母さんが死んだ夢を見た

母さんが死んだ夢を見た。

屋根の雪下ろしをしようとしていた。

母さんはなぜかとても陽気だった。
不吉な予感がした。

私の家には大きな車庫がある。
家の隣にある、これまた家くらい大きな車庫。

母さんはハシゴを使わず、家の窓から車庫の屋根にジャンプして飛び乗った。

私は驚き、「危ない!」と叫んだ。
必死な私をよそに母さんは笑っていた。
下を見た。
家の2階にいるはずなのに地面が見えなかった。

そこは雪山だった。

吹雪の中、見えているものは割れた地面なのか、それとも山肌なのか分からなかった。

一面が白い中に黒やグレーがあった。



場面が変わる。

雪下ろしはひどく体力を消耗する。
汗をかいているのにも気付かない。

私は毎年そうするように、家の中から車庫の屋根に向かってポカリスエットを投げた。

母さんは笑いながら、ペットボトルをキャッチしようとして風に吹かれてバランスを崩した。



え、やだ

ちょっと、待って

やだ!

やだ!


やめて!



私は手も足も出せなかった。

母さんが転落するまでは速かった。
表情が変わることもなかった。

雪山に消えていく母さんの姿を見続ける。

とても怖かった。
呼吸が止まっていた。

白の中の黒に吸い込まれていくスキーウェア。

赤や黄色の動きのあるラインがいくつか引かれているスキーウェア。

落ちていく身体は、雪山の尖っている部分にぶつかって跳ねた。


場面が変わる。

母さんの葬式がおこなわれている。

和室には喪服姿の親戚が10人ほどいる。

祭壇の前には美しいヒノキの木の棺がある。
父さんと妹は中を覗いて泣いていた。

私はその様子を遠くから眺めているだけだった。

自分の身体から、心臓の質量がなくなっているような、そんな感覚でそこにいた。


場面が変わる。

家に帰ると私は料理を始める。

他の日、また料理をする私。

他の日、料理についてじいちゃんから文句を言われる。「あいつの味に似ていない」と。

他の日、帰宅してドアを開けてすぐ、キッチンにいる母さんの幻影を見た。

何かを炒めていた。

幻影と目が合った。

そして雪山に消えていった母さんの姿を思い出して、身体の震えが止まらなくなった。




【現実に戻る】

目が覚めると友人との待ち合わせの時間の10分前だった。新宿駅の情景が頭に浮かんだ。

メッセージが届いており、土下座の気持ちで謝罪し、ベッドから飛び起きて準備を始めた。

30分で家を出た。


夢占いによると母親が死ぬ夢を見るというのは人生の転機や自立の象徴らしい。転落が死因だと、過去の失敗が幸せに感じることの暗示だそう。

夢を滅多に見ないくせに、稀に見る夢はいつも悪いものばかり。本当は犬とか猫のフワフワに埋もれる夢を見たい。

さて、今日もまた頑張りました。
明日も明日以降も頑張ります。

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