掬い上げた世界で待ってるよ
本日、いぬうた市の、きゅん君、と、
ぐーちゃんはお留守番のご様子ですが、
さぞかし、ご不満であらせられるのでしょうね。
天気も良く、絶好のお出かけ日和ですよね。
よりにもよって、こんな日にお留守番だなんて、
文句のひとつも言いたいでしょう。
ここは、出かけている、ママと飼い主に、
ガツンと思い切り言ってやって下さい。
では、どうぞ!って、あら?
今日はヤケにいい子じゃないですか?
一体、きゅん君、ぐーちゃん、その心中やいかに?
「そりゃ、本心は僕らだってママとお出かけしたいよ。でも今日はママの友達と一緒で、その友達には、もうすぐ赤ちゃんが産まれるので、今日を以て、しばらくお出かけできないから、そこは僕らも遠慮をした訳さ。今日だけは、ママも、ゆっくりとその友達と行きたい場所に思う存分行きたいでしょ」
さすが、ママ思いの、きゅん君ですね。
ぐーちゃんもやっぱり同じ気持ちですか?
「もちろんよー。だって、ぐー、ママのお友達の赤ちゃんさんにもうすぐ会えるのが、とっても楽しみだから、それを思えばちょっとのことは我慢するわ。それに今日、ママとお友達が行ったとこも、お友達のお腹の中の赤ちゃんさんにも、きっと良い場所だからー」
なるほど、そうなんですね。
で、どこにママとお友達とついでに飼い主は、
だいだいどこにいらしたんですか?
「それは僕らの家の玄関ホールに飾られている絵の作者さんの新しい個展がやっているところさ」
きゅん君が答えてくれたことを、補足しますと、
その、きゅんと、ぐーちゃんの家の絵は、
白色のベースに、ウルトラマリンの色が横の線で、
幾重にも縦に層を成して、繊細なグラデーションで、
描かれている、とても涼やかな抽象画で、
避暑地の湖畔にいるように思わせてくれる、
ものなのでした。
その作者さんの新作が何点も揃ったギャラリーは、
何とも言えず、心地良い空間で、
ママの友達のお腹の中の赤ちゃんも、
たぶん、気に入ってくれることなのでしょう。
「間違いないわよ。ぐーには足を取るように、その光景が見えるわ。きっと、ママのお友達のお腹の中の赤ちゃんさんが、今いるところも、同じように素敵な場所なのよ」
と、ぐーちゃんがそう言うと、きゅん君も、続けて言います。
「でも大丈夫だよ。ママの友達の赤ちゃん、産まれて来たら、今よりもっと心地良いし、楽しいし、嬉しいことが、いっぱいいっぱいあるからね。僕、待っていまーす!」
それこそ、間違いないですね。
ママのお友達の赤ちゃんさん、
そのママがお気に入りの絵の作者さんが、描いたような、
その絵たちが作った空間を掬い上げたような、
素晴らしい世界がすぐそこに待っていますからね。
ようこそっ!と、みんな待っていますからっー。