日本茶パワー
仕事をしていたら、横からそぉっと一枚の紙が目の前に現れた。
「まるをつけてください。今、飲みたいのは:」に続いて番茶、玄米茶、ほうじ茶、何もという選択肢があった。
日本語で、そしてなぜか筆ペンで書かれたぎこちない文字がとてもかわいかった。ぎこちないと言うとへそをまげるだろうから、これを書いた夫には言わない。
ロックダウンが徐々に緩和され、最近散歩に出かけるようになった。
マドリードに住む友人からの「まだまだ外は危ないよ!」というメッセージを忘れず、毎日に感謝して過ごしたいと思っている。
去年購入した日本行きのチケットは、予定通り夏に使えるかどうかわからない。
今年亡くなった母親のお墓参りは、いつになるだろうか。
日本で買ったお茶のストックが減っていくのもちょっとさみしい。
特に夫は我が家の日本茶ストックの減り具合に非常に強い危機感を抱いている。日本人じゃないけど、いつのまにか彼の中での好きが「煎茶>紅茶」になってしまった。
なるべくストックを長持ちさせようと、日本茶を飲んでいいのは1日1回までと決めた。それ以外は、ルイボスティーや紅茶を飲む。
そんな中、納期でばたばたしていた私の目の前に差し出された紙である。
今日はもう煎茶を飲んだはず。
でも、特別に2回目の日本茶タイムをしていいことにしてくれたらしい。
思わず立ち上がって踊り出す。夫も加わり、日本茶への感謝の舞いが始まる。
硬水でいれた日本茶は、またちょっと日本で飲むそれとは味わいも違うけど
おいしいものはどこでもおいしい。
さらに、今日は筆ペン文字のぎこちなさと夫の優しさで、おいしさ倍増だ。
特別なティータイムの後は、仕事もはかどり私の口角は一日中あがりっぱなし。母親が聞いたら、「そんな大げさな」と言うかもしれないけど、我が家での日本茶パワーはすごいのだ。
海外にいても、私たちに精神的安定と幸せを与えてくれる日本茶に感謝する。今度日本に帰るときには、夫に好きなだけ日本茶を飲ませてあげよう。それまでは、時々は怪しい感謝の舞いとともに、日本茶への愛をスペインから叫ぼうと思う。