Sars-Cov-2以外にもたくさんある、ということ。他にも多くの疾患が存在しますし、別のウィルスの検査もしなければいけません。そして、夏休み、ということと、スタッフの欠勤です。ですから、優先順位、というものをつけていかなければいけないですし、1週間の間に検査できる量は限られていて、、今は猿痘の検査の量も増えていますから、、検査の量が増えても、スタッフは増えませんし、そのなかで、どこまでシークエンジングができるのか。そのなかで他の作業とのバランスから、そのような手間がかかる作業をしない、という決断をするラボもでてくることは当然ですし、何ができて何ができないか。HIVや猿痘の検査のほうが、シークエンジングよりも重要だ、とみることもできます。ちょっと挑発的な言い方かもしれませんが、これが徐々にシークエンジングの数が減ってきた理由でもあります。もちろん、ウィルス学者的にはそうではないことを願いますし、もっと数が多ければそれに越したことはありません。シークエンジングすることによって、ある一定のパーセンテージを超えて増加傾向にある変異株の動きなどを把握することができるわけですが、現時点では外国からの情報、イギリスなどからの情報に頼るしかなく、、
デンマークもですよね。
そうですね。それらの国はデータを公開していますから、それをみることになりますが、ドイツの現状は変えることは困難だと思います。スタッフの数を確保できる時にはもう少しシークエンジングの数を増やしたりはしていますが、やはり、もっと優先順位が高い検査、緊急を要するものが一定数ありますので、、
とりあえず、BA5がいまのところ重要な変異株、ということですね。しかし、今後もしっかりみていく必要があるのは、これらのオミクロン亜種は大変複雑で、、一般人的には理解が困難になってきています。先ほど、BA2がでましたが、ドイツではまず、BA1で、その後にBA2、そして、BA4とBA5に置き換わりました。この二つは大変似ている、ということですよね。
その点についてはここで少し説明する必要がある、と思うのですが、BA4とBA5は少し違う性質を持っていて、より高い融合性、つまり、細胞のダメージの度合いがより高くなっている変異部がある、動物実験からは、この融合性が病毒性につながる、という結果もでています。
細胞と融合することによって、病毒性が増す、ということでしょうか。
より多くの細胞を破壊する、ということです。そして、BA1よりも下気道の感染を起こし、中和抗体の効果もBA4とBA5にはあまりない。免疫回避の性質があるからですが、、もちろん、BA1からBA2への移行時に比べると、そこまで大きな変化ではありませんが、それでも病院で観察されることは、以前に比べるとまた肺炎になる人の割合が多くなっている、ということです。
さきほどはBA4とBA5同士は似ている、ということを言いたかったのですが、、、
あ、そうでしたか。BA4とBA5同士は似ています。それでも、BA5のほうが優勢になりさらに進化していっていますので、さらにBA5からの変異が起こっています。
ここで、少し混乱を招いてしまうかもしれないのですが、、今、SNSなどで持ちきりの話題ですし、科学的にも注目されていると思われますので、あえてここで取り上げますが、、BA4.6はアメリカで増えていましたし、BQ1.1、これもBA5の子孫です。これをまとめても、まだ現時点では適応性のメリットに関してはまだよくわからない、ということでしょうか。
わかっていることは、BA2、つまり、BA2.75.2からの発展と、BA5からのものが両方あって、どちらともパターン的にはよく似ています。どちらも、大変高い免疫回避の性質を持っていますが、これは勿論ウィルスの視点からみると当然なことであって、ウィルスが感染を可能し増殖にするためには必要な性質です。これがウィルスの仕事なわけですが、私たち的に問題なのは、それによって、モノクロナール抗体を使った治療がどんどんできなくなる。効果が薄れてしまうからですが、、
免疫不全の場合の治療に使われるものですね。
例をあげるとそうですね。そして、感染からの防御、という点でもさらに効果が低くなることになりますが、まだデータ的には十分ではありませんので、こうだ、ということを言い切るにはまだはやいです。そのくらいの速度で増殖するのか、どのくらいの規模の感染の波に発展する可能性があるのか。どの変異株が生き残るのか、というのはまだはっきりしません。ツイッターでも様々な分析が飛び交っていますが、現時点ではそこまで重要な決めてとなることはありません。
ドイツでの下水分析からデルタ株が戻ってくる危険性がある、ということを耳にしました。デルタはオミクロンよりも重症化することがわかっていますが、、
いまのところ、デルタが戻ってくる、という兆しはありません。検査や下水分析からも、デルタは完全にオミクロンに押しやられていますから、ここから復活する、という傾向は現時点ではないです。
今後の進化の面で、少なくともこのような傾向がある、ということをまとめることはできますか。例えば、この部分のゲノムの変異、スパイクタンパク質の部分の変異は起こるが、その他の部分の変化はほとんどない、など。
重症化を阻止する、という面や、免疫応答を考えると、T細胞応答にはそこまで影響がないことを願います。どちらかというと、感染のしやすさ、という点での変化で、ブレイクスルー感染が起こりやすくなる、ということです。
良いニュースでもあり悪いニュースでもありますね。変異した部分に対する抗体もありますが、ここで、進化、というところに目を向けたく思います。進化速度的には、今はどのような感じなのでしょうか。進化度、と言いますか、それはどうなのでしょう。例えば、インフルエンザと比較して、など。インフルエンザの進化は大変速く、ワクチンの対応が間に合わないことで有名ですが。
これは、いまだに驚くべきことなのですが、、進化度がコロナウィルスにしては大変高い、ということです。この点は大変明確です。これに関しての論文が、クリスティアン・ドロステンとフェリックス・ドレックスラーによって発表されています。これは少し前のものですが、、そこでは、新型コロナの進化度は、往来のコロナウィルスに比べると高いものの、インフルエンザよりは低い、とあります。この論文は2021年のものですが、Sars-Cov-2の進化度が他のコロナウィルスと同じになるには後どのくらいかかるのか、それを予測するのは、、少なくとも、私的には大変難しいです。現時点での進化系列としては、BA2とBA5、オミクロン株からの進化ですが、これ自体はどちらかというとポジティブなものである、とみて良いと思います。というのも、オミクロンに限定されると、全く別な変異株を相手にしていく必要がない。オミクロンは当時はそのように突然新しい変異株としてでてきたわけですが、、やはりそのようなことの予測は困難です。インフルエンザとの比較が難しいのは、ウィルス学的な理由もあり、、まずゲノムが違います。インフルエンザは、ゲノムの一部がそのまま増殖することが可能で、その部分での遺伝が行われますので、そこから様々なコンビネーションがつくられますが、そのようなことはコロナウィルスにはできません。とはいっても、私たちの想像以上に変異が容易に行われていることは確かです。さらに、いまだに大変多くの感染が起こっている、というのも重要なポイントで、それによってウィルスに更なる変異のチャンスが与えられ、環境により適応していく、ということになるのです。ですから、今後の予測をすることは難しいですが、オミクロン株のままでいてくれたほうが、全く新しい変異株がでてくるよりも頭を悩ませなくても良いので好都合です。
ポッドキャストの前にミーティングをするのですが、その際にいくつかのキーワードが出てきます。そのなかで、これは取り上げた方が良い、と意見が一致したのが、インフルエンザ、です。というのも、これから秋、冬にかけて、コロナにばかり注目されていますが、医療従事者、及び学者のみなさんがそれよりも懸念しているのはインフルエンザ、ということですが、、
このポッドキャストの収録の前に、ギーセンの先生と話したのですが、もうインフルエンザの季節が始まっている、と、、、
もうですか?
