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世界へ挑戦する、日本発の半導体メーカーArchiTekの目指す美しいチップとは?ーEdge to Edgeで『ヒトの五感を拡張し社会問題を解決する』ー

AIやIoTの活用が進む中、イノベーションを支える技術として注目される「エッジコンピューティング」。スマートシティ、スマートケア、スマートリテールなどの分野にて、DX (Digital Transformation) の核となるエッジAIプロセッサを開発しているArchiTek株式会社 は、第2回「J-TECH STARTUP 2017」の認定企業です。
本認定をきっかけに、TEPではArchiTekを経済産業省が進める「J-Startup」企業へ推薦、2018年6月、同社は「J-Startup」に選出されました。今年6月には、シリーズCとして11.8億円の資金調達を行い、スピーディーにグローバルなビジネス展開を進める準備をしています。

スタートアップにとって、「J-TECH STARTUP」の受賞がその後の事業成長にどう繋がっていったのか、ArchiTekの代表を務める高田 周一氏と、TEP代表理事である國土晋吾の対談でお届けいたします。

ーArchiTek社の事業について教えてください。
高田氏(ArchiTek):
ArchiTekは、データを取得して価値あるものに変換していくことを目的とした、エッジコンピューティングに必要なLSI(チップ)を作っている会社です。LSIの開発は難度が高く、一定以上の経験者が必要なため、私含め大企業の出身者が多い会社です。
 
私は平成元年にパナソニック(当時は松下電器産業株式会社)に入社しました。デジタル家電が出る寸前の時代でした。開発用のPCや、携帯電話、ゲーム機などに使えるチップの開発、R&Dをやっていました。いろんなデジタル家電を作らせていただいた中で、これからは受け取る時代から発信する時代になったことを感じ、そういうチップを作りたいと思い、2011年にこの会社を立ち上げました。

チップでは、画像や音声の情報をいかに圧縮するかが大事なポイントです。単純に圧縮するのではなく、本質を圧縮することが必要となります。LSIは自由な発想を取り込めるので、性能が良くなる綺麗なアーキテクチュアを作ってみたかったのもあります。日本のチップはいろんな要素を詰め込む傾向にありますが、アメリカのチップ作りは一気通貫で綺麗なんです。
 
起業後4-5年は受託をしながらチップの開発を行い、2015-16年頃に開発が進み、チップができ、デモンストレーションなども行えるようになったため、展示会などへの出展を増やしていきました。TEPに出会ったのはその頃です。NEDOの方にご紹介いただきました。

ArchiTek株式会社 高田氏

日本で半導体スタートアップが育たないワケ

ーJ-TECH STARTUP認定後、事業はどう展開していきましたか?
高田氏(ArchiTek):
ある大手企業2社とArchiTekの3社で新たなチップを開発したり、未来創世ファンドさんや他企業からの資金調達も行いました。さらにそのつながりで、今はとある企業と姉妹チップ作りをしています。試作チップの開発は2億円くらい、量産チップは10億円以上かかっています。今は円安でさらにお金が必要です。
 
國土(TEP代表理事):
日本でスタートアップが半導体チップを作るのは本当に難しい。ArchiTekは技術情報の詳細を開示していなかったので、本当に言うようなパフォーマンスが出るのか100%は信じていなかったのですが、作っているものの方向性は何となく見えていて、何か特別感がありましたね。チップ全体の構想を考えるアーキテクトという職種があるのですが、ArchiTekのチップはコンセプトの方向性がしっかりしていて、美しいチップを作りたいという憧れを持っていたというお話はすごくわかります。

私自身が、90年代にシリコンバレーで半導体のスタートアップを立ち上げた経緯があり、自身のバックグラウンドからも半導体のスタートアップであるArchiTekを応援したいとのも思いもありました。私の会社で開発したSoCは、1個チップを設計するのに20〜30億円かかったんです。その頃はミックスドシグナル回路も自社内で作っていましたので大変でした。今はかなりのIPが揃っている。とはいえ、チップの開発には膨大な資金が必要で、スタートアップにはかなり厳しい環境であることは変わりません。

TEP代表理事 國土

高田氏(ArchiTek):
そうなんです。我々も半導体に必要な巨額の資金をどう調達するか模索する中、経産省へベンチャーがチップを作れる仕組みに作りついて相談にもいきましたが、それにはNEDO等を利用した多くの成功事例が必要とのコメントを頂きました(鶏と卵)。一部のVCの方からは過去に投資した半導体の失敗例を気にされたり、銀行の方からは売上実績がないと融資は難しい、と言われました。
 
國土(TEP代表理事):
過去にVCがいっぱい失敗してきたのはお金の出し方が中途半端だからなんです。チップの開発には数十億かかるにも関わらず、数千万円なら出しますよ、と。それでは当然うまくいきません。

