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宮本武蔵がありえない野蛮人でショックだった
1960年代の映画、『宮本武蔵』5部作。
佐々木小次郎役が、若い頃の高倉健。そんな時代の映画。
宮本武蔵って、ストイックに剣を極めた人というイメージで、硬派でかっこいい武士道の精神が学べるんじゃないかと期待していた。
とんでもない。
とんでもない野蛮な輩だった。
1作目 レンジでチンして宮本武蔵
武蔵はもともと、武蔵と書いて「たけぞう」と名乗っていた。
まだ武士ではなく、ただの力自慢の若者。有り余る力をそこらじゅうにぶつけ、迷惑をかけていた。
その暴れっぷりを見かねた和尚が、たけぞうを大木に吊るして放置する。
吊るされてブチギレるたけぞう。「坊主、出てこいコラァ!」
あまりに、宮本武蔵のイメージと違った。もっと口数も少なく、人を傷つけず、真摯に道を究める人だと思っていた。
でも、こんな聞き分けのない暴れん坊が、どうやって皆の知る宮本武蔵になっていくんだろう。ワクワクした。
全く反省しないたけぞうを見て、和尚は「もう仕方ない」と、たけぞうを部屋に閉じ込める。
その部屋には本しかない。閉じ込められ、騒ぐたけぞう。
3年後。たけぞうは、宮本武蔵になって出てきた。
ー 終 ー
映画が終わった。
え?
3年間、本しかない部屋に閉じ込めておいたら、宮本武蔵になって出てきた…
レンジでチンしただけだった。本しかない部屋に3年間閉じ込めたら、中で本を読んで宮本武蔵になって出てきた…
2作目 このシリーズを見ていく不安
本しかない部屋から出た武蔵は、「剣の道に生きるぞ!」と目をキラキラさせて旅立つ。
強さを求めて戦い、人をどんどん殺す武蔵。暴力性自体は消えてない。
旅先の町で、武蔵 VS お坊さんと町のごろつき連合軍 のバトルに。
狂ったようにごろつきを斬りまくる武蔵。
すると、坊さんたちも急にごろつきを裏切り一斉攻撃。ごろつき全滅。
坊さんは、最初から町のごろつきを片付けるのが目的だった。
坊さんたちは、ごろつきの亡骸に念仏を書いて置いていく。それを見た武蔵は、「殺しておいて、何が供養ぞ!」と怒る。
ー 終 ー
ああ、よかった。そこで「何が供養ぞ!」と怒る心はあるんだ。
まだここから、みんなの思う立派な剣豪・宮本武蔵になるのかもしれない。
3作目 ゴキブリが飛ぶのと同じタイミング
サブタイトルは『二刀流開眼』。
宮本武蔵といえば、二刀流。
今回は、武士道をたっぷり見せてくれそうだ。
どうやって二刀流を身に着けるんだ?
きっと、武蔵は強敵に出くわし、完敗する。なんとか生き延びた武蔵は、達人のおじいさんと出会い、修行をつけてもらい、苦労して身に着けた二刀流で強敵にリベンジする。
きっとそんな話だろうな。
映画が始まって30分。
追手に囲まれて逃げ道がなくなった武蔵は、やぶれかぶれで両手に2本の刀を持って振り回した。
刀を2本振り回す武蔵が危なくて、追手たちも「うわ、どうしよう」となる。その隙に、武蔵は茂みに飛び込んで逃げた。
…え?
二刀流、開眼しちゃった…
まだ映画、1時間30分残ってるのに…
4作目 最低のダッシュ
ある集団のボスを武蔵が斬ったため、集団は武蔵を恨み、果たし状を送ってくる。
集団は、まだ幼いボスの息子を、名義上だけ今回のボスとして記す。
「あなたは大きくなったらボスになるので、今回も大将の席で戦いを見ててください。大丈夫。こっちは70人、武蔵は1人。絶対にヤツはここまで来ませんから」
試合開始。
武蔵は一目散に子供に向かってダッシュ。
立ちはだかる大人を斬り、最短距離で子供まで到達すると、子供を斬る。
武蔵の思考回路「よし、大将の首を取った!おれの勝ちだ!」
追ってくる大勢の侍たちから、武蔵は全力で逃げてその場を去った。
最悪だ…
そのとき武蔵は近所の寺で寝泊まりしていたが、子供を斬ったことがお坊さんたちに知られ、追い出される。
武蔵「敵の大将なんだから斬るだろ!子供を大将にした向こうが悪い!」
ー 終 ー
4作目だぞ… 何だよこいつ…
何ひとつ良くならないじゃないか…
あと、お前、しょっちゅう坊さんと揉めてるな…
5作目 え?急に?
最後は、ライバル佐々木小次郎と、巌流島での決闘。
ご存じの通り、武蔵は約束の時間にわざと遅れてきて、小次郎が刀の鞘を放り投げたら「小次郎、敗れたり。勝つのなら、なぜ鞘を捨てた?」と言って相手の心を乱してから勝負を始める。
「武蔵は決闘の前から心理戦をしかけて、戦略家だね」と聞いていた。
でも、これまでの映画を見てきたら、武蔵は人格破綻者でしかない。
人格破綻者がわざと遅れて来て、鞘を捨てたくらいで「小次郎、敗れたり!」
話が通じなさすぎるよ。
勝負は、武蔵の勝ち。小次郎の仲間たちが、仇を取ろうと武蔵に向かってくる。武蔵は急いで小舟に乗って逃げる。
はぁ、何を2時間×5本も見せられてきたんだろう…
小舟を漕ぎながら、ライバルに勝って興奮する武蔵。
ふと、櫂を握る自分の手を見たら、小次郎の血で赤く染まっていた。
武蔵は、今までのことを思い出す。
狂ったようにごろつきを斬りまくったこと。子供を斬ったこと。そして、目をキラキラさせて「剣の道に生きるぞ!」と旅を始めたこと。
武蔵は思う。おれは、何に生きてきたんだ?
強くなるために他人を斬りまくり、憎まれ、誰とも癒し合えなくなった。
唯一同じ景色を見ていたであろうライバルも、今殺してしまった。
おれは、人生をかけて、自分を手が血まみれの孤独な人間にしたんだ…
武蔵は、海の上で叫ぶ。
「はぁ、はぁ、はぁああああああ!」
ー 終 ー
…
最後、面白っ!!!!
急に!今までの下劣で暴力的なふるまいが全部本人に返ってきて!本人を苦しめて!
やろうと思ったことを実行しつづけたた結果、全てを失った人間がそこにいて!
最後、面白っ!!!!!
『宮本武蔵』5部作、全く期待していたものと違ったけど、最後、面白かった。