ユニバーサルデザインを意識したスライドづくりのポイント①「基本となるレイアウトづくり」

 昨今の大学授業は、ほとんどPowerPointのスライドを使って進められます。中には昔ながらのchalk & talkスタイルを貫いてる先生もいらっしゃいますが、学生に大学に入ってからスライドを使わない授業を受けたか?と聞いても「記憶がない」「確かなかったと思う」「友達がないと言ってるからないと思う」という汚職事件の政治家ばりの答えが返ってきます。

 そんなわけで、大学教員の授業準備といえばパワポづくりが多く、できる限り分かりやすいスライドを作ろうと邁進する訳です。ところが、このスライドづくり、かなり各教員のセンスに委ねられてるところが大きく、教員間で読みやすさに大きな違いがあります。総じてスライドが雑で読みにくい授業は「わかりにくい」と学生からの評判が芳しくありません。

 わかりやすい・読みやすいスライトとはどのようなものか。「ユニバーサルデザイン」を意識したわかりやすい・読みやすいスライドづくりのポイントを解説していきたいと思います。

基本となるレイアウトづくり

 まず基本的なレイアウトです。PowerPointの初期設定で出てくる基本テーマのほとんどは英文スライドを前提にしたものなので、日本語のスライドに使用すると、やたら文字が大きかったり、フォントが明朝体になったりして視認性が低くなったりします。自分で基本となるテーマを設定すれば、あとはあまり意識しなくても見やすいスライドを作ることが可能です。

PowerPointのオリジナルテーマの設定の仕方はこちらの記事が詳しいです。

 私は基本となるレイアウトは以下のように作成しています。

 左上に目立つようにスライド番号を振っています。これは授業でハンドアウト(スライドを4〜6枚ずつ印刷した資料)を配布した場合、提示しているスライドと手元のハンドアウトを直ぐに対応させることができるようにという理由です。「あれ、ちょっとボーッとしてる間にスライドが進んじゃった」という不注意傾向のある受講者には必須です。

 また右上には所属する大学のマークを貼り付けています。これは著作権対策の意味があり、勝手にコピーされて別の箇所で使用された場合にすぐに判明するようにしています。また、オンライン授業の場合、このマークに重なる形で教員のワイプを映すようにすれば、本文を邪魔しません。

構造化されたスライドにする

 スライドは基本的に文章ではなく箇条書きで示しますが、箇条書きが羅列的にならないよう構造化することが大切です。まずはレベル分け。第1レベルは見出し、第2レベルは説明、第3レベルは補足、というように意識してレベル分けすると良いでしょう。レベル分けすることで意味的なカテゴリーでまとまりができます。スライド全体を見た時に「あ、このスライドでは2つの内容カテゴリーがあるのか」と直感的に把握でき、内容理解を助けます。
 また内容カテゴリー間は、通常の行間よりも少し広めに空けると視認性も良くなり、スライド構造も直感的にわかりやすくなります。いくつかの内容カテゴリーがあり、スライド下部で「まとめ」的な文章を入れ込みたい場合は、枠線で囲むなどをして、内容カテゴリーとは違うことを強調すると良いでしょう。
 またスライド上部にはタイトルをつけます。これは各スライドの概要を明確にする意味があり、内容理解を助けます。スライド作成者の立場からも、一つひとつのスライドの内容を焦点化する意識づけにもなります。時たまフワッとしたスライドタイトルで、同一のタイトルが複数枚並んでいるものを見かけますが、これではスライドの内容が焦点化されているとは言いづらいと思います。複数枚にわたって説明する必要があり同一のタイトルをつけなければならない場合は、「〜①」のように番号をつけた方が良いでしょう。

背景色の問題

 私のスライドの背景色は基本白色にしていますが、感覚過敏の方の中には真っ白な背景が眩しすぎると感じる方もいるようです。そのため背景色をクリーム色にするべきとも考えられますが、その場合、よほど高輝度のプロジェクターでない限り、文字とのコントラスト比が下がって見えにくくなってしまいます(残念ながら、私が所属しているような国立大学ではそこまで高輝度のプロジェクターが教室に設置されていることはほとんどありません)。逆に言えば高輝度のプロジェクターでない限り、背景が白色のために眩しさを感じる人は少ないと思います。またハンドアウトを印刷する際に背景も印刷されてしまうため、インクを大量に使用します。そのような理由から背景色は白色にしています。
 とはいえ状況によりけりです。受講者の中には眩しさを感じてしまう感覚過敏の人がいた場合は背景色を変更した方が良いと思いますし、かなり高輝度のプロジェクターが設置されている場合は少しクリーム色の背景にするなどの融通さを持った配慮が必要です。
 背景色を黒色などの濃ゆい色にして、白抜きの文字で表示するということも考えられます。ただしこちらも高輝度のプロジェクターでない限り、そこまでコントラスト比が上がりませんので見にくい場合があります(白いスクリーンに投射しても真っ黒にはならず灰色になってしまいます)。また全体的な印象が暗くなりますので、授業自体が重苦しい雰囲気になることもあります。
 背景色ひとつとってもベストなものを見つけるのは難しいですね。

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