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大手百貨店→スタートアップの出向が最悪で最高だった話

はじめに

百貨店の三越伊勢丹からスタートアップに出向したことやその時考えていたことなどを自分の頭の整理も兼ねてつらつらと書いてみました。
私と似た経験をされている方や、これから異動や転職を考えている人に読んでいただけたら嬉しいです。

三越伊勢丹では婦人服一筋だった

私は大学卒業後、新卒で㈱三越伊勢丹に入社し、主に新宿伊勢丹の婦人服部門一筋で12年間勤務していました。入社後の店頭販売に始まり、バイヤー(取組先と交渉して商品を仕入れる人)やセールスマネージャー(売り場の責任者)といった、THE・百貨店なキャリアを歩んでいました。
※百貨店関係者の方なら「うんうん、わかるわかる・・」と感じていただけるのではと思います・・!

創業タイミングのスタートアップに出向することになった

2019年3月、恒例の人事異動の辞令の日、いつものように上司に呼び出された私は過去一番のびっくり人事を告げられました。
上司:「えー、国内出向DROBE」
私:「・・・」

理解が追い付かず、その場しのぎの笑顔を絞り出すしかなかった私と「めちゃくちゃ大変だと思うけど頑張ってね」と笑みを浮かべている上司・・
新卒で百貨店事業の婦人服部門に配属されて12年、大きな異動をせずに生きてきたので今年もそんなに変わらないだろうと心のどこかで思っていました。
ちなみにDROBEとは三越伊勢丹とBCGDV(BCGデジタルベンチャーズ)のジョイントベンチャーで、2019年4月に創業したIT×ファッションの会社です。
創業に向けた準備が水面下で進んでいたことは知っていたものの、正直自分には関係なさそうと思っていた矢先のことでした。
ちなみにDROBEはこんな会社で、

こんなサービスを作っています。

過去のキャリアが通用しない辛い環境

前述のBCGDVメンバーを中心としたいわゆる創業メンバーに、三越伊勢丹からの出向メンバーが加わる形だったので、まあまあアウェイな環境でした。
聞きなれないカタカナやアルファベット3文字が飛び交う専門的な環境や、コミュニケーションはslack、資料は全てURLでやり取りする感じもまあまあカルチャーショックでしたが(当時の三越伊勢丹はコミュニケーションは基本メールで、teamsやファイルのオンライン編集を一部の人が使い始めたくらいだった)、一番驚いたのは企業文化でした。
一言でいうとスーパードライで、合わないなら出てってどうぞ、みたいな雰囲気がぷんぷんしていました。多分そんなことないんですが当時の私にはそう見えていました。
事業成長させるし、色々学ぶぞ・・!と最初意気込んでいた私も日が経つにつれだんだんと、
「貢献できなかったら異動?・・・いや、むしろ戻れる場所なんてないのかも?」
とネガティブなことを想像するようになっていました。更にあの人気銀行TVドラマの影響もあって出向人事を悪い方へ悪い方へ考えてしまう自分もいました。
そして何より実力主義な世界で、今まで積み上げてきたキャリアがほとんど意味がないように思えてしまったことも地味に辛かった要因でした(実際には全くそんなことはなかったのですがそれぐらいネガティブな精神状態でした)。周りのメンバーはなんかよくわからないけど超仕事ができる。今までいかに自分が会社の看板に頼って仕事をしていたのかを痛感し、完全に打ちひしがれてしまいました。

「ああ、出向って最悪だ」
弱音は吐かなかったものの、内心そう感じていました。

ネガティブな自分に気づき、考え方を変えた

異動して3か月が経った頃、精神的にもだいぶネガティブになっていることに自分で気づいていたし、このままではまずいという状況が続く中で以下のようなことを意識的に考えるようになりました。

  • 今置かれている状況は神様が与えた試練で、乗り越えたら大きく成長できるはず

  • 変なプライドは捨てて分からないことは全部聞いてしまえ

  • 人一倍勉強してなんとか食らいついてこう

ここからはひたすら努力と根性の世界で、月に5~10冊ぐらい本を読んだり、考えて結論づけたことを(間違っててもいいから)アウトプットとして出してみるなど、自分のできる努力を少しずつ積み上げていきました。

※根拠に自信なくても大きいことから小さいことまで考えてることをどんどんアウトプットした


そんな行動を続けて周りとのコミュニケーションが増えていく中でこんなことを考えるようになりました。
「DROBEにはITと小売のどちらかに長けた人が多いけど、その間の人が実はいないのでは?自分がここをできればもっと会社に貢献できるかもしれない・・」

具体的には日々の業務の中で
「技術的にはすごいけどお客さまには響いてないように見える」
とか
「毎回調べてるこれはRedashとスプレッドシートを連携すれば簡単に効率化できるな」
など、両者(ITと小売)の考え方ややってることのギャップが気になるようになってきました。

ITと小売の架け橋的なポジショニングを目指した

そこから、社内のIT分野と小売分野の架け橋になることを密かに意識するようになりました。自分にとってはIT分野が弱いのでここを勉強すれば理想の姿になれると信じ、社内のメンバーに教えてもらったり、自分でそれなりに勉強もしました。
そのうちIT畑のメンバー(エンジニアやPdM)からは小売ドメインのことを聞かれ、小売畑のメンバー(スタイリストやMD)からはITドメインのことを聞かれることが増えてきました。それと同時に色んなプロジェクトに関わらせていただくようになり、当初専門的すぎて何を話してるか分からなかったメンバーともがんがん議論するようになりました。

