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日本産ホップの可能性を聴きに。「クラフトビール・ジャパンホップフェスト2024」メディア向け説明会にて@SPRING VALLEY BREWERY TOKYO


日本産ホップには以前から関心があり、ホップの生産に関わる方と、ビアバーでお話ししたことがあった。その課題点、可能性を聞き、余計に気になっていた。日本産ホップの生産量は、全国で2008年から2018年の10年間で446トンから202トンと半減している※。原因として、農家の高齢化やホップの栽培面積が限られており、品種開発もあまり進んでいない現状があるからだと言われている。日本全体の農業分野が抱えている問題の一部でもあると捉えられるかもしれません。

そんな日本産ホップへの取り組みのハブともなっていると言える、キリンビール株式会社。9年前から取り組み、まもなく10周年を迎えるビールブランド、スプリングバレー。東京・代官山に位置するSPRING VALLEY BREWERY TOKYOにて行われたクラフトビール・ジャパンホップフェスト2024に関するメディア向け説明会に伺った。「日本産ホップの可能性」を本記事の軸にしながら、皆様にお伝えしていきます。

※参照:キリンホールディングスウェブサイト,キリンの日本産ホップに関する取り組み,2024年10月16日
 https://www.kirinholdings.com/jp/newsroom/release/2019/0725_05.html

取材・文:大島 有貴
撮影:唐 瑞鸿(plana inc.)

2015年に醸造所併設店舗として開業したSPRING VALLEY BREWERY TOKYO
2階にある醸造タンクを目の前にしながらのメディア向け説明会となりました。

スプリングバレーとは
2011年、キリンビールのプロフェッショナルが、「あらためて、ビールの魅力を伝えていきたい」という想いから、おいしさを愚直に追求するクラフトブルワリーを設立する構想から始まったビールブランド。2014年に、プロトタイプ(試作品)を、キリンオンラインショップDRINXだけで数量限定発売したことがブランドの始まり。2015年には、代官山と横浜※に、醸造所併設店舗として、SPRING VALLEY BREWERY をオープンする。そんなビールへの熱い想いが今や誰もが知る「SPRING VALLEY 豊潤<496>」に続いていきます。
※SPRING VALLEY BREWERY YOKOHAMAは2023年3月15日をもち、閉店。
一部引用:https://www.springvalleybrewery.jp/about/history.html

左から キリンビール株式会社 クラフトビール事業部長 大谷哲司氏、SPRING VALLEY BREWERY TOKYOヘッドブルワリー  辻 峻太郎氏、株式会社ヤッホーブルーイング 醸造ユニット ディレクター荒井隼人氏、スプリングバレーブルワリー株式会社 代表取締役 井本 亜香氏

クラフトビールに取り組み、まもなく10年。
業界全体で、日本のクラフトビールの価値をつくりあげていく

「キリンビールは9年間、クラフトビールに関して取り組んでまいりました。この度、2024年10月から事業部を立ち上げ、2030年にクラフトビール市場のビール類内市場構成比を5%以上(金額ベース)にしていくことを目標に致しました。ですが、業界全体のボリュームを上げていくのは、私たちだけでは難しい目標でもあります。そこで、国内のクラフトビールメーカーと一致団結で取り組んでいきたいと考えております。」と、キリンビール株式会社 クラフトビール事業部長 大谷哲司氏。

「来年4月、スプリングバレーは創業10周年を迎えます。ここ代官山にありますSPRING VALLEY BREWERY TOKYOに関しては、空間作りにこだわり、2024年5月に店舗をリニューアルしました。食事とのペアリングにこだわり、2階フロアではビール業界ではめずらしい、ペアリングコースの提供のみ。今までに計307名のお客様に提供させていただきました。また、ビアフライト用の特殊な什器を作ったことで、1人当たりの注文杯数が昨年に比べて0.23杯増えた。」と、スプリングバレーブルワリー株式会社 代表取締役 井本 亜香氏。

一度に6種類のビールが楽しめるビアフライト用の什器は、高級感もありながら実用的。自身で手に取りながら飲む感覚は能動的に「飲みたい」という気持ちを引き出してくれるように感じた。

魅力的なホップ造りが、
世界で戦っていけるビール創りへと繋がっていく

今回のイベントの趣旨である「クラフトビール・ジャパンホップフェスト2024」は、キリンビール株式会社が2015年から参画している「日本産ホップ推進委員会」の取り組みの一つ。この委員会は、ホップ生産者、賛同ブルワリー、賛同飲料店で成り立っている。参画ブルワリーは、2023年13社から、2024年、25社に増えた。

「国内のみならず世界の中で、日本産ホップを活用したジャパニーズビアスタイルを作っていけると私は考えています。魅力的なホップ品種ができると、ブルワリーがそのホップに魅力的を感じ、自ずと日本産ホップのビールは増えていく。」株式会社ヤッホーブルーイング 醸造ユニット ディレクター荒井隼人氏。

株式会社ヤッホーブルーイングも「日本産ホップ推進委員会」に参画しているブルワリーの一つ。日本産ホップの活用事例としては、信州セブンイレブン限定販売で、ホップに信州早生、かいこがね品種を使っている「山の上のニューイ」など。荒井氏は「日本には農業分野において、素晴らしい品種改良の技術が古くからある。他の農業産物であるブドウや柑橘類にあるように日本独自の品種をホップでも作っていけることができれば、世界の中で日本産ホップを使ったビールは、戦っていける。」と話す。

品種や産地の違いで、
香りや味わいの様子が変わる。そんな楽しさを味わおう

「使用するホップの種類や、作り方で多様性が出るビールの面白さを味わってほしい。日本産ホップを使ったビールが一堂に会するイベントはなかなかないので、たくさんのお客様に楽しんで欲しいと思います。」とSPRING VALLEY BREWERY TOKYOヘッドブルワリー  辻 峻太郎氏。


最後に今回味わったビールの一部を紹介!
写真:オフィシャル素材から

スプリングバレー東京限定 フレッシュホップ ~最優秀圃場IBUKI~

毎年、品評会で上位になったホップを使っているライン。今年は山形県産IBUKI品種を使用。


スプリングバレー東京限定 SVB LAGER ~フレッシュホップ MURAKAMI SEVEN~

今年収穫のフレッシュホップの MURAKAMI SEVENを使用。ラガータイプだが、いちじくのような香りが味わえ、秋めくこの時期にぴったりと感じた。


スプリングバレー京都限定 フレッシュホップ ~与謝野の息吹~

京都府与謝野町産のIBUKI品種使用。スプリングバレー東京限定 フレッシュホップ ~最優秀圃場IBUKI~との産地の違いを楽しんで欲しいという気持ちで造った。
このような試みは初めてとのこと。

ヤッホーブルーイング 軽井沢ビール クラフトザウルス フレッシュホップエール2024

写真:唐 瑞鸿(plana inc.)軽井沢産カスケード、北杜産カスケード品種を使用したアメリカンペールエール「ホップの粉砕をより細かくすることで、青々しさが良い特徴として強く出た。」と荒井氏。

6種類のビールを味わい、こんなにも日本産ホップに多様性があるのかと感じました。品種の違いのみならず造り方によっても印象や味わいが変わる、クラフトビールの世界。まだまだ知らないことばかりなので、これからも飲みながら学んでいきたいと改めて感じた説明会でした。ありがとうございました。

「クラフトビール ジャパンホップフェスト2024」メインイベントは、2024年10月19日(土)、20日(日)にスプリングバレーブルワリー東京で開催されます。日本産ホップ使用のビールが一堂に会すイベントはなかなかないと思いますので、チェックしてみてくださいね。

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