数ケースですが、もう始まっています。確かに時期的にははやいので、今後もみていく必要はありますが、私たちのところでも検査されたケースは、東ヨーロッパから帰ってきた人たちでしたが、そのように持って帰ってくるケースなども含め観察していかなければいけません。南半球、オーストラリアの今冬には、かなり激しいインフルエンザの流行がありましたが、それも通常よりもかなりはやくに始まっていました。インフルエンザの季節はドイツでは年末年始、特にカーニバルの時期ですが、、
ひどいタイミングですよね、、笑
どうしてそうなのかわかりませんが、、笑 その後に感染が増えることになっていて、まずは年末年始、そして、カーニバルで流行ります。しかし、今年は南半球、オーストラリアのようにドイツでもはやくに流行る可能性はあって、ここ二年間の間ほとんど流行していなかった、ということもありますが、これは特にインフルエンザのワクチンを打つ際にも重要で、私もいままでインフルエンザのワクチンは結構遅いタイミング、年末くらいに打っていたのですが、、ワクチンは接種後10日くらいから効果がでますが、、
効果はあまり長くは持続しないのですよね?ですから、あまりはやく接種しないほうがよい、と、、
ですから、家庭医や病院もいつ流行がはじまるのか、というところを注意深くみているところです。始まったら迅速に、まずはハイリスクの患者に接種できるように準備が必要です。オーストラリアのようにはやくはじまる可能性もありますし、数的にもオーストラリアの流行はかなりの感染者数でした。今、季節は夏に入りましたので感染は落ち着いていますが、同じ規模の感染流行がドイツで起こる、と仮定したならば、70万人が感染する計算になりますから、インフルエンザの感染的には大変大きな規模です。そうなれば、明確な感染の波となり、インフルエンザは決して気持ちの良い感染症ではありませんから多くの人が1〜2週間病気になって欠勤するでしょうし、、
ハイリスクの人たち、高齢者にとってはリスキーな疾患ですよね。
ハイリスクの人たちだけではなくて、残念ながらインフルエンザは、若い世代でも重症化することがあります。原因は不明ですが、死に至ることもあるのです。どちらにしても、軽くみてはいけない疾患です。よく、「インフルエンザワクチンを打ったのに感染した」という話を聞きますが、その場合は、私のようにほとんどが、リノウィルスによる感染で、、本当のインフルエンザは決して甘く見てはいけないウィルスなのです。STIKOの推奨にも、接触頻度が多い人、販売業などに従事している場合、とありますし、インフルエンザの流行は激しいので数年ごとに感染は流行りますが、その度に医療に負担がかかるのです。この二年間、全く循環しなかったので今後流行することは間違いありませんが、それが今年なのか、来年なのか。対策の影響もあるでしょうけれど、、マスクの着用がどうなるのか、など、、そのような感染対策がどのように行われていくのか、ということでも変わってはくるとは思われるものの、いつかは起こりますし感染の波に発展します。南半球、オーストラリアのようにドイツでも起こるかどうかはわかりませんが、可能性はあります。
STIKOの推奨はまだ全員に対するものではありませんが、特に小児科医が子供へのインフルエンザワクチンを薦めています。コロナウィルスとはまた違って、感染拡大を阻止する効果もありますよね。
インフルエンザに関しては、他の国では子供へのワクチンの推奨はされていますし、経鼻ワクチンもあります。針で注射しなくてもよい、という点では保護者的にも魅力的なのではないかと思います。鼻スプレーやジェルですね。それによって感染防止になりますし、9歳以下の一番始めのワクチンは2回の接種ですが、これも小児科医と相談して、例えば、家族にハイリスクがいる場合や、多くの子供との接触する施設にいる場合、ハイリスクの子供がいる場合、子供にもインフルエンザワクチンを打った方が良い場合もあります。STIKOからの推奨は出ていませんが、小児科協会からは推奨されていますし、これは全てのワクチンに当てはまることですが、推奨されていない、ということは、打ってはいけない、ということではありませんので、、各自の判断で接種することが可能です。
(新型コロナの)感染対策によって、まだ生まれて一度もインフルエンザに罹っていない子供がたくさんいますよね、、、。忘れないようにメモしたことが1つありました。高齢者で4回目のブースター接種をする予定がある場合には、同時にインフルエンザワクチンを接種できる、ということです。
そうですね。これは去年にすでに出ている推奨ですが、同時に打っても問題はない、ということで、時間がなくて何度も病院にいけない場合など、、同時に接種しても大丈夫です。
先ほど、ブースター接種、と言いましたが、、これは多くのリスナーの方々が知りたい、と思っている情報だと思います。オミクロン対応のワクチンです。誰がどのタイミングで接種するべきなのか。モデルナとファイザーから、2価ワクチンが出ていて、2価、というのは2つの効果、という意味で、半分は、野生型のスパイクタンパク質、そしてもう半分はオミクロン株に対応しているものです。ここから少し複雑になりますが、、BA1もしくはBA5、今巡回しているタイプに対応していて、モデルナは、いまのところBA1タイプ、BA5はこれから予定されてて、アメリカではすでに承認された、ということです。バイオンテック社のものは、どちらも承認済みです。BA5対応のワクチンがもうすでに診療所で接種の準備が整っている、ということですが、ここで言っておかなければいけないのは、この2価ワクチンはブースターワクチンとしてのみ承認されていて、基礎免疫用ワクチンではありません。今後基礎免疫用ワクチンの接種を検討している人の数はそう多くはないとは思いますが、最近12歳になった子供や5歳になった場合など、1価ワクチンの接種機会はあると思います。ブースターとしてこの2価ワクチンが選ばれた理由は、その亜種が優勢になるかわからなかったからですよね?
