フェルマーの最終定理の外側(n=-1)

$$
\begin{array}{l}
x^{-1}+y^{-1}=z^{-1}\\
\end{array}
$$

を満たす整数の組はあるだろうか。結論から言うと、その整数の組は無数にある。

さて、$${n=-1}$$とせっかく負数も範囲にいれたので、$${x,y,z}$$も整数全体を範囲として考えてみる。
まず、定義か定理かは知らないが、ここでは$${x^{-1}=1/x}$$を認める。つまり元の式は

$$
\begin{align*}
\frac{1}{x}+\frac{1}{y}=\frac{1}{z}\\
\end{align*}
$$

と書ける。したがって、$${x=0, y=0, z=0}$$はそれぞれ許されない。
さらに$${z=}$$の形に書き換えると

$$
\begin{align*}
z&=\frac{xy}{x+y}\\
\end{align*}
$$

この式からはつまり、$${z}$$が整数であるためには$${xy}$$が$${x+y}$$で割り切れなけれならない。

もし$${x}$$と$${y}$$が両方とも奇数であるとするなら、分母が奇数になり分子が偶数となるため$${x}$$と$${y}$$が両方とも奇数であるということはあり得ない。
次に$${x}$$と$${y}$$が両方とも偶数である場合は、$${x=2b, x+y=2c}$$とおくなら

$$
\begin{align*}
x&=2b\\
y&=2c-2b\\
z&=\frac{2b(2c-2b)}{2c}=2b-\frac{2b^2}{c}\\
\end{align*}
$$

$${b,c}$$が互いに素の場合を考えると、

$$
\begin{align*}
\begin{pmatrix}
b&c\\
\end{pmatrix}
&=\left\{\begin{matrix}
(+1&+2)\\
(+1&-2)\\
(-1&+2)\\
(-1&-2)\\
\end{matrix}\right.
\end{align*}
$$

の4つの場合か、あるいはbがどうあれ(もちろん0はだめだが)、$${c=±1}$$の2つの場合であれば$${2b^2}$$が$${c}$$割り切れて$${z}$$は整数となる。

上記のうち先に述べた4つの場合であるときは、

$$
\begin{align*}
x&=2b=2\left\{\begin{matrix}+1\\+1\\-1\\-1\\ \end{matrix}\right\}\\
 \\
y&=2c-2b=2\left\{\begin{matrix}+2\\-2\\+2\\-2\\
\end{matrix}\right\}-2\left\{\begin{matrix}+1\\+1\\-1\\-1\\
\end{matrix}\right\}\\
&=2\left\{\begin{matrix}+1\\-3\\+3\\-1\\
\end{matrix}\right\}\\
 \\
z&=\frac{2b(2c-2b)}{2c}=\frac{2\left\{\begin{matrix}+1\\+1\\-1\\-1\\ \end{matrix}\right\}\left\{\begin{matrix}+1\\-3\\+3\\-1\\
\end{matrix}\right\}}{\left\{\begin{matrix}+2\\-2\\+2\\-2\\
\end{matrix}\right\}}\\
&=\left\{\begin{matrix}+1\\+3\\-3\\-1\\
\end{matrix}\right\}
\end{align*}
$$

並べて書くと

$$
\begin{align*}
\begin{pmatrix}x&y&z\\\end{pmatrix}
&=\left\{\begin{matrix}
(+2&+2&+1)\\
(+2&-6&+3)\\
(-2&+6&-3)\\
(-2&-2&-1)\\
\end{matrix}\right.
\end{align*}
$$

独立なのは

$$
\begin{align*}
\begin{pmatrix}x&y&z\\\end{pmatrix}
&=\left\{\begin{matrix}
(+2&+2&+1)\\
(+2&-6&+3)\\
\end{matrix}\right.
\end{align*}
$$


