サッカーでPKに代わる新ルール【キーパーが手を使った回数が少ない方が勝ち】の提案
サッカーで、同点だけど勝ち負けを決めないといけないとき、PKではモヤッします。しかしPKに代わる決着方法は長らく課題です。
そこで今回新たな提案をさせていただきます。ズバリ
キーパーが手で触った回数が少ない方が勝ち
というものです。
このルールの良いところは以下のとおりです。
・得点が第一。今までのルールは基本変わらない。
基本的なサッカーのルールは何も変わらず、点をたくさん取った方が勝ちです。このルールはあくまで引き分けの時のためにあります。単にPKや延長戦の代わりの提案です。
・得点をとる価値が上がる。引き分けの価値が下がる。
サッカーは引き分けの価値が高すぎました。昔は勝ち点が(勝・分・負)=(2・1・0)でしたが、今では(3・1・0)が定着しています。つまりリーグ戦では「勝ち」の価値を引き分けよりかなり高くしています。これは、サッカーが引き分け狙いに有利なためかと思います。基本的にサッカーは89分間は点の入らないゲームなので、ミスを減らすこと、安全ベースで守ることのメリットが大きいです。この勝ち点制度の変更により「強い」チームの価値が以前より上がり、サッカーが面白くなったと思います。
しかしW杯を見ていても明らかなように、トーナメントになると引き分けの価値が上がります。弱いチームは基本的に守備的+PK勝負を挑むことがメリットになるので、実力が拮抗していれば強いチームも攻めきれないことになり、PKが増えます。
そこで、攻めている方にアドバンテージを与えたいというのがこのルールの基本です。ただし繰り返しますが、点をより多くとれば勝ちというサッカーの基本は何も変わりません。0-0でどんなに攻められていても、点を取れば勝ちです。勝ちを目指してシュートするというサッカーの基本的な行動がより評価されることになります。
ただ有利なチームによりメリットを与える、というのも、実際は難しいところがあります。例えばイエロー・レッドカードの枚数で決める、とすると、ペナルティエリア付近でのダイブが増えるかもしれません。コーナーキックの数で決める、としたら、ゴールから遠いDFにぶつけるFWも出てくるでしょう。シュート数で決める、だと、入りそうもないロングシュートの打ち合いになりかねません。
そこで最もサッカーらしくないルールの使用にデメリットを与えます。
・キーパーが手で触るというサッカーの例外をマイナスポイントと数えるため、よりサッカーらしくなる。
サッカーとは手を使わずにボールをゴールで入れる競技ですから、キーパーの手を使うことを制限するというのは自然なルール変更と考えられます。これには実際のルール変更の前例があり、昔はDFからのバックパスをキーパーが手でつかんで、FWめがけてパントキックをするというのが当たり前でしたが、今では禁止されています。それにより現代のGKは足技が非常にうまくなっています。これをさらに推奨して、たとえシュートであっても手を使わないで止められるならその方がよい、とするのです。
このルールだと、へなちょこシュートを遠くから打ってきたら、胸や足でトラップすることになります。GKが足や体を使ってキープすることの価値が上がり、GKも一人のサッカー選手になります。また、一見攻められていても本当に良い守備をしているチームは、ボールを持たせていても危ないシュートを打たれにくいものです。単にシュートの数で比較するよりも、良い意味で守備的なチームに有利になります。
ちなみにこのルールだと、ゴールの角を狙ったロングシュートが有利になるかもしれません。これまで以上に背が高い方が有利になりますが、同時にオチョアのようなジャンプ力と足技に秀でたキーパーの価値も上がります。
またこの派生として、パンチングはノーカウント、キャッチングだけカウントするとするのもありえます。この点については下の方で解説します。
・「強い」方が有利。試合を圧倒的に「支配している」方がシュート回数も多く、キーパーが手で触らざるを得ない回数が増える。
ブラジルのように、攻めて、シュートするのが強いチームです。そういうチームがはっきり有利になります。とはいえ、シュートが枠外のロングシュートばかりになっては興ざめです。このルールの大事なポイントは、サッカーの基本的に点を取りに行くというところは何も変えず、サッカーとして自然な、手を使わないで点を取り合う行為を善としていることです。
このルールではDFがシュートを打たせない技術が必要になります。すると今まで以上にFWにくっついて守る必要がでてきます。そうなるとFWが抜きやすくもなります。
このあたりの戦略も楽しいと思います。1-0で勝っているチームは、引いて守ると1点取られれば”逆転”するので、引くか戦い続けるかの悩みが出てきます。2-0で勝っていれば引いて守れますが、それでも2-1になった途端に混乱するでしょう。
・後半煮詰まってきたときに、ベタ引きするよりリスクをとって攻める利益がある。
上にも書きましたが、サッカーの従来の問題は、人数をかけて守る方が体力の消耗が少ないため、引き分け狙いは体力的に有利になる点です。新ルールではシュートさえ打てば良いので、攻める方のリターンが増えます。とはいえ、へなちょこシュートでボールを相手に渡し続ければ点とらるリスクになるので、加減が難しいところです。今までのようにでかい選手でゴール前を固めて守ることができなくなるのです。
・キーパーのスキルが重要になる。
キーパーは、へなちょこシュートを足や体でトラップする技術が必要になります。よりサッカー選手になるのです。
・90分で終わる。
延長戦は、甲子園的な楽しさはありますが、サッカーの質という意味では疑問です。甲子園的な楽しさで良いのであれば、PKだって盛り上がります。質の高いサッカーを90分繰り広げることが大事ではないかと思います。
実際にどうなるか考えてみましょう。
例えば0-0で後半15分くらいになると、強豪チームも疲れてくるので、ベタ引きで体力を温存している弱小チームを攻めあぐねる時があります。こうなるとこれまでのルールでは強豪チームも無理にリスクをとって攻めるのをやめ、試合が間延びして来ることがあります。
新ルールではいいシュートが打てれば勝てるので、試合を支配するメリットが出てきます。弱小側もリスクをとって前に出て守備をし、攻める必要が出てきます。
弱小側はハーフウェイ付近のサイドライン沿いから、山なりのロングシュートを打ってくるでしょうか。そうなると強豪側のGKは、緩いシュートには胸や足でトラップして、DFにパスします。しかしそこにFWが飛び込んでくると、やはり手で触らざるを得ないでしょう。すると、後半40分に、カウンターを受けたチームが、ハーフウェイあたりまでチェックするか、ゴール前に戻るか選択する必要があります。
だから強豪側もボールを保持したら簡単にとられるわけには行きません。弱小側も、ゴールを守るだけでなく、ボールをとりに、またゴール前まで必死に走ることになります。
PK狙いでお互いが引いて待つより楽しい試合になるように思いませんか。
ちなみにこのルールの欠点として、後半40分を過ぎるとセンターサークルからのロングシュート合戦になるかもしれません。それでも相手のパサーをしっかりチェックし続ければ十分対応できますし、キーパーもオーバーヘッドキックなどの足のスキルが重要になると考えれば、手を使わない球技というサッカーらしさを増すとも考えられます。
また、どうしてもロングシュートが有利になりすぎるようなら、このルールの派生として、キーパーのタッチ数ではなく、キーパーのキャッチ数や、手の接触時間の多い方が負け、というルールもあり得えます。これだと、キーパーはゴール隅のへなちょこシュートにはパンチングで自分の足下に転がしたり、周りのDFにパスをするなりすることになり、ゲーム展開が早くなると思います。