とある試合の雑感
2024 J3 第3節 FC今治 vs アスルクラロ沼津
だだのJ3の1つの試合だと思ってしまうのが大半かと思う。実際そう思っていた。
ここ最近、自分の推しチームをゴール裏で応援してる分、久しぶりにゆっくりメインスタンドから90分試合を見ることができた。
その試合がスコア以上、J3というディビジョン以上に1つのfootballの試合として思ってた何倍も面白かったので紹介したい。
服部年宏と中山雅史
ジュビロ黄金期を攻守で支えた2人が指揮官となって戦った1戦。
試合は監督の人柄通り
「静」の服部今治
「動」の中山沼津
といったで進んで行った感じ。
FC今治
システムは超ベーシックな4-4-2
後ろ4枚は全員180cm超えで、高さと対人の強さを兼ね備えたとにかく守りに特化した4枚。
特に左CB 福森直也
J1でも経験があるこの選手の統率とラインコントロールが素晴らしかった。
そのDFラインを突破されてもゴールを守るのはこちらもJ1経験ありのセランテス。J3のGKでは頭1つどころか2つ、3つ抜けた能力のGK。
結果的に4枚+GKが素晴らしくウノゼロで勝った
ここがいかにも今年の今治っぽい
攻撃に関しては、SBがそこまで攻撃的ではない分SHに能力の高さが求められる。
その2人が左SH近藤高虎と右SHヴィニシウス。
彼らはDF1枚なら当然、2枚でも平気で勝てるJ3レベルでは少し抜けた個の突破力を持っている。
CFには阪野豊史
こちらも経験豊富で身体を張れるCF
ラフなボールもここがなんとか収めてくれるのがとにかく大きい。守備も献身的で戦えるベテラン
全体を通して見ると攻守において、メンバーはJ3でも指折りのレベル。守備が整備された今年、J2昇格候補筆頭だと思った。
アスルクラロ沼津
服部今治が「静」ならばこちらは「動」といった感じだろうか。
システムは4-1-2-3
特筆すべきは前線の5枚
CF 和田 育 168cm
RW 森 夢真 170cm
LW 鈴木 拳士郎 178cm
OM 持井 響太 168cm
OM 徳永 晃太郎 167cm
と前線の4/5人は170cm以下と、ボール技術と機動力を生かしたスピーディーなサッカー。
地上戦でとことん勝負するチーム。
中山雅史がこのチームを作り上げたのが非常に面白い。
攻撃の起点は右ウイングの森 夢真
高校サッカーの名門、四日市中央工業で10番を背負い、選手権得点王にもなった選手。
彼がタッチラインギリギリまで幅を取りここから一気に攻撃が始まる。ビルドアップで詰まっても両ウイングにスピードがある分。相手陣深いところまで必ずと言っていいほど潜り込める。
中盤でタクトを振るのは持井 響太
こちらも高校サッカーの名門滝川第二から大学の名門明治大学へ進んだ選手。
足元の技術とパス、アイデアでゲームを作りながら自分でもゴールへ向かっていける現代的なセンス抜群な司令塔。
こちらも1シーズン引き抜きがなければ昇格候補に食い込んでくるだろうチーム。
試合
水曜日にルヴァンを戦って中3日の沼津に対して、中6日の今治が開始直後は攻勢をかける展開
今治の攻撃の起点は右SHヴィニシウス
昨年のJ3ベストイレブンにも選ばれたJ3クラスのDFじゃ誰も止められないレベチな選手。
ラフなハイボールも176cmながら超人的なジャンプ力で勝ってしまうヤバい奴
ここに一旦ボールを預けてからチャンスを見出すのが今の今治の攻撃パターン。
ここからのカットインやクロスからチャンスを多く作る展開。
中3日で体が重い沼津は2ndボールも中々拾えない厳しい展開。
前半のチャンスは両ウイングの突破とCF和田の抜け出しくらい。
22分
前述の通り、今治で1番怖いのはヴィニシウス
右に抜け出しを図ったヴィニシウスに対して沼津左CB附木がマークへ行く。
PA内は今治CF阪野と沼津右CB中村の1vs1の構図が一瞬だけ生まれた。
そこを見逃さなかった今治右SB市原のクロスから阪野が潰れながらキープして、ST山田へ落として、右の近藤へ。
沼津右SBが慌ててカバーに行くも、スライドが間に合わずに近藤が流し込んで今治先制。
1番怖いヴィニシウスをうまく囮に使って
逆サイドまで振った素晴らしいゴールだった。
前半はその後そのまま今治が上手く時計を進めながらクローズして1-0。
後半、沼津指揮官中山雅史から
