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歌舞伎・演目覚書『古典芸能への招待』Eテレ

2025年の正月は、1月2日の夕方6:00から、Eテレで、歌舞伎座の生中継があるそうだ。そういえば、2024年最後の『古典芸能への招待』も、同じ12月の京都・南座の顔見世『大津絵道成寺』『元禄忠臣蔵 仙石屋敷』の放送だった。

近頃、NHKは早朝に時代劇や古典芸能の番組を再放送するようになった。BS4Kの2025年のお正月の朝、再放送のある演目で、令和6年に見た劇場中継を振り返ってみた。

1/1 放送*博多座『人情噺文七元結』『太刀盗人』(未視聴)

1/2 放送*金比羅歌舞伎

義太夫狂言『伊賀越道中双六沼津(いがごえどうちゅうすごろくぬまず)』、舞踊『羽衣』『教草吉原雀(おしいぐさよしわらすずめ)』の演目。

『沼津』は旅の途中、沼津宿で幸四郎丈の十兵衛が、蜘蛛助・平作(鴈治郎丈)と出会う。父娘の住むあばら屋に泊まったその夜……。秘薬の入った印籠を盗もうとする平作の娘・お米! だが、事情を聞くうちに親子が自分の肉親であること、ふたりの仇が、主・沢井股五郎そのひとであることを知って、十兵衛は苦悩する。三場で「千本松原」に十兵衛を追いかけて来た平作は命をはって、仇討ちを果たそうとする。

舞踊では『羽衣』の雀右衛門丈の宙乗りや、『教草吉原雀』で孝四郎丈の鳥刺と雀の精が花道を使ってやる立ち回りに、客席が沸く。舞踊の立て三味線は歌舞伎座で『勧進帳』を弾いていた杵屋勝七郎さん。

1/3 放送*神田松鯉・伯山『古典芸能を未来へ 至高の芸と継承者』

着物スタイリストの石田節子さんが明治座で観て、楽しかったとYouTubeでのご報告。「客席の和服姿が豪華だった」そうだ。テレビでは客席が見られないけど、尾上菊之丞さんの着物が素晴らしいので、満足。

染五郎丈が剛腕な義経像をクールに舞う《尾上菊之丞・藤間紫・市川染五郎》の素踊り『与一の段』、さらには坂東巳太郎丈の『浦島』、そして、講談と見やすいプログラム。

1/4 放送*三島村歌舞伎『俊寛』

砂浜にゴザを敷いたような野外劇場で、俊寛が島を離れる仲間を追う場面では、海上に浮かべた舟を使うという稀な舞台設定で、勘九郎丈が熱演。

『籠釣瓶花街酔醒』の放送でも、勘九郎が流す涙や、花魁・七之助丈が仁左衛門との関係を「まぶでありんす」と認める場合の恥じらいなど、劇場では見えなかったポイントを知ることができた。テレビ中継バンザイ!

ちなみに『俊寛』の流人役は勘九郎・勘太郎親子と中村いてう丈の三人。お兄ちゃん(勘太郎丈)も13歳になったそうで、島で出会った海女(鶴松丈)を妻にめとる青年の役柄だった。頬のふっくらした可愛らしいお顔付きは、今の旬の姿なのだ。

短いが、放送では亡くなった勘三郎丈の『鑑獅子』『御存 鈴ヶ森』『髪結新三』の映像も流してくれて、肝芸が素晴らしく、「そこに居るだけでカッコイイって、こういうこと言うのね」と思ってしまった。

さて、あなたは見た? 『勧進帳』デジタルリマスター版(1980年11月)

二代目・松緑(左近くんの曽祖父)の弁慶、十七台目・勘三郎(勘太郎くんの曽祖父)の冨樫、義経・梅幸。そして、建て替え前の歌舞伎座という取り合わせ。四代目・松緑のインタビュー付き。長唄は松島庄三郎・杵屋勝輔・望月太左衛門。

令和の『勧進帳』より、様式美の色が濃い。二代目・松緑の剛腕な弁慶は声が太く、身体も太く、自身の主張をジリジリと押し込んでいくイメージ。対する十七代目・勘三郎の冨樫は「義経と知りながら、見逃してやった。これでいいのかな。いや、もう、考えるまい」という芝居をたっぷりやってくれていて、(テレビだとアップだし)私には納得感があって、良かった。

芸能きわみ堂は中村隼人丈の『越後獅子』。楽しみ!

来年も劇場、映画館、テレビで、思う存分、歌舞伎を楽しみたい!

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