資金調達の選択肢に「補助金」を忘れていませんか? スタートアップこそ補助金・助成金を活用しよう
スタートアップの経営にとって、お金の話は避けては通れません。
前回の記事でも図解したように、ディープテック・スタートアップは起業してから相当期間、売上を上げられないケースがほとんどです。その一方で、人件費や研究開発費、設備投資などの出費は続き、会社からは現金が出ていくばかりです。
経営のための現金を確保する手段には、銀行からの融資(借入)や、投資家、VC、CVCなどからの出資といった方法がありますが、シード期のディープテック・スタートアップに特に検討していただきたいのが、国や地方自治体などの提供する助成金や補助金です。
補助金は「無利子・無担保・保証人無し」で使える究極の資金源です。利用しない手はありません。今回のnoteではディープテック・スタートアップを対象にした助成制度の仕組みや探し方を紹介します。
自分に合った助成制度を探すためには
実際に助成制度を探すのは労力も使いますが、その労力以上の価値があります。各機関の制度設計を理解することで、効率的に最適な助成制度を探すことができます。
助成金を出している各組織は、スタートアップの事業ステージに沿った助成制度を用意しているケースが多いです。自身の会社のステージに合った助成制度から、公募要件に合ったものを選びましょう。
ここでは、NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の支援事業制度を例に説明していきます。NEDOの支援事業の特徴は、シーズ期から事業化までをシームレスにサポートする仕組みがあり、企業のステージに合わせた制度を準備している点です。
そのひとつ、ディープテック・スタートアップに打ってつけの「研究開発型スタートアップ支援事業」は、4つのステージで制度が設計されています。
大学等の技術シーズを用いて企業を目指す研究者を対象としたプログラムである「TCP」、起業を志す研究者や企業の社員などを対象として指導や助言を行うプログラム「NEP」、VCからの投資を受けたシード期のスタートアップを対象にした「STS」、技術シーズを事業化するための具体的な構想を持つディープテック・スタートアップを対象とした「PCA」。長い研究開発期間を支える、充実した支援制度です。
「研究開発型スタートアップ・中小企業向け支援メニュー」資料より
こうした事業ステージごとの支援制度の仕組みは、JST(科学技術振興機構)やAMED(日本医療研究開発機構)などにも準備されています。すべての制度を細かくご紹介はできませんが、「いまの自社の状況に合った支援制度が必ずある」と考えて調べていくことをお勧めします。
助成制度の公募は春先に開始されるケースが多いです。公募期間中に開催される説明会に参加し、分からないことは積極的に問い合わせましょう。春先公募開始の場合、採択は7月から8月になるのが一般的です。そういう意味では、2020年の助成制度は既に終わっているものが多いですが、補正予算などで追加公募がされていることもありますし、今後新たに追加されるケースもありますので、まだまだチャンスはあります。
(追加公募の例)
また、国や機関の支援制度の多くは、例年同様の条件で繰り返し提供されています。来年度の申請時期に慌てないように、事前に調査検討しておくとよいでしょう。
都道府県や市町村単位でも、地元企業に対してさまざまな支援に取り組んでいます。2020年度はコロナ禍の影響で例年と異なる場合もあります。あらためて自社の所在する自治体の情報も確認してみましょう。
以下では、シード期のディープテック・スタートアップが利用できる助成金を中心に、9件をピックアップして紹介します。
さらに、下記のGoogleスプレッドシートに、各種助成金・補助金・研究事業の情報を集めました。TEPが拠点とする東京都・千葉県・茨城県のスタートアップ企業が利用できるものや、研究開発に関するものを中心にまとめています。ぜひ参考にしてください。
採択へのハードルも多いと考えがちですが、決して手の届かないものばかりではありません。人気のある「ものづくり補助金」も実は40%台と、高い採択率です。これから創業される方や、創業したばかりの企業を対象とした補助金もあります。
様々な制度があることはわかっても、各スタートアップの現状に応じて、どれが最適なのかわからないという方も少なくないでしょう。申請にあたって困ったことや悩むことがありました、お気軽にTEPへご相談ください。スタートアップ支援の専門家がアドバイスいたします。
(TEPへのお問合せはこちらから)
※以下の情報は、2020年9月18日時点の情報です
