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ありがとうさよなら松の木
みなさま、こんにちは。創作系寺嫁のゆかでございます。
およそ多くのお寺には境内があり、多くの木々が植わっております。
欣浄寺の境内にも、桜や紅葉、梅、百日紅と季節の花々が植わっています。
門をくぐり、境内に入ってまず目立つのが、大きな松の木でした。
どうしたことか、松の枝の中で一本だけ、石畳の上に、鐘楼堂に手を伸ばすかのように伸びた枝があります。
庭師さんがうまく支えを作ってくださって、長い枝はすくすくと伸びておりました。
が、2023年夏、突然その松が枯れ始めたのです。
実はこの松、かなり思い出深い松のよう。
話は40年前にさかのぼります。
40年前、欣浄寺一帯の松が、全て松くい虫によって枯れてしまいました。
境内の松も全て枯れ、なくなく庭師さんに切ってもらったそうです。
が、なんと、その枯れた松の下から、ほんの20センチほどの小さな松が、ひとり生えしていたのです。
大きな木を切ったことで顔を覗かせた新しい芽吹きは、そのまますくすくと育ち、立派な境内の景観のひとつとなっていました。
これが、ともみさんが物心つくか、つかないかの頃のできごとですから、今回枯れてしまった松は、ともみさんと同じ時を生きてきた松になります。
40年もあれば、あれだけ立派な松になるのですね。
そんな感慨を胸に、別れのお参りを済ませた後、件の松は庭師さんの手によって丁寧に伐採されました。
ちょっと寂しいかな、と思ったのもつかの間。
門から振り返って改めて境内を眺めてみると、どうでしょう。
すっきりと本堂が良く見えるではありませんか。
これはこれで素敵だねえ、と言いながら、次に植える木をどうするか、
植えないでおくか、また良いご縁を待つか、すこしのんびりと考えることにしたのでございました。