53歳教習所日記その4

修了検定
*心のレバーをRに入れないよう闘将ドゥンガのような心持で家を出る

*一様に検定の説明を受けた後、ぬくぬくとした温室のような校舎を出て己の心を寒風にさらす

*何度も幽体離脱(現実逃避)しそうになるが闘将ドゥンガのような心持で校舎に戻る

*自分の番がやってきて闘将ドゥンガがピークを迎えて運転席に乗り込もうとしたら教官に「君は後部座席ね」と、ベンチからのスタートを告げられて、とたんに幽体離脱しそうになる。そうだ、二人ずつ受けるのであった。

*真面目そうな20歳くらいの子が執拗に丁寧に走るのだが、物凄くノロノロで大丈夫かな?と後ろから教官の横顔を伺いながら53歳のおっさんに母性が宿る

*教官が淡々とコースを説明する静かな車内で私の腹が突如ごぎゅるるると鳴り出す

*真面目そうな子の集中力を奪ってはいけないという母性から、腹を膨らましたりへこましたり消音を試みるが止まない

*突然教官が大きめな声で「メリハリつけましょ!」と言った瞬間びっくりして屁が出そうになる

*S字やクランクに差し掛かった時の静けさでは腹を鷲掴みにした

*やっと自分の番が来て闘将ドゥンガを呼び戻す

*やっぱメリハリっすよね!みたいなサインを教官に送るがすぐひっこめて安全を執拗に確認して運転席に乗り込む

*腹も鳴らず、一様にS字もクランクもうまくいき、心の中ではF1のように両手を挙げてゴールした

*終わった後に私の後部座席にジャニーズのような可愛らしい男の子が乗っていたことに気付き、再び母性が宿る

*「首藤さん、合格です!」と言われたとき、意外に教官がイケメンだったことに気付き、また母性が宿る

*闘将ドゥンガから、母性宿るおっさんという目まぐるしい一日に疲れ果て、帰りのコンビニで寒風に吹かれながら缶ビールで静かに打ち上げる

一句
鼻歌に 後部座席で ハモる君

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