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ミレニアム世代のポップ・スター、コナン・グレイのライブ・レポート 【マディソン・スクエア・ガーデン】


概要

2024年9月30日、コナン・グレイは自身がヘッドライナーを務めるツアーとしては5回目となる『Found Heaven On Tour』でニューヨークのマディソン・スクエア・ガーデンの舞台に立ちました。この記事はそのライブの簡潔なレポートです。

あのマディソン・スクエア・ガーデンということで単なるツアーの一公演を超えた特別な意味を持つ公演だったかと思います。彼もMCで「自分がマディソン・スクエア・ガーデンの舞台に立つなんて数年前は想像もしなかった」と言ったり、途中で涙を浮かべていたことからも特別な想いでこのライブに臨んだことが伺えました。

また、このライブが特別だったのはファンの方々にとっても同じだったのではないでしょうか?少なくともそう思うほどの熱狂ぶりでした。オーディエンスの大半はティーンなど若い女性でしたが、彼女らの熱狂ぶりはアメリカという土地柄を考慮しても凄かったと思います。新曲の『Holidays』が発表されましたが、それ以外は全曲を通じて大合唱という盛り上がりぶりでした。

個人的にはコナン・グレイというと、ミレニアム世代の悲哀を歌った『Generation Why』や元パートナーとのトラブルと不満を歌った『Maniac』など、まさに「悩めるミレニアム世代のアイコン」というイメージでしたが、今回のライブを観た後ではそのイメージは一新され、ポップ・スターとしか形容できないパワーを感じました。

残念ながら来日公演は一部中止になってしまいましたが、それを楽しみにしていた方々への慰めになればとの想いも込めてこの記事を書きます。

セットリスト

セットリストは以下の通りで、Apple Musicのプレイリストを作りましたので、良ければお聞きください。新曲はApple MusicにないのでYouTubeのリンクをご覧ください。

  1. Fainted Love

  2. Never Ending Song

  3. Wish You Were Sober

  4. Eye of the Night

  5. Killing Me

  6. The Exit

  7. People Watching

  8. The Cut That Always Bleeds

  9. Jigsaw

  10. Family Line

  11. The Story (アコースティック)

  12. Holidays (未発表の新曲)

  13. Astronomy

  14. Found Heaven

  15. Boys & Girls

  16. Lonely Dancers

  17. Winner

  18. Heather

  19. Memories

アンコール

20. Bourgeoisieses
21. Maniac
22. Alley Rose


ライブ・レポ本編

ライブ開始まで

開始前のライブ会場ではNicki Minajの『Super Bass』やThe Weekndの『Blinding Lights』、ABBAの『Dancing Queen』が流れ、オーディエンスが早くも大合唱するというとても良い雰囲気でした。

ライブ前のDancing Queenの合唱

また、オープニングアクトを務めたMaisie Petersのパフォーマンスも良く、開始を待たずして会場のボルテージは相当のものでした。

Maisie Petersのオープニング・アクト

登場とFainted LoveからKilling Me -ポップスターとしてのコナン・グレイ-

ステージにかかっていた幕が落とされ、ピンクのレザーパンツを着て長髪のコナン・グレイが姿を表します。ライブはマディソン・スクエア・ガーデンのような広い会場で聞くにピッタリの80年代風ナンバー『Fainted Love』で始まりました。会場のボルテージは一気に上がり、コナン・グレイの歌声が聞こえないほどの大合唱が始まります。

衣装などその出立ちは70年代のグラム・ロック・スター、デビット・ボウイや初期のフレディ・マーキュリーを思わせ、今回のツアーの元になっているアルバム『Found Heaven』のコンセプトとよくマッチしていました。

By Toby Tenenbaum

ここから『Never Ending Song』、『Wish You Were Sober』『Eye of the Night』『Killing Me』と続きますが、『Wish You Were Sober』以外はアルバム『Found Heaven』に収録されている華やかで壮大な曲で、ポップスターとして新境地に辿り着いたコナン・グレイらしい圧巻のパフォーマンスを見せます。

新アルバムの『Found Heaven』は80年代風のサウンドと力強い歌声が印象的ですが、アルバムを貫くテーマは初めての恋人との別れという実体験でした。そのため『Generation Why』から続く従来のコナン・グレイらしい憂いを帯びたアルバムという印象でしたが、ライブで聴くと悲しみから生み出された多大なエネルギーを感じました。本人のパフォーマンスと観客の熱狂が引き出した収録曲の違う顔はとても新鮮に聞こえました。

Fainted Love

The ExitからAstronomy -過去の曲と新曲発表-

その後は『The Exit』、『People Watching』、『The Cut That Always Bleeds』、『Jigsaw』、『Family Line』、『The Story (アコースティック)』、『Holidays (未発表の新曲)』、『Astronomy』といった『Kid Krow』(2020)と『Superache』(2022)に収録されたミディアム・テンポの曲が会場の雰囲気を少し引き締めにかかります。

『The Story』から始まるアコースティック・ギターを弾きながらのパフォーマンスと観客の大合唱は印象的でしたが、何より印象に残ったのは新曲の『Holidays』です。誰も知らない曲ですので、このライブで唯一コナン・グレイの演奏だけが会場に鳴り響き、エモーショナルな雰囲気を演出していました。

『Holidays』は「成長すること」についての歌で、ここ数年でスターに上り詰めたコナン・グレイの素朴な歌声と言葉は華やかなマディソン・スクエア・ガーデンのステージに立つ姿と対照的で心に沁みました。世界観としてはEd Sheeranの『Castle on the Hill』にも通じる歌詞で、スターでないと歌えない歌、裏を返せばコナン・グレイの躍進を表す歌だったと思います。以下に『Holidays』の歌詞と大体の対訳を載せておきます。

