大凶の効果
父がお出かけ先で転んだそうだ。
母が毎年楽しみにしている牡丹園を2人で見学したあとのこと。
前のめりにつまづいて手が出なかったようで、顔から倒れて両手の甲が地面向きに胸の下になった形で強打したらしい。帰ってきたとき父は顔も手も血の気が引いたように真っ白だった。
母は自分の車しか運転できない人なので、父の車で出かけると運転を交代することはできない。そのため父はなんとか運転して家まで帰ってきた。しかし本人は相当の痛みがあったと思う。一旦帰ったらかかりつけの整形外科に行くというので、母は送っていくよと言ったそうだが「お父さんたら自分で行くと言って聞かないのよ」と笑った。
父が母に頼みたくない気持ちはわかる。
母は長年、父が病気やケガをするたびに文句を言ったりバカにしてきたので、手を借りたくないのだ。が、聞けば両手がしびれているうえに、見た感じ両手とも握る動作ができそうにない。それなのに車を運転して行くなんてどれだけ危険か!私は、「事故を起こしたらどうするの?誰かに危害を加えることになったらどうやって責任取るつもり!?自分のことだけ考えず周りのことも考えて、お母さんに送ってもらいなさい!!」と怒鳴ってしまった。
父はうつむき涙声で「わかった・・・」とつぶやいて母に連れられて病院に向かった。
その時の私は、心配の言葉より先に怒りが出てしまった自分にとても落ち込んだ。もっと2人の帰りが遅くなると思っていたのに早く帰ってきたがっかり感と、来客の時間が迫っているために話を聞く余裕がないのと、生理中の最悪の体調&メンタル状態で爆発したのだ。夫は私に、運転危ないのは確かなんだから仕方ないしいろいろとわかるよ、と言ってくれた。
病院から戻ると父は「夕飯いらない」といってすぐに部屋へ行った。
診察の結果は、骨に異常無し、打撲とのこと。
ひとこと「すかねごだ(いやねえ、もうの意)」という母に私は「そんなこと言うから頼みたくなくなるんだよ、もうやめて!」ときつく言った。
その晩、父は痛みが強く一晩眠れなかったらしい。翌朝ひどく憔悴した様子で病院に痛み止めや症状について電話をして、母がもう一度病院に連れて行った。
私もイライラしたせいで遍頭痛の朝。
今日はともかく、明日は夫と父で手分けしなければならない予定が入っている。父ができなければ他の方に急遽お願いしなければならない。
ふと、なんでこんなことになったのかと、昨日の方位を見た。
まず日で見ると、方位は大凶の五黄殺、思いがけない大難に苦しむ。
月で見ると凶で、万事に計画倒れ、ひどい目に合う。
年で見ると大凶の定位対冲で、不慮の事故から信用を失う。
暦はどうかというと、まずまずの吉日なのだが旅行だけは凶だった。何事も重複する日、まあそうだな。
さて、ここで誰が一番大凶を食らったのかというと、当然ながらこの日に行き先を決めた母である。
父とのお出かけが好きなわけじゃないけど自分一人ではいけないから連れて行ってもらい、好きな物を好きなくらい食べ、ゆっくり温泉も入りたかったに違いない。
それが急な変更、早めの帰宅、父に対する態度で娘夫婦からの冷めた視線を浴び、父の世話が始まった。
父は部屋までご飯を運んでもらい、薬を塗ってもらい、今朝は大好きなピーナツパンを食べ、支度中に着物の紐を母に結んでもらったりしてまんざらでもなさそうだ。
「定(さだん)」の日、何かが定まったんだな、と思う。