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卒業生インタビュー(武田さん)

恒光:では、一年間お疲れ様でした。

武田:はい、ありがとうございました。

恒光:卒業制作弁当の配達が終わって、どういった気持ちですか?

武田:終わった実感が、まだないって感じです。終わっちゃったんだなーって思っちゃいます。

恒光:1年の中で色んなことがあったと思うけど、入ってすぐの頃はどうだった?

武田:入ってすぐは、なんかみんなが自分よりすごいできるように見えて、料理に関して何も知らないなとか、何もできないなとか、すごい人と比べていたような気がします。「全然できない」ってよく思っていました。

恒光:それが今はどうなの?

武田:比べても仕方ないとわかっていても、最初の頃は比べてしまっていて。でも、日が経つにつれて、自分がどれだけ成長できたかの方が大事だし。

自分だけを見た時に、最初は何かを見ないと料理ができなくって、それが見なくてもできるようになってきて。それだけで全然違うよなって思って。

離島キッチン海士が忙しくなって、たぶん人と比べるということよりかは、目の前のことに精一杯になってきたっていうのもあるかもしれないですけど。

でも、そう思ったら、離島キッチン海士の中で、自分で気付いて動けるようにやりたいし、どんどんやりたいのに上手く動けなかったり、そういった面では人と比べてしまっていたかもしれませんね。先に、この人がこれやっているとか。役割分担とかしてやっていましたけど。その人がどれだけできているのかとか、どんな風にやっているのかとか。色んな気持ちがあったのかもしれませんね。人と比べたり、比べる中で自分のことをもう一回見直したり。

本当に自分が成長できているのかなって心配になったり、こんだけ沢山離島キッチン海士をこなしているのに、なにか吸収できて変わっていけているのかとか。変わらないと、やっている意味ないじゃないですか、せっかくやっているのに。

やったことを振り返りたいなって節々で思うけど、帰ってくるのが遅くなって寝ちゃってとか。振り返りをしっかりしたいのに、ノートに書き留められずにいることが溜まってしまったりとか。

なんの話でしたっけ? すみません(笑)

恒光:成長の話。大きな成長を実感することって、そんなに頻繁に起こることではないと思っていて。毎日のように上手くなっていく類のものも勿論あるだろうけど。節目ごとに自信がついたり、不安を拭えた時はどういう時なの。

武田:落ち込むこと多いけど、でも落ち込んでいても仕方ないから「頑張ろう」って思うのも早くて。だから、「頑張ろう」って思うタイミングは多いかも。よく自分の思い書き出すんですよ。こうしたいとか、こうなりたいとか。それで、書いて目につくとこに貼っておいたりするんだけど。

自分の味に自信はないけど、味付けには自信を持てるようになったかな。でも、本当に自分はマイナスからのスタートだと思っていたから、マイナスではなくなってスタートラインの1くらいに立っている感じ。

恒光:進路の話にもなるけど、これから日本料理のお店で働くことになるんだけど、スムーズに不安なく入っていけそう?

武田:不安がなくはないけど、働いてみないとわからないですね。不安よりも楽しみの方が勝っていて。ここで色んな基本的なことを教えてもらって、またお店でも新しいことを学べるだろうし。まだ、どんな感じで働くかの想像もついていないし、。なにが学べるのだろうかとか、どういうことするのかなとか、楽しみの方が大きいです。

恒光:寺子屋での学びを要約してくれるかな?

武田:料理のこともだけど、食材との向き合い方とか、料理をする上での考え方とか。食材に対する想いは、ここに来る前より全然変わったと思います。

食材自体が大事なのはわかっていたけど、「そうだよね、大事だよね」程度だった、ここに来る前は。それが、生産者の方が身近にいたり、そういうのを見るとどれだけ手間をかけて、魚もお肉も野菜も作られているのかを見ると、本当に大事だなって思うようになりました。全然、今まで目を向けられていなかった。

恒光:入塾して最初の頃、農作業に全く興味なかったもんね。

武田:正直な話、農作業には一切興味がなかったです。農作業とかに興味なかったのに、なんで島食の寺子屋を選んだろうって思います。

恒光:僕もそう思います(笑)

武田:ね!生産者さんとかに興味がなかったのに。
でも、それは見る機会がなかっただけで、興味ないことなかったし。
料理をするうえで、そういうことを知ったうえで料理できた方がいいとも思うし。大事にしたいなって思う。

恒光:武田の場合は、入口がそういう感じなのが面白い。

武田:生産者の方にお話を聞いているうちに変わってきたのかも。農薬を使っている使っていないというのすら、今まで気にしてこなかったかも。知らなかったし、だからこそ気にもできなかったんだと思う。

でも、手間をかけて大事に作られた野菜が、実際に食べて美味しかったりとか、全てが繋がっているんだと思います。人参甘いなって思ったりとか。今まで甘いって思ったことはありますけど、ここだとそのまま齧りついたりするけど、それでも甘いし。話を聞いて、見て、食べてが全部が繋がっている。それが大きいと思う。

恒光:個人的には、興味がない人にを無理やり押し付けたくないスタンスだから、最初にまったく興味がなかった武田が、こうやって自然と興味を持ってくれたことは嬉しい。

もしかすると、地元に帰って色んな食材に溢れている都市部での料理の世界に戻ったら、また忘れちゃうかもしれないけど。

武田:でも、その気持ちは忘れたくないんですよね。この気持ちをもって料理を続けていきたいですね。せっかく、ここに来て色んなものを見て刺激を受けて、今までになかったことを沢山知ったから。本当に忘れたくないですね。

恒光:就職するお店はどういったところ?なんで、そこを選んだの?

