人生で大切なことはすべてファミマに教えてもらった　＃７

学生時代、僕はずっとファミリーマートでアルバイトをしていた。
全然喋らない店長、店長よりやる気のある３０歳を過ぎたバイトリーダー、おだてると焼肉をご馳走してくれるおばさん、ロシアの格闘技をやっている強いのか弱いのかよくわからない同級生(タチカワ君のこと)なんかがいて、いま思えば割と変わった人たちが集まった店だった。
僕はその店で社会で生きていくために必要なことを多く学んだ。今日はパッと思いついた２つを紹介したい。

1つ目は、「とりあえず挨拶しとけ」ということ。
僕は控えめに言って態度の悪い店員だった。
夜勤のときなどは客が来るたびに、こんな時間に買い物に来るなと思っていたので、「いらっしゃいませ」と言わないこともままあった。不思議なのは、そういう場合に限って「挨拶しろよ」と怒ってくる客がいるということだ。しょうがないので、途中から「いらっしゃいませ」を省略して「しあわせー」と言っていた。いまならティックトックでバズりそうなものだが、当時、幸福を呼ぶ店員を気に止める人は一人もいなかった。


２つ目は、「怒ってる人には謝る」だ。
とある日の夜勤、僕の隣でレジを打っていた大学生の男の子が酔払いのおっさんに絡まれた。おっさんはちょっとした不備に対してネチネチと文句をつけて怒っている。

あいつどうするんだろと思って見ていたら、あろうことか彼は「何か嫌なことでもあったんですか？」と訊いたのだ。
火に油とはこのことで、おっさんはそれから３０分くらい説教を始めた。もちろん、僕も巻き込まれた。
それ以来、怒っている人にはすぐ謝るようにしている。

～毎週日曜夜に更新～
自主連載企画『２７歳で死ぬと思ってた』
文：寺田功夫
絵：タチカワ(https://linktr.ee/kyotaro071)