〇研究開発型ベンチャー支援事業/シード期の研究開発型ベンチャーに対する事業化支援【NEDO】
・提供元 国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)
・助成額 上限7000万円
・助成期間 交付決定日から最大1.5年以内
・助成率 2/3以内
・要件など ①対象技術が経済産業省所管の鉱工業技術(例えば、ロボティクス、AI、エレクトロニクス、IoT、クリーンテクノロジー、素材、医療機器、ライフサイエンス、バイオテクノロジー技術、航空宇宙等。)②具体的技術シーズであって、研究開発要素があることが想定されること。③競争力強化のためのイノベーションを創出しうるものであること。④認定VCが出資を行っている、または出資を行う予定があること。
・詳細
https://www.nedo.go.jp/koubo/CA1_100277.html
(2020年度の第3回公募期間は10月上旬~11月中旬)
〇研究成果最適展開支援(A-STEP)【JST】
・提供元 科学技術振興機構(JST)
・研究費上限 300万円~5億円(支援メニューにより異なる)
・研究期間 最長6年度
・要件など 大学や研究機関で生まれた科学技術に関する研究成果を社会還元することを目指す支援プログラム。特定の分野を指定せず、幅広く募集を行う。技術シーズの市場ニーズを検証する「トライアウト」、基礎研究成果を企業との共同研究に繋げるまで磨き上げる「産学共同(育成型)」、可能性検証、実用性検証を産学共同で行う「産学共同(本格型)」、企業主体による実用化開発を行う「企業主体(マッチングファンド型)」「企業主体(返済型)」といったメニューが用意されている。
・詳細
https://www.jst.go.jp/a-step/outline/index.html
〇革新的先端研究開発支援事業(AMED-CREST)【AMED】
・提供元 日本医療研究開発機構(AMED)
・総額予算 3億円以下
・研究期間 5.5年以内
・要件など 革新的な医薬品や医療機器、医療技術等の創出を目的とした研究開発プログラム。研究開発代表者を筆頭とする研究ユニットで研究を推進する。健康・医療戦略の推進に必要となる研究開発で、定められた課題に適するもの。
・詳細
https://www.amed.go.jp/koubo/04/02/0402B_00038.html
(2020年度の募集期間終了)
〇戦略的基盤技術高度化支援事業【中小企業庁】
・提供元 中小企業庁(経済産業局)
・補助上限 単年度あたり4,500万円以下、3年間の合計で9,750万円以下
・補助事業期間 2年または3年
・補助率 2/3以内(中小企業・小規模事業者)
・要件など 「特定ものづくり基盤技術高度化指針」に記載された、情報処理、精密加工、立体造形等の技術分野に関する研究開発等が対象。中小企業・小規模事業者を中心として大学・公設試等の研究機関等と連携した共同体の構成が必要。
・詳細
https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/sapoin/2020/200131mono.html
(2020年度の募集期間終了)
〇商業・サービス競争力強化連携支援事業(新連携支援事業)【中小企業庁】
・提供元 中小企業庁(経済産業局)
・補助上限 初年度3000万円以下
・補助事業期間 2年間
・補助率 (1)IoT、AI、ブロックチェーン等先端技術活用型 2/3以内 (2)一般型 1/2以内
・要件など ①新事業活動によって、市場において事業を成立させること、②新商品及び新役務等に係る需要が相当程度開拓されるものであり、具体的な販売活動が計画されているなど、継続的に事業として成立する事業が対象。
異分野の事業者が有機的に連携し、その経営資源を有効に組み合わせて、新事業活動を行うことにより新たな事業分野の開拓を図ることを目的としている。
・詳細
https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/shinpou/2020/200218shinpou.html (2020年度の募集期間終了)
〇次世代イノベーション創出プロジェクト2020助成事業【東京都中小企業振興公社】
・提供元 公益財団法人 東京都中小企業振興公社
・助成限度 8,000万円(申請下限額1,500万円)
・事業期間 3年以内
・助成率 2/3以内
・要件など 東京が抱える課題を解決するため、成長産業分野における開発支援テーマと技術・製品開発動向等を示した「イノベーションマップ」に掲げられた開発支援テーマに合致した技術・製品の研究開発であること。
