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股関節機能を高める骨盤機能評価・介入方法

2021年も早いもので残すところあと1ヶ月となりました。この臨床+に参加して1年が経とうとしていますが、さまざまな疾患に対する考え方や介入方法について私なりにまとめさせていただきました。

さて臨床+では、12月は各関節のこれだけは欠かせない機能に対する評価や機能改善のための介入方法をテーマにこの1年を締めくくりたいと思います!

この記事では、股関節機能をテーマにまとめていきます。

これまで臨床+では、多様な股関節疾患に対する評価法や介入方法についてご紹介していきました。

様々な股関節疾患でも共通して可動域制限に悩まされている患者様は多く、その改善に難渋して頭を抱えてしまうセラピストの方々も多いのではないでしょうか?

股関節の可動性は様々な因子から成立している機能であると考えます。それが故に、ただストレッチだけをしていても一定の効果を得るのが難しいのも事実です。

股関節の可動性を引き出すにも、その機能がどのような仕組み・メカニズムで成り立っているのかを理解し、それに対応した評価・介入方法が求められると考えます。

今回のnoteでは、股関節可動性を引き出すために必要な知識や技術を整理しながら実際の方法論をまとめていきます。

股関節が動くメカニズム

そもそも股関節はどのように動くのか確認していきましょう。股関節を動かすメカニズムは大きく分けて4つあると考えています。

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これらのメカニズムは、股関節でのインピンジメントを回避して最大限の可動域を確保するために非常に重要なものになります。

|関節包内運動

股関節屈曲や内転運動時には、大腿骨頭は寛骨臼蓋に対してやや後下方へ移動すると言われています。股関節前方でのインピンジメントによる痛みやつまり感などのある場合、骨形態の異常が認められないことを多く経験します。

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この場合、関節包や靭帯、筋組織の伸張性に問題があると考えらています。特に、股関節後下方に存在する軟部組織の伸張性低下によって、大腿骨頭は前方に変位する力が増大すると言われています。

そのため、股関節屈曲や内転運動時に必要な関節包内運動が制限されてインピンジメントにつながります。

|大腿骨頭の求心性

股関節は大腿骨頭の中心と寛骨臼蓋の中心それぞれが一致した状態が一番良いと考えられています。求心性が保たれているおかげで適切な関節運動が起き、前方インピンジメントを回避することができます。

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股関節後下方の軟部組織の伸張性低下は、大腿骨頭を前方へ押し出す力を加えます。そのため後下方組織の伸張性低下は、関節包内運動の制限だけでなく大腿骨頭の求心性にも影響を及ぼし、股関節機能低下につながります。

腸腰筋や小殿筋、外旋筋群(梨状筋を除く)や内転筋などの単関節筋は、大腿骨頭を求心位に保持する機能があると言われています。そのため、伸張性低下だけでなく、このような筋機能の低下も大腿骨頭の求心性に大きな影響を与えると考えられています。

|骨盤大腿リズム

股関節運動中、同側骨盤(寛骨)は後傾すると考えられています。この連動性を骨盤大腿リズムと呼びます。このおかげでインピンジメント回避が可能になると考えられています。

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股関節屈筋群や腰部多裂筋などの伸張性低下は、骨盤を前傾させて寛骨後傾を制限します。それ以外にもハムストリングの柔軟性低下もまた寛骨後傾を制限し、このリズムの破綻につながる原因になると考えています。

寛骨後傾には、相対的に仙骨前傾(ニューテーション)します。ハムストリングのタイトネスによって仙結節靭帯を介して仙骨のニューテーションが制限されるからと考えています。

そのため骨盤大腿リズムが破綻しているケースに対しては必ずハムストリングの柔軟性も確認して必要に応じて介入していきましょう。

|脊柱の連動性

3次元的な股関節の動きに骨盤が連動するには、骨盤だけの動きでは限界があります。特に、スポーツ動作などよりダイナミックで股関節への負担が大きくなるような動作では、より脊柱の連動性が重要となります。

腰椎だけの連動では、椎間板への負担が強くなり痛みにつながるため、胸椎の可動性(特に回旋方向)が重要となります。

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このように股関節を動かすにも大腿骨側の問題なのか、脊柱を含めた骨盤帯の問題なのかそれぞれ問題が変わってくると考えられます。当然、それぞれの問題に対する介入方法は変わってきますので、どちらの問題なのか明確にしていく必要があります。

股関節可動性を高めるための骨盤帯機能

股関節の可動性を最大限に引き出すには、股関節周囲筋群の伸張性や大腿骨頭の可動性だけでなく、骨盤帯の動的アライメントもあわせて評価していく必要があると考えます。

前述したように、股関節屈曲運動時には骨盤大腿リズム(寛骨後傾)が求められるため、その可動性が非常に重要となります。

さらに、荷重時の仙腸関節における安定性も間接的に股関節可動性に影響を与えると考えています。

仙腸関節は、構造的な安定性(form closure)力学的な安定性(force closure)によって関節の安定性が保たれていると考えられています。

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基本的に、form closureがメインとなり働いて仙腸関節を安定させます。force closureはform closureや仙腸関節にかかる負荷の強さによってその機能の割合が変わると言われています。

form closureが破綻している場合、force closureの機能を高めて仙腸関節を安定させようとします。しかし、その状態が続くと梨状筋の伸張性低下につながる可能性があります。

梨状筋の柔軟性低下は、大腿骨頭の求心性や関節包内運動の制限による股関節可動性低下につながります。そのためこのような骨盤帯の動的アライメントは必ず評価していきます。

骨盤帯機能に対する評価方法

ここからは、股関節の可動性に欠かせない骨盤帯機能に対する評価方法についてまとめていきます。股関節インピンジメントや大腿骨頭の可動性に関する評価方法などは冒頭でご紹介したnoteをご参考にください。

股関節の可動性に問題を抱えるケースの多くは、仙腸関節を含め骨盤帯の静的アライメント不良を呈しています。そのため臨床では、動的アライメントだけでなく静的アライメントも含めて評価を行っていきます。

|静的アライメント評価

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