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股関節への介入を姿勢制御から考える

股関節の不調を訴える方の多くにみられるのが、トレンデレンブルグ徴候デュシェンヌ徴候などの特徴的な動的不安定性だと思います。これらは中殿筋など股関節外転筋群の機能不全が原因であるということをみなさんご存知だと思います。

もちろん、股関節局所の機能(求心位の逸脱や可動域制限、筋出力低下など)も原因で動的不安定性を誘発していることもあるので、局所機能の評価および介入は適切に行う必要があります。

しかし、実際の臨床において中殿筋など股関節外転筋群への介入(筋力トレーニングなど)だけでは効果の持続性が乏しかったり、改善しきれないことを多く経験するのではないでしょうか!?

このような場合、多くのケースで股関節以外の機能に制限がかかっていることを一連の理学療法評価で経験します。どのような機能が関係するのか、どういった機能を評価していくべきなのか今回のnoteでお話ししていければと思います。

クリニックなどの外来では、介入時間が20分長くても40分しか取れず、介入でできることも限られます。その中でも最大限の効果とその持続性を得るために、介入すべきポイントについてまとめていきたいと思います。

トレンデレンブルグ徴候とデュシェンヌ徴候

冒頭でもお話ししたようにトレンデレンブルグ徴候およびデュシェンヌ徴候は、股関節外転筋群(主に中殿筋)の機能不全によって起こる動的不安定性のことを指します。

「前額面における片脚立位において股関節外転筋による関節モーメントを生み出すことが困難な場合では、荷重側骨盤が挙上するトレンデレンブルグ徴候や下制するデュシェンヌ徴候が生じる」
(引用:「股関節理学療法マネジメント」)

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これらの動的不安定性は、股関節にかかる荷重も変化します。

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そのため、大腿骨頭に対して剪断力を生むトレンデレンブルグ徴候の方が関節不安定性を招きやすいと考えられています。これらの動的不安定性は、股関節外転トルク不足だけでなくそのほかにも様々な原因が関与していると考えられています。

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足圧中心の過度な偏位は、身体重心位置の偏位や適切な重心移動の制限にもつながり動的不安定性の原因となります。

この後からは、身体重心の偏位や重心移動の制限が動的な姿勢制御に対してどのような影響を与えるのか、そのメカニズムについてまとめていきます。

身体重心の偏位と股関節アライメント

人が身体運動を行う際には、必ず重心移動が伴います。その重心移動を行うメカニズムは大きく分けて3つあるとされています。

counter activity
counter weight
counter movement

|counter activity

目的動作に伴い生じる運動の広がりを、その運動の拮抗する筋の筋緊張を高めて姿勢を制御する方法。
(例:片脚立位時の体幹および支持脚伸展筋群の緊張増大)

股関節への介入を姿勢制御から考える (1)

|counter weight

目的動作に伴い生じる運動に対して、身体の一部を逆方おこうへ移動させることで姿勢を制御する方法。
(例:片脚立位における体幹の前後左右方向への過度な偏位)

股関節への介入を姿勢制御から考える (2)

|counter movement

目的動作に伴い生じる運動の広がりと逆方向の運動の広がりを同時に起こして姿勢を制御する方法。
(例:片脚立位時に骨盤を後傾させて支持脚股関節を伸転させる)

股関節への介入を姿勢制御から考える (3)

例えば、右脚支持の片脚立位をした際に下半身質量中心が過度に外方へ偏位した場合、多くのケースでは上半身質量中心を対側方向へ偏位させて姿勢を保持しようとします。

これは、動作時に下半身と上半身を対側方向へ移動させ、身体重心点を支持基底面内に投射させることで動的安定性を保つようにしています。いわば、上記のcounter weightを利用した姿勢制御になります。

臨床では、このようなメカニズムでトレンデレンブルグ徴候やデュシェンヌ徴候と同じ姿勢をとっているケースを多く見ます。

そのため、このような動的不安定性が見られた際は、中殿筋機能の低下が原因とすぐに決めつけることなく、下半身質量中心や上半身質量中心の位置がどうなっているのか、また偏位している原因を特定することが重要となります。

足関節機能との関係性

臨床では、トレンデレンブルグ徴候やデュシェンヌ徴候のような動的不安定性があるケースは、足部・足関節機能が低下していることを多く経験します。

足圧中心や下半身質量中心の偏位は骨盤や股関節のアライメントに影響があると考えられています。

足圧中心が外側へ偏位すると骨盤は前額面上で対側下制(股関節の相対的な内転)が起こり、内側へ偏位すると骨盤は対側挙上(股関節の相対的な挙上)が起こると言われています。

股関節への介入を姿勢制御から考える (8)

そのため、股関節局所の機能(可動性や内外転筋群の出力など)を評価しながらも足圧中心の偏位に影響するような足部・足関節機能に対しても評価をしていく必要があると考えられます。

この足圧中心の偏位は、足関節不安定症などの足部・足関節機能障害が関係していると考えられます。

足関節不安定性を有する人の歩行動作での足圧中心について検討した研究報告によると、機能的足関節不安定性のある対象では、歩行時に足関節と足部が内転・回外が増大し、足圧中心は外方に変位しているとされています。

そのほかの研究でも同様に、足関節不安定性を有する人はより外側に荷重をして歩行していると報告されています。

このような不安定性を有するケースは、腓骨筋の筋活動低下や活動遅延などの機能不全や足関節背屈制限などの可動性に問題を有していることが多い印象です。

そのため、足圧中心を制御しやすくするためにもこれらの機能を適宜評価し、介入していく必要があると考えられます。また、足関節捻挫や前距腓靭帯損傷など足部疾患の既往歴の有無の確認は必ず行っておく必要がありますね。

動的な姿勢制御を基本的な動作から評価する

前額面上での動的な安定性を評価するには、片脚立位が有用です。

この片脚立位に対する着眼点としてヤンダは以下のようにまとめています。

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