「ここには勝ちに来ている。体が重いなんて言ってられない」
と檄を受けた沼津イレブンの猛攻が始まる。
1-0でリードした今治は4-4-2の綺麗な3ラインを敷いてブロックの外でボールを"回させて"怖いところの要所を締める大人のサッカー。
対する沼津
両ウイングは前半に引き続きタッチライン目一杯まで引っ張る+持井と徳永もあまり降りずに高い位置に留まるため、どうしても中央はアンカー菅井のサポートが乏しくなる。
そこへは右SB安在がビルドアップ時にアンカー横へ入りアンカーをサポートする偽SBを多用。
前半からやっていたが、今治の足色が悪くなった(今治の山田が体力的にキツくなって来た時間)あたりから中でもボールが効果的に動き出した印象
これにより安在へのマーク(今治の近藤)は中央を気にしながら守備をする必要がある。
その恩恵を受けるのが沼津右の槍 森 夢真
近藤は中の安在の存在を気にしながら守備をするため今治左SB加藤への守備のカバーがどうしても少し遅れてしまう。
森は加藤と何度も1vs1のシーンが訪れる。
前半から多く見られたシーンで、沼津としてはここを起点に得点チャンスを伺いたいはずだった。
しかし、沼津として想定外だったのが今治左SBの加藤 徹也の能力の高さではないだろうか。
守備時は抜群の間合いとタイミングの良さで森を寄せ付けない。
スピードで縦へ行かれるシーンは何度かあったものの深いところまで入られたシーンはほぼなし。完封と言っていいだろう。
そこがイマイチ上手くいかないものの、沼津の攻撃は引き続き両ウイングから。SBはボールを持つと同サイドのウイングへ、CBもボールを持つとまずは遠いサイドのウイングを見る。
それがダメなら中にボールを一旦集めると、左右へテンポよく揺さぶりをかけるパス回しを続ける。
今治はスライドをひたすら繰り返す。
これがボディーブローのように効き、たまらず遅れてのファールとマークのズレが少しずつ生まれ出す。
特に今治CF阪野とST山田は苦しかったはず。
ボランチの新井とトーマスも前線に連動して全体をもう少しでも上げたいはずだが、持井と徳永の位置が常に高く、そこのマークを捨てるのはリスクしかない。
しかしここでなんとか耐え凌げるのが今年の今治
ブロックの外では回させておいて、バイタルエリアやファイナルサードのところに入るところはしっかりと締めて跳ね返す。
沼津も地上戦がダメと見るや否や、FW津久井と川又を入れてスピードタイプに変えてパワーと高さを兼ね備えたタイプにシフトチェンジしてチャンスを見出す。
それを見た今治の服部監督はベンチの松本を投入して3バック(5バック)へシフトチェンジ。
沼津のビルドアップと今治の守備の噛み合わせと前線の足色が悪さを見て、チームの全体のラインを上げるというのは不可能と見て、守備の枚数を増やし、受け入れる、跳ね返す体制に入る。
正直ここで勝負あったかなと。
沼津としてはスピードのある小柄なアタッカーが揃ってるだけに、DFのライン背後・ライン間でボールを受けたかったはず。
4バックなら狙えていた背後やSBとCBの間も、4人→5人になると単純に横幅68mを守る人数が増えて、狙うところが少なくなる。
それに合わせて前述の通り、今治の最終ラインは高さと跳ね返す地力がある。
津久井や川又を入れたものの、簡単には勝たせてもらえない。
むしろ後ろ4枚に絶対の自信を持つ今治としてはロングボール歓迎といったところではないだろうか。
さらにそれを見た沼津の中山監督は最後の切り札齋藤学を投入して個の力でこじ開けようと、死に物狂いで1点を狙いに行くも最後は守護神セランテスのビッグセーブもあり1-0で今治の勝利で終わった。
試合を見た感想
まず今治の試合の進め方が非常に素晴らしかったのが1番最初の感想。
したたかに守りつつも、アンジェロッティを入れて1発個で打開できる選手のカウンターであわや2点目も匂わせる試合巧者感満載のサッカーだった
沼津に関してはシュートが打てなかった(打たせてもらえなかった)のが悔しさが残るかなと
しかしながら、やってるサッカーはとても魅力的です初めて見た私もこれは面白いと久しぶりに思ったチームだった。また、CB附木から「当たり前のことを当たり前にやろう!」といった声掛けも多くあり、この辺は中山イズムなのかなと感じるシーンもあった。
たまにはメインでゆっくり見る試合も悪くないなと思います^ ^