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二周目っていいね

いぬうた市の、いぬうた公園は、
中央が池で、その池の周囲に道があり、
ぐるりと一周できるようになっています。
普段、きゅん君と、ぐーちゃんは散歩で、
この池を一周することが多いのですが、
本日、ぐーちゃんはあることを企んでいました。
現在ふたりは飼い主との散歩途中で、
ちょうど、今、池一周を回り終わり、右の道に行くと、
家に帰れる訳ですが、そこを無理矢理、
左にぐいーんと曲がった、ぐーちゃんです。
そのまま、きゅん君と飼い主を引っ張って、
ずんずん進んで行きます。
「ぐー、ちょっと待てよ。そっちに行くと、また池に戻っちゃうぞ」
引っ張られながら、きゅん君が、先頭を行く、
ぐーちゃんに声をかけます。
きゅん君は、ぐーちゃんが道を間違えたと思ったのですが、
これが、ぐーちゃんが密かに抱いていた企みなのでした。
「そんなことは分かっているわ。ぐーは今日、池をもう一周したいのよ。これは今まで、やったことがない体験よ。ぐー、前々から、ずっと池を二周したいと思っていたのよ」
それを聞いた、きゅん君は、言われてみれば、
そうだったと思い、
「確かにそうだ。それは盲点だった。我々、一回は二周目を体験するべきだ。よくやった、ぐー」
と、俄然やる気が出て、速度を上げて、
ぐーちゃんに追いついた、きゅん君です。
そして、ふたりはまた池にやってきました。
「さあ、二周目を出発すると致しましょう」
ぐーちゃんの、この合図で、
再び、ふたりは池の周囲を歩き出しました。
飼い主は仕方ないといった感じで、
ふたりの二周目体験に付き合う覚悟を決めたようです。
「二周目!二周目!二周目はどんな楽しいことがあるのかな?二周目はきっと一周目には見えなかったモノが見えるハズ!それは何かな?どんなかなあ?」
ぐーちゃん、即興の歌を歌いながら、
「あんなところにキレイなお花が咲いているわ!一周目の時はおトイレの場所を探して焦っていたから、ぐー、気がつかなかった!」
早速こんな気づきがありました。
それに、きゅん君が、
「二周目っていいね!」
と叫んで、またすぐ、ぐーちゃん、
「あっ、あの木の上に鳥さんの巣があるわね!落ち着いて見ると、見逃していたモノがいっぱい!」
こんな発見をして、すかさず、きゅん君、
「二周目っていいね!」
また合いの手を入れます。
すると、今度は、
「あっ、あそこにいつもオヤツくれる、おじ様がいるわ!これも二周目しなかったら、会えなかったとこよ」
ぐーちゃんが見つけた、おじさんに、
きゅん君と、ふたり駆け寄って行って、
「二周目は最高!」
と、言いながら、ほくほく笑顔で、
おじさんからもらったオヤツを食べました。
その後もふたり、二周目の公園の散歩を思う存分楽しんで、
そろそろ、また、公園と家との分岐の道にたどり着いた時、
「二周目、本当に楽しかったわね」
ぐーちゃんが言うと、
「そうなると、三周目って、どうなんだろう?」
ふと、きゅん君が、ぽつりつぶやいて、
「そんなこと言ったら、四周目、五周目も実に興味深いわよ」
ぐーちゃんが、こう受けて、
「じゃあ今日はとことん行っちゃう?」
ふたり、盛り上がり、また公園への道に行こうとしましたが、
飼い主がとても、へとへとな様子で、
ふたりが公園へ行こうとするのを断固拒否して、
無理矢理、ふたりを家への道に引っ張って、
三周目以上の冒険は、ひとまずお預けとなった、
きゅん君と、ぐーちゃんなのでした。

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