卒業生インタビュー(坂場さん)
1年間を終えて、まずは一言感想を。
あっという間に過ぎました。あっという間だったけど、すごく濃い一年だったなと思います。
最初の頃の振り返りから始めるけど、島食の寺子屋になんで入ったんだっけ?
坂場:
料理の道に行きたいって思っていたんですけど、専門学校じゃなくって、生産者さんが身近にいるところで学びたかったです。
あと、座学がないところ(笑)
座学に意味はないとは言わないけど、教科書通りじゃない学び方をしたいなと思っていました。大切なことは教科書にはないなって。
大学も生産者が近くにいたりするところで、友達の家が農家さんだったりして。そんな人たちの手助けができるような料理を作れるようになったらと思っていました。
恒光:
実際に島食の寺子屋に入ってみて、手助けをするような料理は作れるようになった?
坂場:
自分がこういうことをしたい、手助けになることをしたいと考えていたことが、生産者の側からするとそんな簡単に言えることじゃなかったってことに気付きました。
恒光:
例えばどんなこと?
坂場:
未利用魚の活用とかやりたかったけど。思っていた以上に、使われなかったり捨てられてしまう魚の量が多くて。あと、サイズが小さかったりで、それをどういう風に生かすかっていう答えを、1年の中で具体的な行動として形にするまでにはできませんでした。
寺子屋の1年で印象的だったことはある?
坂場:
離島キッチン海士ですね。最初の方は離島キッチン海士が嫌でした(笑)
慣れてないことをすると、怒られたりして落ち込むこともあるし。
けど、数をこなしていくうちに、接客でサーブをすることにも余裕が出てきて。そうすると、お客さんの食べているところの顔を見ることができるのが良かったです。
恒光:
進路先からの希望で、卒業前に3週間ほど進路先で働く経験を持つことになったけど、離島キッチン海士での経験はどう活かせている?
坂場:
指示の受け方とか、営業直前のバタバタしている時にどういう風に自分がどう動けばいいのかっていうのが、自分でも気付ける部分がありますね。
これから働く職場のことを教えてください。
坂場:
お店の名前が「山形座 瀧波」っていう、山形県南陽市にある旅館なんですけど、そこは和食とイタリアンを融合したローカルガストロノミーの料理を作っているところです。
個室とカウンターがあって、お客様の目の前で盛付けをして提供するような雰囲気です。お料理を楽しんでいただくような旅館ですね。
恒光:
実際に3週間ほど現場に入ってみて、まだ自分に足りてないなって思う部分はあった?
坂場:
基礎はまだまだかなと思います。
一通りは切れるけど、それを正確にとか凄く細くっていうことはまだできなくって。同じ大きさで、全く変わらない大きさで細かく切るとか。もう少し基礎の時間があっても良かったなと思います。
白髪ネギの練習は絶対に必要です!!(笑)
次に休みの時間のことについて伺います。休みの時間での印象的なことは?
坂場:
やっぱりシェアハウスでのご飯ですね。大体3人みんなで作りました。
「今日なに食べたい?」で始まることもあれば、「今日はこの食材がいっぱいあるから、これを使った料理にしようか」とか。
恒光:
得意料理とか好きな料理はありますか?
坂場:
好きな料理は、妙ちゃん(シェアメイトの佐野さん)の作った蒸しパンです(笑)
恒光:
第三者の誰もがわからない具体例やね(笑)
坂場:
本当にほっこりするんですよ。たぶん誰かが時間をかけて作ってくれるのが嬉しかったんですね。
恒光:
他にはどんな過ごし方をしていました?
