#1872 ニューロマイノリティ
今回は、横道誠氏・青山誠氏編著の『ニューロマイノリティ』からの学びを整理する。
・ニューロダイバース:「集団」か「地域」を修飾する形容詞
ニューロダイバージェント:神経逸脱者(逸脱した存在)
⇔ニューロティピカル:神経定型者
ニューロマイノリティ:神経少数派
⇔ニューロマジョリティ:神経多数派
※普通・標準からの「逸脱」という言葉は不適切である。
・多数派と少数派が入れ替わった世界を想像してみる。
→「定型発達」と「発達障害」の違いは、相対的でフラットな人間の違いに過ぎないことが理解できる。
・自閉症スペクトラム者の特性
➀社会情報に動機づけされにくい(ソーシャルモチベーション仮説)
②外界からの入力情報を正確にありのまま捉えようとする
※これらは「特性」であり、「障害」ではない。
・自閉症スペクトラム者:社会情報に特別な価値を与えず、外界情報をできるだけ忠実に正確に認知しようとする脳・神経の持ち主たち
・コミュニケーション能力や共感能力は、個人の内側に存在するのではなく、人と人との間に存在する。
※多数派が入れ替わるだけで、どんな人も簡単に障害者になり得る。
・ニューロマイノリティな人たちへの支援においてすべきことは、多数派の平均値である「定型発達」に近づけようとすることではない。彼ら彼女らの「マイノリティ的定型発達」を阻害する要因を排除していくことが求められる。
・「普通」とは「コストの削減」である
➀コミュニケーションコストの削減
②考えるコストの削減
・「普通」からズレてしまった分だけ「苦しみが大きいはずだ」と考えられている。しかし、定型発達者の人間も何らかの「苦しみ」を抱いている。それが「普通」という言葉によって透明化されてしまう。
・大人が子どもにできること:子どもをよく見る、一人一人の違いを受け入れる →「普通」という呪縛から逃れる。
・世の中から「普通」という圧力を受けることで、「失敗は許されない」と感じてしまう。
→子どもも大人も「失敗する権利」が保障されるべきである。
※失敗後のアフターケアが重要である。
・特性ゆえに失敗が誘発されても、それはあくまで「失敗」でしかなく、自分の存在がネガティブなわけではない。
※「失敗する経験」により、適切な自己認知ができる。
・子どもに安心して失敗させてあげられない社会では、失敗しないことこそが美徳とされ、失敗を過剰に恐れる子どもが育ってしまう。
・発達障害:一人一人がもつ「発達凸凹」と「環境」とのミスマッチを起こした際の相互作用
※発達障害=発達特性+社会的環境要因
・双方モデル
➀発達障害者:環境を選び、支援に必要な情報を提供する
②社会側:障害者に応じた支援や配慮を提供する
※双方が「発達障害」という脳の研究に立ち向かう責任を負う。
・「環境設計」「支援・配慮」について、社会側は発達障害者と共に協議して決めることが重要である。
※「私たちのことを、私たち抜きに決めないで」
・子どもは「セルフアドボカシー(権利主張)」が難しいので、子育て支援では「親支援」が必要である。
・診断基準を満たしていない「グレーゾーン」であっても、治療や支援はされなければならない。
・ニューロダイバーシティの考え方:全ての人に何らかの発達特性があるという「汎・発達特性」の考え方
・グレーゾーンとニューロダイバーシティ
(1)従来までの考え方
①定型発達 ②グレーゾーン ③発達障害
(2)新しい考え方
ニューロダイバーシティ(線引きせず、連続的なものとして見る)
・発達障害の抱える問題
➀生まれもった一次障害
②育ち ← 健全なものになるよう支援する
③現在の環境との二次障害
・内側からその人を理解する
➀「言葉」の限界を自覚する ※二分法に注意
②その人の身になってみる努力をする
③当事者研究、自分研究
④答えのない「共感」という営みを続けるネガティブケイパビリティ
以上が書籍からの学びである。
特別な支援を必要とする子どもを、教師自身がもつ「常識」「当たり前」「枠」に無理やり当てはめようとしないことが必要であると感じた。
子どもたち一人一人がもつ特性いわば「ニューロダイバーシティ」を尊重し、個に応じた環境設計や支援を模索していきたい。
そして何より、教師にとっての「困った子」という見方ではなく、社会的環境要因のせいで「困っている子」として見るようにし、彼ら彼女らを内側から理解することに努めたい。