見出し画像

泣けないわたしの泣き言をひとつ

あなたは、人とどんな映画を観ますか。
わたしは、人と感動する映画を観るのは嫌いです。

自分が冷酷だと思われるような気がして。
自分が普通にモノを楽しめない人間であるような気がして。
自分が可愛くない気がして。

だから、映画を観る時は必ずアクションかファンタジー。
でも、ファンタジーを観ようって言うと不思議ちゃん扱いされるから
あんまり言わないようにしてる。

ヒューマンドラマを観て
すぐに泣ける人が正直羨ましい。
だって、だってね、
そんな風に感動できるなんて素晴らしいじゃない?

みんな一度はバラバラになるんだけど、
お互いがぶつかりながらも
最後は交差した思いがきちんと伝わって
理解されて、帰る場所ができる。

なんて素晴らしい展開なのだろう。


じゃぁ、どうしてわたしの場合は
そうならなかったのだろう?
たくさん頑張ったと思うし、
わたしがやらなくていいはずのことだって
沢山やったはず。
なんで?なんでこうなったの?

そんな疑問を誰に投げかけたって
答えなんて返ってくるわけもない。


そこからだんだんと、
思い出したくもない画が頭の中に流れてきて
映画と重なっていくうちに
簡単に映画から意識を外され、内容なんて追えなくなってしまう。

頭の中を
言葉が、やり取りが
何度も何度も再現されて
途中で止めることのできないわたしは
少しこの感動のストーリーから離脱する。


自分の放った言葉の
どこかに間違いがあったのだろうか?

それとも、誰かが投げた言葉に
間違いがあったけど気づかなかったのだろうか?


現実と脳内再生の並行は
あまり気分の良いものではなくて

「過去の出来事だよ、もう終わったよ」と
何とか呼びかけて、
現実の映画の方へ焦点を戻し始める。

若干の落ち着きを取り戻して
ひと息つく。
泣いている場合じゃない、
しっかりしなくては。


正解なんてきっとない。
ただそこに
「うまくいかなかった」っていう
事実が横たわっているだけ。

その事実は、これといって
わたしを傷つける訳ではない。
何度も何度も自分に言い聞かせて、
平常心を何とか保つ。
だいじょうぶ、なんとかなりそう。


あぁ、今はデートをしているのだ。
しかも初回だ。大事な1回だ。
心象を良くするためには
ややこしさはまず隠すべきなのである。

そんなしょうもないことを考えながら
ややこしさをバラすまいと
必死に「いい感じ」を作っているのだ。


ふと横を見ると、泣いているではないか。
普通初回で泣くか??

ヤレヤレ、
あ、いや、
そうじゃない、

泣けないわたしのただのヤキモチか…

お話を信じられない
冷めたややこしい奴の嫌味、ね。


さておき、
絶対的な世界観の中では
わたしの想像は自由に世界を飛び回り、
心から希望を持って
底から湧き出る勇気を感じられる。


パズーが初めて手に抱えたシータの重みや
すれ違う時の狭間で伝わった何年もの想い
美しい森で滑空するドラゴンの息遣いや
苦しい戦いの中で「ともに血を吐きながら進もう」と言える希望。


こんな感覚の方が、
ずっとずっとリアルに「ある」と思える。

しかしだ。
こういう話は、大概しない。
痛い女だと思われるしね。
怖がられたら、残念だしね。


さて、そろそろ感動のストーリーが終わる。
この後の食事で、
なんて話すかちゃんと考えておかないと。

まぁでもだいたい
「よかったよね~」でいいのだ。
逆に、水を差すような意見は求められてすらいないのかも。
幻滅されないように、無難にいこう。
一方で、猛烈なつまらなさに辟易する。


こうやって、「初回デートは映画」を
乗り越えていく。
続くかな~。バレるかな~。
バレたらバレたでまぁ、いいか。

そんなことをぼーっと考えながら、
わたし頑張ったぞ、と
褒めてあげよう。


夜風にあたりながら
いつものBPMで歩いていく。


いいんです。
さ、明日もややこしくいきましょう。

最後まで読んでくださって、ありがとうございます。 頂いたサポートは、また別の方をサポートするのに使わせて頂きますね♡ サポートの輪っかをぐるっと作りましょう^^