なーちゃん
個人的なおはなしをひとつ。 わたしは、歌丸師匠の落語を生で聴いたことがない。ちょうど落語を聴き始めたころ ― まだ寄席に行く勇気がなくて、ラジオやテレビやCDを通してだけ落語に触れていたころに、あちらに逝ってしまった。 落語とはなんぞや?という頃のわたしにとって、歌丸師匠は笑点における5代目三遊亭圓楽師匠の次の司会者で、声がなんとなくダミっとしたような感じで、いつも他のメンバーに死ネタをかけられる、細いおじいちゃんだった。楽太郎(当時)さんやたい平さんや昇太さんにネタにさ
今日、東京は雪が降った。3月も終わるころに雪とは。もう桜は咲いているから、雪と桜の景色はさぞきれいだろうと思う。 桜といえばお花見、お花見といえば桜。今年はどこもお花見は自粛だろうけれど、せめて見たつもりになろう。今回は落語にある花見の噺のひとつ、『長屋の花見』のお話。 ▶ざっくりあらすじ 貧乏長屋の面々に、大家さんからお呼び出しがかかる。店賃の催促かと遠くから伺うと、どうやら違うらしい。なら安心と近くへ寄って話を聞くと、大家さん、みんなで上野の山で花見でも催そうと言う。
2020年2月11日 新宿末廣亭 神田松之丞改め神田伯山襲名披露興行 大初日 徹夜組まで出たこの日の末廣亭夜の部。客席の全員が、「神田伯山」としての初めての一席を今か今かと待ちわびていた。ざわざわと落ち着かない客席。異様な熱気に包まれてぼんやりと景色の霞む末廣亭に、出囃子の「滝流し」が響く。 袖から出てくる猫背の伯山さんに浴びせられるのは、万雷の拍手と掛け声。鳴りやまない拍手を制した伯山さんの一言に空気が軽くなると、あっという間に伯山さんの世界に引き込まれていく。 名を
落語を聴くきっかけとなったのは、大好きな伊集院光さんの深夜ラジオ「深夜の馬鹿力」だった。2015年ごろから伊集院さんのラジオを聴き始めて、伊集院さんが6代目三遊亭圓楽さんのお弟子さんだと知って。数年後くらいに、落語って聴いたことないなあとぼんやり思った。それがきっかけだった。 一番初めに聴いたのは談志さんの「芝浜」。 月並みな言葉だけど、衝撃的だった。自分の持つ落語というものに対する知識とイメージがガラガラと崩れる音を聞いた。 芝浜についての感想や考えはいつか書きたいの