それについて考えてみたのですが、2021年の年末にオミクロン株が突然出てきた際に、学者の多くが、デルタやアルファと並行してオミクロンが存在するようになるのではないか、デルタからまた更なる亜種が出てくるのではないか、と考えていました。その時のことを覚えている人も多いのではないか、と思うのですが、あの当時は誰もまだどうなっていくかわからなかったわけで、そのような可能性も十分にあったのです。誰も予測ができなかったので、あの時に、2価ワクチンにする、という決断をしたのです。デルタが戻ってきても困らないように、ということですね。逆に、オミクロン対応だけのワクチンにしてしまって、デルタが戻ってきた場合を考えると、そちらのほうが困りますし、当時は単純にどうなるかが明確ではなかったので、1価ワクチンと2価ワクチンのどちらが適しているか、という点でも難しい決断でした。インフルエンザにおいては、、4価ワクチンです。4種類が入っているわけです。このように経験上でも、安全で効果も期待される、ということがわかっていますから、そのような経験が決断の決めてとなったと言えるでしょう。ですから、そのように決められた理由、どうして2つを混ぜたのか、ということは理解できます。まあ、今となっては、デルタとオミクロンが並行して存在はしていないわけで、、オミクロンの亜種が支配している、世界的にそういう状況にはなってしまっていますから、「古い型を入れる必要はなかったじゃないか」と言う人もいるかもしれません。しかし、後からだとなんとでも言えますし、ここからもウィルスの進化を予測することがどれだけ困難であるか、ということがわかると思います。ですから、常にその時その時の最善を尽くすことが重要で、今は2価ワクチンがあって、1価ワクチンはないわけですから、、次のワクチンを作る際にはもしかしたら1価ワクチンで良いかもしれません。それでも、ウィルスの進化は予測できないので、、それが正しい決断である、という保証はないのです。これが、どうしてこのようなワクチンになったのか、という背景です。
とはいっても、全体的にRNAの量が少ない、というデメリットもあります。半分半分ですから。バイオンテックで30μg、その半分ですから、15μg分がオミクロンで、、
いや、データをみてみると、特にここがデメリット、ということではありませんし、全体の量としては十分で、古い型に全く効果がないわけではありませんので。
重症化防止、という面でも、ということですね。
それは勿論ですし、データを比較すれば違いがあることには間違いありませんが、それよりも重要なのは、臨床的にも違いがあるのかどうか、実際にそこまでの違いがでるのかどうか、というところです。
では、データを順を追ってみていきたく思います。まずが、BA1に対応したワクチンはモデルナとバイオンテックの両方で出ていますが、これには臨床データがあり発表されています。数百人の治験者を対象としたものです。しかし、BA5対応のワクチンに関しては、動物実験からのデータしかありません。素人的には、どうして動物実験しかしていないのに、BA5対応のワクチンを実際に接種してもよい、ということになるのか、という疑問はでると思うのですが。治験はしなくても良いのでしょうか。
先ほども言ったように、BA1に関しては、ニューイングランド・ジャーナルで論文が掲載されていて、たしか800人の治験者が参加していたものだったと思いますが、、
モデルナのワクチンで、ですよね?
モデルナの2価ワクチンです。ブースターワクチンは、3回目の接種から平均値で4ヶ月半後に行われていて、比較的早い段階で接種されています。ここでは、通常のワクチンと比較して不作用などの増加はみられなかった、とあります。いままでのワクチンと構造は同じですし、反応性も似ています。勿論、中和抗体も調べられていますが、ここではBA1に対する中和抗体が2価ワクチンの接種によって多くつくられた、とあり、さらにBA5、BA4に対する中和抗体もより多く形成される、とあります。それまでの古い型のワクチンと比較して、です。
BA1に対応したワクチンで、ということですよね。
ただし、、ここで、ただし、と言っておかなければいけないことは、どちらも、抗体の増加は1.5倍であって、10倍、というような規模ではなく、若干の効果の増加です。そして、BA4、BA5に対する中和抗体の量は少ないです。数で比較すると、BA1へは、2300、2400、BA4、5に対しては700、720くらいでした。このレベルでは、感染防止効果を持続するのは難しい、と言えます。というのも、いままでのデータからも、時間が経つにつれて抗体価は下がっていくことがわかっていますし、この700、という数値自体もそもそも高くはありませんから、ここからまた下がっていくわけですから、安定した免疫を獲得することはできません。さらに、この両方の変異株に対しては、対応ワクチンと古いワクチン、どちらでもブレイクスルー感染がおきる、ということが確認されています。
同じ割合だったのですよね?
そうですね。しかし、この論文では、症状的にはほとんど違いがでなかった、とあります。ここも重要なポイントです。これが今出てきた始めの臨床データです。というのも、「臨床データがなければ接種はしたくない」という人も多いですから、少なくともモデルナのBA1対応ワクチンに関してはデータがでている、と言えます。
これは、精神的なものでもありますよね。不安に思ったりするのも当然だと思いますが、インフルエンザのワクチンも毎年大きな治験をやり直してつくっているわけではなく、(往来のものを)対応してつくられてます。一部だけを交換する、と言えますよね?
そうですね。バックボーン、全体の構造は全く変わりません。一部のシークエンスを換えるだけです。インフルエンザワクチンの場合にも、毎年臨床試験を行うわけではないですし、、もし、そのような試験を毎回しなければいけないのであれば、、今回もそのようなことをおこなっていたらば、、今の時点でやっとBA1の試験が終わったくらいでしょうから、、ウィルスの進化的にはもうすでにBA4、BA5に移っていている現状を考えると、、間に合わない、追いつかない危険性のほうが高いのです。こう言わざる得ませんが、このBA1対応ワクチンももうすでに今巡回している変異株、BA5に対応するものではないわけですし、、ここが問題であって、ジレンマであるとも言えるでしょう。勿論、臨床データは必要です。「データをみたい」という人の気持ちもわかります。確かに、ハイリスクではない場合には、「臨床データをみてから接種する」という選択肢もあると思います。しかし、結果的に常に数歩遅れることになる、というところも自覚しなければいけません。現在行われているBA4、BA5の試験をとっても、これらのワクチンが承認されたらもうおしまい、というわけではなくて、勿論その後でデータが取られるので、、このデータが出揃うにはまだ数週間、数ヶ月かかりますから、、その頃には別の変異株、、先ほどの何でしたっけ、、BA2.75.2、、のようなものであったり、BQ1が主流になっている可能性もあるのです。