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誰にでもできるように(わかりやすく)すること

先週土曜日(2019年5月11日)、「県南地区高等学校演劇協議会 技術講習会」の講師をしてきました@一関文化センター。漢字がずらずら並んでいますが、平たくいって高校演劇部員向けのワークショップをしてきました。

で、僕が担当したのは演技演出(中級)クラス。基本的に経験者向けとのことで1年生の受講生はいませんでしたが、人数は一応最多の18人。まあちょうどいいといえばちょうどいい人数で、僕としては昨年度の地区大会の審査員をやらせてもらっていたことと、高校生が演出力を競い合う「いわて銀河ホール高校演劇アワード」という大会を運営していることもあって、「もう少し高校生たちに演出するっていうことへの意識というか欲求を持たせたいんだけどなー」なんて思っていた矢先で、大変ありがたいというか、結果的にもやってよかったと思える機会でした。

今回の内容は、演技を学びたい受講生のためにさしあたり台本を使わずにできる即興演技のアクティビティ(いわゆる「エチュード」の一種)もやったのですが、メインは3チームに分かれてシェイクスピアの『夏の夜の夢』のワンシーンをつくってもらうこと。チームの内訳は出演4人の演出2人。10分前後の場面を3時間稽古してもらいました。

ぱっと見は普通に短い台本をつかってワンシーン立ち上げてみましょう……という話ではあるのですが、問題は「台本は同じでも芝居はオリジナルなものになりうる」ということ、「そのオリジナリティってどうすると出せるの?」ということ。もっといえば、そもそもこうして「オリジナリティ」なんて書くと、それは非凡な才能を持って生まれたひとたちだからこそ発揮できるもの……みたいなイメージを持つ方もいるようなので(というか顧問の先生方がそう思っていたりすることも多いような)、それをある程度誰でもできるものとして理解し直してもらい、抵抗感を払拭してもらおう……というところに個人的なねらいがありました。

実際どんな指導をしたのかはあんまり詳しく書きませんが(ワークショップの依頼をお待ちしています!笑)、基本的には「その台本の何が面白かったのか」「どんな面白さを観客と共有したいのか」ということから方針を立てて、それが伝わるように舞台上で使える表現の手段を選択していく……というプロセスをミニマムなかたちで体験してもらいました。実際、結果として3時間の稽古でまったくちがう3つの芝居が立ち上がり、それぞれが自分の部に戻ってどれほど反映できるかはさておき「あーこういうことでいいのか」くらいには実感してもらえたんじゃないかと思います。

大事なのはやっぱり言葉にすることであって、自分にとっては〈当たり前〉で〈みんなと変わらない凡庸な考え〉と思えることでも、きちんとフレーズにして掲げることでみんなが何を目指し、何を選択したり発想すればいいのかが明確になります。

多分こういうことは誰でもできることで、「才能」とか「感性」とか得体の知れないものの有無は問われなくていいはずし、年齢問わず分かりやすいというか納得しやすい話なんじゃないかと思っています。

個人的な問題意識かもしれませんが、演劇の世界にはそういう「分かりやすさ」がまだまだ足りていなくて、もっともっと無理のない、誰でもできるようになれるような整理がされていいのに、と思います。そのほうが楽しく関わりやすいだろうになあ。

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てくてくの森
一般社団法人bridge理事,NPO芸術工房レギュラー会員 演劇作家|文化事業デザイナー|演劇によるひとづくりコーディネーター|岩手県文化芸術コーディネーター 岩手県西和賀町という山奥に在住