寺岡健冶@お仕事募集中

フリーでシナリオライターやってます。ラノベの仕事もやってみたいので、現在それ向けのテキストを制作中……。お仕事募集中です。

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最近の記事

譲り合い

「ちなみに私は裏で暗躍する方が好きなので、リーダーなんて面倒く……大任は務まりません」  カディアは肩を竦めた。 「今、チラッと本音が出たよな!?」 「気のせいです! あと、ハンメルちゃんはー」 ”けっしゃ、ひと、ひつよう。りーだー、ぼくむり、ぜったいむり”  ハンメルは、ボフンと頭の傘から胞子を噴いた。  ルーファス達の参入には賛成、ただしリーダーはやりたくない、という事らしい。  カディアとハンメルが辞退、ルーファスとアキツカは立場的な事情で前に出たくない。

    • リーダー

      「すまぬな。迷惑は……うむ、今掛けている」  ルーファスの詫びの言葉に、ナローは肩を竦めた。 「自覚があるだけ、マシだって思っておこう。ああちなみに、もしバレた時は」 「もちろん、お主達は知らなかった、で通すとも。そこは安心して欲しい」 「まあ、関わった時点で一〇〇パーセントの安心なんて、もはやないんだけどな。さて、俺はさておき他二名の意見も聞かなきゃならないだろ」 「あ、私としてはリーダーがいいって言うのなら、全然」  ひょいと手を挙げて、カディアは即答した。

      • 説得

        「いや、しかしですな、その御髪を切り、染めるなど……!」  アキツカは、ルーファスの思いつきを必死に制止しようとしていたが、ナローの見たところ、それは上手くいっていないようだった。 「髪は女の命という言葉をどこかで聞いたが、髪はまた生える。命は一度失せたらそれまでだ。爺も髭を剃ればまあ、大分印象が変わるだろう」 「ぬ、ぬぅ……」  ナローは、アキツカの髪を脳内で短く刈り上げ、さらに髭も剃ってみた。  ……うん、ナイスミドル。  多分、十歳は若くなりそうだ。 「旅

        • 苦悶

           ルーファスの提案に、ナローは唸った。 「それに、俺達を巻き込もうって言うのか?」 「ある意味では」  目の前の少女は、間違いなく国家レベルの厄介事だ。  村に小鬼の群れが攻めてきたとか、そんな話とは格が違う。  ただ、階梯者二名、それも実力は今見た通りで、人格も悪くはなさそうだ。  公言していない身分の部分が、自分達の利になるか害となるか……そこだけが、読めない。 「もちろん正体は隠すとも。髪を切り、色を染め、そうだな性別も偽ろうか」 「姫っ!?」  不敵

          参入予定

          「提案というと?」  ナローの問いに、ルーファスは答える。 「結社を作ると言っていたようなので、それに私達も参入したい」 「ルーファス様!?」  ルーファスの案に、アキツカが目を剥いた。  だが、ルーファスは意見を取り下げるつもりはないようだ。 「爺も言っていた通り、特に急ぐ旅でもないだろう? そも、急いているのは向こうであって、私達がそのペースに飲まれる必要はない」 「む、う……しかしですな、この辺りは危険ですぞ?」 「危険と言えば、この国全土が危険ではない

          提案

          「……でも、当然国境にはもう、帝国兵が見張りに立っていますよね?」 「そりゃまあな」  カディアの疑問はもっともなので、ナローも頷くしかない。  国境どころかそこに到る街道、村や町にもおそらくは兵士が配備されている可能性は高かった。  ふぅむ、とアキツカは己の白髪を掻いた。 「弱ったもんじゃのう。まあ、絶対行かねばならんという事もないが」 「え、急ぎの旅とか、そういうのじゃなくて?」  何が何でも進むとか、そういう事ではないのかとちょっと意外に思うナローであった

          行く末

          「いや、ひめ、ではなくルーファス様。死の間際に重要な情報を語ってくれて、感謝するべきでしょう。まあ、行く手は多難でしょうがな」  もはやルーファスの身分を隠す気があるのかどうか怪しい、アキツカであった。  そして、言われたルーファスは深々とため息をつき、頭を振った。  そこでふと、ナローは疑問を口にした。 「そういや、行くアテってあるんすか?」 「うむ、西の小国ハルベスに向かおうかと思っておる。あそことは交流もあるのでな。何より、帝国もおいそれと手が出せんじゃろ」

          遺言

          「この……っ!!」  ナローの目の前に、帝国兵の槍が突きつけられる。  が、 「本気を出すのが遅すぎたな!!」  動揺して威力も速度も低いそれをあっさりと躱し、ナローは帝国兵の首を刎ねた。  ほぼ同時に、カディアも残る一人の帝国兵の胸を、槍で刺し貫いていた。 「逃げ……切れると思うなよ。この先にも、既に……帝国の……精、兵……はいち……」  その兵はそう言い残して、事切れた。  それを見下ろし、ルーファスは顔を顰めた。 「厄介な……」  本日はここまで。

