#1862 ポジティブ行動支援
今回は、松山康成氏の『はじめてのポジティブ行動支援』からの学びを整理する。
・今求められる教育
➀インクルーシブ ②ポジティブ ③エビデンスベースド
→全てを実現するのが「ポジティブ行動支援」である。
・ポジティブ行動支援の鉄則
➀問題行動に目を向けない
②罰に頼らない
③ポジティブ行動を増やし、問題行動を相対的に減らす ※「我慢をする」ことではない
④「当たり前」の行動こそ価値付ける
⑤子どもの実態にハードルを合わせる
⑥「行動」に焦点を当てる
⑦「注意・指導」でポジティブ行動に気づかせ、「承認・称賛」につなげる
⑧ポジティブな支援が行われやすくなる仕組みをつくる
⑨スタートのタイミングは新年度や新学期
⑩「実践」「システム」「データ」を重視する
⑪多層的な支援で全ての子どものニーズをカバーする
⑫ハウツーではなく、フレームワークである
⑬目的ではなく、手段である
・多層支援
➀第1層支援:全体的に支援ニーズのある行動(学校・学級全体での実践)
②第2層支援:個別に支援ニーズのある行動(個別・小集団での実践)
③第3層支援:特別に支援ニーズのある行動(個別での実践)
・行動のABCフレーム(応用行動分析学)
(1)A(先行事象)の例
①具体的な指示 ②視覚資料・掲示物 ③仲間のポジティブな声かけ ④タイマー
(2)B(行動)の定義のポイント
①「ちゃんと」などの曖昧な表現はNG
②「~しない」という否定表現はNG
③「~のときに~する」という具体的な表現にする
(3)C(結果事象)の例
①ほめる ②通信で紹介する ③ごほうび
④ジェスチャーをする ⑤感謝を伝える ⑥記録する
・問題行動の機能
➀要求獲得 ②注目獲得 ③逃避実現 ④感覚・刺激獲得
・ポジティブ行動支援と応用行動分析学の関係
➀A:問題が起こる前から取り組む、予防的・積極的なアプローチ
②C:罰によるコントロールではなく、望ましい行動を育てる肯定的なアプローチ
・行動支援計画シートの作成手順
(1)教える・高めるポジティブな行動を決める ※スモールステップ
➀行動支援をする対象と課題を考える ※個人、小集団、学級、学校
②行動を明確に定義し、具体的な行動モデルを示す
※いい行動の例・悪い行動の例
③子どもに伝える「この行動を高める理由」を考える
④達成目標を決める ※100%でなくてもいい
(2)行動のきっかけ・手がかり(先行事象)を考える
(3)行動の記録方法を考える
①いつ(場面) ②どこで(場所) ③だれが(記録者)
④なにを(行動の具体) ⑤いつまで(期間)
(4)フィードバック(結果事象)の方法を考える
①グラフでフィードバックするのが有効
②データに基づいて、行動支援計画を見直す
・効果が見られない原因
➀「教える・高める行動」が子どもの実態に合っていない
②計画した通りに行動支援が行えていない
③行動に対するポジティブなフィードバックというメリットが少ない
・子どもと共に計画を作成する。子どもが主体となって参画する。
・ポジティブ行動により、社会的なメリットや価値を体感できる。
→支援を引いていけるようになる。
・ポジティブ行動支援を支える要素
➀人間関係づくり ②学級環境づくり
・人間関係づくりの例
➀他己紹介
②みんなのステキ紹介・掲示
③感情・体調共有ポケットチャート
④ポジティブな言葉表
⑤SST(教示→モデリング→リハーサル→フィードバック)
・学級環境づくりの例
➀学級目標の作成(自分と仲間の輝きを大切にする)
②目標達成に向けたポジティブ行動表の作成(価値×場面ごとの行動を考える)
③ポジティブカードの贈り合い(ポジティブ行動の承認)
④トークンエコノミー(ポジティブ行動の可視化)
・ポジティブ行動支援の実践手順
➀学級の課題から取り組むポジティブ行動を決める ※子どもと話し合う
②ベースライン調査を行う ※支援前
③行動支援計画を子どもと共に作成する ※練習と確認も行う
④ポジティブ行動支援を実行する
※効果が見られないときは支援計画を見直す(環境にアプローチする)
⑤フォローアップ調査を行う ※支援を引いた後
・ポジティブ行動支援をシステム化すれば、それが学級経営の基幹となり、問題やトラブルが生じたとしても、子どもたちの力で改善していくことができるようになる。
・「しなければならない」ことではなく、「した方が自分たちの生活がよりよくなる」という行動ができるように支援する。
※ポジティブ行動が「未学習」ある場合は、その詳細と価値を教える。
・個別・小集団支援の実践手順
➀第1層支援を通して、個別・小集団支援のニーズを把握する
②支援する行動と支援メンバーとの合意形成
③ベースライン調査を行う
④行動支援計画を作成する
⑤ポジティブ行動支援を実行する
・「ニーズに応じた支援」「多層支援」について子どもたちに説明し、学級へ一般化する。 ※「贔屓」や「差別」ではないことを教える。
・ポジティブ行動支援の一般化のために、子ども自身が、自分の行動について自分で行動支援計画を作成する「自分研究」を行う。
・問題行動を我慢させたり、抑制したり、止めさせたりするのではなく、ポジティブ行動を増やしていけるようにする。
・委員会活動によるポジティブ行動支援の実践手順
➀委員会が取組の対象とできる学校の課題を考える
②どのように課題を解決するかを考え合う
③記録と啓発を兼ねたポスターでポジティブ行動支援をする
※取組目標、担当者、チェックポイント、判断基準の写真、割合のグラフ
④どのように記録するかを決める
・代表委員会活動によるポジティブ行動支援の実践手順
➀取り組む活動内容について考える
②行動支援計画を作成する ※AとCが重要
③ポジティブ行動支援を進める
④記録に基づき行動支援計画を見直す
