見出し画像

#1903 生きた知識を獲得させよ

学校教育では、生活場面に転移しない「無味乾燥な知識」「死んだ知識」を獲得させることに終始している。

筆算の意味・原理を教えないまま、正確にアルゴリズムを再現できる人間に育てている。

「分数」という概念すら理解できないまま、ペーパーテストだけに答えられる人間に育っている。

これでは、学校で課されるペーパーテストに答えられても、現実の生活場面では、知識を全く活用できない人間となってしまう。

そこで必要となるのは、教科書に載っているどんな知識であっても、その知識の「意味」や「活用できる場面」を教えるということだ。

知識の「概念的理解」を重視し、「なぜその知識が重要なのか」「何のためにその知識を習得するのか」という「目的」を伝えるのである。

これにより、子どもたちは、目の前で扱われる知識に「意味」「目的」を見出すことができる。

そして、その知識の「概念」を理解することができれば、ペーパーテストだけではなく、生活場面にも転移させることができるようになるのだ。

当然、生活場面の文脈に近い「文章問題」にも対応することができるだろう。

また、単元を軸とした授業では、正しい「見方・考え方」をセットさせることも必要だ。

これは「スキーマ」とも呼ばれる。

子どもたちは、学習前に、それぞれ固有の「見方・考え方」「スキーマ」を有している。

これを正しい「見方・考え方」「スキーマ」に揃える必要がある。

この工程を踏むことで、概念的理解をスムーズにしてくれるのである。

さらに、学習を進めていく上では、「メタ認知」を働かせることも求められる。

ペーパーテストに効率よく速く取り組むためには、「システム1」の思考が必要だ。

これは「速度」や「効率」を重視した、問題解決思考のことである。

しかし、この思考だけでは、文章問題に対応できないし、生活場面で正確に知識を活用することもできない。

必要なのは、「システム2」の思考である。

これは「見直し」や「振り返り」を重視した、メタ認知思考のことである。

「システム1」で処理した自分の答えに対して、「本当にこれでよいか?」と俯瞰的に疑いをかける思考である。

「システム1」をコントロールし、答えを修正するための思考なのである。

このときに、「失敗」を経験させることも重要だ。

この「失敗」により、「システム1」で下した処理は「完全でない」「見直しをする必要がある」ということを経験則的に理解することができる。

いくら教師が「見直しをしなさい」と説いても無意味である。

そうではなく、子どもに失敗をさせて、その経験から「システム2」の思考が大切であることを学ばせるのである。

「学習」という営みは、効率的な方法を教師から演繹的に教わることではない。

そんな方法では、「無味乾燥な知識」「死んだ知識」を獲得することで終わってしまう。

そうではなく、「帰納的な方法」で学習をすることが求められる。

まずは、必要な「スキーマ」をセットする。

そして、生活場面に即した「文脈のある問題」に出会う。

それを解決するために、自分なりに試行錯誤をする。

ときには、自分の答えを修正したり、失敗したりもする。

他者の力も借り、対話・協働をする。

最終的に、自分なりの方法で問題解決を達成する。

その繰り返しである。

このような帰納的な学びによって、人間は「生きた知識」を獲得することができる。

いわば、「身体化された知識」「転移可能な知識」を習得できるのである。

このように、生活経験に紐づけた帰納的な学びは「プレイフルラーニング」と呼ばれる。

「学び」は「遊び」と同じなのである。

乳幼児は、日々の生活における「遊び」の中から、物事を帰納的に学んでいる。

乳幼児は、親から演繹的に物事を教わっているわけではない。

親とのコミュニケーションや遊びを通して、「概念」や「言語」を学んでいるのである。

それこそがまさに、身体化された「生きた知識」なのである。

学校教育では、ペーパーテストだけに対応できる「無味乾燥な知識」「死んだ知識」を獲得させてはいけない。

知識の「意味」「目的」「使う場面」「概念」を重視し、「生きた知識」として獲得させることが重要なのである。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?