※機会学習の定例ではやりたいことやそのための仕様、施策の検証など様々なテーマで議論した


「今の自分は事業に貢献できてるかな?」
確信は持てませんでしたが、異動して1年ほど経った頃、少なくとも初期のようなネガティブな思考に陥ることはなくなりました。
加えて、幸いなことに私には同じ境遇の出向の仲間がいました。お互い励ましあいながら頑張ることができたし、もし一人だったらだめになっていたかもしれません。他の出向メンバーも多分私と同じようなことを感じていたのでは・・??と思っています。

信頼の上で議論し合えるDROBEという会社の懐の深さ

こんなことを書いていると、さぞかし自分が頑張って乗り越えた自慢話のように見えるのですが、DROBEという会社の懐の深さがなければ私の心は折れたままだったと思います。事業を良くするために全員が強い責任感のもとで議論したり、一生懸命頑張っている人を決して笑わない風土は、私の仕事観に大きな影響を与えてくれました。

「お客さま、一緒に働く仲間、会社に対して誠実であること」
これが現時点で私が仕事をするうえで一番大切にしたいことで、この価値観も出向中に固まってきたような気がします。もちろん今後また変わっていくかもしれませんが。

DROBEで得たもの

そんなこんなでがむしゃらに走っているうちにDROBEで3年半もお世話になってしまいました。
当初の想定よりもかなり長く在籍させてもらったのですが、DROBEで働いて得ることができたものを自分の整理も兼ねて書いてみます。


マインドっぽいもの

  • 「ステークホルダーに対して誠実でありたい」という仕事観 (前述)

  • 相手の立場に関係なく同じように接するフラットな姿勢

  • 何ごとも自分事として考え行動する、オーナーシップの意識

  • コンスタントに学び、自らをアップデートし続けることの重要性

経験

  • 経営に近い環境・立場で事業を作り成長させる経験

  • バックグラウンドが全く異なる多様なメンバーと1つの組織で働く経験

  • AIを使った機能のPDCAをエンジニアと一緒におこなった経験

  • XX年後をにらみながら理想の組織を作る経験

  • 自分のバリューが出しづらい環境で試行錯誤する経験

スキル

  • リモート環境でのチームマネジメント

  • 採用から入り込むチームビルディング

  • モバイルファーストなUI/UXの基本的な考え方

  • PdMとしての施策立案・開発の旗振り

  • SQL分析


あとそもそも、こんなnoteだって昔の自分なら絶対書きません。少なくとも「意識高い人たちが書いてる香ばしい文章」ぐらいにやや冷めた目で見ていました。打算的なことは考えずに、少しでも良いと思ったことは堂々とアクションする精神もここで得たように思います。

転職や異動を考えてる人へ

もし今、長く同じ企業にいて大きめの異動や転職を考えている方がいたら一度飛び込んでみることを強くお勧めします。
(私の場合は出向で、転職したわけではないのでそこは説得力がないかもですが・・)
企業によっては公募で外部出向を募っているところがあると思いますが、今の会社に在籍しながら別会社を経験できる制度にはどう考えてもメリットしかないように感じます。
例えるなら、自分が知らない筋トレを無意識のうちにやっていて、気づいた頃には「あれ、なんか筋肉質になったかも・・」みたいな感覚が味わえます。
そういう意味でもDROBEの環境は私にとっては最高でした。理由はここまで書いてきた通りで、苦労含めてあまりにも多くのものを得ることができたからです。「最高」ってなんだか陳腐な感想ですが、シンプルにその一言に尽きるのですよね。偶然の人事異動はつくづくラッキーだったなと今では思います。

これからのこと

私はというと、DROBEからこんなにたくさんのものをもらったし感謝しているのに、出向元の三越伊勢丹に戻ることにしました。もしかしたらDROBEにそのままJOINする選択肢もあったかもしれません。
なぜ戻ったかというと、DROBEで得たものを糧に三越伊勢丹に貢献したい気持ちがどうしても強かったからです。外を知って外で学んだからこそ、何かできることがあるのでは?と日に日に思うようになっていました。

今これを書いている10月現在は三越伊勢丹に所属していますが、3年半も離れているとなかなかの浦島太郎状態で苦労しています。ただ、以前と違うのはその苦労状態すら楽しめるようになったことかもしれません。しばらくは大変な時期が続きそうですが、周りの優秀な仲間に助けてもらいながら焦らず頑張っていこうと思います。

おまけ

3周年スペシャルムービー「DROBEの現在地」とオフィス移転の時にみんなで撮った写真は今の会社の雰囲気が結構伝えられるかなと思ったので出しておきます。動画、是非見てもらえるとうれしいです。


3周年スペシャルムービー「DROBEの現在地」


旧オフィスの前でみんなで

※引っ越し前、恵比寿のオフィス最後の日に。今見てもとても良い写真。


更に、11月には追加の資金調達も完了し、ますます勢いに乗っています・・!
今は外から応援する立場になってしまいましたが改めておめでとうございます!と言いたいです。


読みづらい長文にもかかわらず最後まで読んでいただいた方、どうもありがとうございました!!m(__)m

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