嫌いな曲を好きになるとき。
どうしても苦手な曲やアーティストがある。たくさん。ほんとはあまり言いたくないけれど、あるのだ。苦手な食べ物、人間関係と同じように、理屈ではなく精神の生理がノーと反応する。そんな感覚。
無理せずスルーして、スキップすればいい。音楽なんだから、無理して耳にする必要はないのだ。
のはずなのだが、仕事として音楽を作っていると、そうも言ってられなくなる。
苦手なのだから、その構造にも詳しくない。そう、解析しなければならない。ひとつひとつ紐といて、その音楽を異なる形で再現しなければいけないのだ。
心を使って聞くのではなく、左脳で分解していく作業に没頭しているうちに、稀にだけれど、苦手だった音楽がすっうと受け入れられる瞬間がある。
この曲にはこういうバックグランドあったのか、とか、自分の好きなあの曲の旋律を拡大してBPMを変えればこうなるかもしれない、とか、なんだかまるで、嫌いだった人間の意外な一面を知り、見直したような感覚を覚えるのだ。
ひとつの楽曲にもそれなりの物語がある。人が関わり、生み出す限り、そこには多面性がある。
全部ではないが、たまに、ネガティブな印象が曲の構造を知ることによって裏返る。それも楽しい。
この曲も解析するまでは苦手だったけれど、今では好きな曲のひとつである。
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