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通い慣れた商店のアイスキャンディー
アーケードのある商店街、小さな公園、近所付き合い。
私が過ごしたのは、昔ながらの風景がいたるところに広がる田舎街。
おばあちゃんに連れられて、良く通ったお店がある。
たくさんの品物が揃う便利なスーパーではなく、今では見かけなくなった個人経営の商店。
入り口は手動のガラス扉、地面はコンクリート、カゴに入った野菜、値札は手書きだ。
夏場は暑くて、商店に着くまでにかなり体力を削られる。
おばあちゃんと歩いて向かう道は、たった10分程度の時間なのに、暑さによって果てしない道のりに変わる。
店内は、エアコンがかかっているわけではなく、見上げた壁から扇風機が仕切りに首を振っているのが見える。
品定めから始まり、商店のおばさんとの会話。
おばあちゃんの買い物は、1時間近く続く。
いい加減待つのに飽きた私に、
「アイスキャンディー食べて帰ろうか。」
おばあちゃんから嬉しい一言。
商店の入り口から出て、袋をビリッと開ける。
アイスキャンディーの味は格別だった。
私は、絶対イチゴ味。
おばあちゃんは、絶対あずき味。
甘い苺シロップの匂い、シャリッとした食感。
暑い季節のアイスキャンディーの美味しさに、取り憑かれる瞬間だ。
今でも思い出す、おばあちゃんとの夏の風景。
あの思い出の商店はいつの間になくってしまった。
懐かしいアイスキャンディーも、置いているお店に出会ったことはない。
大人になってからあの商店のおばさんとすれ違った。
大人になっているのだから、もちろん、相手は私には気がつかない。
急に喉の奥がグッと音を鳴らし、
あのアイスキャンディーの匂いと味が蘇った。
子供の頃の日常、特別ではない思い出は、大人になってしまった私に優しい気持ちを運んでくれる。
思い出、ありがとう。
今年の夏も、暑そうだなぁ。