Holidays

[バース1]
I'm so tired of taking orders from everyone
And my house is like a hoarder's
And my bed undone
Books that I'll never read
Magazines, photo strips of you and me
Felt so old at only seventeen

みんなに命令されるのに疲れた 。
僕の家はまるでゴミ屋敷。
ベッドもぐちゃぐちゃ。
読むことのない本。
雑誌、君と僕のフォト・ストリップ。
まだ17歳だというのに。

[バース2]
Took a flight back to Texas just like every year
We barely talk, but our friendship can't disappear
At Kerbey Lane, the coffee tastes like gasoline
Could you order some for me?
I'm too cold and too tired to speak

毎年と同じようにテキサスに戻る便に乗った。
僕らはほとんど話をしないが、友情が消えることはない。
カービーレーンではコーヒーはガソリンのような味だ。
注文してくれる?
寒すぎて、話すのも億劫なんだ。

[コーラス]
All my youth, I'd never knew that lifе would ever change
But wе keep on growing
Didn't think it showed, but I see it on your face
The years have passed, but you laugh exactly the same
When I see you for the holidays

僕の青春時代、人生が変わるなんて思ってもみなかった。
でも僕らは成長し続ける。
それが表に表れるなんて思ってなかったけど、いま君の顔に見える。
休みの日に会うと、何年経っても君は変わらず笑っている。

[バース3]
In those eyes
I've seen lifetimes I've had with you
From graduation, all the way back to elementary school
Teachers hang up their wreaths, children sing
Years ago, that was you and me
What I'd give to once again be naive

その瞳に映るのは
卒業式から小学校に戻るまで、君と過ごした一生だ。
先生たちは花輪を吊るし、子供たちは歌う。
何年か前、君と僕はそうだった。
もう一度その時を取り戻すために僕は何を捧げればいいのか。

[コーラス]
All my youth, I'd never knew that life would ever change
But we keep on growing
Didn't think it showed, but I see it on your face
The years have passed, but you laugh exactly the same
When I see you for the holidays

僕の青春時代、人生が変わるなんて思ってもみなかった。
でも僕らは成長し続ける。
それが表に表れるなんて思ってなかったけど、いま君の顔に見える。
休みの日に会うと、何年経っても君は変わらず笑っている。

[コーラス]
All my youth, I'd never knew that life would ever change
But we keep on growing
Didn't think it showed, but I see it on your face
The years have passed, but you laugh exactly the same

僕の青春時代、人生が変わるなんて思ってもみなかった。
でも僕らは成長し続ける。
それが表に表れるなんて思ってなかったけど、いま君の顔に見える。
何年経っても君は変わらず笑っている。

https://genius.com/Conan-gray-holidays-lyrics

People Watching

Holidays

Found HeavenからWinner -再び熱狂へ-

『Astronomy』が終わると、アルバムのタイトルにもなっている『Found Heaven』、『Boys & Girls』、『Lonely Dancers』と新アルバムの力強いサウンドと歌声が続きます。

ミディアム・テンポながらも力強い『Found Heaven』からアップ・テンポな『Boys & Girls』と『Lonely Dancers』への流れで会場は徐々に熱狂を取り戻し、会場はアンコール前最後の山場を迎えます。『Boys & Girls』と『Lonely Dancers』は哀愁を帯びつつもパーティ・チューン的な曲で享楽的な時間が流れました。

Boys & GirlsとLonely Dancers

『Winner』と『Heather』、『Memories』 -アンコール前の締めの3曲-

アンコール前の締めは、今アルバムで『Alley Rose』と双璧をなす屈指のバラードの『Winner』、そして、それだけでは名残惜しいと言わんばかりの『Heather』と『Memories』というバラード3連発です。

この3曲が醸し出す雰囲気はOasisの『Don't Look Back in Anger』やQueenの『We are the Champions』のような名曲のそれで、ライブ終盤の見どころのひとつだったと思います。どれももちろん大合唱でした。

アンコール -大爆発のManiac-

アンコール一曲目は、個人的にはアルバム『Found Heaven』ナンバーワンのアッパー・チューン『Bourgeoisieses』です。ロック色の強いこの曲で会場は『Boys & Girls』と『Lonely Dancers』の雰囲気を取り戻し、この後大爆発を起こす『Maniac』にバトンを渡します。

『Bourgeoisieses』の終わりへの歓声はすぐに『Maniac』の始まりへの歓声に変わります。言わずと知れたコナン・グレイを代表するポップ・チューンですが、間違いなく会場の盛り上がりはここがピークだったでしょう。

そしてマディソン・スクエア・ガーデン最後の曲は『Alley Rose』です。「Don't leave me hangin' alone again (僕をもう1人にしないで)」というコーラスの歌詞はライブの締めくくりにぴったりで、コナン・グレイ本人も含めた全員の名残惜しさを代弁していました。

BourgeoisiesesとManiac

最後に

今回の公演で最も印象的だったのはコナン・グレイとそのファンが放つパワーでした。ミレニアム世代の代弁者として現れたコナン・グレイですが、様々な経験を経て人間的にも成長し、そのエネルギーを音楽で表現することで正真正銘のポップ・スターに上り詰めた彼からは凄まじいパワーを感じました。

彼は母親が日本人ということで注目されることも多いですが、人種や国籍を超えたポップ・スターとしての彼に今後も注目していきたいと思います。

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