お坊ちゃんの僕が行く
あら、今日の、いぬうた市の、きゅん君ときたら、
何だか、どこぞのお坊ちゃんみたいに見えますね。
何かお品が漂っているというか、
お金持ちのお家のひとり息子さんのようですよ。
「そう。そうかな。何か僕もさっき自分の姿を鏡で見て、同じようなことを感じたんだけど、やっぱりそうなんだー。やっぱり隠せないんだー。これは僕の気品がダダ漏れしまくっているんだなー」
と、あんまり品のない感じで、
ニタニタ笑う、きゅん君です。
何故なんでしょう。
いつもはお坊ちゃんな感じはカケラもないですけど、
今日に限って、このたたずまいは。
あっ、分かりましたよ。分かりました。
その、今日着ているシャツのせいではないですか。
その襟付きのポロシャツを着てるからですよ。
「あっ、何だ。そうゆうこと。そうゆうことなんだ。あれ、僕が持っている本来の気品のせいではないんだ」
残念ながら違うみたいですね。
よく着ているTシャツタイプより、襟付きのシャツの方が、
上品に見えるんですね。
人もわんこも。
「そうゆうもんなのか。まあ、いいけど。じゃあ、とりあえず今日一日は僕はお坊ちゃんという訳か。だったらそのお坊ちゃんをせいぜい楽しむとしよう」
あら、きゅん君、それはポジティブというか、
切り替えが早いというか、でもその精神はいい感じですね。
このあとちょうどママと、ぐーちゃんと、
散歩ではないですか。
きっとみんなから、お坊ちゃん、お坊ちゃんと、
もてはやされますよ。
これは楽しみではないですか。
「うん。これは楽しみだね。楽しみだ。楽しみだ」
と、本当に楽しみな感じの、きゅん君です。
「きゅん、最初に釘さん打っておくけど、あんまりいい気になるんじゃないわよ。きゅんが今日、お坊ちゃんさんにみえるのは、あくまでそのポロシャツさんのおかげであって、中身の、きゅんとは全然関係ないんだから」
と、散歩の出かけに、ぐーちゃんにそう言われても、
いざ、散歩に出て、実際、あっ、今日の、きゅん君は、
お坊ちゃんみたいだね。みたいだね。
と会うわんこから、会うわんこから、
口々にそう言われるとと、でれでれと、
ニヤけっぱなしの、きゅん君でありました。
そんな、きゅん君の隣で歩いている、
ぐーちゃんは大変面白くありません。
「何よ!きゅんばっかり、お坊ちゃんさん、お坊ちゃんさん、言われて。お隣に本物の、お嬢さんの、ぐーがいるというのにー!」
と、自称本物のお嬢さんこと、ぐーちゃんは、
ぷんぷんご機嫌斜めで、
しまいには前をゆっくり歩いている、わんこなどに、
「ちょっと、あなた邪魔よ!ぐーの前をちんたら歩かないで下さる!」
と、そこは本物のお嬢さんばりに、
ワガママをふりまきながら、街を行くのでした。