「臨床データを出せ」という要求に容易には応じれない理由がここにあります。勿論、臨床データは重要でそれを決断する際の判断基準にする方も多いでしょうけれど、そうすることによって、1歩、2歩遅れてしまう、という可能性も十分にあり得ることを自覚するべきです。相手はウィルス、ですから。インフルエンザワクチンは対応することによってつくられるワクチンですが、、今回は、感染回復者のデータ、、これは私の研究所で行われましたが、BA1、BA2、BA4の感染回復者のデータを比較して、どの変異株にどのような免疫応答がでるのか、どのくらいの範囲で現れるのか、ワクチンによる免疫応答とも比較してデータをとっています。そのようなデータから承認がだされていますし、STIKOも推奨を改正し、ブースター対応ワクチンの推奨が出ています。臨床データも、後数週間、数ヶ月で出てくると思います。
先生の研究データに関してはまた後で触れますが、、というのも、かなり興味深いデータが満載ですので、、しかし、その前に、、BA1の対応ワクチンの承認の際に臨床データが必要だった理由は、古いワクチンから対応ワクチンにする際に大きく変更される部分がいくつかあった、ということですよね。
そうです。デルタ株、もしくは野生株とオミクロン株の違いは大きく、それに対応するには大きな変更を行う必要がありました。BA1からBA4、BA5に対応するにはそこまでの変更は必要ありませんから、かなり似たワクチンである、と思って良いです。
ここで付け加えますが、モデルナのBA5ワクチンのデータが全くない、というわけではなくて、まだ臨床データが公開されていないだけで、動物実験でのデータは発表されています。
BA1、BA5を他の変異株と比較したデータもあります。そこでは、対応ワクチンのほうがいままでのワクチンよりも、免疫ナイーブなネズミにおいて、、感染をしたことのないネズミですね、、その場合により高い効果がみられた、とあります。
さて、バイオンテックのBA5対応ワクチンは承認されて接種が開始されます。先ほど、チーゼック先生も研究に協力されている論文が発表されたことをあげました。ただ、これはまだプレプリント、査読されていない論文で、先生は、ご自身の研究でもまだ査読されていないものに関してはこのポッドキャストでは取り上げたくない、というスタンスでいらっしゃいますが、現時点でこの論文しかBA5対応ワクチンに関するデータがない、ということもあり特別にお願いできますか。
私たちはワクチンの開発には携わっていません。私たちのデータは、BA5の感染回復者のもので、その前にも、BA1とBA2の調査を行いました。このようなデータはワクチンの開発においてもベースとなるもので、それぞれの免疫応答がどのように起こるのか。完成回復時に起こること、どのように経過を辿るのか。基本的にワクチンの効果は自然感染後と同じような効果、抗体に関してはもしくはそれを上回る効果がなければいけませんので、この点を、バイオンテック社とマインツ大学、フランクフルト大学と共同で調べました。治験者はBA5の感染回復者で、ワクチンを使ったものではありません。ワクチンは残念ながら入手することもできませんので。ワクチンを使った試験はバイオンテックでしか行われていません。
しかし、素人的には大変興味深い内容だと思うのですが、ネズミのワクチンに対するデータは実際の感染後の免疫応答にもつながると思われますし、もうすでに、他のウィルス学者、マイクロ生物学者、免疫学者などがこれに関して、様々な意見を発表しています。そうでなければここで取り上げることはしませんし、、
BA5に感染した患者からとったデータが、ワクチンを接種したネズミのデータに似ている、というところです。このように似たようなパターンを見出せることは大変重要です。今までに発表された感染回復者データに関しての3つの論文を合わせて見てみると、BA1からの応答は狭く、ほとんどBA1に対してのみ、BA2ではもう少し範囲が広くなり、BA5では、いままでのタイプ全て、、BA1からBA5まで全てに対する応答がある。一番広範囲でした。しかし、これは当然といえば当然のことであって、というのも、BA1が出てきた時にはBA1自身はこれからどのように進化していくか、ということはわからなかったわけですから、、変な言い方ですが、、一番最後に出てきた変異株が一番広範囲で、一番始めのものが狭い、というのは当然です。これが患者で観察されたことで、今後も調査は続けられます。これが私たちが協力した部分で、ワクチンにかんしてはバイオンテックは2つの実験を行なっています。1つ目は、ネズミを二段階で免疫をつけて3回目のブースター接種の際に様々なワクチンを使う、というものです。古い型のワクチン、BA1とBA4、BA5の1価ワクチン、2価ワクチン、先ほども言ったように、古い型とBA1、BA4、BA5が半分半分のものです。ここでブースターとしての効果をみてみると、一番データ的に効果があったのは、BA4、BA5の1価ワクチンでした。これは、全ての変異株、BA1、BA2、BA4、BA5、BA2.12.1に対して一番中和抗体が多くみられました。
これは先生が感染回復者で観察した結果とも一致する、ということですね。
そうです。BA1の1価ワクチンでは、BA1に対する良い応答があり、BA2に対しては少し劣り、BA4、BA5に対してはそこまで良い応答はみられませんでした。2価ワクチンにおいては、中和抗体のBA4、BA5に対する応答が1価ワクチンに比べるとそこまで高くはありません。応答自体は似ています。より高い効果がみとめられた1価ワクチンは接種用につくられていませんので、今後考えていくべきことは、やはり変異株の調べつつ、1価ワクチンも用意する必要がある、ということだと思います。
1価ワクチン、というのは、例えばBA5に対応したものをつくる、ということですね。
うーん、私は製薬会社ではないので、できるかどうかもわからないのですが、、多分、今シーズンにはどちらにしても間に合わないでしょう。これはやはり今後の課題として、これから、BQ1とか、そういう変異株が増えてきてまた対応ワクチンが必要となった場合に、念の為に1価ワクチンもつくる。ワクチンの接種状況や感染経験パターンもどんどん個人差が出てきますし、古い型の接種はしたくない、対応ワクチンだけを希望する人も増えてくるでしょう。決断をするのは容易ではないと思いますが、今出ているデータを見る限りではそのようにしていく必要性もあると思われます。
例えば、私は1月末に感染しましたので、多分BA1だったと思われますが、それからかなり時間が経っていて、、抗体も減少している状態だと思います。私のようなケースでは今、もしBA5の1価ワクチンがあればより効果的に免疫をアップグレードできる、ということですよね?
