屋上から見上げた土星と木星、そしてキッチンが美容院になっていること
夫が教えてくれたので、昨夜8時半ごろ屋上に出てみた。
すると、確かに見えたのだ。
土星と木星がちらちらと輝いて隣同士に並んでいるのが!
考えてみればこの町に来て、こんな風にゆっくり夜空を見たのは初めてかもしれない。
夜のしんとした空気の中、星たちがぴこんぴこんと光っていてとてもかわいかった。かわいかったって変だけど、昨日はそんな風に感じたのだ。
「空を見てみて! 土星と木星があんなに近くにある!!」
友人たちに連絡する。
「え? 今日晴れてるの?」
「僕の窓からは何も見えないけど」
「寒いな」
特に興味のなさそうな返事が返ってきたので、
そうかそれなら私がひとり占めしてやると
思う存分堪能させてもらった。
土星と木星のおかげで初めて夜に屋上に来たけれど
ときどきこうやって夕食後に一杯、なんていうのもいいかもしれないと
思っている。お酒は全く飲めないので、煎茶か紅茶を持っていこう。
持ち運びのできる椅子をもっていけば、さらにゆっくりできるかもしれない。
★★★
ここまではなかなかさわやかなる日記だったのだけれど、今さっきキッチンの窓から、あれはポマードとかいうのだろうか、おそらく遠い昭和時代にかいだような男性整髪料の強烈なにおいがただよってきたため、私の意識は急に現実にひき戻されることとなった。
これは下の階のご夫婦が洗濯物を干しているのか、パティオで誰かが髪をスタイリングしているのかのどちらかであるが、いずれにしても私は廊下を挟んだ別の部屋にいたので、そこまでにおいが届くということは、美容院でもあるまいしいったい何人の男性が庭で髪をセットしているのだろうと考えてしまう。
そして、これは一体なんですか? とも聞けない感じがなんともくやしい。
それよりも私ができることは、と考えて急いで窓を閉めに行った。
キッチンは完全に美容院になっていたが、廊下からはぎりぎりセーフであった。
数分後、そういえばタオルを干していたことを思い出したのだけれど、今からまた窓を開けてタオルを取り込む余裕が私の鼻にはない。
タオルが整髪料のにおいになったらどうしようとちょっとこわい。
空では土星と木星がまたたいていたが、地上は整髪料のにおい対策で忙しかった。
クリスマス前、スペインの田舎はこんなもんである。
やっぱり今日もださかった。