武田:今までも何度か言っていることだけど、フィーリングで選んじゃうところがあるから。ここに来た時も、そうだし。「なんか良いな、来たいな」って思ったから。

就職先も、実際に行ってみて、お店の雰囲気とか店主の方とも話して。あと、昆布だしを大事にしていたり、野菜にすごい詳しかったり。野菜のことをもっと知りたいと思う自分もいて。あと、お料理も美味しかったし。民芸を大事にされている方で、そこも好きだなと。

恒光:話が行ったり来たりするけど、卒業制作と留学弁当はどう違った?

武田:卒業制作は、今までで一番良いものにしたかった。だからといって、留学弁当の手を抜くわけじゃないけど。卒業制作の場合、もう寺子屋としてお弁当を作るのが最後なんだって思ったら、なんか納得のいくものを作りたかったし、関わった人に有難うを伝える機会だから、より大事にしたかったですね。

ずっとお弁当のことばっか考えていた。ずっと、なにを作るかとか、なにを入れるかとか。ずっと夜遅くまで台所の前で、ノート広げて話し合って、「あー、早く寝なきゃ」って言いながら12時回って、っていう生活してて。

もっと早くそういったことをしとけばよかったとも思う。今だから、そこまでやれたのかもしれないけど。最初のお弁当の頃は、考えるけどわからないことも多くあるし。考えれる幅が最初は狭くて、先生の力を借りるし。自分たちだけで考えられることが増えたかな。

恒光:卒業制作の話し合いを何度かした時に、「自分たちで作るお弁当なんです」っていう意識がすごく強く感じられた。

武田:最初の頃につくったお弁当は、自分のものって感じはなかった。先生の力を沢山借りたし。終盤の方は、自分たちで考えられた感覚は、最初の頃より全然あるし。

恒光:ところで、おにぎりっていうテーマで「生徒による自主企画」をやり切れたのは武田だけだったよね。やり切れたのが、武田自身のキャラクターもあるだろうし、時期のタイミングもあるだろうし。

武田:これは本当に有難い話で。みんなできていないことを私だけできて。それも、何回かに分けてできて。もう、できないかなって諦めかけていてので。

恒光:離島キッチン海士とか、他のスケジュールの兼ね合いもあって、できない時期もあったけど、それでもやり切ったもんね。

武田:やりたいって思う気持ちはずっとあって。そんな時に、漬物とかを直売所に出そうって話が出てきた時に、「ちょうどいいじゃん、おにぎりもやりたいな。」って思って。

初めておにぎり販売した時よりも、試作をどのようにするかっていう要領も掴めてきていたし。最初のときに、なんであんなに切羽詰まっていたんだろうって思えるようになってきたし。家でも沢山作ったし、授業の合間でも作ったし。それは数をこなしたからかもしれないですけど。誰よりも米を炊いた気がしますね(笑)

恒光:なにが武田をあそこまで突き動かしていたのかは不思議。
しかも、「おにぎり」って枠でね。それ以外の料理も沢山あるのに、なんでおにぎりにハマったんだろう。

武田:おにぎりは好きだし、たぶんやっていて楽しかったから(笑)
なんでか他のものをやってみようとは思わなかった。

あと、やるからには何回か同じこと繰り返さないと意味がないと思う。これやったから、次これみたいな感じだと、勿体ないじゃないですか。おにぎりとか、お米のことをこんだけやって良かったなと思います。

誰かにおにぎりを引継ぎたいんですけど、次の生徒の方に!
おにぎり好きな人がいたら、私の発想にないおにぎりが生まれそう。
しかも、それをしゃん山で販売したら良いなと思うし、いつも食べてもらっている人以外に食べてもらうことないから。すごいできてよかった。ただやるだけじゃなかったから。

恒光:それでは、最後に。これから料理の道に関わっていくということで、抱負を一言。

武田:どんなことでも吸収したいです。
たぶん、自分が欲しいと思ったのは、学ぼうとするので。それを自分なりに吸収して、自分のものにしていきたい。「自分の料理」が作れるようになりたいです。人に頼らずに。

恒光:人に頼らずに?(笑)

武田:味見してもらって「これでいいですか?」とかじゃくて。
「よし、これでいこう」って自分で思えるようになりたいです。

恒光:そうなれるよう頑張りましょう。一年間お疲れ様でした!

武田:ありがとうございました!

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2022年3月13日収録(@島食の寺子屋校舎 大掃除の途中に)