ここで一つ言っておかなければいけないことがあると思うのですが、、これはツイッターでも話題になっていることで、、この場合の中和抗体の応答、というのは、臨床において大変重要なポイントで、これが効果、という点では決めてとなりますが、持続性ということになると、、また話は別です。ここを調べる、というのは大変難しい上に時間がかかる調査ですし、、勿論、データはこれから集められますが、、1つ確かなことは、血清中の1つの数値だけをとって判断する、そこだけに集中するべきではない、ということです。その数値だけをみて、「〇〇の値まで上げる」とか、「こちらは 0,8低いからこちらのワクチンは接種したくない」とか、、そのようなことになるのはナンセンスです。この説明で理解していただけるかどうかわからないのですが、これは単純に計測可能な数値の1つであって、他にも重要なところはいくつもあるのです。例えば、重症化に対するものであったり、これに関しては、古い型のワクチンでも同じ効果が期待されます。少なくとも、現時点でのデータでは効果が劣る、という結果はでていません。
重症化リスク、という点では、感染時のリスクを考えると、BA1ブースターワクチンの接種を薦める声もありました。BA5のほうがより適しているのでしょうけれど、、それでも、それを接種できなくても落ち込むことはない、ということですね。
そんな必要はありません。古い型でも、抗体の増加はみられますし、対応ワクチンに比べるとそこまで感染予防効果はないにせよ、、ここでまた言っておかなければいけないことは、ここでの感染予防、とは何か、というところです。数週間長く感染しない期間が持続するしたとしても、だからといってもう少し待った方がよかった、待って別のワクチンを打ったほうがよかったとは、データをみても臨床的には言えません。4回目の接種、古い型でのブースターは現在70歳以上で行われましたが、それは今後またデータで見ていく必要があります。先ほどの論文の補足ですが、バイオンテックの3つ目の試験は、免疫ナイーブなネズミによるものでした。ここも興味深い点だと思うのですが、ナイーブなネズミ、つまり、一度も感染を経験したことがないネズミ、、
ワクチン接種も行われていない、ということですね
そうです。ワクチンも感染もしていないネズミです。そのネズミに2価ワクチンを打ったところ、全ての変異株に対する広範囲での効果が認められています。ですから、このような2価ワクチンがある、ということは全く無意味なことではなくて、特にまだ1度もワクチン接種を行なっていない人、、そのような人は少なくこれから接種を検討している人も少ない、ということは重々承知ではありますが、、それでも、先ほども出たように12歳以下の子供もいますし、そのような子供たちが1回目の接種をする場合など。現時点では承認はされていませんが、今後データが見直されて今後のワクチンをつくっていくにあたって大変重要になっていくことは確かだと思います。特に1回目の接種をし始める子供たちにとっては重要なポイントになってくるでしょう。
ここが現時点でのジレンマでもありますね。2価ワクチンを基礎免疫用ワクチンとして承認して、ブースター用には対応した1価ワクチンを使ったほうが効果はあるように思いますが、現時点ではその逆であることは仕方がありません。
ないものねだり、は世の常ですね。笑
隣の芝はあおいです。笑
とはいっても、これはまず初めに出てきたデータですから、これからどんどん別のデータも揃ってきて、、承認機関も動いていくと思います。このような手続きは思っているよりも時間がかかるものですし、後からわかることはたくさんあります。常にその時に最善と思われることしていくしかないのです。
みなさんが知りたいことは、このブースターワクチン、、BA5対応のワクチンが臨床的にも問題ない、となった場合に、、どのような人が接種するのが効果的なのか、ところだと思います。勿論、始めに言ったように、全体ではまた大きな免疫の穴があって、、2回接種して、まだ感染していない場合などには、3回目のブースター接種として対応ワクチンがSTIKOからも推奨されています。しかし、BA5対応ワクチンが、広範囲での効果がある、となれば、私のように、「どの変異株に感染したか」などと考えなくても、それを接種すれば全ての変異株を広範囲にカバーできる。もし今後ブースターを打つ、ということになれば一番適している、と言えますよね? 夏にBA5に感染していなくても。
現時点ではそう思います。これが一番最後に巡回している変異株ですから。もし、数週間前にBA5で感染をした場合にはどちらにしてもまだ数ヶ月は時間がありますから、安心してウィルスの進化を傍観していただくことにして、、笑 そうではない場合には、やはり一番新しい変異株への対応ワクチンが一番広範囲の効果がありますし、もしかしたら、今後出てくる変異株に対しても効果がある可能性もあります。モデルナとバイオンテックのデータからもそのように考えますが、、勿論、これは私が毎日毎日聞かれることでもあるのですが、、「誰がワクチンを打つべきか」それに関しての答えを出すのにどんどん消極的になってきています。というのも、どんどん複雑になってきているからです。単純に状況が変化したのです。医療的、臨床的にみて必要な免疫確保は3回の接種で得られ、優先的に行われてきました。12歳からの推奨もSTIKOから出されています。しかし、全体のシチュエーションは変わってきています。ここ数ヶ月、かなりの人がオミクロン株に感染し、ワクチンと感染によって広範囲の免疫を持っています。残念ながら、古い型のワクチンでは、オミクロンの感染は効果的には防げませんから、多くの人がワクチンを打ったのにもかかわらずブレイクスルー感染をしました。ですから、「ワクチンを打つかどうか」という質問に対しては、今までとは違う点も考慮していかなければいけないのです。ただ、今これから、対応ワクチンの接種が始まるにあたっては、ワクチンを打ったほうが良い対象は、まずは高齢者とハイリスクです。そのために必要なワクチンを確保する必要があります。ワクチンの数は十分にある、と聞いていますが、それ以外にもロジスティック的なもの、家庭医、診療所で接種ができるまで、老人ホームでの訪問接種、在宅介護の場合など、、これは莫大な医療的な負担です。ここを過小評価するべきではありません。ですから、誰もがワクチンに飛びつくのではなくて、まずは60歳以上に行き渡るように。ここが忘れられがちなところです。
若い層ではいまのところそこまで重要ではないですし。そこが以前とは違いところです。3回接種していれば免疫的には悪くないですよね。
私もどうするのがベストなのか、、長く考えていました。私は全ての人に対しての決断をすることはできませんが、、ベストなのは、紙にポイントを書き出していく ことかもしれません。年齢が高くなればなるほどリスクは上がりますし、疾患が重ければ重いほど、そして、免疫不全があればできるだけはやくブースター接種するべきです。さらに、若年層に関しては別のファクターが重要になってきますが、これは基本的なSTIKOの推奨には当てはまらないポイントで、例えば、いままでのワクチンからの反応はどうだったか。接種後に問題が出ていた場合などは今後の接種を考えたほうが良いかもしれませんし、何回感染したか、オミクロンでの感染はあったか、など、そのあたりでも大きな差があります、、
感染の自覚があるか、ということもありますが、、
