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アート独り言。(聞こえる世界が普通ではない。)
マスクを外した時にふと思い出した。
15年前、サインミュージカルを観に東京まで行った。
耳が不自由だけど、俳優でありダンサー「大橋ひろえさん」の自叙伝ミュージカル。
ひろえさんは幼少期、母からの厳しい教育によって口語が使える。
生まれつき耳が不自由な場合、「音」を聞いたことがない。たがら、話せない人もいる。
ひろえさんは、聾唖者だとはわからないくらい、音程も、話し方もスムーズ。
並々ならぬ努力だったにちがいない。
コロナ渦ではマスクは必須アイテム。いくらマウスシールドやフェイスシールドがあっても、マスクをするのが大多数。
口語は話す相手の口の動きを読み取るので会話が出来ない。
いったいどのように生活しているのだろう。
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2006年2月。
朝は保育所行事で節分会だった。
子供達と鬼に豆まきをし、帰宅するともう家を出る時間。焦りながらもなんとか新幹線に乗る。
乗り換えて中野駅につくと、公演にダンサー役で出演する友人が迎えに来てくれていた。中野ゼロへと急ぐ。出演者はロビーNGということで、あっという間に別れ、受付に行くことに。
入り口は長蛇の列だったが、並ぶ事なく受付通過。
Bチケ(指定席)という協賛金入りのチケットで、優先的に入る事が出来た。
席に着くと、若者がいっぱい。
若者たちは、手がしきりに動いている。
前列は耳の不自由な方で埋め尽くされていた。
なんとも不思議な光景だった。耳が不自由だけど、普通に話している人もいれば、手話で2階席の人と会話している人。
手話ってすごい。
手話のわからない自分はまるで異国にいるようだった。
やがて幕が開く。ステージ両サイドには字幕が表示されている。前列の若者達は、手話がわかりづらいときは字幕を見つめていた。
ストーリーは、生まれつき耳が全く聞こえない女の子が苦難を乗り越えアメリカに渡り、ダンスに出会って自分の居場所を見つけるというストーリー。
1幕は主人公ひろえの少女時代。
口語を教えるため、かなり激しい叱責のシーン。見ているのがつらかった。
努力努力の少女時代。涙が出そうだった。
休憩に入り、トイレに行こうとロビーに出る。すると友人が再び来てくれて、私がご飯食べる時間が無かったのを気遣って、出された自分用のお弁当を私にくれた。
2幕開始。成人したひろえがダンスに出会い、成長する姿を表現。
泣いてばかりの1幕とは違い、歌あり華やかなダンスあり、お笑いありと見ていて気持ちよかった。
ひろえさんの聴力はほとんどないのに、リズムをとってダンスしている。
並大抵の事では出来ない。
本当に強く心を打たれた。
舞台はクライマックスを終え、幕を閉じた。拍手はいつまでも止むことはなかった。
私も手が痛くなるぐらい、手をたたいていた。
再び幕が上がる。
カーテンコールで花束禁止となっていたが、次から次へと花やプレゼントが持ち込まれていた。
せっかく東京まで来たが、新幹線にすぐに乗らなければならない。友人とあまり言葉を交わすこともなく新幹線に乗った。こらえる涙が出そうで振り返ることは出来なかった。
22時だけどやっぱりおなかがすいた。
さっきもらったお弁当でも食べよう。
しかし。
箸がない。
おわり。
聞こえなくても、外国語がわからなくても、世界中の人とコミュニケーションが取れるダンスはやっぱり素晴らしい。
ひろえさんの最近の映像、元気出た。
https://creators.yahoo.co.jp/itoshiori/0200090389