・「学校全体」を対象として行う取組のフィードバックは、「学校全体」に対して行う。 ※学級間・学年間の争いにしない。
・学校におけるポジティブ行動支援の実践手順
➀ポジティブ行動支援チームを形成する
②管理職や同僚の合意を得る
③学校全体の望ましい行動表を作成する ※教育目標との紐づけ
④学校全体のデータ&実践システムを構築する
⑤ポジティブ行動支援を実行する
※教員には「職員会議」、子どもには「集会」で周知する。
以上が書籍からの学びである。
最後に、この書籍を読んで、これからどのように実践していきたいかを以下にまとめる。
教師はついつい、子どもの「問題行動」ばかりに目が行ってしまう。
というより、人間の脳には「エラー検知機能」が備わっているため、自然と他者の欠点に目が行きがちとなる。
なので、当たり前のように行われている望ましい行動・適切な行動には目が向かず、ついつい問題行動・不適切行動ばかりに注目してしまうのである。
これを制御できないまま、教師が子どもを叱ることが常態化すると、学級の中がギスギスするようになる。
お互いに監視の目で見張るようになり、注意し合ったり、教師に報告したりすることが増えてくる。
このような「ネガティブな学級」にしてしまったのは、教師本人である。
教師がネガティブな面ばかりに注目することで、それが学級の子どもたちに伝播してしまうのである。
また、子どもの問題行動・不適切行動には「理由」「機能」がある。
それは「要求獲得」「注目獲得」「逃避実現」「感覚・刺激獲得」という4つの種類である。
つまり、問題行動・不適切行動を起こす子どもの背景には、上記のいずれかの理由があるということだ。
それを知らずに、教師はついつい叱りつけてしまう。
このように、子どもは教師に叱られることで、上記の例で言う「注目獲得」を実現してしまうのだ。
これにより、問題行動・不適切行動が強化されてしまい、また注目を得ようとその行動を起こしてしまう。
そして、また教師が子どもを叱りつける。
無限ループの罠にハマってしまうのである。
または、子どもが問題行動・不適切行動を「誤学習」していたり、望ましい行動・適切な行動を「未学習」だったりする場合もある。
こんな状況では、いくら教師が子どもを叱りつけても、無意味なのである。
したがって、教室を「ネガティブな学級」にしないためにも、問題行動・不適切行動を起こす子どもと「いたちごっこ」の構図にならないためにも、教師はその行動に注目しないことが重要となる。
問題行動・不適切行動は無視し、その他の子どもが「当たり前」に行っている望ましい行動・適切な行動に注目するのである。
つまり、「ネガティブな面」ではなく、「ポジティブな面」に注目するということだ。
そして、問題行動・不適切行動をついついしてしまう子どもが、「望ましいポジティブな行動」ができるように支援していくのである。
または、誤学習・未学習であるならば、望ましい行動・適切な行動を教えていくのである。
このときに活用するのが「応用行動分析学」である。
子どもが示す問題行動・不適切行動には注目しない。
その代わりに、ほめられるべき望ましい行動・適切な行動が増えていくように支援する。
まずは「先行事象」を考える。
望ましい行動・適切な行動が起きるように、具体的な指示をしたり、ポジティブな声かけをしたり、視覚資料を提示したり、タイマーをセットしたり、友達に声をかけてもらったり、気づかせるように問いかけたりする。
これらは全て「先行事象」として考えられるアプローチでる。
このような先行事象を工夫することで、その子どもの望ましい行動・適切な行動を引き出す。
そして、次に「結果事象」を考える。
その望ましい行動・適切な行動が今後も継続するように、つまり「強化」されるように、ポジティブなフィードバックをするのだ。
みんなの前でほめたり、学級通信で紹介したり、ごほうびシールをあげたり、グッジョブサインを出したり、感謝を伝えたり、仲間同士でポジティブカードを贈り合ったりする。
これらは全て「結果事象」として考えられるアプローチである。
このような結果事象を工夫することで、子どもの望ましい行動・適切な行動を「偶然」で終わらせることなく、「強化」されるようにする。
このような行動支援をすることで、徐々に望ましい行動・適切な行動が増えていくようになる。
すると、これまで見られていた問題行動・不適切行動が減っていくようになる。
それはなぜか?
それは「望ましい行動・適切な行動」と「問題行動・不適切行動」はトレードオフの関係であり、両者は同時に起こりえないからである。
つまり、「望ましい行動・適切な行動」が増えることで、相対的に「問題行動・不適切行動」が減っていくのである。
このように、「問題行動・不適切行動」自体に注目し、叱りつけ、それを矯正するアプローチはネガティブな結果を生んでしまう。
そうではなく、「望ましい行動・適切な行動」が増えるように支援し、相対的に「問題行動・不適切行動」を減らすようなポジティブなアプローチを志向するのである。
※ただし、「問題行動・不適切行動」を我慢させたり、抑制したり、止めさせたりするアプローチは、ネガティブな側面があるので避けるようにする。
このような「ポジティブ行動支援」を実践することで、問題行動・不適切行動を徐々に減らしていき、望ましい行動・適切な行動が徐々に増えていく教室にすることができるのだ。
そして、教室の中から「ネガティブな空気」がなくなっていき、「ポジティブな空気」で溢れるようになっていくのである。
ぜひとも、そんな「ポジティブ学級経営」を行っていきたい所存である。
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