オミクロン系列に感染したことがある場合と、全く感染したことがない場合での差は大きいですし、どの変異株に感染したのか、それまでの既往歴も重要です。感染から6ヶ月経っている場合、接触頻度の度合い、、人との接触が多いのか、それとも在宅が多いのか。家庭内でのハイリスクの接触が多い場合にはやはり予防対策は必要になりますし、自己評価的にどうなのか。リスクが高い、と判断するのか、それとも重症化のリスクはそこまで高くない、と判断するのか。後遺症に対する不安はあるか。なんとしてでもリスクを最小限に抑えないと不安になるタイプなのか。そうなれば、ワクチンは必然です。それらのポイントを1から10で評価していって、そのなかでも優先されるべきポイントに印をつけるなどすれば、自分自身での決断をする際に助けとなるのではないか、と思います。私自身の考えをまとめる際に参考になったのは、、SIKO、ザクセン州のワクチン委員会が独自の推奨を出しているのですが、そこに一覧があるのです。勿論、SIKOの推奨に従わなければいけない、というわけでもありませんし、STIKOの推奨に対しても同様ですが、全く見当違いである、とも言えません。とにかく、様々なコンビネーションでの推奨は、自分はどこにあてはまるのか、ということを知る上では参考になると思います。不満を感じる人もいるかもしれませんが、やはり、各自がケースバイケースで決めていくしかない、と思うのです。そして、かかりつけ医とも相談しながら判断していく。基礎免疫さえできていれば、今の時点で、正解も不正解もないのだ、ということを受け入れるしかないです。そのようなことを考慮せずに、「全員にワクチンを打つ」というのはよくありませんし正しくないと思います。判断をするには、かかりつけ医と話し合いながらその人の状況をみることが望ましいです。その人の希望と今までの既往歴を配慮する。そして、ワクチン反応も重要です。副反応が激しかった場合にはもう接種したくない、という人もいるでしょう。3回の基礎接種が終わっていてリスクも少なければ(打ちたくないという気持ちも)理解できます。その反対に60歳以上でハイリスクであれば打つべきです。
もう一つの動機として考えられるのは、たとえ私自身が軽度の感染経過だった場合にも、これから冬にかけて全体の感染拡大を阻止するために接種する、というものがあると思うのですが、実際に、重症化だけではなく、感染も防ぐことができるかどうか、という点でのデータはありませんよね。
対応ワクチンでのデータはありませんが、基本的にはあります。興味深い論文がサンフランシスコから出ていて、ブレイクスルー感染についてのものですが、、刑務所のなかでオミクロンがどのように感染していくか、という調査がされています。受刑者の免疫度合いによっての違い、です。免疫がない場合には36%、ワクチン接種者では27%。さらに、周りに感染させるリスクの削減は、接種者と回復者で24%、21%とほぼ同じで、ヘニッヒさんのようにワクチン接種と感染を経験した場合には、41%でした。ワクチン接種、感染経験、プラスブースターではさらに削減はされるものの、完全に感染を防げる、とまではいきませんでした。対応ワクチンでの効果のデータはまだありませんから、どの程度の効果があるのか、というところはわかりません。削減はされるでしょうけれど、完全な免疫、終生免疫のように感染しなくなる、というところまでいかないことは確かです。この点の説明をここ数ヶ月しようと試みていますが、「白か黒か」とみることはできなくて、どちらかといえば、ぼやけている。明確な数字も出すことはできないでしょう。免疫状況もここまで違えばきちんと比較することも難しいです。しかし、家族に抗がん治療をしていて免疫不全の人がいたり、職業的に人との接触が多い場合に周りのために接種をする、という動機は素晴らしいと思いますが、同じように、臨床データを待つ、、例えば、45歳の健康な男性が、まずは臨床データが出てからにしたい、と考えるのも間違っていません。その場合には、すでにデータが公開されているモデルナのものにするか、バイオンテックから出るのを待つか。しかし、そうやって待っている間に感染するリスクは勿論ありますから、、ここが大変難しいところです。明確な推奨は、高齢者とハイリスクを対象に出ていますが、それは書式で科学的な根拠に基づいたものです。それ以外は、個人的、医療的な理由があったり、接種しない、という判断もあると思います。ここまでくると、もう個人的な医療的判断になります。
3回目の接種を行なっていない12歳以上に関しては、STIKOは、対応ワクチンでブースター接種するように、と言っています。60歳以上で、4回目のブースター接種をしていない場合にも、対応ワクチンでの接種の推奨が出されています。ハイリスクの場合には、2回目のブースター接種以降のブースターの推奨もありますから、高齢者で2回目のブースターが終わっている場合にもかかりつけ医との相談のもとさらなるブースター接種も可能だ、ということです。
まだ一度も感染をしていない場合、というのも、重要なファクターで、ブースター接種が2月くらいに行われた場合にはかかりつけ医に相談して、今またアップデートをしたほうが良いでしょう。1度も感染していない場合は特に、です。
若年層に関してはケースバイケースですし、介護士に関しては、感染リスクが高い、ということで2回目のブースターが推奨されています。学校の教師に関してはどうなのでしょうか?ノーマスクで毎日子供達との接触があるわけですが、、
難しい問題ですが、接種の意志があって、最後の接種、もしくは感染からしばらく経っている場合、、ここで言っておきたいのは、、私の経験上でも、、ブースター接種を接種3ヶ月後に打っている人をみますが、私はもう少し接種間隔をとったほうが良い、と思っています。私は3ヶ月は少なすぎると思います。中和抗体の熟成度合いからみても3ヶ月での効果はあまり期待できないですし、健康体での接種間隔はSTIKOも6ヶ月を推奨しています。モデルナの治験では4ヶ月半でしたが、それよりも短くはしないほうが良いです。勿論、例外はありますし、例えば旅行の計画があるとか、渡航する前に免疫をつくっておきたい、とかそのような場合には例外的に接種することもありかとは思うのですが、3回接種の後に1回感染した、、私もそうですが、そのような場合、、35歳くらいであればリスクも低いですから、接種はしない、という決断をしても何も責められる理由はないでしょう。ここが難しいところで、多くの人は明確な指示、「〇〇歳からは接種せよ」というように言ってもらいたいのでしょうけれど、そうもいかないのです。
接種間隔が重要なのは、免疫応答は時間をかけてつくられていくもので、それが十分につくられてから次の接種をしたほうがよい、ということですね?
そういうことです。免疫応答は完結しているべきで、熟成されているべきだからです。勿論、今後、接種間隔が変わってくる可能性はありますし、理想的な間隔、というのもまだはっきりはわかっていません。しかし、STIKOの6ヶ月、というのは確かでしょうし、COSMO統計をみても何度も感染をしているのは全体の7%のみですから、接種から6ヶ月おいてから接種しても十分だと思います。勿論、もう一度念を押しますが、免疫不全の人を除いて、です。そのような場合の免疫応答は、他の普通の免疫を持つ場合とは比較できません。
ここで、Long Covidの補足をしたいのですが、、ポッドキャストの準備のミーティングの際にもその話がでて、論文もいくつも発表されていますが、、ワクチンのLong Covidに対する効果についてはまだはっきりとしたデータがでていません。しかし、これは先生の専門分野とは少し外れてしまいますし、、時計をみると、もうかなり長い時間お話を伺っていますので、、また別の機会に、、多分、Long Covidの専門家をお呼びしたりして取り上げたく思います。
拝聴するのを楽しみにしています。笑
もう一つ取り上げたいのは、終生免疫と、感染予防についてです。今、期待されているのは粘膜免疫による防止効果です。持続効果のある粘膜での免疫、特にIGA抗体に関するデータがあり、粘膜での免疫は大変重要でブレイクスルー感染、変異株にも左右されないもの、ハイブリッド免疫によってより安定した効果が期待されます。鼻スプレー、もしくは吸引によるワクチンです。アジア、インド、中国で承認されましたが、先生も期待されていますか?