・詳細
https://www.tokyo-kosha.or.jp/support/josei/jigyo/innovation.html
(2020年度の募集期間終了)
〇ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金(ものづくり補助金)【中小企業庁・中小企業基盤整備機構】
・提供元 中小企業庁 独立行政法人中小企業基盤整備機構
・補助上限 1,000万円(一般型) 3,000万円(グローバル展開型)
・補助率 1/2~3/4
・要件など 中小企業・小規模事業者等が今後複数年にわたり相次いで直面する制度変更(働き方改革や被用者保険の適用拡大、賃上げ、インボイス導入等)等に対応するため、革新的サービス開発・試作品開発・生産プロセスの改善を行うための設備投資等を支援。
・詳細
http://portal.monodukuri-hojo.jp/
〇未来を拓くイノベーション TOKYO プロジェクト【東京都】
・提供元 東京都
・総額予算 5億円(下限額1億円)
・支援期間 3年3ヶ月以内
・補助率 1/2以内
・要件など ①事業会社等から、指定期間内に総事業費の4分の1以上の出資等を受けること。②事業会社等から、販路・人材・ブランド等の提供を受けること。
・補助対象テーマ(例) 人工知能(AI)、ロボティクス、情報通信(ICT、IoT)、交通・モビリティ、エネルギー、フィンテック、農業、セーフティ、ヘルスケア・ライフサイエンス、素材・ナノテクノロジー、ものづくり、航空宇宙等。
・詳細
https://mirai-innovation.tokyo/
(2020年10月2日まで申請受付)
〇技術系ベンチャー企業立地推進奨励補助金【茨城県つくば市】
・提供元 茨城県つくば市
・総額予算 事業所の月額賃料(共益費及び光熱水費を除く。)とし、100万円を限度
・要件など 市内産業の競争力強化に寄与するライフサイエンス、ロボット、エネルギー、ナノテクノロジー、情報サービス及び環境分野に係る研究開発又は製造を行うこと。
・詳細
https://www.city.tsukuba.lg.jp/jigyosha/shigoto/1005138/1005142.html (2020年度の募集はありません)
※上記のつくば市のように、各地方自治体では地元のスタートアップに対する補助金を用意していることが多くあります。予算規模は小さいものが多いですが、積極的に活用していきましょう。国や自治体のウェブサイトには、公募中の補助金が一覧化されています。
ーーー
補助金事業は毎年同様の募集が行われることが多いです。今年度は募集期間が終了しているものも、来年度の申請を視野に入れて検討することをお薦めします。
今回のnoteでご紹介したもの以外にも、補助金・助成金の制度はたくさんあります。以下の「ディープテック・スタートアップ向け補助金・助成金リスト」も参考に、積極的に活用していきましょう。
また、こちらのリストは皆様の声をもとに、随時更新していきたいと考えています。「この制度がオススメ」「この制度が掲載されていないのはもったいない!」といった情報をお持ちの方は、noteのコメント欄にてご連絡ください。編集部で確認の上、追記いたします。
【「J-TECH STARTUP 2020認定企業」募集中。11/15〆切】
TEPが主催する「J-TECH STARTUP2020」の認定企業を募集中です。
「J-TECH STARTUP」は、今後グローバルな成長が期待される国内のディーープテック・スタートアップを選定する取り組みです。
応募頂いた企業の中から認定企業を選出し、2021年2月開催の「第5回 J-TECH STARTUP SUMMIT」イベントにて認定証が授与されます。認定企業はイベントを通して、メディア掲載や投資家とのネットワーキング、専門家によるメンターやグローバル展開へのサポート支援などを受けることができます。
過去認定企業には、J-TECH STARTUPの認定後に大型の資金調達を行った企業や、業界やメディアから注目されている企業も多くあります。
ご興味のあるスタートアップの方は、ぜひご応募ください。
詳細は下記より。※応募〆切は2020年11月15日まで
https://www.tepweb.jp/event/j-tech-startup-2020/
TEPはディープテック・スタートアップのエコシステムビルダーです。技術をビジネスへブーストさせるため、さまざまな研究機関や企業、行政と連携しています。
お問い合わせはこちらから。 https://www.tepweb.jp/contact/