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I Love Books(2024年6月号)

てらこや新聞2024年6月号は、2024年6月10日に発行されています。upが遅くなったので、今回は無料で掲載することにしました。

BOOK118: 瀧羽麻子 「うちのレシピ」 (新潮文庫)

 こちらのコーナーで以前ご紹介したことのある「オルゴール店」シリーズが気に入ったので、その著者の他の作品を読んでみたいと思って手に取ったのが今回ご紹介する本です。

 物語の舞台となるのは「ファミーユ」という小さなレストランです。そのレストランの生真面目なシェフ・正造とその妻・芳江、二人の一人娘である真衣の家族と、正造に弟子入りした啓太、啓太の父の雪生、母の美奈子という二つの家族の物語になっています。
 真衣と啓太が結婚することで起こる摩擦のいろいろが語られていきます。それぞれ一人一人の物語が、時制を前後しながら連なっています。六人の登場人物たちそれぞれに事情や忘れられない出来事があり、そこに印象的な料理が登場します。
 
 人と人とのつながりの中で、衝突や軋轢が全く起こらないことはあり得ません。仕事や恋、生き方に悩みながらも、人が生きていく上で食べることは切り離せません。あたたかな食事にホッと心を癒やされる瞬間もあるでしょう。読み進めるにつれて、パズルのピースがぴったりとはまっていくように、それぞれの登場人物たちの今がつながっていくことが分かってきます。

 二つの家族のつながりを、料理を通して見つめていく・・・そんなお話になっています。読後はじんわり心があたたかくなるような気がしました。悩みのない人生なんて誰しもなく、それでも日々が続いていく中で、もがいたり立ち止まったりしながら、その時その時の「今」を精一杯生きていく、それが明日につながっていくのだと、やさしく教えてくれる物語だと思います。

(K.T.)

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