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映画独り言。短編映画「片袖の魚」

待ちに待った東海林毅監督の短編映画「片袖の魚」を観に行ってきた。

トランス当事者がトランス役を演じた日本初の映画。スマートフォンで撮影された。


東海林監督の映画は、商業映画も含め何作か拝見させていただいている。

短い時間の中にぎゅっと詰め込まれ、観ていてしんどくなることがない。VFXもご自身がされたり、映像の切り取り方がさすがだと思った。

片袖の魚の前に観た「日常対話」は、家族の日常かな?と軽い気持ちで観たら、内容が深く重く途中かなりしんどくなる映画だった。(この映画も素晴らしいのでまた改めて書く)
気分が高まっている状況で、片袖の魚を観た。

内容についてはまだ上映されていない地域もあるので触れないが、所々女心が共感出来る部分があり、攻撃性がない優しい映画だった。

映画が終わった後に、観客から質問を受け付けてくれた。
1人目の方が

「今まで当事者に接したことがなく、どう接したら良いかわかりません」

と質問した。

監督は、色んなケースがあるから正解は難しいけど人権問題を意識する事が一番正解に近いかもしれないと優しく答えた。

この映画にはドラマティックな盛り上りがあるわけではなく、日常のほんの一部だと思う。映画終了後に当事者(適切な言葉を選ぶのが難しい)の方とお話させていただいたが、別に毎日が映画のようでもなくドラマティックでもなく、普通なんですよね、と聞いて確かにそうだと思った。

私はこの質問をされた方が、少しでも理解しようとした行動に大きな意味があると感じた。この映画が考えるきっかけになったのだから。

次に質問された方は、車椅子の方が出演していた事は何か意味があるのか?という質問。

車椅子の役を演じたのは、アイドルグループ元「仮面女子」の猪狩ともかさん。

猪狩さんは看板の落下事故により両下肢麻痺となり、実際に車椅子生活をされている。

LGBT当事者の方や障がいを持った方は可哀想にみられたり、可哀想な運命の役が多い。

でも決して可哀想ではなく、普通に暮らしているということを表現したくて車椅子だという状況説明をしないようにしたとお話された。

私も、子供が障がいを持っている事に対して何百回可哀想と言われたかわからない。確かに大変ではあるけど可哀想じゃない。普通に幸せに暮らしている。

その気持ちをわかってくれる人はいるんだと思ったら、もう涙が止まらなくなってしまった・・・

終了後、監督や当事者の方と少しお話する事ができた。同じ当事者であっても、全くカミングアウトに苦労せずそれほどしんどい思いをされて来なかったことや、日本の同性婚の理解や制度変更の遅さなど、まだまだ膨大な問題が立ちはだかっている現実を目の当たりにした。

映画の事やLGBTの事を話す機会はとても貴重でありがたい時間だった。

映画を通して考える「きっかけ」になる素晴らしい作品。

全国順次公開されています。
現在、名古屋シネマテークで上映中。



以前東海林監督について書いた記事


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