交通事故で「謝ってしまうと加害者にされてしまう」というのは本当か?
「事故をおこしたとき、事故に遭ったとき、絶対に謝ってはいけない。謝ったら自分が悪いと認めることだから、悪くなくても加害者になる」
交通事故は経験も無いし正確な情報も少ないので、「中の人」からすると「どうしてこんなことが信じられているの?」という都市伝説のような話があります。
これもその一つ。正確な情報をお話しします。
交通事故で100:0になるのは3パターンだけ
自動車同士による交通事故で完全に100:0(どちらかが一方的に悪い)の責任割合となるのは、基本的に次の3つだけです。
1. 停車車両への追突、逆突
2. 交差点内の信号無視による衝突
3. 明らかなセンターラインオーバーによる衝突
車を運転するには「注意義務」を怠らないというのが原則ですが、上の三つは「避けようが無い」ものです。もちろん気がついて急ブレーキやハンドル操作で回避できる場合もありますが「自分も気を付けていれば避けられた事故」では無いケースです。
100:0ケースでも謝らない加害者がいる
損保のケガ担当をやっているとたまに信じられない人がいます。上記の100:0ケースなのに現場で相手に謝らないケースも稀にあるようです。事故直後の現場にいるわけではないので、あくまで相手(被害者)からの情報ですが、追突しておきながら「すみません」の一言もない。
ホントに稀ですがいるのです。
あるとき話してくれた契約者がいました。「謝ったら負けだから、謝ったらダメと知人から聞いていたから」とのこと。
何に対しての勝ち負け?
どうやら「謝ると加害者であると認めることなので、責任が大きくなる。大きくなると相手にたくさん賠償しなければならない」というわけです。
わかったような、わからないような。
万が一の事故で相手に賠償するための保険でしょ?
変なアドバイスをする人もいるものです。
謝れば円満解決も可能なのに、謝らないばかりに長期化するといったことも起こります。
責任割合は事故形態をベースに決まる
事故の責任割合は、先述の100:0ケースの他にパターンが決まっています。
同じ事故は2つと無いですが、パターンは存在し、その責任割合は「過去の裁判例」をもとに編集された「判例タイムズ 別冊」という書籍があるのです。
「自動車 対 自動車」はもとより、「自動車 対 二輪車」「自動車 対 自転車」「自動車 対 歩行者」などあらゆる事故形態が載っています。
損保会社同士はこれをベースに交渉を行い、個別状況を加味しながら同意できたら確定となります。
損保会社だけでなく弁護士もこれをベースに交渉を行います。
謝ったかどうかなんて関係ない。全く関係ありません。
交差点の出会い頭の事故では、自分の考えと違うかもしれない
交差点での事故はとても多いですし、過失ゼロを主張する人が多いです。自分は悪くないというわけです。しかし交差点で100:0はありません。
細かく知りたいなら「判例タイムズ 別冊」を見ていただくしかないのですが、以下のポイントを覚えておくといいと思います。
1. どんなにしっかり停まっても、一時停止標識があるほうが弱い
2. 広い道路が優先
3. 一時停止標識が無い、同じ幅の道路なら「左方優先」
よく同じ幅の道路で「お互いに一時停止で譲り合う」ケースがあります。
この時に相手が左側にいるなら、ジェスチャーで譲られても「あなたがお先にどうぞ」とするのが正解です。お互いに譲るということは、お互いに動き出す可能性も高い。ここは「左方優先」なので、もし衝突したら、どちらが悪いかわかりますよね。
ドライブレコーダーは事故の状況を詳細に語る
責任割合は「判例タイムズ 別冊」をもとに保険会社間で話し合うと書きましたが、個別の状況で交渉を行います。当事者の証言と車の物損状況が合っているか確認をしながら、相手の保険会社と交渉します。
ここで証言より有力なのが「ドライブレコーダー」です。例えば70:30のパターンでも、修正すべき相手の車の動きが記録されていれば、80:20や90:10になるケースもあります。
あおり運転対策だけでなくてもドライブレコーダーをつけておいたほうがいいです。
ケガの賠償は120万円以内なら責任割合は関係ない
ここまで責任割合の話をしていますが、これは車の修理に関係するわけです。自分の責任割合が80%だとすると、相手は20%。要するに相手の損害額(例えば修理代)の80%を保険から支払い、自分の損害額の20%を相手から払ってもらうということになります。
対物賠償は任意保険だけですから、損保会社が支払うことになります。
よって、損保会社はなるべく支払わないようにしたいですよね。情報があれば相手損保との交渉材料がたくさんあるので助かります。あなたの代理で一生懸命交渉します。
ですがケガの賠償は自賠責保険ベースです。
自賠責保険の上限額120万円以内であるなら、任意保険は使わないことになるので「責任割合」は問わないことになります。
120万円を超える場合には任意保険を使うため、責任割合を問われますが、捻挫・打撲などの軽傷の場合は3ヶ月程度で治るので120万円を超えることは無く、責任割合も問われないことになります。
まとめ
事故をおこしたら、謝りましょう。
詳しく知らなくても、どちらが悪いわかりますよね。
謝ることで円満解決につながりますし、責任割合には影響しません。
責任割合は保険会社に任せて、まずは相手にお茶菓子でも持って謝るのがいいと思います。
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