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幕の中には

おや、いました。いました。
いぬうた市の、きゅん君と、ぐーちゃんたら、
そんなところにいたんですね。
そんなところとは、いぬうた駅の近くを、
トコトコと歩いていまして、ママも一緒に歩いていまして、
ということは分かりましたよ。
只今、絶賛、散歩中という訳ですね。
「その通りだよ。今日もママとの散歩で、今が1番楽しい時間さ」
と、ニコニコ嬉しそうに答えてくれた、きゅん君です。
もう一方の、ぐーちゃんはどうですか?
あれ、ぐーちゃん、聞いていますか?
ぐーちゃん。ぐーちゃん。
と、ぐーちゃんは何だか気もそぞろで、
さっきから、前方のある場所を興味深く見つめています。
歩いているので、どんどん近づいてくるその場合が、
とても気になるようですね。
そこで、ぐーちゃん、やっと言葉を発しました。
「ひとつ質問があるんですけど、あそこの見えなくなっているお場所は一体何なのかしら?」
その質問に、きゅん君が答えます。
「ああ、あれは工事中だね。ああやって幕でおおって、周囲にホコリとかが飛ばないようにしてるんだよ。たぶんあの中では新しい家が作られているんだと思うよ」
と、的確にそう答えた、きゅん君です。
「そうなのね。ぐー、てっきり、ハトさんがいっぱいいるお場所なのか、と思ったわ」
ぐーちゃんが言った意味はどうゆうことかというと、
この間、ぐーちゃんが家で観ていたテレビ番組で、
ちょうど手品を放送していて、隠された幕の中から、
ハトが沢山飛び出てきたので、それから、ぐーちゃんは、
幕でおおわれていると、ハトが出てくるんさぞゃないか、
と思い込んでいるのです。
「でもあの家の発注者はハトかもしれないから、あり得ない話じゃないよ」
あら、きゅん君、ぐーちゃんの言ったことを、
否定しないで大丈夫ですか?
これだと、ぐーちゃん、より信じてしまいますけど。
「やっぱりそうなのね。ぐー、そうだと思ったのよー」
ほら、言わんこっちゃないじゃないですか。
きゅん君、これで、いいんですか?
「別にいいんじゃない。幕がある間はそう信じていたって。どうせあの家が完成して、幕が取れたらすぐに分かるんだから」
と、どうでもいいような感じの無責任な、きゅん君です。
それ以来といいもの、その幕がかかった工事中の家の、
完成が待ち遠しくてたまらない、ぐーちゃんであります。
で、そんなことがあった、更に数日後、
また散歩に出ておりましたら、今度は、
道路が工事中で通れない場所に出くわした、
きゅん君と、ぐーちゃんです。
すかさず、ぐーちゃんが言いました。
「きっと、これはハトさんがお地面の下から出てくるという新しい手品ね。ぐー、ハトさんがいっぱいお道路から飛び立つとこ見たーい!」
と、言って、いつまでも、その場所から、
立ち去ろうとしません。
ぐーちゃん、どうやら、工事中は全て、
ハトがいるところだと思い込んだようですね。

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