グローバル市場で求められる壮大なビジョン

ー日本の半導体産業や、スタートアップに足りないと思うことは?
高田氏(ArchiTek):
日本の半導体メーカーは我が道を行くことがあって、国際的なスタンダード(国際標準規格)をリードして行くということにあまりアクティブではない。ゆえに、過去の成功事例がないんです。國土さんのように半導体がわかる方が、VCにいると嬉しいんですけどね。銀行の方は売上がないのでやはり難しいですが、事業会社系は比較的評価はしてくれます。
 
今はシリコンバレーでマーケティング活動をしています。今の世界はいかに情報を取るかが勝負。GAFAのようなところにデータを集めるのではなく、チップをフックにエッジ側に情報を分散させて貯めておくという世界が来ると思っています。

ただし、チップを作ります、だけではアメリカでは認められません。その際に必要なのが、壮大なビジョンです。要は、ArchTekの開発するチップで、何が実現されるのか、何を実現しようとしているのか、チップの先にあるビジョンとその実現に向けた計画が求められています。
 
國土(TEP代表理事):
日本のスタートアップ全般に言えることは、画(ビジネスのスケール)がみんな小さい。ビジョナリストが少ないんです。IPだけ売ってロイヤリティだけでビジネスしていこうっていうのは、巨額な投資に対して回収が難しい。畳む人はもちろん必要ですが、何よりも大風呂敷を広げないとアメリカでは認められません。
 
そしてチップの世界では、なによりスピードが大事です。時間をかけて開発をするのではなく2〜3年もかけない間に一気に開発して駆け抜けることで勝負が決まります。半導体はお金で時間を買える産業なんです。巨額のお金を入れて一気に成長させるアメリカ式のやり方がしっくりくる産業です。
 
もちろん、産業によっては、時間がかかることが前提のものもあります。アメリカでは少ないカーボン・ナノチューブやグラフェンなど最先端の素材スタートアップ系がそれにあたりますが、半導体は真逆ですね。

技術系スタートアップの成長に欠かせない3つのものとは?

ー若手スタートアップへのアドバイスはありますか?
高田氏(ArchiTek):
仲間づくりが本当に大事。國土さんのようなアドバイスしてくれる人から、金融業界に強く資金調達をしてくれる人まで。事業は三輪車。エンジニア、資金調達、マーケティング。この3つが大事なんです。私たちも、CFOが入った2015年頃に気がつくことができました。これは脱サラして会社を作ろうと言った時点では、わからなかったですね。
 
國土(TEP代表理事):
他にも先ほど話した資金面の課題をクリアするためには、テック系のスタートアップは初期段階で助成金などの支援を使わないと成功できません。そういった制度を本気で探し出して活用しないとうまくいかない。

初めはハードルが高いと感じるかもしれませんが、まずは門を叩けば良い。NEDOのスタートアップ支援プログラムは創業前支援からありますし、事業化に直結するものまで段階的にかつシームレスに支援プログラムがある。東京都だって国並みに支援が充実しています。
 
ただ、チームの支援はそんなにない。最近ようやくいろんな施策が出てきそうな気配はするものの、まだまだチームづくりへの支援はほぼ無いのが現状です。その点、アメリカには日本は少ないプロフェッショナルのCEOという職種があり、人材も豊富にプールされています。アメリカで事業をするのであれば、企業ステージが変わるごとに、そのステージにあったCEOを採用していくというのが、成功の一つの秘訣ですね。

TXアントレプレナーパートナーズ(TEP)は、日本のトップレベルの技術をビジネス化し社会普及させることを目的として、2009年11月19日に設立されたスタートアップの支援組織です。

TEPは、コア技術を持ち、そのビジネス化を目指すスタートアップを中心として、起業・経営経験が豊富なエンジェル投資家、専門的アドバイスが可能なメンター、スタートアップとの連携を望む大手企業らを会員として組成しています。

スタートアップの効率的・効果的な成長のため、つくばエクスプレス(TX)沿線の大学や研究機関、地域行政をはじめ、海外の同様のスタートアップコミュニティにもネットワークを広げており、現在では世界でも有数の技術系スタートアップのエコシステムを構築しています。

お問い合わせはこちらから。 https://www.tepweb.jp/contact/

「第7回J-TECH STARTUP SUMMIT」開催

ArchiTek株式会社が2017年に認定された「J-TECH STARTUP」は今年も開催されます。新たに認定された6社への認定証授与だけでなく、ゲストによる講演やパネルディスカッション、『日本能率協会 産業振興賞』の選出・授与も予定しています。技術系スタートアップの方や、起業を志す研究者の方はもちろん、有望な投資先・提携先を探したい大企業の方にもおすすめです。お時間がある方はぜひご参加ください。

◆「第7回J-TECH STARTUP SUMMIT」開催概要
・日時 2023年2月16日(木)13:30~17:00(予定)
・URL https://j-tech20230216.peatix.com/
・開催方法  ハイブリッド開催(現地・オンライン併用)
・会 場 浅草橋ヒューリックホール(〒111-0053 東京都台東区浅草橋1-22-16ヒューリック浅草橋ビル2階 HULIC HALL)


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