新小説『どこにも行けない』一部公開 by寺田健吾
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「もう好きじゃないから、ごめんね」というおそらく最後になるであろうLINEを通知で確認するだけで、まだ既読を付けられない。深夜2時。明日も午前中から大学の講義があるというのに、動悸がおさまらなくて眠りにもつけない。このまま家を飛び出したとしてもきっとどこにも行けない。ここら辺は夜中になるとたいした街灯すらなく、どこに行ったらいいかもよく分からないのだ。
大学3年生になったばかりの野原拓斗は、今回の人生で初めての失恋を経験した。ここは栃木県足利市。山の麓にある小さな戸建