私は複雑な気持ちです。「インドと中国で承認されたのにどうしてドイツにはないんだ」という声が上がっていますが、FDAとEMAがこれを承認する、もしくはこれらの製薬会社が申請するとは思えません。というのも、承認のためには、膨大な手続きが必要ですし、効果は勿論のこと、安全性などのデータも十分に揃っていなければいけませんから、そこまでするメリットがないのではないか、と思います。ヨーロッパやアメリカでも独自の経鼻ワクチンは開発されていますし、臨床過程にも入っていますし、形状的には、鼻スプレーやジェルのかたちだ、と思っていただければ良いと思います。同じようなものに、子供用のインフルエンザワクチンがありますが、それも鼻から取り込むワクチンで、弱毒化された生ワクチンです。他のウィルス、例えば、RSVやPertussis、百日風邪のワクチンの候補としてもあげられているものの、今まで市場展開するまでには至っていません。理由はいくつかありますが、、一つポジティブな例を挙げるならば、ポリオワクチンには、経口ワクチンがあり、これも基本的には似たような構造で、この場合は腸管免疫がつくられ大変効果が高いものです。ですから、この分野はまだまだ開発のポテンシャルがある分野で、いままでそこまで深く研究がされてこなかった分野でもあると思います。これも隠さないて言っておくべきことだと思いますが、市場から撤退させられたものも今まであって、インフルエンザ用の鼻スプレー、、確かスイスの製薬会社のものだったと思うのですが、、これが、顔面神経痛、顔面麻痺を引き起こしました。ですから、「鼻スプレーだったら問題なく接種できる」というものではなくて、リスクも当然ある、ということを言っておきます。そういう理由もあって、治験はしっかりと行われなければいけません。理想的なのは、ウィルスが侵入してくる箇所に免疫抗体ができる、鼻の粘膜、喉の粘膜に直接ですね、、それがないと、直接身体に入り、免疫が発動して排除を試みることになるのですが、、ここから少し私にも難しい分野になってしまいます。私は経鼻ワクチンの専門家ではないので、、しかし、リノウィルス、、今、私が罹患している、、に対してのそのようなスプレーがあれば、、とても助かることは確かです。私は年に3回、4回は罹りますので、、笑 とはいっても、簡単なことではなくて、私たちもいままで何度も、粘膜の抗体を計測しようと試みましたが、、これは、血清中の中和抗体を調べるのとは全く別物なのです。血清中のものは明確に数値で把握できるものですが、粘膜では技術的にも明確に測るのが大変困難です。どのくらいの量で調べるのか、場所によっても抗体の量が違いますし、そもそもどのくらいの量があれば感染を阻止できるのか、というところもはっきりしません。ここからも、まだまだ研究の余地がある分野だ、ということがわかると思います。Sars-Cov-2の研究をする際には、現時点で承認されている治療薬、もしくはワクチンとの比較をする必要がありますが、そうなると、比較対象が筋肉注射によるワクチン、ということになります。そこでも、何をどうやって計測していくべきなのか、という問題にぶち当たります。経鼻ワクチンがつくる中和抗体の量は、筋肉からによるものより少ないでしょうし、、これが、経鼻ワクチンを優先的に開発しなかった理由でもあると思います。筋肉内注射のほうが経験値も高いので開発しやすく、経鼻ワクチンはポテンシャルはあるものの、まだまだわからないところも多いのです。もし、もっと開発が進んで、様々な呼吸系感染症に対するワクチンができたなら、、私も真っ先に接種します。笑 しかし、今冬、来年の春に店頭に並ぶ、もしくは、病院で接種できるようになる、、ということにはならないです。それは非現実的ですね。臨床データが出揃って、筋肉接種との比較がされるまでには、、まだまだかかると思われ、、多分まだ1〜2年はかかるのではないでしょうか。
それでも、ドイツでの開発も進めれていて、ベルリン、ニーダーザクセン、ミュンヘンでは、RNAワクチンの経鼻型の研究もされていますが、これは特に高度なものだ、ということです。インドと中国でのものは、ベクター型、と聞いていますが、、アストラゼネカのものと同じ、、ですよね?
そうです。部分的には筋肉注射タイプと同じワクチンを使うこともできます。これはもう使用されている、というメリットがありますし、アデノウィルスでのワクチンを使うメリットもありますが、アメリカでの治験は途中で中断されています。理由は、効果がそこまでみられなかった、というものです。もう少し改善されなければいけない部分がありますが、現時点である動物実験によるデータは期待がもてるものだ、と私は思います。期待が持てるデータですが、私が懸念する点は、その効果がどのくらい持続するか、というところです。治験では4週間の時点で測っていますが、それが3ヶ月、6ヶ月後にも同じような効果なのかどうか。本当に感染から守るのか。その点の懸念はあります。データも足りませんし、他のワクチンからの経験上の懸念もありますから、もしそうではない、となれば大変喜ばしい誤算、ということになりますが。
どちらにしても、長期間にわたっての開発になりそうです。どこかで読んで「鼻スプレーが使えるようになる!」と喜んでこれでパンデミックが終息する、と思った人も多いと思うのですが、、このようなことは時間がかかり、そして、お金もかかることですよね。研究が進まない理由には、資金的な問題もある、、と。
長期的、といってしまうと、それはそれで少し悲観的すぎるのではないかと思います。笑 それよりは、1年、2年後には、その頃にはできるかできないか、どのような感じになるかがわかると思います。確かに、資金調達は容易ではないですし、支援するのも難しいですが、、忘れられがちなのは、ワクチンや医薬品をつくるのは医薬品業界だということで、大学、大学病院も治験の初段階はできますが、治験、承認治験となると、かかる費用は何十億、という規模ですからそのような予算は大学にはありません。ですから、そこから製薬会社に買い取られたり協賛で続けられたりします。そこで勿論製薬会社のほうがどこにポテンシャルがあるか、どこにメリットがあるか、というところをみていくわけです。今、その点では注目されている分野ですので、ここで少し開発に勢いがついていくことも十分に考えられることです。1、2年後にはもっとよくわかっていることでしょう。
最後に、、感染対策についてお伺いします。現在はほとんどの範囲において、「自己責任」での行動が求められています。ですから、いままでのように、言われたことをする、というのではなくて、自らの行動を状況にあわせて変えていく必要があると思うのです。そして、「ゼロか100か」という判断も間違っています。それは、検査においても言えることで、、検査は広範囲で浸透しスタンダードとなっていましたが、今は検査数も減りました。その変化は間違ってはいないかもしれませんが、それでも、「抗原検査はどうなのか」という疑問はあるのではないでしょうか。品質的に高品質の抗原テストは、現在のオミクロンにきちんと反応しますか?BA5でも正確に検査結果がでるのでしょうか?