坂場:
2日連続で休みがあるときは、2日のうち1日は必ず台所に立とうって決めてて。
恒光:
料理を作ることに関して、けっこうストイックだったような気がする。インスタント系のものを食べちゃうことが、すごくだらけていることだから、食べちゃってしまっている時の自分が嫌いだとか。
坂場:
確かに。添加物とかをとらないようにはしていましたね。
太っていた時期があって、添加物が悪いわけじゃないけど、体に良いものをとるようにし始めたら、結果的に自然なものになってくるじゃないですか。味が濃すぎるものを食べないとか、味覚にも添加物は影響あるだろうし。
恒光:
味覚ってワードで思い出したけど、島食の寺子屋に来て味覚は変わった?
坂場:
変わりましたね。簡単にいうと、薄味でも満足できるようになりました。
薄味でも素材の味がわかるようになりました。薄味だからっていうのもありますけど。
今年はコロナも落ち着いてきて、去年とか一昨年に比べて飲み会が比較的に解禁されたけど、地区の飲み会に参加して良かったこと、大変だったことはありますか?
坂場:
飲み会には、漁に熱い男がいるじゃないですか(笑)
その方から、実際の現場のリアルな声とかが聞けるのが良かったです。
大変だったことは、早く帰らなきゃって思っているに「まだまだ!」って言われる時ですかね(笑)
鞍谷講師はどんな人?
坂場:
鞍谷先生は優しいです。優しいけど、絶対に褒めないです。
褒められたことは一度もないですね(笑)
でも、それも優しさかなって思います。私たちは、まだまだじゃないですか技術的には。それを褒めてしまうっていうのは、長い目で見ると良くないことなんだろうし。
恒光:
ということは、褒めて欲しいって思うタイミングもあるのかな?
坂場:
褒められて伸びるタイプなんで(笑)
例えば、上手く魚を捌けた時とか褒めてほしいなと思うことはあります。
そういう時、先生は「まあまあだな」とだけ言います(笑)
恒光:
鞍谷先生に、すごく怒られたことってある?
坂場:
離島キッチン海士で生徒自身も食べさせてもらう時があったじゃないですか。その時に、厨房組に挨拶もしないで、食事が出てくるのを待っていた時ですね。
1年の中で自信がついた瞬間はある?
坂場:
何日か連続で離島キッチン海士が続いて、生徒の中で代わるがわる当番制で営業を担当することがあった時に、先生の指導のもと生徒2人で、仕込みと本番をやり切ったことですかね。何日か連続で営業が続く時の1日目の担当だったので、仕込みの量も多くて。それをいつもの営業より少ない人数で乗り越えた時ですね。
授業のこと休みのこと、色んなこと含めて島での1年はどんな感じでしたか?
坂場:
暮らしの中に学校がある感じでした。
寺子屋でも料理を学ぶし、寺子屋で学んだことをシェアハウスでもやるし。食材が、校舎にある食材も、島の中で揃う食材も、殆ど同じなことが多いっていうのもありますけど。
授業でやったことを、あれ美味しかったから家でもやってみようかとか。逆に、家でこういうことやってみて美味しかったから、生徒達で作る弁当にアイデアを使ってみたりすることもありました。
最後に、改めてこの一年の総括と、来年度の生徒に一言。
坂場:
ぽーっとしてたら、過ぎていった一年でした。
でも、課外授業も思いっきり楽しみましたし。もずく探しが一番楽しかった。海で泳げたし、下に魚が見えるし、すごく楽しかったです。総括って難しいですね、色んなことがあり過ぎて。
あとは、やっと料理の道へ一歩踏み出せたんだなというのが、今の気持ちです。もともと料理の道に行きたかったというのもあったので。
恒光:
来年度の生徒にアドバイスをお願いします。
坂場:
ずっと立ちっぱなしで料理を学んだりして、大変な部分もあるじゃないですか。だからこそ、やっていることを無駄にしないように、自分の中で毎月なにか課題を設定してみるのが良いのかもしれないです。例えば、毎月30日は桂剥きと魚を一匹捌いてみるテストを自分でやってみるとか。そういうことが出来ていたら、もっと良かったなと思います。
恒光:
なるほど、ありがとう。一年間、お疲れ様でした!
(収録:2023年3月9日@離島キッチン海士)