アキレス腱の痛みを慢性化させない理学療法とは?
アキレス腱炎は、痛みの寛解・増悪を繰り返しやすく慢性化してしまい、思うようにリハビリを進めることができないことが多いと思います。
頭を抱えてしまうセラピストも多いのではないでしょうか?
慢性化するメカニズムにテンディノーシス・サイクルとよばれる負のスパイラルがあります。
アキレス腱周囲は血流も乏しく、組織の修復能力が低いのことが特徴です。
微細損傷が完治しないまま繰り返しのストレスが加わることで周囲の組織は変性し、慢性化するとされています。
アキレス腱炎を慢性化させないためには、この負のスパイラルを断ち切ることがポイントとなります。
アキレス腱炎とは
アキレス腱炎は疼痛部位を踵骨付着部2㎝近位を境に、アキレス腱症(実質部)とアキレス腱付着部症に分けることができます。
アキレス腱付着部症は、踵骨後部滑液包の炎症とアキレス腱踵骨付着部の炎症に分けることができます。
アキレス腱付着部は特徴的な構造をしており、この構造もテンディノーシス・サイクルの要因の1つになります。
このような構造的要因以外に、以下のような機能的な要素も影響し、発症すると考えられています。
|アキレス腱緊張増大
|足底腱膜緊張増大
本来、荷重するとき下腿の前傾に伴い、踵骨は底屈方向へ軽度動きます。
足底腱膜の緊張増大は、この踵骨の正常な動きの制限に繋がるとされています。
踵骨の可動域制限は足関節背屈時に必要な距骨後方滑りの制限因子になるとも考えられています。
踵骨隆起後面への圧迫・摩擦力の増大は、踵骨後部滑液包に対してもメカニカルストレスを与えるため、踵骨後部滑液包炎に繋がるとも考えられています。
|アライメント不良
アキレス腱の付着部は解剖学的にも特徴的で、その構造自体が痛みの慢性化に影響しているとされています。
|動的マルアライメント
アキレス腱炎で悩む多くの患者さんは、下半身質量中心前方変位、上半身質量中心後方変位するような姿勢を取ります。
股関節伸筋群の機能不全などによる下半身質量中心の前方変位は、足部を回内方向へ誘導してしまいます。
結果、アキレス腱・足底腱膜は伸長位となり柔軟性低下に繋がると考えられます。
リハビリでは、アキレス腱へのストレスを与えている原因を的確に評価することが重要であり、ストレスを最小限に抑えるためのアプローチが求められます。
以下の要素はリハビリにおけるゴールになるものと考えています。
病態の改善|
冒頭で紹介したテンディノーシス・サイクルを食い止めるためにもアキレス腱自体のスティフネス(硬度)を改善させる必要があります。
腱の圧痛・腫脹の状態に応じながら遠心性収縮を伴うトレーニングを積極的に行い、スティフネス改善を図ります。
身体機能の改善|
病態の改善にはその原因となる機能不全を改善させる必要があります。
足部過回内を改善させる要因として、足関節背屈や足趾伸展など可動性やヒラメ筋・腓骨筋・後脛骨筋などの筋機能不全の改善が求められます。
また、動作時の安定性を改善させるためにも股関節など他の関節機能向上も重要となります。
動作エラーの改善|
繰り返しのメカニカルストレスが原因で微細損傷が誘発されるため、その原因となる動作の安定性を改善させる必要があります。
とくに、動作時の過度な足部回内を防ぐことが重要となります。
基準となる基本動作は以下の通りになります。
これらの動作において過度な足部回内が認められず、その場でのホップ動作などアキレス腱への負荷をかけても痛みが出ない場合、徐々にスポーツ動作の許可を出していきます。
評価・アプローチのポイント・流れはそれぞれ以下の通りです。
このあとからは、アキレス腱付着部症の病態に対する具体的な評価や動作安定のためのアプローチ方法についてまとめていきます。
自宅でも行えるような運動療法もまとめてありますので、セルフエクササイズ指導として臨床で活用していただけたらと思います!
病態評価
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