ここでは2つ重要なポイントがあります。1つは、検査キットがそもそも新しい変異株に反応するのかどうか。その答えは「反応する」です。これは、私の経験からも、BA5には反応します。もう1つは、感度がどのくらいであるのか。つまり、どの程度の割合で反応するのか。100ケース中何件か。ここでは少なくとも、変異株によってばらつきがあって、それに関してのプレプリント、頻繁に使われる抗原テスト同士を比較したものがあって、変異株での違いがなかった検査キットと、BA2とBA5での反応が鈍かったキットがありました。
バーゼルの論文ですよね。
スイスで行われたものだったと思います。ここからも、新しい変異株が出てきた際にラボで検査での反応が出るかどうか、ということをチェックすることが重要であることがわかると思います。感度が下がったのか、どうか、という点です。抗原テストで陰性であっても保証はない、ということは、いままで何度も言っていることですので言うまでもありませんが。特に、免疫保有者では検査結果が出るのに少し時間がかかったり、全く反応しない、という現象もよく観察されます。これも、様々な状況の人が入り混じっている今日の問題でもあって、「そんなことがあって良いのか」と言う人もいると思いますが、、私の知人で3人感染者がでたのですが、1人はラピッド抗原テストで陽性、、ちなみに、この3人は同じイベントで同時に感染したケースです、、1人目は抗原テストで陽性、PCRで陽性、2人目は抗原テスト陰性、PCR陽性、Ct値21、、ラピッドテストでも陽性がでる数値ではありますが、、3人目は、抗原テスト陰性、PCRも弱陽性でした。ここからも、どれだけ複雑か、ということがわかるかと思います。感染性が高い状態でも、抗原テストが陽性になるとは限りませんし、Ct値が20であっても、、
症状が出ている場合でも、ということですよね。
この3人には全員症状がでていました。ですから、何度も検査することも重要ですし、疑わしい場合にはPCRをするべきです。これは、抗原テストが市場にでてから今まで変わっていません。誰でも手に入れることができる、という点で、抗原テストは引き続き大変重要で便利なツールではありますし、特に症状が出ている場合にそうですが、100%の保証はない、ということは先ほども言った通りです。ですから、常に注意深くみていくべきであって、それは以前もそうだったように今も変わっていません。
感染から回復すると、別の抗体、ヌクレオカプシドに対する抗体ができます。ワクチン接種しかしていない場合にはスパイクタンパク質に対しての抗体しかできません。この感染時にできる抗体が、抗原テストの感度に影響する、ということはあるのでしょうか?今、多くの人がこのハイブリッド抗体を持っていることになると思うのですが。
多分それも関係していると思います。しかし、先ほどの3名のケースをみてもそうですが、それはファクターの1つであって、それだけではないでしょう。ウィルス量のほうがもっと重要なファクターですし、テストするタイミングなど、、他にも重要なファクターはありますので、関係はある、とは思いますが、それだけでは説明がつきません。
先ほど、先生のご友人の話がでましたが、私たちも個人的に様々なケースを知人友人でみてきた、と思います。抗原テストが反応しなかった、というケースは多様ですが、変異株によってはPCRが陰性になった、というケースもあります。抗原テストで陽性であったのにも関わらず、です。少し後の段階での再検査でPCRが陽性になって、抗体検査でも感染が確認されたようですが、これはどうしてそのようなことが起こり得るのでしょうか?PCRの感度はかなり高いはずですよね。
それはそうですが、検査は人間によって行われるわけですから、勿論ミスも起こります。それは、検体の取り方から始まって、、取る場所が悪かったり、取り方が十分でなかったり、、そのような理由でPCRが偽陰性になることはあります。取るタイミングが適当でなかった可能性もありますし、、接触直後、感染直後にPCRをしても陽性にはなりません。何回か時間をおいて再検査すればいずれ陽性反応はでます。さらに、これは患者とは関係なく、検体自体がきちんとした保管されなかった場合。病院やラボで、です。直射日光に当たった、などで検体の検査が不可能になったり、ピペットでの作業のミス、、これはアナログで検査するのか、全自動か、でも違いますが、そこでのミスはあります。検体が取り違えられるミスも起こりますし、、勿論あってはいけないことですが、診療所などですでに入れ替わってしまうこともあります。10人の検体の名前を間違って貼ってしまったり、ラボでも、検体を間違った場所に整理してしまったり、、PCR検査自体でのエラーも起こり得ます。基本的に複雑な検査方法ですから、あらゆる手順でミスは起こる可能性があります。ですから、疑わしい場合にはもう一度検査することをおすすめします。特に結果が重要な場合にはそうです。
基本的には結果はきちんと出る、ということですね。ミスが起こる可能性をいくつも聞きましたが、、
人間によって行われるので、絶対にミスが起きない、という保証はありません。勿論、頻繁に起こっては困りますし、実際に頻繁には起きませんが、、もし、そんなに頻繁に起こるのであればそのラボ自体にに問題があるでしょう、、ラボには、リスクマネジメント課、というものもありますので、そのようなことが起きれば全てレポートにまとめられ、どのように改善されるべきか、今後ミスを繰り返さないように会議が行われます。ドイツでの品質管理条件は大変高いので、、しかし、全くミスが起こらないであろう、と考えるのは大変ナイーブだと思います。
別の感染症もありますから、、その症状などもあわせると、、もっと状況は複雑になりますよね。 最後に、「自己責任」について。まだまだ、マスク義務についての議論が行われています。というか、義務ではなくてもマスク着用自身について、です。列車と飛行機での比較があります。列車でのマスク着用義務は残し、飛行機では着用しなくてもよい。その理由は、空調の違いです。今から数ヶ月前にすでに、飛行機のなかでのマスクの効果についてデータはでていますが、そこからまた新しい知見はでてきたのでしょうか?新しい、改善された空調システムは込み入った場所でも効果がありますか?
まず、、飛行機の空調が特殊であることは以前からで、、この数週間で変わったことではありません。特殊なフィルターを使っていて、空気の循環も特殊ですから、ウィルスや細菌での感染が起こりづらい環境ではあります。しかし、そのフィルターがきちんと機能しているかどうか。同じようなフィルターは病院内の手術室でも使われますので、フィルターに効果があることは確かです。しかし、隣の席に咳をしている人がいた場合、、どんなにフィルターが高性能なものであったとしても防ぐことはできません。わかっていることは、飛行機内の滞在時間にもよる、ということと、人との距離、です。保健省から発表されたもので、たしか、「フランクフルトルール」というものがあって、感染リスクが高いのは、2列前と2列後ろ、そして隣。しかし、ここで注意しなければいけないことは、飛行機にはまず乗り込む必要がある、というところです。座席に瞬間移動するわけではありませんし、、バスに詰め込まれて飛行機まで行って、ゲートでも列に並んで、、勿論、これは全てリスクが高いシチュエーションですし、感染につながる場所でもあります。ですから、フィルターが違う、ということには間違いはありませんが、隣に感染者が座っていた場合には100%の感染防止にはなりません。
密になるシチュエーションでは自主的にマスクを着用すべきですね。少なくとも私はそうします。最後に、、これから冬に向けて、ワクチン、ウィルスの進化などについてお話いただきました。そして、まだ大きなワクチンの穴があることが心配の種だ、ということもお聞きしました。ダルムシュタットのCovid病棟の免疫科、チリッチ先生によると、ダルムシュタットでは状況は安定している。見通しは悪くないが、Long Covidを忘れないでほしい、ということです。先生のところではいかがでしょうか?状況は悪くないでしょうか?
そうですね。状況に慣れてしまった、ということもあると思います。新しい変異株ではなくて、オミクロンの亜種が優勢である間は少し楽観的に考えても良いのではないかとは思います。勿論、患者数は増えたり減ったりします。しかし、重症患者や死者が一番初めの冬のように増える、というようなことはもうないでしょう。
チーゼック先生、果敢にリノウィルスに立ち向かいながらのお話、、ありがとうございました。新型コロナ以外にも日常では様々なことが起こるわけで、、これからも先生の周りであまりリノウィルスの感染が充満しませんように、、お大事になさってください。