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あほのこと・観たもの・脚本・バイト

 この間授業で岡本太郎の話が出た時に、「芸術は爆発だ」とまぁ紹介されるんだが、もし私が岡本太郎だったとしたらインタビューで芸術とは?なんて聞かれた暁には「爆発」というビッグな単語はギリ思い浮かんだとしても、「芸術かぁ、うーん…爆発とかですかねえ」と言ってしまい、2024年に岡本太郎展なんかが開催された時のパンフレットにはでかでかと、「芸術とは爆発とかですかねえ」と書かれることになるから、それはかなりまずい。そういうことばっかり考えてるから授業の内容が一才頭に入らなくて毎度毎度リアクションペーパーが書けず、おーんおんと泣いている。
 ある友達が私の家に泊まりにきたら必ず洋画を観る流れになる。普段あまり映画を観ないからそれが楽しくて(でもその子が来る日に限ってなぜか朝からすごく疲れているから寝落ちしてしまう)、この間は初めて「キル・ビル」を観た。名前だけ知っていた映画で、かつ初めて観るタランティーノ作品だった。その日は寝てしまったから後日もう一度観て、素直な感想としてはとても好き。ビルがあっけなく死んだのはありゃ、という感じだったし血潮ピューピューには笑ったけど、多分ストーリーを深読みする必要のない?映像のまま受け取ればいいだけ?アクションや音楽を楽しむ?という感じでOKなんでしょうか。知識がないからカスみたいな感想しか言えない。知っている日本人俳優が結構出ていて生首の國村隼とか内臓がビチャビチャに床に落ちる森下能幸は結構ショッキングだったけど、でも栗山千明のインパクトに全部持ってかれるわけね…。長くてボリュームのある下まつ毛と若さのままの頬の丸み、濃いめのチークと制服、そんなものを全部壊す暗殺者の目つき。ルールー飯店とかゴー皆川とかゴー☆ジャスみたいな変な名前なのにじわじわキドーを追い込むシーンには息を飲んだ。高橋一生が出演していることに声で気づいたのだが、「チ◯チ◯がぁ!」とかなんとか言って恐ろしいボスを笑かしていて、あぁ高橋一生という俳優は外国人監督の手にかかってもこういうキャラなのね、と笑った。結局みんな死ぬのは一瞬なんだなあと思ったし覚悟を決めた人間には運も味方するのだろうか、などと考えた。
 実習で書いていた15分ドラマの脚本が完成した。1年生の時に15分ものを2本、2年で1時間ものを1本書いて、自覚はなかったが考えれば考えるほど色々学んできたし自分が書く脚本の軸ができてきた気がする。私は展開が早くてころころ場面が変わって決め台詞でズドンからのエンディング曲、といったドラマらしいドラマが苦手なのだが、世間で人気なのはそういったものが多い。私が好きなドラマは言いたいことの外側をずっとなぞっているもの。自分の思うままに話したら嫌われることを知っているからストレートに全てを言う人はまずないと思っていて、でも言いたいことが言えないのは不満が溜まるから卑屈にまでなる人もいる。そういう人はひねくれ者と揶揄されるが、でも実はひねくれている人ってすごく面白いと思う。誰かが小さい声で言ったことにも自分の視点で考えを持つなんて真面目だし普通はしないことなのだと最近知った。でも今の私の周りには不思議とそういう人が集まっているから話が段々と議論のようになって、飯を食いながらのそれが面倒な時もあるが基本すごく楽しい。脚本もそういうのが書きたい。友達をモデルにしたことはこれまで一度もないしそういうことじゃない。でも全ての登場人物の過去も現在も自分で決めることができるという最強の力を与えられているわけだ。私の書き方は物語を進めるためのキャラクターじゃなく、まずキャラクターがいて、その人がいることで進む物語を書くというもの。そして今回の15分ドラマは環境の変化があるなら人として成長はしない・人として変化するなら環境は変えないと決めて書いた。感情は出すが言いたいことの外側をなぞったことしか言わない女の子を悩ませるのは不可抗力。正直ね、結構満足している。後から読んでも恥ずかしさを感じるような言動はないし、でもちゃんと計算しているから観る人に与える前提やミッドポイントなんかははっきり分かるようになっている。この間、登場人物に自分の要素が入ってしまうことに悩んでいることを言うと先生が「経験があるから面白いものが書ける。だからそれで全然いいんだよ」と言ってくれて安心した。「キャラクターの魅力とはつまり優しさ」だとも言っていた。そういう感じで2年半かけてようやく書き方は少し分かってきたから、あとは私が本当に書きたい変な人間を書けるかどうか。んで意気込まず自然と感情を動かす表現ができるようになること。坂元裕二とクドカンのドラマが好きで、理想。私はこの二人の人間の描き方がほんのほんのほんの少しだけ(保険かけてる)似ていると思っている。人間が前でストーリーは後。最終話では必ず泣けて、私はそういうのが好き。大豆田とわ子と三人の元夫、カルテット、木更津キャッツアイ、ごめんね青春。最近本当にこの大学に入って良かったなーと思うことが多い。今よく会って話をするような先生や友達と一緒にいる時、その人たちのことを家で一人になってから思い出す度に思う。大学落ちまくって良かった〜。
 新しい環境に慣れるまでに時間が必要なタイプなのでバイトも一年かけてやっと緊張しなくなった。そしたら見える世界が変わるのね。ミュージシャンの方と話をするのが楽しい、常連さんも初めて来るような人もみんな楽しそうに足踏みしたり自然と声が出たりする情景が嬉しい、カクテルをもっと作りたい。初めて作ったサイドカーというカクテルが美味しくてシェイカーに余った分を隠れて飲んだ。すごく忙しい日の閉店後にはオーナーに「ともちゃんシュークリーム食べない?」と言われセブンのシュークリームを買って、オーナーと私ともう一人のバイトの子で並んで食べる。「この瞬間が幸せなのよね」と上品に笑うオーナーが好き。ジャズを聞けてお菓子食べ放題でシュークリームにかぶりつく仕事。素敵。本当にいいお店だから聴きにおいでよ。

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