          伝心

           聖句の名は『伝心(テレ)』。  ある意味、そのままであった。  この聖句を利用し、ナロー達は無言のまま、互いの連携を取ったのだ。  が、もちろん、ナローには、帝国兵達に教えてやるつもりなど、なかった。 「残り四人……いや、二人っ!!」  アキツカの投げた金槌が、激しく回転しながら帝国兵を二人吹き飛ばした。  あの質量では、ぶち当たれば即死だろう。 「強っ!? お爺ちゃん強っ!!」  槍を構えて帝国兵に迫りながら、カディアが叫んだ。  本日はここまで。  

          連携

           ちなみにハンメルの性別など、ナローは知らない。  キノコの性別なんか知るか。  だが、そのナローの適当発言を、帝国兵達は律儀にも真に受けていた。 「その菌糸族は女だったのか!? ……お、おい、どうする?」 「だったら、三人とも確かめればいいだろ?」 「な、なるほど! よし、貴様達――」  槍を突きつけようとした兵の首は、ルーファスの剣の一撃で吹き飛んだ。  ナローが注意を引きつけている間に、踏み込みの力を溜めていたのだ。  そして。 「憤っ!!」  アキ

          容疑者

          「何だと。帝国の兵かと思ったら賊の類だったか」  ナローの問いかけに、兵隊長は激昂した。 「ふざけるな! 我々はとある任務を帯びて、ある女を追っている。……貴様達の中にいる、そこの二人にその疑いがあると言っているのだ。大人しくしていれば、手荒な真似はしない」  怒りはしていても、理性は残っているらしい。  勝利国であるにも関わらず、無法な振る舞いをしない辺りは、ナローとしては好感が持てた。  だからといって、彼らに利するつもりもないが。  ふむ、とナローは真面目く

          帝国兵

           殺気だった存在は、空から現れた。 「貴様達、そこを動くな!」  高い羽音を鳴らしながらナロー達の前に降り立ったのは、スパンマキナ帝国の兵士達だ。  黄色を地に黒の縁取りをした軽甲冑装備に、長い槍。  そして透明な羽。  一般的な、帝国兵だ。 「動いてないぞ?」  一応剣こそ構えてはいるが、ナローはそう答えた。  実際、少なくともまだ、誰も動いていない。 「口答えをするな! ……そこの女達、身を改めさせてもらおうか」  一ランク上の兵、おそらく隊長格らしき

          気配

          「そうじゃの。せっかく拾った命じゃて、大事に使うと――」  アキツカの言葉が不意に途切れ、王都のある方角を振り返った。 「むしゅ……」  次の反応したのはハンメルで、そのキノコボディを軽くナローにぶつけてきた。 「おい、まさか」 「あらあらあら」  ナローの表情が引きつった。  カディアも、困ったような笑みを浮かべ、槍を持ち直す。  剣呑な気配が、急速に迫ってきていた。 「すまんのぅ、どうやらもう、巻き込んでしもうたようじゃ」 「エンカウント率高すぎ

          一期一会

          「荷が重すぎますよ」  明言されている訳ではないが、某国の王女様の逃亡の手助けなど、ナローの身に余る事態だ。  ナローの返事に、ルーファスは苦笑いを浮かべていた。 「ふふ、私達はまさしく重責を背負っている。関わらないというのは賢明な判断だ」 「それより爺さん、とりあえず治療はしたけど、身体の具合はどうっすか?」 「ふぅむ……本調子には程遠いが、まあ、何とかなるじゃろ」  超人格の、体力や負傷の治癒力は常人(コモン)とは比較にならない。  指程度なら、仮に切断した

          耳の話

          「ほう、結社か。人数は足りておらんようだが」  胡座を掻き、顎髭を撫でながら、アキツカはしれっと言う。 「って耳いいっすね、爺さん!?」  振り向きざまのナローのツッコミに、カッカッカとアキツカは笑った。 「儂も、これでも超人格(ブレイカー・クラス)の階梯者(ランカー)でな。耳が良うなっとるのだよ」 「内緒話も出来ないって事か。まあ、聞かれて困るような内容でもないけどさ」  ナローはため息をついた。  単に正面切って話すと、不快にさせる可能性があるから気を遣った

           ナローはアキツカに状況の説明を続ける。  といっても、大した話ではない。 「それで、っすね。俺達は王都に向かってる。爺様達は逆に、王都から遠ざかろうとしている。よって、俺達はここでお別れって事になる」 「そうなるのう。いや、それにしても礼を述べるのを失念しておった。傷の手当て、感謝する」 「どういたしまして」  頭を下げるアキツカに、ナローは軽く手を振った。 「手持ちの金は、すまぬがほとんど持ち合わせておらぬ。小粒じゃが、これで一つ礼とさせてもらいたい」  ア