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えいえんのトマトちゃん

私の隣では今日もえいえんと娘が泣いています。
そのほっぺたは、つるつるでプリンとしてて、とても弾力のある
立派なほっぺたでした。
ほっぺたは大きな大きな涙の水滴をつるつる滑らせて運んでいきます。
えいえん えいえん えいえんと今日も娘が泣いています。
ポタポタ落ちる雫の理由はなんですか?
お父さんには君が泣く理由がわからないのよ。
お話聞いてくれないから泣くのかい?
お部屋が暑くて泣くのかい?
それともお父さんがわかってくれないから泣くのかい?

娘はある日突然泣き止みました。高熱にうなされた3歳のある日。
いつものように、いやいつも以上にまた泣き始めるのかと思いました。
しかし彼女は、「じゃあ寝ます」と静かに布団に入りました。
彼女のお顔はトマトみたいに真っ赤でした。
戸惑った僕はただただ完熟を待ちました。
翌朝目を覚まし、リビングに行くとすでにトマトはサンドイッチに使われていました。
レタスとマヨネーズと挟んで食べました。
娘はスッキリとした良い顔で滑舌良く
「お父さんおはよう」と言ってきました。
なんだか別人のようでした。
腕も長く、足も長く、とてもスマートでした。
あのほっぺ山トマトちゃんはどこへいってしまったのでしょう?

私の隣では今えいえんと娘が泣いています。
お母さんありがとう、お父さんありがとうと
嗚咽を噛み締めながらえいえんと泣いています。
すっかり歳を取ったお母さんと私は目を見合わせました。
この日が来てしまったか、と苦笑いしながら。
私はキチンと座り直し、大きく深呼吸をしてからこう話しかけました。
「キミはいつでもトマトを実らすために泣きなさい。
雨の日でも平気なようにカッパを着なさい。
カッパはきゅうりが大好きです。
そして美味しいトマトを育てなさい。
あとはえいえんと雨が降り続ける限り泣きなさい。
えいえんとえいえんとえいえんと
そしたら雨が止むでしょう。
そしたらみんなで外に虹をかけに行きましょう。」
娘の隣では、タキシード姿のカエルさんが
永遠の雨に打たれて大変そうにしていました。
娘は傘をさしてあげていました
ふむふむ。これは夢だな。ならば起きるか。
そろそろお母さんも困っているだろう。

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