また、後に述べた2つの場合($${c=±1}$$の場合)のときは

$$
\begin{align*}
x&=2b\\
y&=2c-2b=±2-2b\\
z&=\frac{2b(2c-2b)}{2c}\\
&=\frac{2b(±2-2b)}{±2}\\
&=±2b(±2-2b)=2b∓2b^2\\
\end{align*}
$$

なお、この場合は$${x=0, y=0, z=0}$$という条件から$${b≠±0 かつ c≠±1}$$でなければならない。

最後に$${x}$$と$${y}$$のいずれかが奇数で、いずれかが偶数の場合を考えると、

$$
\begin{align*}
z&=\frac{xy}{x+y}\\
\end{align*}
$$

において$${x+y}$$が奇数となり$${xy}$$は偶数となるから、$${z}$$が整数であるためには、$${xy}$$と$${x+y}$$が互いに素の場合を考えると

$$
\begin{align*}
x+y=±1\\
\end{align*}
$$

でなければならない。このとき$${x=a}$$とおくと

$$
\begin{align*}
x&=a\\
y&=±1-a\\
z&=\frac{a(±1-a)}{±1}=a∓a^2\\
\end{align*}
$$

なお、この場合も同様に$${x=0, y=0, z=0}$$という条件から$${a≠±0 かつ a≠±1}$$でなければならない。

ここまでの結果を羅列すれば、$${x^{-1}+y^{-1}=z^{-1}}$$が成り立つ整数の組$${x, y, z}$$は、

$$
\begin{align*}
&①\\
& \begin{pmatrix}x&y&z\\\end{pmatrix}
=\left\{\begin{matrix}
(+2&+2&+1)\\
(+2&-6&+3)\\
\end{matrix}\right.\\
&②\\
& または、b≠±0 かつ b≠±1として\\
& x=2b\\
& y=±2-2b\\
& z=2b∓2b^2\\
&③\\
& または、a≠±0 かつ a≠±1として\\
& x=a\\
& y=±1-a\\
& z=a∓a^2\\
\end{align*}
$$

ここで$${2b=a}$$とすれば②と③は同じ式となるが、実際に②で表される$${x, y, z}$$をよくみると互いに素とはなっていない。すなわち②は冗長である。

結局

$$
\begin{array}{ll}
\hline
 \\
&        x^{-1}+y^{-1}=z^{-1}&\\
 \\
&を満たす3つの整数の組(x,y,z)は&\\
&u,vを0でない任意の整数として&\\
 \\
&(2u,2u,u)&\\
&(2u,-6u,3u)&\\
&(vu,±u-vu,vu∓v^2u), v≠±1&\\
 \\
\hline
\end{array}
$$

となる。

ーーーー例ーーーー

例1)
$${u=-3}$$とすると1つ目の式より$${(-6,-6,-3)}$$

元の式に代入すると

$$
\begin{align*}
\frac{1}{x}+\frac{1}{y}=\frac{1}{-6}+\frac{1}{-6}&=\frac{1+1}{-6}=\frac{1}{-3}\\
\end{align*}
$$

よって成立する。

例2)
$${v=-3}$$とすると3つ目の式より

$$
\begin{align*}
&x=v=-3\\
&y=±1-v=±1-(-3)=\begin{pmatrix}4\\2\\
\end{pmatrix}\\
&z=v∓v^2=3∓(-3)^2=\begin{pmatrix}-12\\6\\
\end{pmatrix}\\
\end{align*}
$$

よって、 $${(-3,4,-12) }$$あるいは、$${(-3,2,6) }$$
元の式に代入すると

$$
\begin{align*}
&\frac{1}{x}+\frac{1}{y}=\frac{1}{-3}+\frac{1}{4}=\frac{4-3}{-12}=\frac{1}{-12}\\
 \\
&\frac{1}{x}+\frac{1}{y}=\frac{1}{-3}+\frac{1}{2}=\frac{2-3}{-6}=\frac{1}{6}\\
\end{align*}
$$

よって成立する。

以上


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